ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。お久しぶりです。今回からは新章に入ります。楽しんでいただけると幸いです。


第百一話:Gが手招く/小さな依頼人

「本当に申し訳ありませんでした、九王さん。「真実の愛」を奪われたばかりかあんなことに……」

 

 

 あの事件から数日後。どこか沈んだ空気の紲星探偵事務所で、私は依頼人の初峰九王に謝罪の電話を入れていた。「真実の愛」を守り抜くという依頼を達成できなかったばかりか、インペリアルスター号の乗客にも被害が出てしまった。ドーパントになってた間の記憶もなく、ミリアルの精神干渉によるカウンセリングでドーパント化の後遺症こそなんとかなったが、あかりも含めて軽い昏睡状態になってしまっていた。

 

 

《「いや、インペリアルスター号の乗客や乗員たちを無傷で救ってもらって感謝する。こちらこそ、不注意で東北家を招き入れた結果こんなことになって申し訳ない。今度、また詫びをさせてほしい」》

 

「いえ、いえ!そんな、気にしなくていいですよ!」

 

 

 ただでさえ豪華客船に誘ってもらったのに、これ以上は申し訳なさで死んでしまう。謝罪の電話を終え、奥の仮眠スペースで寝たきりのあかりに視線を向ける。ロードのメモリを使ったことにより極度の空腹に襲われ、回復のための睡眠と食事を繰り返している。きりたんの見立てではあと数日この状態が続くのだという。さらに身内ともいえる西友の裏切りというこちらの不手際。さらにはかつての依頼人であるIAさんがドーパント化しキクさんを攫ったことにより、そのことを知らされた有阿刑事も落ち込んでしまっている。正直、探偵としての信用がガタ落ちしても文句を言えない失態だ。それに加えて、もう一つ起きた事件があった。

 

 

「まさか、ヒメさんまで攫われるとは……」

 

「ついなさんもミコトさんが助けてくれてなかったら危なかったらしいですね…」

 

 

 あかりの布団を直していたミリアルが椅子に座り、溜め息をつく。そうなのだ。私達の代わりに水都を守り続けてくれていたついなさんは、ミュージアムの幹部三人の奇襲を受けて敗北、なぜかヒメさんが攫われてしまったのだ。ついなさんは病院で治療を受けていたが昨日退院していた。相変らずの回復力である。そしておそらく、連絡が一切ないアイさんもミュージアムの手に落ちたと見た方がいいだろう。だとすると敵の次の狙いはきりたんの身柄なのだろうが……あの船ではもちろん、水都に戻ってから数日、襲ってくる気配が一切ない。念のためきりたんはガレージに籠っているが、ミュージアムは一体何を考えているのだろうか。

 

 

「ハァア……」

 

「……リリィ、いい加減立ち直りません?」

 

 

 そして、これだ。西友に裏切られ、特にお気に入りだったキクさんをIAさんに攫われ、もう完全に燃え尽きてしまって客用のソファにだらしなく寝転がっている金髪の女。服装を整える二人がいないため、趣味が悪い金色のTシャツとハーフパンツだけ着用しているリリィだ。完全にだらけきっている。唯我独尊な普段のリリィが想像つかないほど、やる気を失ってしまっていた。それほどキクと、西友の存在はでかかったらしい。食事は与えれば摂ってくれるが、完全に抜け殻状態だ。ずっとソファを占領しているし、お陰でお客を入れられないためずっと休業中だ。

 

 

「オレは、部下の心すらわかっていなかったんだと。オレはもう諦めてたのに、あいつはずっと、諦めてなかったんだな……」

 

「……貴方は私達に負けて改心したんでしょう。今の貴方は、紛れもない仮面ライダーですよ」

 

「嬉しいこと言ってくれるなあ……ハァア……」

 

「え、めんどくさっ」

 

「こら、ミリアルやめなさい」

 

 

 私もそう思ったけど。さてどうしてくれようか。西友とIA……新生エル・ドラードの居場所を探るにしても、ミュージアムと決着をつけるにしても、リリィには元に戻ってもらわなきゃいけない。でもどうしたら……。

 

 

「あのー……」

 

「「!」」

 

 

 すると、入り口が開いて子供の声が聞こえた。振り返る。そこには、見覚えのある少女がおずおずと言った様子でこちらを窺っていた。たしか、REX事件の時にリリィが助けた……。

 

 

「あ、仮面ライダーの人…が探偵さん、なの?川合優希(かあい ユキ)、です。今日は、依頼に来たんだけど……」

 

 

 黒い髪をおさげにしてランドセルを背負った赤い服の少女がお辞儀する。私は慌てて「今は休業中です」と断ろうとしたのだが、真剣な顔で見つめてきたユキさんの迫力に押されてしまう。

 

 

「あの、しょうたくんが、あいちゃんが、私の友達が何人もいなくなって……けいさつのひとも、お手上げで……それで、それで…ここしか、もう頼れなくて…!」

 

「お、落ち着いてください!話は聞きますから!リリィ、どいてください!」

 

「んあ?……あ?お前は……」

 

「あ、金ぴかのお姉さん…!」

 

 

 泣き出してしまったユキさんを案内しようとりりィを無理やり起き上がらせると、それで誰なのか気づいたユキさんがたちまち輝くような笑顔となる。そういえばリリィが無意識に口説いてましたね……。

 

 

「……恥ずかしいところ、見られちまったな」

 

「ううん、相変らずすっごくかっこいいよ!お姉さん!」

 

「そうか、そうか…。リリィと呼んでくれ。……この子が依頼人か?ゆかり」

 

「そういうことになります、かね…?」

 

「……ならオレも話を聞く」

 

 

 そう言って、上着のアロハシャツを肩にかけて、表情を引き締めるリリィ。自分に憧れる子供に、弱いところを見せたくないというプライドからだろう。何はともあれ復活してよかった。

 

 

「たしか、ユキと言ったか……話してくれ。なにがあった?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミリアルが持ってきたお茶(子供なので配慮したのだろう)を飲みつつ、必死なユキさんの拙い訴えに寄れば、彼女が通っている潮風小学校の生徒がここ数日で10人も行方不明になっているらしい。その中にユキさんの友人である「しょうたくん」と「あいちゃん」もいるらしく、一度ドーパントに出会った経験から普通の事件じゃないと察して助けを求めてきたようだ。確かに聞いた限り、連れ去る頻度が異常だ。そんな大勢の子供を誘拐したなら目につくはずなのに、まだ犯人が分かってないばかりか犯行が続けられている。間違いなくドーパントの仕業だろう。

 

 

「おこづかい、全部持ってきました!全部あげますので、見つけて!お願い…!」

 

 

 そう言って、ランドセルから取り出した豚の貯金箱を置くユキさん。ごとっと音がしたためかなりあるらしい。……が、子供からお金を受け取るのは気が引けるな……。でもその熱意を無碍にするわけにも……うーん、と唸っていると、私の隣に座って話を聞いていたリリィが貯金箱を掴んで、ずいっとユキさんに押し付けた。すると泣きそうな顔になってこちらを見上げてくるユキさん。

 

 

「え…?だめ、なの…?」

 

「いいや、だめなんかじゃない。だがお前から金は受け取れないって話だ。こんな子供からお金を巻き上げたなんて、悪い噂が立ったらいやだもんな?ゆかり」

 

 

 そうウィンクしてくるリリィの意図を察知して、頷く。そうだ、金なんか受け取れない。この街の涙を拭う二色のハンカチ、それこそ仮面ライダーWだ。

 

 

「お金はいただけませんが、依頼はお引き受けします!その代わり、事件を解決した暁には、笑顔を見せてください」

 

「泣いてばかりじゃ可愛い顔が台無しだ。せっかく将来有望な美人さんなんだ、美しくいないとな?」

 

「うん…!」

 

 

 リリィの言葉に、弱々しく笑って応えるユキさん。私とリリィとミリアルは頷いて、調査を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まず私とミリアル、リリィとユキさんに別れて手分けして捜査を始める。本当ならユキさんを施設に帰したいところだったが、当の本人が「仮面ライダーと一緒が一番安全!」というのでそうすることにした。いつも通り情報屋たちから情報をいただきつつ、次の犯行現場になりそうな場所を探っていくと、怪しい場所を一つ見つけた。COEFONT事件で休業中でゴーストタウンになりつつある水都アウトレットモールが、通学路の途中にあったのだ。

 

 

「…ここ、ですかね」

 

「明かに犯罪してくださいって言いたげな場所ですね」

 

「ユキ、オレから離れるなよ」

 

「う、うん…!」

 

 

 ユキさんを守るように囲んで陣形を取りながら、人気(ひとけ)のない中道を歩いていく。先日あんな敗北を喫した私達に油断はなかった。そう断言できる。だが、今回は完全に……敵ドーパントの方が、一枚上手(うわて)だった。

 

 

 

 

 

「ゆーきちゃん」

 

「はい?」

 

 

 

 

 

 瞬間、不思議な風が吹いた。水都に何時だって吹いている気持ちよい風じゃない、生温かな気持ち悪い風の流れが、ユキさんを飲み込んで打ち上げると、そのまま路地裏まで連れて行ってしまった。囲んでいた私達を無視して、ユキさんだけを連れて行くなんてそんな馬鹿な!?

 

 

「待て、ユキ!くそっ…!」

 

「追いかけますよ!」

 

「私に任せてください!」

 

 

 ミリアルがCLEARであることを利用したスピードで駆けて追いかけ、私とリリィもそれに続く。そして、ユキさんが風に乗せられて連れ込まれた先の路地裏から、それはのしのしと音を立てながら、現れた。

 

 

「ひょっひょっひょっ!楽勝だなあ、ぼかぁ幸せだあ」

 

「ドーパント…!?」

 

 

 8の字体型、とでも言えばいいのだろうか。肥満体のお腹に、大きな顔。頭頂部に小さな円形の帽子を被った頭の側面からは二本の角が生え、にやけきった顔は酔っぱらった鬼を思わせる。上半身は銀色の上着だけを羽織っていて、その下は何も着ておらず、下半身は金色のゆったりとしたズボンと先がとがった黒い靴を履いている、薄紫色の身体をした怪人。お世辞にも強そうには見えない。だが、言いようのない不気味さがあった。

 

 

「ユキさんをどこにやったんですか!ドーパント!」

 

「ひょっひょっひょっ!ゆきちゃんなら俺の手中だよお。お前らみたいなババアには興味がないんだ、逃げるなら見逃すよお?」

 

「ば、ばばあ?」

 

 

 なんだこいつ。こちとらピチピチの二十代だぞ。まだババアと呼ばれる年齢ではないのに!

 

 

「悪いが、ユキを攫ったってんなら容赦はしないぞ」

 

《ゴールド!》《サンダー!》

 

 

 腰にダブルドライバーNEOを取り付け、起動した二本のメモリを装填。ジョリーロジャーを思い出させる両腕を胸の前で交差するポーズを取ったリリィは、怒り心頭と言った顔でドライバーを展開した。

 

 

《ゴールデンサンダー!》

 

「か、仮面ライダー!?」

 

「さあ、派手に行こうか!」

 

 

 そしてエルドラゴに変身、いつもの口上もなしに怖気づくドーパントに飛び掛かるのだった。




今作ではエル・ドラードだったりイレイザーだったりブリュンヒルデだったりと結構起きてる誘拐事件、再度勃発。REX事件の川合優希(かあい ユキ)が依頼人として再登場。

この時点でなんのドーパントかわかったら本当にすごい。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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