ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。祝百話!でもなんとも後味の悪い話に……。怪盗I編エピローグ。楽しんでいただけると幸いです。


第百話:怪盗I参上・裏/鳴花散乱

 ここで振り返ってみよう。まだ解決していない謎がある。最初も最初で、事件が立て続けに起こったために目立っていなかった、なんならゆかりたちにも把握されていなかった一つの謎。

 

 

―――――「ぎらついた色の、いい欲望ッスね。少しだけいただくッス」

 

―――――「こんな新米に撮られてちゃ、世話無いッスよ仮面ライダー。今回は消しといてあげるから事件は任せるッスよ。ウチでも見破れない謎を解くのは、探偵の仕事ッス」

 

 

 そう、ダブルとアイビー・ドーパントの対決を目撃した初見久遠からなにかを奪い取り記憶を失わせ、データを丸ごと消し去った人物だ。

 

 

「……いやはや参ったッス。魂塗料集めにとんだ惨事に巻き込まれたッスね」

 

 

 その人物はインペリアルスター号の一室で、ドーパントの襲撃から逃れながらジュラルミンケースを整理していた。中には色とりどりの液体が入った小瓶が十数本大事そうに納まっている。

 

 

 インク・ドーパントの正体を見破った瞬間に立ち会った変人たち七名。実はあの場に集まったメンバーの中で、ディーバの歌声に操られていなかった人物が一人だけいる。犯人であるミラ・マリンはもとより、初見久遠(はやみ くおん)加賀煉(かが れん)藤城恩(ふじしろ めぐみ)釘崎檀(くぎさき まゆみ)鳴子芽衣(なるこ めい)赤城苅南(あかぎ かるな)の六名がディーバに操られダブルに襲い掛かった。ここで違和感を抱かないだろうか。そう、一人足りない。

 

 インペリアルスター号への招待状を渡しておきながら、インペリアルスター号で再会したゆかりのことを忘れていた「違和感」を有していた人物。

 

 

 その名を、ラグナ・ポンド。初峰九王のメイドである。しかしその顔も、まるで塗りたくった絵の具を拭うかの様に新たな顔がその下から現れる。それは以前、水都を襲った未曽有の大災害から市民を守った外の戦士の一人、カラーズが使っていた魂塗料と呼ばれるものと同じもの。ラグナ・ポンドという実在する人間に成りすましてその人物は潜入していた。

 

 

「……潮時ッスねえ。ラグナ・ポンドからただのオレットに戻るとするッスか」

 

 

 ミュージアムでも財団Xでもないその人物は、ドーパントの変身が解かれて混乱している人々の間を堂々とすり抜け、人ごみに消えていった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆかりたちがインペリアル・スター号に居合わせた敵対勢力は財団Xであるグラン・S・ベルとミラ・マリン。そして、ミュージアムからは東北至子一名。そう、幹部である純子、蛇門、星香がいないのである。珍しく東北至子が、財団Xの協力を受けてまで「真実の愛」を手に入れようとしたのは訳がある。ミュージアムが取り組んでいた計画「ガイアインパクト」を最終段階に向かえるべく、必要なものを手分けして同時に入手を狙ったのだ。

 

 ガイアインパクトの楔となる地球の記憶の結晶で造られた彫刻「真実の愛」。そして、ガイアインパクトに不可欠な有機情報制御器官試作体ガイアプログレッサーである「実験体」鳴花梅(なるはな うめ)を見つけること。東北至子は前者を財団Xと己で、もう片方を水都に残った幹部率いるミュージアム総力で行うことにしたのだ。月読アイを捕えられたのは、降って湧いたような幸運、棚から牡丹餅にすぎなかった。

 

 

「…ちゅわ!?鳴花梅を見つけたとは本当ですの!?」

 

 

 己の能力である尻尾を分離して作り上げたクルーザーに財団Xの二人と西友蒼司に有阿衣亞と、洗脳され静かに黙って突っ立っているキク。そしてわざわざ尻尾を一本使って拘束しているアイと共に乗って水都を目指しながら連絡を取っていた至子は、星香からの電話に思わず声を張り上げる。10年間探し続けた実験体がついに見つかったのだ。興奮しないわけがなかった。

 

 

「それは本当に鳴花梅なんですわね!?」

 

《「はい。至子様の立てた「人でなくなったために年を取ってないのではないか」という仮説をもとに、私の部下たちを使って人海戦術を行ったところ、紲星探偵事務所の真下の「鳴花(めいか)ーズ」というBARで堂々にも看板娘をしていたところを発見し捕縛しました」

 

「……はい?」

 

 

 自分の聴き間違いかと思わず目を細めて電話から耳を離す至子。ジト目でアイを「マジか」とでも言いたげな表情で見つめた後、電話に耳を戻す。

 

 

《「本人は「私は鳴花緋女(めいか ヒメ)だー!」と叫んで暴れてますが、髪色以外は写真と瓜二つです。同一人物で間違いないかと」》

 

「……灯台下暗しというやつですわね。まさか拠点を同じところにしていたとは……そこは盲点でしたわ。にしても偽名ならもっと他にあるでしょうに」

 

 

 送られてきたヒメの写真を見つめて本人確認した後、気絶しているアイを睨みつける至子。してやられたと感心する心と、そんな簡単なことに気付かなかった己への怒りでどうにかなってしまいそうだったが持ち前の外面の良さを発揮して深呼吸、通話に戻る。

 

 

「こちらにダブルとエルドラゴが来ていましたわ。東北記理子の回収をしてもよかったですが、財団Xがしくじりまして。撤退せざるを得ませんでした」

 

「しくじったのはミラだけよ。面白くないこと言わないでくれる?」

 

 

 あんまりな物言いに不服です、と不機嫌になるグランに「相方のミスは貴方のミスですわ」と取り付く島もない至子は続ける。

 

 

「東北記理子は今度、あなたに回収してもらうことにしますわ。よろしいですわね?星香さん」

 

《「了解しました。至子様」》

 

「ところで純子と蛇門はどうしてますの?万が一純子に何かあったらただじゃすみませんわよ?」

 

 

 にこやかな表情から一転、表情に影が差し悍ましいプレッシャーを放つ至子に怯む西友と衣亜。自分たちが組んだ者の恐ろしさを再確認する。衣亜は「選択間違えたかな……」とさっそく後悔していた。

 

 

《「お二方なら、アクセルの相手をしております。鳴花梅を回収する直前現れて襲ってきたもので迎撃を。もう決着がつくかと」》

 

「ほう。それはそれは。目障りな刑事に思い知っていただきたいですわね。我々ミュージアムに逆らえばどうなるか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 至子がほくそ笑んでいるその頃、紲星探偵事務所の前では激戦が行われていた。アクセルブースターに変身し高速で空を駆るついなに対し、前衛のエクスタシー・ドーパント、後衛のアルテミス・ドーパントという組み合わせで対抗するミュージアムの幹部二人。何度か共闘したことがあるが、それはそれこれはこれ。もともと敵に対して容赦のないついなは、ゆかりたちのいない分まで全力で、ヒメを取り返さんと奮闘していた。

 

 

「行きつけのBARの看板娘なんや!返してもらうで!」

 

《ジェット!》

 

「こちらもそういうわけにはいきません。蛇門」

 

「はいなのだ!姉様!」

 

 

 エンジンブレードのトリガーを引いて振るうことでアルテミス・ドーパントに向けて放たれた光弾を、エクスタシー・ドーパントが筋骨隆々な体を盾にして受け止める。そこに、アルテミス・ドーパントの振るった弓から追尾する光の矢がエクスタシー・ドーパントの陰から放たれて次々と炸裂。落下するアクセルの首根っこを掴み、落ちてきた勢いにさらに勢いを加えて地面に叩きつけるエクスタシー・ドーパント。

 

 

「があっ……」

 

「残念だけど、あなたでは私達に勝てないわ」

 

「……そうとはかぎらんで」

 

《エンジン!マキシマムドライブ!》

 

 

 エンジンブレードにエンジンメモリを装填し、引っ張られるようにして空に舞い上がるアクセル。旋回して加速し、勢い付けたエンジンブレードを渾身の力で叩き込む。

 

 

「ブーストスラッシャーや!」

 

「蛇門」

 

「お前根性あるのだ!楽しいのだ!」

 

 

 しかしそれは、右腕を構えてパンプアップしたエクスタシー・ドーパントの拳に、あっさりと弾き飛ばされてしまい、地面に叩きつけられて変身が強制解除され転がるついな。

 

 

「そんな、阿呆な……」

 

「エクスタシーは歓喜の記憶。戦闘狂のこの子が喜べば喜ぶほど、強化されるの。命までは取らないわ。これに懲りたら、私達のことは見て見ぬふりをすることね」

 

「いい勝負だったのだ!バイバイなのだ!」

 

 

 そう言い残して去っていくアルテミス・ドーパントとエクスタシー・ドーパントに、力なく倒れ伏すついなに駆け寄る小さな人影。

 

 

 

 

 終わりの時は近い。




もう一人の犯人はラグナ・ポンドことオレット。以前登場したカラーズからのゲストキャラです。これにもちゃんと意味があるのだけどおいおい。

捕まったヒメ。敗北するアクセル。エクスタシーも結構ぶっ壊れメモリでした。幹部は伊達じゃない。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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