ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。通算100話ですってよ奥さん。記念すべき回なのだけどストーリー的にはまだ93話なのだ。評価バーも色がつきましてありがとうございます。今回は西友の暗躍。楽しんでいただけると幸いです。


第九十三話:怪盗I参上/堕天した歌姫

「リリィさんたちには伝えた、ミリアルや西友さんにも伝えないと……」

 

 

 敵のメモリの判明、そしてその正体を暴く方法。それを仲間達に伝えようと奔走するあかり。今、インク・ドーパントの正体を暴くべく準備をしているゆかりたちに代わって所長として責務を全うしようと仲間たちに伝えているところだった。

 

 

「あ、いた。西友さ…っ」

 

 

 人気(ひとけ)のない客室区域の廊下。西友の姿を見かけて駆け寄ろうとするあかりだったが、様子がおかしいことに気付いて物陰に隠れて様子を窺う。以前、ブロッサに騙された経験から、嫌な予感がしたのだ。

 

 

「ここならいいだろう」

 

「キクについて話というのは…?」

 

 

 件の歌姫、すなわちIAを連れてパーティー会場から離れる西友。IAは仇敵の腹心である男に訝しみながらも、なんとしても取り戻したいキクのことだと聞かされては無視することもできなかった。

 

 

「俺にはお前がわからない。なぜリリィ様ではなく、あの女に執着するのかがまるで理解できない。それは、何に変えてでも欲しいものなのか?」

 

「何を言うかと思えば……そんなの当たり前じゃない。私は苅奈さんの……キクのおかげで、今の私がある。あの人がいないと私は歌姫「IA」にはなれない。例えリリィ金堂の所有物だとしても……私は彼女が欲しい」

 

「なるほどな?歌姫。単刀直入に言うぞ。俺に協力すれば、キクをお前だけのものにできる。ただし、悪魔に魂を売ればの話だが」

 

 

 そう言って唇でDと描かれたガイアメモリを取り出す西友に、IAはあからさまに警戒する。悪魔の小箱を水都で知らない人間なんてそうそういない。IAもまた、その恐ろしさをよく知っている人間だ。

 

 

「何のつもり…?そんなもの、使うわけが…!」

 

「まあ聞け。これは歌声で人間を意のままに操ることができるメモリだ……お前と相性がいいとミュージアムの首領お墨付きだ。これがあれば、キクを永遠にお前のものにできる…!リリィ様がお前たちを黄金にして永遠に己の物にしようとしたようにな……!」

 

「……キクを、私の意のままに…?」

 

 

 あまりにも甘美な誘惑に、最初は拒絶していたIAも思わず手を伸ばす。ガイアメモリの超常の力をその身で受けたからこそ、その力の強大さを知っている。故に、ただの人間の精神性では抗えない。しかし伸ばされた手から遠ざけるようにガイアメモリを掲げる西友。IAはまるで餌をお預けされた犬の様な表情を浮かべる。相性のいいメモリとその持ち主は惹かれ合う。抗えない衝動が、溢れ出していた。

 

 

「これを渡す条件はただ一つ。今の立場も人間関係も捨てて、俺とリリィ様が再建するエル・ドラードに幹部として入れ……!」

 

「私が…!?」

 

「お前の歌声は人々を魅了する。メモリの力が合わされば猶更だ。気に喰わないがキクのマネジメントも合わされば100人力だ。奴がリリィ様に仕えるのは気に喰わないがお前の下でなら構わない。エル・ドラードは裏社会から表社会に進出する……そうなればリリィ様のカリスマでエル・ドラードの天下だ……!」

 

 

 己が野心を興奮した様子で語る西友に、IAは押されながらもガイアメモリから視線を離せない。そのことを理解しながら、西友は説得するべく言葉を続ける。

 

 

「俺はキクをリリィ様から離したい、お前はキクが欲しい。お前がキクを手にいれれば自ずとリリィ様のもとから離れる……これは両方得しかない美味しい話だと思うがいかがだろう?」

 

「…もし、私が断れば?」

 

「……残念ながら死んでもらうことになるな。もっとも?このメモリに魅了されたお前が断るとは思えないが」

 

「……緒音、こんなお姉ちゃんでごめんね……」

 

 

 刑事である妹の名を呼びながら、目を瞑り深呼吸して、頷いたIAはガイアメモリに手を伸ばす。

 

 

「…いいわ。エル・ドラードの幹部にでもなんでもなるし、今の立場も喜んで捨てる。私に、メモリを……キクをちょうだい!」

 

「まったく理解できないが、その言葉を待っていた。キクはくれてやる。歓迎しよう、ようこそエル・ドラードへ」

 

 

 不敵に笑い、ガイアメモリを生体コネクタ施術装置に装填し、IAの喉元に刻印する西友。そしてメモリを引き抜き、投げ渡されたそれを受け取ったIAは、刻印された生体コネクタを撫でながら恍惚とした表情を浮かべてガイアメモリに頬擦りする。

 

 

「っ、そんな……」

 

 

 そしてその一部始終を盗み見ていたあかりは戦慄して震える手でゆかりたちに連絡しようとスマホを取り出すも、取りこぼしてしまいカツーンと乾いた音が鳴る。それに振り向き、あかりの姿を見つける西友とIA。

 

 

「所長さん…」

 

「紲星あかりか。密談を盗み見るとは手癖の悪い女だな」

 

「なんで、どうして……西友さん!あなたは改心したと、思ってたのに…」

 

 

 震えながらも、涙ながらに訴えるあかり。西友は呆れたとでも言いたげに肩を竦めた。

 

 

「何か勘違いしているな?俺はどこまでいってもリリィ様の味方でしかない。改心したのは生憎とあの女だけだ。リリィ様も野望を燻ぶらせている……そのはずだ。リリィ様に目をかけられていたのにそんなことも理解していなかったのか?」

 

「そんな、リリィさんは本当に改心して……あなたこそ、リリィさんのことをなにもわかってないじゃないですか!」

 

 

 もはややけくそで言い返したあかりに、西友は一瞬顔をしかめさせて敵意に満ちた目で睨みつける。

 

 

「戯言を……あの女よりはマシだが……所詮は本物の人間じゃない貴様も、リリィ様には相応しくない。イア、ちょうどいい。お前の能力を試せ」

 

「わかったわ……!」

 

《ディーバ!》

 

 

 西友に言われるままにガイアメモリを起動し、喉元の生体コネクタに突き刺すIA。その姿が喉元から飛び出した五線譜に包まれ、胸元に帯のような触手が伸びている女性を象った彫像の様な姿をしているディーバ・ドーパントに変貌。その口が開かれた。

 

 

「LA~♪」

 

「あ……」

 

 

 その歌声が耳に入った途端、電源の切れたロボットの様に目を瞑り項垂れるあかり。目を開けると、虚ろな目となったあかりはディーバ・ドーパントに付き従う。

 

 

「さすがだ、歌姫」

 

「ええ、なんでこんなに心地いいものを拒んでいたのかしら……すごくいい気分。キクもこの力で…!」

 

「期待している。行くぞ、まずは厄介な客を助けないとな」

 

 

 ディーバ・ドーパントとあかりを引き連れて、西友は歩き出した。




ディーバ・ドーパントに変貌したIA。風都探偵のドーパントです。ミリアルもあかりも大ピンチで実は結構やばい紲星探偵事務所。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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