ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。ボイロ劇場にドハマリしたため書きたくなって書いてみました。楽しんでいただけると幸いです。


始まりはW
第一話:Wの都/探偵事務所はBARの上


 ここは水都市歩色町(すいとし ぼいろちょう)。その名の通り、歩くたびに色づいて行くカラフルな景色が美しい町。海に隣接しているこの町は風車や水車など自然エネルギーを基軸としたエコロジーな町として有名で、特に町中に張り巡らされた水路に繋がる町の中心に存在する巨大な風車「水都タワー」が観光名所として聳え立ってる。

 

 

「キリマンジャロとは、マキさんもいい豆を仕入れましたね…これはお子様舌のあの子も唸らせるものが淹れれるに違いありません」

 

 

 そんな街中を歩く、仕入れたコーヒー豆の入った行きつけの喫茶店のロゴが入った紙袋を抱えた、ソフト帽を被り黒のベストにスラックスを着こなしたハードボイルドな私。うむ、絵になりますね。平日の朝で人通りが少ないのも素晴らしい。

 

 

 そうして上機嫌に歩くこと、五分と掛からず見えてきた。ビリヤード場兼梅酒BAR「鳴花(メイカ)ーズ」の二階を借り受け営業する我が事務所。二階に続く階段の壁には「結月(ゆづき)探偵事務所」と黒と紫でお洒落に彩られた自信作の看板が掛けられている。次々に依頼が舞い込んでくる、この町じゃ結構知られている探偵事務所だ。特に「とある分野」においては警察よりも頼りになる駆け込み寺として知られている。

 

 

「やーやー、ゆかりちゃん。朝からどこに行ってたのかねー?」

 

 

 鳴花ーズのドアが開いて顔を出すなり冷かしてきたのは、先端が青い桃色という不思議な色の髪を伸ばしたバーテンダーの格好をした少女、鳴花ヒメ。私より小さいがこう見えて私より年上なのだというから不思議だ。

 

 

「マキさんところに豆を買いに行ってたんですよ。ちょうど切らしていたもので」

 

「なーんだ、依頼を受けてたわけじゃないのかー、残ー念ー」

 

「そういうもんじゃないよヒメ。依頼がないってことは平和だってことだ、いいことじゃないか」

 

「ははは…探偵としては商売上がったりですけどね」

 

 

 ヒメさんを嗜む様に顔を出したのは、先端が桃色の青い髪というこれまた不思議な色の髪を揺らすヒメさんとよく似た少女、鳴花ミコト。鳴花ーズのマスターをしている人物だ。ヒメさんという天然を上手く抑えてる手腕は大したものだと思う。うちの生意気な餓鬼んちょを抑えるためにいつか教唆願いたいものだ。

 

 

「イフさんがいた頃も閑古鳥は鳴いてたから気にすることはないよ。さあヒメ、さぼってないで掃除の続き」

 

「はいはーい。あ、面白そうな依頼が来たら教えてねーゆかりちゃん」

 

「覚えていたら教えますよ」

 

「それと、なんでずっと帽子を押さえてるのー?そんなに風強いかなー?」

 

「ぐっ。…気にしないでいただくと」

 

 

 少しでもハードボイルドに見せたくて帽子を押さえてたのだが、天然のヒメさんには変に見えたらしい。…やはり、おやっさんの様にはいきませんね。そもそも私は女ですし…よく男と間違えられますけど。ミコトさんに引っ張られたヒメさんが店内に引っ込んでいったのを見届け、探偵事務所を見上げる。…託されたのだから、守って見せます。

 

 

「あの子の朝ごはんを早く作ってあげませんとね」

 

 

 手のかかる相棒のために事務所に手早く戻ろうと階段に足をかけたその時だった。

 

 

「あのー、虚音(うろね)探偵事務所はここでよろしいでしょうか?」

 

「はい、今は結月探偵事務所となってますが元虚音……って、あかりさん!?」

 

「あれ、ゆかり先輩?ですか?」

 

 

 客であろう声を背中からかけられて、営業スマイルたっぷりにハードボイルドに決めようと振り返った先にいたのは、綺麗な長い白髪に星型の髪飾りをつけている姿が相変わらずの、高校時代の後輩である紲星(きずな)あかりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぱくぱく。もぐもぐ。おかわり!」

 

「いや、おかわりはいいんですけど…よく食べますね?」

 

 

 あかりを客用の机に待たせてあの子用に特製フレンチトーストを先に作っていると、分かりやすく腹の虫を鳴らした後輩に馳走することになった。もう三枚目なのだが相変わらずの健啖家で逆に安心した。

 

 

「それで、なんの用で来たんですか?依頼…にしてはおかしいですが」

 

「あれ?そんなことわかるんですか?」

 

「わかりますよ、私も立派な探偵ですからね」

 

 

 興味津々と言った具合に星の様な煌めく瞳を向けてくる後輩に、溜め息を吐きつつ壁にかけておいた帽子を被り直し、ハードボイルドなポーズを取りながら説明する。

 

 

「依頼人と言うのは焦躁を感じさせるものです。何かしらに困ってここを訪れる訳ですから。しかしあかりにはそれがない。さらに言えばその格好。頭部につけた星型の髪飾りからつま先のパンプスまで見るからに上物の服だというのにその上から春先の寒さをしのぐためなのか安物のスカジャンを身に付けているちぐはぐさ」

 

 

 知らない人から見ても「あ、この子お嬢様だ」とすぐに察せられるだろうブランド品である。スカジャンは彼女個人の趣味だということは覚えていた。

 

 

「傍らには旅行鞄一つあることから遠出してきたのは推察できますが、貴方は確か名家のお嬢様でしたよね?それが一人で、護衛を一人もつけないどころか徒歩でこの事務所までやってきた。さらに言えば腹ペコ。ここから推察するに貴方は突発的に家出してきて、何かしらの理由からおやっさん…虚音イフを頼ってここまできた。こんな感じでしょうか」

 

「ふわあ。すごい、大当たりです先輩。でもなんで室内で帽子を被るんですか?」

 

「………それは気にしないでいただけると」

 

 

 パチパチパチと屈託のない笑顔で褒めてくれるのにこのハードボイルドが通じないことにがっくし来る。なかなかに決まった!と思ったのですが…。

 

 

「実は高校卒業後、その…いわゆるニート生活を享受していたのですが…」

 

「大学も行かなかったんですか…いや、私も高卒ですが」

 

「お母様に怒鳴られてしまい、売り言葉に買い言葉で一人で何とかします!と啖呵を切って荷物を纏めて外に出たのはいいものの、ろくな当てもなく」

 

「なるほど。それで、なんでこの事務所に?この町に住んでる同級生の住処を知りたかったとか?」

 

「ああ、ここ、お爺さまの事務所なんですよ。優しいお爺さまなら何かしら一緒に考えてくれるものかと思い至りまして」

 

「え」

 

 

 その言葉にポカン、と呆けてしまい手から帽子がずれて床に落ちる。それを拾い上げながらあかりは笑顔で続けた。

 

 

「はい。虚音イフとは私の母方の祖父なんです」

 

「…………ははは、驚きました。おやっさんがまさかあかりの血縁だったとは」

 

 

 あかりから帽子を受け取って被り直し、なんとか平静を取り繕う。よりにもよってあかりが、おやっさんの、孫。おやっさんに孫がいたなんて聞いたことも無かったんですが!?いや確かに年齢的にいてもおかしくありませんしあのかっこよさならむしろ結婚してない方がおかしいですが……!

 

 

「それで、お爺さまはどこにいるんです?事務所の名前が変わってて、どうしたのかな?と思ったんですが」

 

 

 …真実を、言うべきだろうか。温室で生まれ育ち、外界の厳しさを何も知らないこの世間知らずで無垢な後輩に、受け止めきれるだろうか。…否だ。今は、隠し通すしかない。

 

 

「実はおやっさんから私が事務所を引き継ぎまして。今は私が所長兼探偵をしています。おやっさんは引退して今頃慰安旅行をしているものかと」

 

「そうなんですか。さすが先輩です、お爺さまに認められるなんて!」

 

「ははは、そうでしょうとも。だって私、ゆかりさんですよ?」

 

 

 とりあえず虚勢を張ることで悟られないように試みる。高校時代から変わらない尊敬の眼差しが眩しすぎる。私は何時から汚い大人になったのだろう。と、とりあえずコーヒーを入れて落ち着こう。

 

 

「今朝仕入れたばかりの豆をもらったんですが、あかりも飲みますか―――」

 

「遅い!ゆかりさん、何時になったら朝ごはん持ってきてくれるんですか!いい匂いだけさせて拷問ですか!?」

 

「え?」

 

 

 あちゃーとたまらず頭を抱える。一見帽子掛けに見える壁が扉の様にいきなり開いて包丁型の髪飾りを付けた茶髪の幼い少女が顔を出したのだ。しかもよりにもよって下着姿で。目を白黒させるあかり、迂闊だったことに気付いて固まる我が相棒。するとみるみるうちにあかりの視線が軽蔑のものに変わって行って。

 

 

「えっと……ゆかり先輩、もしかしてそう言う趣味だったんですか…?わ、私のこともそんな目で…?」

 

「あ、じゃあ私はこれで…」

 

「違いますよ!?それと貴方も場をややこしくしておいて逃げるな!」

 

 

 逃げようとしていた相棒を摘み上げ、弁明に時間を擁する羽目になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、つまり彼女はお爺さまが保護した記憶喪失の子供で、今はゆかりさんが面倒を見ていると?」

 

「はい、そうなります。下着姿なのはずぼらな餓鬼んちょだからです。いつも着替える様に言ってるんですけどね。ほら、挨拶」

 

「どうも、きりたんです」

 

 

 子供と言われて癪に障ったのかつーんとしながらぶっきらぼうに答えるきりたん。そんなところが子供っぽいんですよ…。

 

 

「きりたん…?」

 

「この名前しか覚えてなかったんですよ。というわけではい、今日の朝ごはんです」

 

「またフレンチトーストですか。変わり映えしないですね。はー、つっかえ」

 

「作ってやったのになんて言い草ですか。納豆とか出そうにも面倒……あっ」

 

「納豆?なんですかそれは?興味深いですね!」

 

 

 文句を垂れる生意気な相棒にいらついて、言ってからやらかしたことに気付くがもう遅い。きりたんは目を輝かせてフレンチトーストを口に咥えたまま隠し扉からガレージに戻って行ってしまった。いつもの「検索」だろう。……これは最低一時間は使い物にならないな。

 

 

「きりたんさん、いきなりどうしたんですか?」

 

「病気みたいなものですよ、厄介なね。ところでどうします?おやっさんは当分戻りませんけど」

 

 

 きりたんのことをこれ以上詮索されても面倒なので、とりあえず話題を変える。するとあかりは腕を組んで悩みだした。それもそうだろう、勢いで家出して、助言を求めて尋ねた祖父は不在。それまで感じさせなかった焦躁感を出してあからさまに狼狽え出したのだからノープランなのだろう。さてどうしたものか。

 

 

 すると、コンコンとノックの音が聞こえてきた。客だと言うことを理解したのか客用の席から離れるあかりを横目に扉を開けると、そこには白のワンピースを身に着けたマキさんに匹敵するであろう物をお持ちの美女がいた。

 

 

「あのー、ここが結月探偵事務所で合ってるでしょうか…?」

 

 

 不安に駆られた目をおずおずと向けてくる依頼人に、私はネクタイを締め直して安心させるように笑顔を向けて頷く。

 

 

「はい。私がハードボイルド探偵、結月ゆかりです。一体どのようなご依頼でしょうか?」




自称ハードボイルドなのに決められないゆかりさんと知識欲旺盛なきりたんの凸凹コンビでお送りいたします。

水都は公式が風都を考える前の没案から採用。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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