怪盗I編最終回です。エピローグはあるけど主軸は今回でおしまい。楽しんでいただけると幸いです。
ちょうどその頃、月読アイはファズマトデア・ドーパントとしてドーパントの群れを打ちのめしながら、別の人間に変装して入手した自室を目指して急いでいた。
「とにかく、ドーパントを倒さないと外道たちにも「真実の愛」の場所がばれてしまう…!」
「ちゅわ?なにがバレてしまうのかしら」
瞬間、ドーパントの群れを貫きながら伸びてきた鋭い触手らしきものがファズマトデア・ドーパントの細い胴体を背中から貫き、変身が解けて吐血する月読アイ。そのままドーパントたちを廊下の上から持ち上げながら、その触手……否、変形した尻尾の主であるナインテイルフォックス・ドーパントが歩み寄ってくる。
「お久しぶりですわね。お母様」
「イタコ……いや、その猿真似を今すぐやめろ。
そう月読アイが吐き捨てると、わかりやすくにこやかな雰囲気から剣吞な雰囲気となり舌打ちするナインテイルフォックス・ドーパント。
「……イタコの意思が表層に出ているとは少しも思わないんだな」
「霊媒師の家系を舐めるな……!お前の霊魂が、歴代最強の霊媒師であるイタコですら御せない執念を有する最強の怨霊なのはわかる…!」
「怨霊とは失礼だな。仮にも俺はお前の夫だぞ?生きていることを喜んでくれ」
「娘の身体を乗っ取って意地汚く生き延びているやつが何を言う!」
《ファズマトデア!》
胸に手を当ててほざくナインテイルフォックス・ドーパントに激高しながらガイアメモリを鳴らし、右手首の生体コネクタに突き刺してファズマトデア・ドーパントに変身。鉄の壁に触れて鋼鉄化し、拳を振りぬく。
「俺が生きるためだ。そのためならイタコも本望だろうよ」
「ぐっ……!?」
しかし、届かない。ナインテイルフォックス・ドーパントの腰から伸びた九つの尻尾のうち四本がファズマトデア・ドーパントの四肢を縛り上げ、拘束し持ち上げるとギリギリと四方に引っ張り締め上げる。掌に何も触れさせず、鋼鉄の四肢が砕ける剛力に苦悶の声を上げるファズマトデア・ドーパントの顎に手をやりながらナインテイルフォックス・ドーパントはほくそ笑む。
「お前なんかを好きになった昔の私を殴りたい……!」
「せっかく永遠の若さをくれてやったというのに、恩を仇で返すとは結構じゃないか」
「頼みもしてないのに私の身体で実験して強制的に子供にしたんだろうが!記理子まで殺して、至子を乗っ取って!家族をめちゃくちゃにしておいて…!」
「その家族を見捨てたのはお前だろう、アイ」
「っ……」
反論されてぐうの音も出なくなるファズマトデア・ドーパントに満足げに頷いたナインテイルフォックス・ドーパントは尻尾の一本を伸ばしてファズマトデア・ドーパントの首に巻き付け締め上げる。
「ぐっ、ぎっ……」
「御託はいい。さあ、俺の元から奪い去った実験体……有機情報制御器官試作体ガイアプログレッサーの居場所を吐いてもらおうか」
「あぐっ……あの子には
「そうか。なら仕方ない、ですわね?」
瞬間、拘束に使っていない残りの四本の尻尾が一斉にファズマトデア・ドーパントを貫き、爆散。メモリブレイクされたメモリが転がり、ぐったりとして気絶した月読アイを尻尾の一本で飲み込んだナインテイルフォックス・ドーパントは変身を解除して振り返る。
「ガイアプログレッサーの居場所は、屋敷に戻ってからゆっくりと拷問して、吐かせてあげますわ。さて、時間は稼いであげましたわよ」
「ええ、お手数おかけしました。ここに」
そこにいたのは、植物で形作られた人型。アイビー・ドーパントに酷似しているが目がただの空洞であり別物だとわかる、その手に握られていたのは「真実の愛」だった。
「まさかそのメモリとそこまで相性が良いとは思いませんでした。
「ナインテイルフォックスには負けるわ。ミラ・マリンも回収した。例の彼にも分身を向かわせた。取引先としての仕事はこなしたつもりよ」
「ええ、ガイアインパクトを成し遂げた暁には期待していてくださいまし」
東北至子は邪悪に嗤う。野望の達成まで、あと少し。
「はい、そこまでよ。目的の物は手に入れた。IAも回収した、あなたも引き時よ西友蒼司」
リリィの変身したエルドラゴ ゴールデンサンダーと西友の変身したアトランティス・ドーパントが激突しようとしたその時。現れて茨の蔦で遮った怪人。アイビー・ドーパントだった。
「アイビー・ドーパント……グラン・S・ベル!」
「こんにちは、ダブル。今は仕事の最中だから大人しくしてて?」
「そうはいきません…!」
《ヒート!トリガー!》
ヒートトリガーに変身して火球を放つ。業火を纏った弾丸はアイビー・ドーパントを撃ち抜き炎上し燃え尽きてしまう。そんな、一撃で…!?
「こ、殺してしまった…?」
「危ないわね」
しかし、床から突き出してきた蔦が私達の背後で人型を形作り、腕を振るい茨の蔦を伸ばして薙ぎ払ってくる。咄嗟にトリガーマグナムを盾にするも吹き飛ばされる。見れば、リリィの傍にもアイビー・ドーパントが現れて蔦を剣状にしてイナズマサカリとぶつけ合っていた。いったいどういう…!?
『ゆかりさん、恐らく奴は分身!本体は別のところにいます!』
「ご明察。なにしているの、西友蒼司。私が時間を稼いでいる間に早く撤退しなさい」
「……断る」
アトランティス・ドーパントに呼びかけるアイビー・ドーパントだったが、当の本人は短く答えるとトライデントを振るい、床に引っ掛けるようにして斬撃を繰り出すと触れた床が水と化して刃となり、アイビー・ドーパント二体を真っ二つ。バラバラに崩れ落ち、新たに床から生えるアイビー・ドーパント。
「な、なにを…!?」
「俺が組んだのは……東北至子だ。彼女の意向で手は貸したが……エル・ドラードの商売敵である、貴様ら財団Xとでは無い……消え失せろ」
そして、アトランティス・ドーパントの頭部のバイザーに目に見えて膨大なエネルギーが溜まっていく。あれは、ヤバい!
「リリィ!防御を!」
《ヒート!メタル!》《メタル!マキシマムドライブ!》
「くそっ…あかり!」
《サンダー!マキシマムドライブ!》
倒れているあかりたちを守るために私たちとリリィは間に立ち、メモリをメタルシャフトとイナズマサカリに装填。息を合わせて振りかぶり、炎と雷が瞬く。同時に、アイビー・ドーパントも蔦を幾重にも重ねて盾を作り上げていた。
「『ライダーツインマキシマム!』」
「くらえ……!」
瞬間、アトランティス・ドーパントのバイザーから青い破壊光線が放たれ、廊下を滅茶苦茶に粉砕していき、蔦の壁を容易く薙ぎ払ってからライダーツインマキシマムと激突。一瞬拮抗するが、あまりの威力に私達は吹き飛ばされ、破壊光線は徐々に小さくなっていき、そして消えた。
「ぐうっ……」
「…西友、てめえ……あかりを狙ったな…!」
「……本来、人間ではなかった存在。リリィ様の寵愛を受ける資格など無い」
私とリリィは変身を強制解除されて転がり、頭から血を流したリリィの問いかけに冷たい言葉を投げかけるアトランティス・ドーパント。見れば、あかりの倒れていた場所は黒焦げで何もなくて。まさか、まさか……!?
「ふう、危なかった……」
するとモクモクと煙に包まれていた奥の方から声が聞こえて、振り向く。そこにはミリアルがあかりを抱えてしゃがんでいた。
「ゆかりさん!あかりは無事です!ギリギリ間に合いました!」
「ミリアル!……あかり、生きて……」
思わず腰が抜けて崩れ落ちる。よかった、本当に良かった……。するとアトランティス・ドーパントはトライデントを向けようとしたが、考え直したのかトライデントを消し去ってリリィに振り返る。
「……俺は、貴女に力を示しました。この力があれば、エル・ドラードは今度こそ、絶対に天下を取れる!……元の貴女に戻り、俺の元に必ず来てくれると……リリィ様、信じてますよ?」
「待て!西友!」
そう言ってアトランティス・ドーパントは透明になって姿を消して。リリィの伸ばした手が空ぶる。
「面白いことになってきたけど割に合わないわね…」
辛うじて残っていた蔦も引っ込んでアイビー・ドーパントの気配も消え、私は茫然と立ち上がる。ボロボロの船内、傷だらけで倒れた人々。ドーパントになった西友と、IAさん。連絡がない月読アイ。あかりこそミリアルのおかげで無事だったが……完全敗北だ。
アイVS至子、実は強大だったアイビー・ドーパントの力、アトランティス脅威の力、でした。ゲストキャラ含めた乗客がどうなったのかは次回にて。まだ謎もあるしね。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。