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真子がIS学園に入学し、初の授業を迎えた次の日。
「……………………」
朝の5時ごろ。真子は設定されたその時刻ちょうどにスリープ状態から起動し、目を開くと同時に上半身をむくりと引き起こす。
真子は視線を動かすと、閉められているカーテンの隙間から光が溢れている。
貴族相当の身分の人間も使うためか非常に柔らかいベッドから体を離して立ち上がり、光溢れる隙間から外の景色を覗き見る。
「わぁ……!」
真子の機械の瞳に移る光景をハイパーセンサーで再現された視覚によって認識すると、思わず真子は声を出した。
IS学園存在する島はもちろんのこと海に囲まれている。そして真子が今覗いているカーテンの隙間のある窓は、東側だった。
即ちそこに映る光景とは、雲が散らばる青い空と穏やかな波を孕む青い海。そしてその果てにある水平線の上に差し込んでいた光の根源である太陽が堂々とした姿を披露していた。
真子にとってその景色は非常に新鮮なものだった。
生前の話をするのであれば、真子は病弱故に海に遊びに行くこともできなければ、病室から海が見えるわけでもなかった。
そして“お友達3号くん改“として生を得ている今の話をするのであれば、海に限定すれば非常に馴染み深いものであった。
その海は今目に映る光が一切届くことのない、宇宙よりも暗い水深一万メートルの深海だが。
故に、真子はこの景色に一時の心を奪われ、一瞬見れば永遠に記憶フォルダに保存できるはずなのに、まじまじとその景色に目を奪われていた。
「ん、まなまなおはよ〜」
水平線に浮かぶ恒星を眺める真子の聴覚に、少し間伸びた声が届く。
そしてその数秒後に部屋の照明が点灯し、部屋に差し込んでいた光の帯は消滅してしまった。
真子が後ろを振り向くと、そこには黒にピンクのインナーカラーをもつ髪の毛がボサボサになり、デザインが和寄りかつカラフルな印象を覚えるパジャマに身を包んだ桃が立っていた。
「うん、おはよう」
真子はそれまでの少し堅い言葉遣いではなく、砕けた口調を持って桃の朝の挨拶に返答をもたらした。
その返答に桃は未だ夢現な状態ながらも嬉しさを示唆する笑みを浮かべ、大きくあくびをした。
「あ〜〜〜……そっか、
「私も、今起きたばっかりだから」
「そか〜……じゃあ、準備してくるね〜」
桃はそういうと、トボトボと洗面所の方へと向かった。
約束。それは昨日の夜、就寝前に真子と桃の間に交わされたものであり、2人が5時という早い時間から目を覚ました理由でもある。
それは、IS学園内をジョギングがてら見て回ろうというものであった。
IS搭乗者は体力がなくてはならない。ISの操縦は“操縦“というものの身体の延長線上にあるものだ。
P.I.Cやブースターを利用する飛行ならばともかく、人体をはるかに凌駕する重量をもつISやその武装を扱うのは、いくらパワーアシストがあると言えども消耗するものだ。
そのため、桃はこのIS学園に来る前からカカ研のIS乗りとして日々体づくりに邁進していた。
その習慣を絶やさぬため、ついでにIS学園の諸施設の位置などを把握しようという、桃からの提案だった。
真子はこの提案に強い肯定を示した。
IS学園の諸施設の位置は事前に資料で把握していたものの、それはあくまで二次元的なデータだ。
実際に確認し、その高さや構造、そして実際に視覚情報として捉えた際にどういった心象を抱くのかを真子は知りたかった。
さらに体を動かすという点でも真子はこの提案に賛成だった。
桃のように真子は体を作る必要はない。体力という点では、体内に核融合機関を有し半永久的にエネルギーを自己生成できるので、疲れることは一切ない。
しかし真子は自身が“お友達3号くん改“となってから、真子は運動らしい運動をおこなったことはなかった。
故に、IS学園に来る前から試してみたいと思っていたのだ。
この
即ち、束が考えているところの
「まなまな洗面所開いたよ〜〜……ってアレ?もしかして準備終わってる?」
「うん。一応桃よりも早く起きてたから」
桃が洗面所にて準備している間に、真子は既に拡張領域を使って見回りを整えていた。
服はIS学園の制服ではなく、真子が持参したものだ。
見た目はどこにでもあるような普通のジャージ服。しかしそれをこしらえたのは束であり、様々な機能が市販のジャージより飛び抜けている。
特に耐久性に優れており、束曰く「まなちゃんがリミッター外した状態で全力で動き続けてもほつれゼロ!!」と豪語していたが、リミッターがかかってない状態の運動性能を把握していない真子にはその凄さにあまりピンと来ていなかった。
「まなまな〜アタシも準備オッケーだよ〜」
「わかった。じゃあれんちゃん、お留守番よろしくね」
「─────かしこまりました。いってらっしゃいませ」
いざ出発するとなったとき、未だ綺麗に椅子に座った状態でスリープ状態にある蓮手に一声かける。
管理者である真子の声はスリープ状態であっても蓮手の音声認識システムは感じ取っており、椅子から立ち上がって真子と桃に見送りの挨拶をお辞儀と同時に行う。
そして再び椅子に座りスリープに入ると同時に、自動でスリープを解除する基準段階を引き下げた。
これによって、インターホンといった軽い出来事にもスリープ状態から目覚めて対処できるようになった。
それを真子を管制機能で確認した後に、真子と桃は外へと出た。
「桃、大丈夫?」
「もうまぢムリィ……」
朝のジョギングを終え、朝食やら着替えやらの準備を終えた朝のSHR前の教室。
そこで桃は、まだ授業二日目にも関わらず机の上に上半身をだらりと預けて緊張感の感じられないダラけっぷりを発揮していた。
そしてそれを心配した真子が声をかけると、朝にも関わらず疲れた声を真子に返してきた。
その原因は、早朝のジョギングにあった。
端的に言えば、束の言っていた“人間の限界“はいつもの束クオリティだった。
ISが扱うような武装をIS無しで扱えそうな腕力。
走れば現役G1馬とも併走できそうな脚力。
それはそこらにいる一般に人間の限界ではない。これから先に発展していく人間の身体能力の可能性。
その
しかし、実際に生まれたそれは再現などと言うものではない。
人類の果てが全力を出せば、先に説明したような身体能力を発揮することは可能だろう。
しかし、その全力の持久時間は非常に短く、そも肉体の耐久力はそれに耐え切ることはできないだろう。そして、その出力を調整し、日常生活を送るには脳の演算能力の多くを使用するだろう。
同じような現象は現代競馬にも見て取れる。
その最高速度は70km/hを超えるものの持久力は乏しく、ガラスの足と形容されるように脚力に骨や筋肉の耐久力が耐えられないことさえある。
そしてそんなパワーを操る為に、
しかし、束が生み出した“お友達3号くん改“はそんな弱点とも言えるような問題点を全て解決してしまっていた。
核融合機関によって生み出され続けるエネルギーと深海一万メートルの水圧も応えない耐久力は全力の超長時間稼働を可能とし、ハイパーセンサーによって強化された情報処理能力と演算能力が非常に細かな調整を可能としている。
そんな“人間の可能性の果て〜弱点克服Ver.“となった真子の性能実験。それについていこうとした桃は、ご覧の通り膨大な疲労をその身に負うこととなった。
─────それでも、ある程度まではついていけていたのは、企業のIS乗りとして鍛えていたからなのか、それともある程度“果て“に近づいているからなのか。
「全員、席に着け」
教室の扉を開けて入ってくると同時に、千冬はクラス全員に対しそう言い放った。
散り散りになっていた生徒たちは焦るように席に戻り、騒々しかった教室は窓から広々とした海の波の音が聞こえてくる程静かになった。
「SHRを始める。日直は昨日決めた通りだ。挨拶を」
「起立!気をつけ!礼!───着席!」
昨日に決められた日番の順序は典型的な名前の順。
そして出席番号一番である桃は、先程まで早朝の疲れを引きずってだらけていた姿とは打って変わって非常に規則正しい挨拶を行った。
「今から一つ決めてもらうことがある。再来週にクラス対抗戦があるが、それに伴いこの1−1の代表者を決めてもらう」
その言葉と同時に、生徒達が小さい声で話し始め、外の波の音はかき消されていく。
「静かに!───クラス代表とは対抗戦においてエントリーする人間であると同時に生徒会主催の会議や委員会の出席等を行うクラス長としての性質も兼ねている。少なくとも一年間は変わらん決定方法は自薦他薦を問わないが、被推薦者は最低1人の期待を背負う。辞退はできないと思え」
千冬がその言葉を言うと同時に再びクラス内の空気が人の声で埋め尽くされる。
今度は千冬は止めない。それは生徒の態度に呆れて諦めのではなく、向かい合って話しているのが「代表を誰にする?」と言う無関係ではない内容だからだ。
数十人といった人間の中から1人の代表を選ぶ。そしてその1人の実力や言動・印象はそのまま他クラスから見た自クラスのイメージとなる。
それ故に、クラスメイトと話し合うと言うのはあって当然。むしろ推奨されて然るべきものなのだ。
「まなまなはどうする〜?」
前の席の桃が、先程の挨拶の時から戻って元のぐだりとした様子で真子に話しかけた。
「桃を推薦しようかなって」
「やめてよ〜そんなガラじゃないし〜。まなまなもしっかりしてるからいいんじゃない?」
「でも、私じゃ実力不足だよ」
真子と桃もクラス代表について話し合うが、結論には至らない。
お互いのことを推薦しようかと言ってみても、桃は己を向いてないと拒否し、真子は実力が伴っていないと拒否をし、この2人の間での結論は遠ざかるばかりだった。
そんな中、ついに1人の生徒が、声高らかに誰を推薦するのかを宣言する。
「私は織斑くんを推薦しまぁす!」
その声は教室内の喧騒を切り裂き、教員である千冬のみならず教室全体にクリアな音声として伝わった。
「私も織斑くんを推薦します!」
「私も!」
そして、「織斑一夏を推薦する」と言う結論が曖昧ながらも優勢であった生徒もその声に背中を押されるようにして一夏を推薦する声を上げる。
「ち、ちょっと待ってくれ!流石に俺には荷が重い!」
そんな意見にいの一番に待ったの声を掛けたのは、まさに推薦された当人である織斑一夏であった。
荷が重い。一夏がそう思うのも無理はないだろう。
一夏が今までISを動かしたのは事故でISを動かしてしまったとき、そして入試における実技試験の時のみだ。
そして知識においても、新しく受け取った参考書と放課後の山田先生の補修のお陰で今日一日の授業で必要な知識は予習したものの、それ以外はからっきしだ。
そんな状態が1−1全体の評価として他クラスから見られる。そんなことを考えると確かに荷が重いだろう。
「受け入れろ織斑。既に辞退はできないと言うこととその理由について伝えただろう。その期待に対して覚悟を決めるんだな」
しかし、そんな一夏の意見に対し千冬はNOを突きつけた。
それは一夏の現状を一切考慮しなかった訳でもなければ、姉弟故にあえて厳しくしていると言うわけではない。
世界的な観点で見れば、ISは製作者の意図に反し立派な軍事力だ。その証左にドイツではIS乗りが集められた軍が存在し、アメリカではISを開発しているのは軍だ。
故に、いざとなればIS乗りは国民の期待を背負って戦うことになる。
その重みは一クラスの外聞なんてものではなく、大勢の命を背負う行為だ。それを降ろすことは、絶対に許されない。
そのことを軍の教官でもあり、ブリュンヒルデである千冬は嫌になる程理解している。
故に、これは予防接種のようなものだ。危険性のない普通のワクチンではなく
その判断故に、千冬は一夏の意見にNOを突きつけた。
「納得いきませんわ!」
すると、教室の後方の机から一夏への推薦に異を唱える声が響き渡る。
声の主は、昨日一夏と言い争っていたことが記憶に新しいセシリア・オルコットだった。
イギリスの代表候補生であるとイギリスの上流階級─────俗に言う貴族というものであり、それゆえに今の時代珍しくない女尊男卑思考の持ち主だ。
「どうして代表候補生であるワタクシが選ばれずに、よりにもよって知識も実力もない男なんかが選ばれなければなりませんの!?」
自分が他薦されずに他の、それも男性が指名されたということにプライドが傷つけられたのだろう。その声のトーンやら身の振る舞いからは憤りをひしひしと感じる。
「─────っ!確かに実力も知識も足りないかもしれないけど、その言い方は俺を推薦してくれた人に失礼だろうが!それに俺が男って言っても、今は同じIS学園の生徒じゃないか!」
セシリアの発言が琴線が触れたのか、一夏も立ち上がり精一杯の反論を投げかける。
一夏の言うとおり、女尊男卑が生まれた経緯を考えて見れば一夏に“卑“が投げかけるのは間違っている。
女尊男卑というのは女性はISを動かせて、男はISを動かせないという事実の基盤があるからこそ成立してい流ものだ。
そして、男性もISの強力さ、その上で動かせないことをわかっているからこそ、その意見に対し堂々と否ということができないでいる。
だが、一夏は動かせる。故に一夏は自分は今女尊男卑の“卑“を受ける人間ではなく同じIS学園の生徒として平等であることを主張した。
が、物事とはそんな単純なものではない。
女尊男卑のルーツこそISが起動できるか否かというものであるが、今ではそんな複雑な論理はシンプルな構造へと変遷していた。
即ち、女性=偉いという過程を失った方程式。
「〜〜〜〜ッ!!」
理性的な理論では反撃できない反論を一夏によって返されたセシリアは、その言葉に納得するのではなく強く歯を食いしばって一般的には整っていると言われるであろう顔を崩していた。
教員や自分の他にもクラスメイトがいるSHRという場において、セシリアは一歩踏み出してしまった。その一歩は、自らの後ろに断崖絶壁を作り出すが所業。
一度自分が声に出した発言、しかも男性に対する差別的視点を孕んだそれの撤回は、貴族としてのセシリアのプライドが許してはくれなかった。
故に、彼女自身の意思で取れる選択肢は一歩に連なる前進。
例えそれが、心の内では間違っていると分かっていても。
「“決闘“ですわッ!!」
戦意を大いに含む鋭い眼光とピシリと伸びた腕と人差し指を一夏に向けながら、セシリアは宣言した。
「先生!私はこの“セシリア・オルコット“をクラス代表に推薦いたします!そして、ISを用いた一夏さんとの1on1の決闘にて雌雄を決することを提案いたしますわ!」
「─────織斑、どうする?」
「──────────」
セシリアの提案を聞き入れた千冬は、その提案の是非を一夏に委ねた。
そして千冬から提案の是非を委ねられ、セシリアに決闘相手として見られている当の本人である一夏は、その提案に対し即時首肯するのではなく、顎に手を当てて思考を巡らせた。
クラス代表はいずれ他クラスの代表とクラス対抗戦にて戦う。その雌雄を決するのに決闘というシンプルに戦闘力を比較するのは間違ったものではない。
しかしその場合には、一夏はかなり不利であった。
セシリアがイギリスの代表候補生であると同時に、世界に467個しかコアがないISを個人で持つことが許されるほど実力に優れているというのは、昨日にセシリアと言論になったために知っていた。
対する一夏はIS数ヶ月前にはISに関わる気すらなかったドが付くほどの初心者。
複数人の期待を背負うこととなった身として、そんな勝ち目のない戦いに身を投じることに一夏は躊躇いを感じずにはいられなかった。
そんな一夏の様子に気付き好機と見たのか、セシリアは決闘の前に不戦勝での勝利を即時画策し、脳細胞から言葉を紡ぐ。
「ふふふ……怖気づくのも無理はありませんわ。何せ私はイギリスの代表候補生。さらには、
余裕の態度を示そうと自身の実績をひけらかすセシリア。その言葉の末尾で突然、声を詰まらせた。
周囲から見るとそれは非常に不自然な態度。しかしセシリアは貴族という上流階級と代表候補生という身分から社交的な経験値に富んでいたがために、それがどんなものによるかというのには瞬時に検討がついていた。
それ即ち、何者かの視線に貫かれたということ。
「──────────!」
その視線の発生源は、真子だった。
人間の眼球を忠実に再現した人工の瞳を大きく見開き、セシリアのことを見つめていた。
セシリアの唯一教官を倒したという発言に思わず驚愕すると同時に強い好奇心に襲われた真子は、思わずその視線でセシリアを貫いてしまった。
真子には代表候補生、何より自分の専用機を持つ人間の実力というものを把握していなかった。そして、把握したかった。
そして今、この場においてそれを把握することができた。
専用機持ちとは真子が敗北を喫した試験官─────副担任でもある山田真耶に勝利するほどの実力を持つほどの人物であると。
「先生」
「ッ、どうした天乃?」
「私はセシリアさんの提案に賛成したいと思います」
「─────!」
目線をセシリアから離し、真子は真っ直ぐ
真子はその“眼“で見てみたかった。専用機持ちの実力というものを。
それは真子が専用機─────それも、ISの生みの親である篠ノ之束という偉大なる母親から授かったものを保有する者として相応しい実力の持ち主になる足掛かりとしたかったが故に。
千冬はその提案を飲むか否か、少し判断に困っていた。
本来ならば、一個人の勝手な提案。それも明確に片方が不利であるそれを、先生という立場においては許容し難かった。
しかし、その提案は天乃真子という少々千冬にとって厄介な人間がそれに賛同し個人の提案ではなくなってしまった為に、その可否に困るものとなってしまった。
「─────わかった」
そして最終的に千冬が出した結論は“可“だった。
それは決闘という手段がクラス対抗戦という一要素を切り出して判断してみれば正しいまではいかなくとも間違ってはいないと判断したからだけではない。
それに便乗して行えることがあると判断したからだ。
「セシリア・オルコットと織斑一夏によるクラス代表を決める決闘を、来週行う。双方、異論はないか?」
「ありません」
「─────わかった。受けて立つ!」
「よし。決闘は来週の──日。アリーナにて行う。では、クラス代表については今日はこれで終わりとする」
「─────これでSHRを終了する。天城」
「起立!気を付け!礼!」
桃が挨拶を終えると同時にクラスは休憩時間に入り、一気に教室内は女子の姦しい声に埋め尽くされる。
「あぁぁぁ〜〜〜……」
「桃、お疲れ様」
「ありがと〜まなまな〜」
先ほどまで姿勢良く、理路整然とSHRを受けていた桃だが、休憩に入ると同時に朝の疲れから一気に軟化し怠けてしまう。真子はそんな桃に対し労いの言葉をかけた。
「天乃、少し時間いいか?」
「はい。─────行ってくるね」
「行ってら〜〜〜」
突然千冬から呼びかけがあり、真子は咄嗟に返事をする。
桃に席を外す旨を伝えると、桃は机に上半身を預けながらも声をあげ、ヒラヒラと真子に手を振って見送った。
廊下に出ていく千冬についていくようにして、真子も教室から廊下へとその身を移す。
「どうしましたか?」
「先ほどの決闘の件なんだが─────天乃に頼みがある」
「頼み……ですか?」
千冬の口から“頼み“という単語を投げかけられた真子は、その頼みの内容がいまいち掴めず、首を傾げた。
そして、千冬の口からその“頼み“の内容が告げられる。
「私の弟───織斑一夏に、来週の決闘までIS操縦を教えてはくれないだろうか?」
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