「くっ……いったい何が…?放してください、皆さん!」
「ダメです、ゆかりさん!トランス状態になってます!おそらく命令した本人の言うことしか聞きません!」
虚ろな目をして雪崩かかってきた加賀さん、赤城さん、初見さん、鳴子さん、藤城さん、釘崎さんに四肢を拘束される私ときりたん。じたばたと暴れるがビクともしない。まずい、目の前にはインク・ドーパントに変貌したミラ・マリンがいるのに!
「終わりだ、仮面ライダー…!」
そして私の頭部に向けてインク・ドーパントの万年筆の様な右手を突きつけられ、そのまま右腕に左手を押し付けて肉体を構成しているインクを流し込んで、右腕を盛り上がった筋肉の様に膨張させていくインク・ドーパント。これが狙撃のからくりか。って、考えてる場合じゃないか!
「鉄をも撃ち抜く弾丸だ、生身で受けたらひとたまりもあるまい。圧縮、発射!」
「フッ!」
「なに!?」
すると透明に擬態していた細長い枯れ枝の様なドーパントがすぐそばに現れ、細長い拳を一閃。右ストレートでインク・ドーパントを殴り飛ばしたドーパントを、私はポカーンと見上げる。え、なんで。私を助け……?
「…それはディーバ・ドーパントの歌声の影響。気絶すれば効果は切れる」
そう言って加賀さんの頭部を軽く殴りつけ、気絶させる枯れ枝のドーパント。それで右腕が解放されたので、申し訳ないと思いつつも腹部を殴りつけて気絶させていく。その間に枯れ枝のドーパントはきりたんを救出してくれていた。…私よりも丁重にきりたんを扱う様に、疑惑は確信に当たる。
「あなたは、やっぱり……」
「っ!?」
瞬間、巨大な真っ黒な左手に薙ぎ払われた枯れ枝のドーパントが壁に叩きつけられ、メモリが排出され変身が強制的に解除される。振り向けば、インク・ドーパントが尻餅をついたまま左腕を肥大化させている光景があった。
「大きくなっちゃった、なんてね。油断大敵だ怪盗I。私のマジック。お気に召したかな?」
「あなたが、怪盗Iだったんですか……月読アイ」
きりたんが呆然と呟く。枯れ枝のドーパントから戻ったのは、高身長だったさっきまでと打って変わり小柄な子供の様な体躯の少女。私達のドライバーを開発した張本人、月読アイだった。月読アイはきりたんからそっぽを向く。……杏璃万結にブリュンヒルデのガイアメモリを渡していたことからミュージアム製のメモリを複数持ち合わせているんだろうなとは思っていたが、やはり自らで使っていたのか。月読アイの指示を受けた誰かか本人、という推理だったがあの写真で確信に変わった。
「…ミリアルに化けていたのもあなたですね」
「そうだよ。さすが名探偵だね」
私の問いかけに頷く月読アイ。…あれは、東北外道、東北至子、東北純子、東北記理子、東北蛇門…そしておそらく月読アイになる前の彼女、東北藍……以前の東北家の家族全員が映った写真だった。どうしても手放せなかったものなのだろう。
「なんで、怪盗なんか……」
「どうしても、手に入れなければいけないものがあった。正攻法で手に入れるのは無理だったから、盗むことにした。怪盗だと予告すれば初峰九王の知り合いの探偵であるあなたたちも来る、そう思った。手に入れたものを仮面ライダーのマキシマムドライブで破壊してもらうつもりだったけど、こんなことになって、迂闊に接触もできなくて……」
「ミリアルとなり替わって機会をうかがっていた、と」
「…それは、「真実の愛」と呼ばれていた……」
「そうだろうとも。あれは初峰弥美が大金を得るために存在を隠していた、東北至子が探していたものだ。もっとも息子の九王は何も知らずにオークションにかけて、しまいには東北家も招待してしまったがね。我等財団Ⅹの財力でオークションで手に入れ、東北至子に明け渡す。それが我らの取引だったんだ。ついでに厄介な情報を得ていた伊藤廻も殺させてもらった」
そう言いながら立ち上がるインク・ドーパントはコキコキと液体の様な躯体を動かして、万年筆の様な右腕を構え左手を押し付ける。見る見るうちに集束されていくインクに、私はダブルドライバーを腰の取り付けジョーカーメモリを、きりたんはサイクロンメモリを構える。その横で、月読アイも枯れ枝の様にPと描かれた己のメモリを構えた。
「…これまでごめんなさい。一緒に戦わせて、結月ゆかり。…きりたん」
「さっきも、この間のCOEFONTの事件でもあなたに助けられました。色々思うところはありますが、断る理由はありません!」
「しょうがないですね!母さ、月読アイ!いきますよ!」
「…うん、うん!」
顔を赤らめながら頷いたきりたんに嬉しそうに顔を綻ばせた月読アイと共に三人で構え、インク・ドーパントを見据える。行きますよ!
《ジョーカー!》
《サイクロン!》
《ファズマトデア!》
ファズマトデア……擬態を得意とする昆虫ナナフシの学名か。わかるはずがなかったですね。
「「「変身!」」」
《サイクロン!ジョーカー!》
きりたんは倒れて私達はダブル サイクロンジョーカーに、月読アイは細長い枯れ枝の様なファズマトデア・ドーパントに変身。ファズマトデア・ドーパントは私たちの肩にポンと触れてダブル サイクロンジョーカーと瓜二つの姿に変身、私達三人は指を拳銃の様に突きつける。
「『「さあ、お前の罪を数えろ!」』」
「罪を数えていたらこんな仕事やってられないんでね!」
瞬間、ドパン!という爆音とともに音速で放出される漆黒のレーザーを紙一重で横に避け、両サイドから突撃する私達とダブルに扮したファズマトデア・ドーパント。爆風を受けてサイクロンボディの能力でスピードを上げるが、ファズマトデア・ドーパントも同じくスピードが上がっている。触れたものに擬態、その力を引き出す能力か。
「どっちがどっちだ…!?」
近づきながら幾度も交差し、どっちがどっちかわからないようにして回し蹴りを右側から叩き込む。同時に左側からファズマトデア・ドーパントが左拳を炸裂。両方からの衝撃に耐えきれなかったのか吹き飛ばされるインク・ドーパントに肉薄する。
「このお!」
「無駄だ!」
ファズマトデア・ドーパントに向けてレーザーを放つインク・ドーパントだったがしかし、ファズマトデア・ドーパントは観葉植物に触れると元の姿に戻り、直撃した瞬間複数の木の葉に分裂してすり抜け、さらに鋼鉄の手すりに触れると金属の光沢を帯びた姿に変化。追撃の刺突もガキン、と弾く。ダブルみたいに特性を切り替えることができるのか、便利なものだ。
「うごごっ……」
「今だダブル!ヒートを使うんだ!」
『わかりました!お熱くいきますよ!』
《ヒート!》《ヒート!ジョーカー!》
鋼鉄を突いて怯んでいたインク・ドーパントの明らかに硬質な逆さにしたインク瓶の様な頭部を炎を纏った拳で何度も何度も殴りつける。見れば明らかにインクが乾き、動きがぎこちなくなっていく。そこにファズマトデア・ドーパントの振りぬいた長い右足が腹部に突き刺さり、壁まで蹴り飛ばされるインク・ドーパント。リーチが長い手足はそのまま武器になるのか。
「ぐおおおっ!?そんな馬鹿なあ……手も足も出ないはずが……!」
「どんなドーパントにも弱点は存在する。それゆえ正体を秘匿するのは必須だ。お前は無敵だと思い込んでそれを怠った。それが敗因だ」
「これで決まりです!」
《ヒート!マキシマムドライブ!》
ヒートメモリをマキシマムスロットに装填。右半身が熱き炎に包まれ、右拳を握り推進力を利用して高速で突撃する。インク・ドーパントは負けじと漆黒のレーザーを放出するが、インクでしかないそれは右拳の炎で固まって砕けていき、遮ることなく私達の拳はインク・ドーパントの腹部をぶち抜いた。
「『ジョーカーバックドラフト!』」
「ぐあああああああっ!?」
背後まで炎が貫き、打ちぬかれたインク・ドーパントは膝をついて倒れ伏し、変身が解けてメモリが排出され砕け散った。気絶したミラ・マリンを手すりと繋げて拘束し、一息ついたところで思い出す。
「よし……そうだ、ディーバとかいうドーパントがいるんですよね!?どういうことですか!?」
「ここに来る間に、リリィが戦っているところを見た。加勢に行こう。この船の人間は、ディーバの歌声に支配されてドーパントにされているから安全なところはどこにもない」
『どんな地獄ですかねそれ!?』
ファズマトデア・ドーパントの先導で急ぐ私達は、忘れていた。財団Ⅹはもう一人いたことを。
「…ようやく見つけたわ。「真実の愛」……いや、地球の記憶の結晶…!詰めが甘いわよ仮面ライダー、面白くなるから私としては好都合だけど」
というわけで怪盗Iは月読アイでした。そのまんま過ぎるけど逆にばれないと思ったと本人は言い訳しており……。ファズマトデアは「ナナフシ」の記憶でした。英語だとかっこ悪かったので学名にしたけどこれわかるわけねえ。
原作でも見たかったよねシュラウドとの共闘。ということで再び呉越同舟、アイとの共闘でした。しかしもう一人の財団Ⅹが動いていて…?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。