「ははは…あおい~、おしゃけもってこーい…」
「ふふ、お姉ちゃんったら…酒癖が悪いんだから」
昼過ぎ。リビングで酔いつぶれてソファに横になる茜さんの紅潮した頬を撫でる葵さん。私は仕事中なので断ったが琴葉姉妹二人して酒盛りを始めてしまったのだ。そして酔い潰れた茜さんと酒に強い葵さんという真逆の姉妹を改めて実感する。双子なのに共通するところが顔と声ぐらいだというのだからすごい。
「で、茜さんを酔い潰して眠らせたのは何故ですか?葵さん。もしや自白してくれるとか?」
空き缶などを持って台所に向かった葵さんに尋ねてみる。すると片づけていた手をピタリと止める葵さん。普段と違う鋭い目で睨んできた。ストーカーたち…敵対者に向ける目だ。
「…お気づきでしたか。さすが探偵さんですね」
「貴方が帰って来た際に、左腕を庇っていたのでね。あそこは私達が唯一攻撃を与えた箇所だ」
「さすが。あの程度の言い訳は通用しませんでしたか…」
そう言って壁画の様に猫人間がBの形に描かれた黒いメモリを取り出す葵さん。私もダブルドライバーを取り出し腰につける。
「まさかゆかりさんが噂の仮面ライダーだったなんて。知り合いだなんて、お姉ちゃんに嘘をついてたんですね?」
「自分じゃなくて茜さんにってところが相変わらずですね」
「そして…お姉ちゃんが可愛いからってストーカーになるとは!落ちぶれたか結月ゆかり!」
「え」
【え】
現在繋がっているきりたんまで呆ける葵さんの激昂に目が点になる。えっと…?あれ、私てっきり葵さんが犯人だと思ってたんですが…………………あれー?
【ゆかりさん、私の知らないところでそんなことを……?】
「違いますから引かないでくださいきりたん!えっと、葵さんが茜さんのストーカーじゃないんですか?」
「失礼な!決してそんなことはしないけどするならお姉ちゃんが怯えないようにするよ!」
「え、じゃあ犯人は誰…?」
「しらばっくれるな結月ゆかりお前だあああ!」
《バステト!》
怒りを露わにしながらメモリを右太腿に現れた生体コネクタに突き刺してバステト・ドーパントに変貌する葵さん。かつてないシリアスを感じない変身だ…!
「お姉ちゃんから離れろ!」
「ぐっ!?」
ジョーカーメモリを鳴らす間もなく首を掴まれて持ち上げられ、静かに開けられた玄関のドアから境内に投げ出される。長身の怪人が律儀に扉を開けて出て行くのシュールなんですが!?あまり人の来ない神社でよかった!
「お姉ちゃんに付きまとって!お姉ちゃん、心配でここ一週間全然寝れてないんだよ!?絶対に許せない!貯金をつぎ込んで買ったこのメモリでお姉ちゃんを守るんだあ!」
「え、メモリ、買った、ばかり!?」
「お姉ちゃんを害する者は滅びろッ!」
ブンブンブンブンとシストルムを一心不乱に振り回し、見えない斬撃を連続で叩き込んでくるがワンパターンというか一直線というか。明らかに使い慣れてない動きだ。そうなのだ、バステト・ドーパントと戦った時に思ったこと……ある程度使用して自身の特性を理解していた今までのドーパントと違い、初めて使ったかの様に自分の能力を試すような動き、愚直な狙い、つまりはまあ…弱かったのである。火力だけは洒落にならなかったが。まさか、本当に初めて使っていたというのか。じゃあ、茜さんを襲ったドーパントは…。
「葵さん、私は犯人では…あぶなっ!?」
【どうやらメモリの毒素が酔いでさらに回って思考回路がおかしくなってるようですね】
「倒すしかないってことですね、わかりやすい!」
《メタル!》
【どうにも締まりませんが…《サイクロン!》】
「【変身!】」
《サイクロン!メタル!》
能力は分かっているので最初からサイクロンメタルに変身、風を纏ったメタルシャフトで音の斬撃を弾き飛ばす。サイクロンは疾風のメモリ。風を取り込み力に変えて風を操る他、マフラーになってるウィンディスタビライザーで風の動きを感知できる。見えない攻撃との相性はいいのだ。
「だったら…!」
すると目からの熱線をシストルムに当てて、シストルムを熱して形状を変化して軽く振るって長剣の様に変形させるバステト・ドーパント。そのまま両手で振り回し、まるで素人の様な動きだが熱された剣身は避けた先の石灯篭を容易く斬り裂いてしまう。
「アハハハ…にゃあ!お姉ちゃんに近づく奴は死ねぇえええッ!」
「洒落になりませんよ!?」
『熱には熱です』
《ヒート!》《ヒート!メタル!》
ヒートメタルになって耐熱性を得て、メタルシャフトで熱された剣身を受け止める。鍔迫り合いとなるが、バステト・ドーパントは恵まれた体躯によるパワーを押し付けてきて追い詰められ、その右目が光る。ヤバい…!?
「ニャアァアアア!」
「あっぶ!?」
右目から放たれた熱線を、背負い投げの要領でバステト・ドーパントを投げることで回避。しかし境内を大きく削り爆発してしまう。琴葉神社が滅茶苦茶になってるんですが!?
「避けるにゃ!潔く死ね!」
「相変わらず理不尽ですね!?」
「お姉ちゃんを怖がらせる奴はたとえ友人でもいらないんだから…!」
今度はシストルムの剣をぶんぶん振り回して炎を纏った見えない斬撃を連続で繰り出してくる。でも、通常時より炎を纏ってるぶん見えやすいからウィンディスタビライザーが無くてもメタルシャフトで防ぐのは容易い。とか思ってたらシストルムの剣身に熱線を浴びせて拡散させて放って来てシャフトを回転させて防ぐ。
「時間が経つごとに強くなってる…!」
『これじゃ埒があきませんね。あの武器を奪い取りましょう』
《ルナ!》
「熱線が怖いですが致し方なし」
《ルナ!メタル!》
メモリを入れ替えルナメタルに変身。メタルシャフトを伸縮させてシストルムを打ち払い、手放させる。
「にゃっ、私の武器!?」
「このまま!」
そのままバステトの両腕を縛りあげて全力で引っ張り地面に頭から叩きつける。今がチャンスだ。あとは逃がさないように混乱させよう。
「ぎにゃあ!?」
『メモリブレイクです』
《ジョーカー!》《ルナ!ジョーカー!》
「よしきた。少し痛いですよ」
メモリを入れ替えルナジョーカーに変身。そのままジョーカーメモリをマキシマムスロットに装填し軽く叩くと私達は半分に分離し、ルナ側が複数に分身。分身が本体もろとも全て右腕を伸ばしてバステト・ドーパントをビシバシ殴って行く。
《ジョーカー!マキシマムドライブ!》
「にゃっ!?割れた!?増えた!?伸びた!?」
「『ジョーカーストレンジ!』」
「ぎにゃああああああ!?」
そして最後にジョーカー側が強襲。強烈な拳を叩き込んで爆散させた。爆発跡から葵さんと砕け散ったメモリが出てきたので私は変身を解除。葵さんに手を差し伸べた。
「葵さん。大丈夫ですか?」
「うっ…お姉ちゃんの敵の情けは受けない!」
「なんでそんなことになったんですか。私は探偵として動いてただけですよ。なんで勘違いを…」
「え、だって「ぐへへ、茜さんは油断してるな…」みたいなこと言ってたじゃん!だから止めようと思って追いかけたら立ちはだかってたからゆかりさんだと思って…」
「言ってませんよ!?」
どういうことだ。そんなこと言った覚えはない。…つまり、あの場に別の誰かがいた?
「それがまさか、本当の犯人…?葵さん、確認なんですがそのメモリは今日買った物ですか?」
「そうだよ。お姉ちゃんを守るためにネットで探して、売人に接触して購入して…」
「じゃあやっぱり、葵さんは茜さんを追い詰めてた透明なストーカーじゃないんですね?」
「違うよ!?私は正々堂々隠れずにお姉ちゃんにくっついていくもん!」
「それはそれで問題なんですがねえ!?」
葵さんの全力全快な茜さんへの愛にツッコミを入れるしかない。いやまあ、だから容疑者から外してたんですけど攻撃された箇所を庇っていたからまさか?と勘違いしてました。
「…とりあえずメモリに手を出したので警察に自首してください。あと器物損害罪で怒られてください。ここも、最初に戦った場所も結構貴方が壊したんですからね」
「それはごめんなさい…」
「ちなみに貴方が倒した仮面ライダーアクセル、一応刑事ですよ」
「公務執行妨害!?」
うおおおおと頭を抱えて唸ってる葵さんは置いといて、推理に戻る。透明なドーパントは別にいる。茜さんのストーカー。あの場にいた。つまり私達がコンビニに向かったことを知ってる人物。…それって一人しかいないような。
「葵さん、伊織君から何か連絡は?」
「え?今日は急病で帰りますって連絡はあったけど…」
「やっぱり、伊織君がストーカーです!今、茜さんは…」
その時、ぽとっと何かが落ちた音がした。周りを見渡すと、玄関から出てきた茜さんの髪飾りが落ちた音だった。しかし茜さんは気にせずふらふらと歩いて…あれ?
「…お姉ちゃん、寝てる?」
「ですよね…まさか!」
慌てて駆け寄ると、ふらふら歩いていたのが何かに抱えられたかの様に浮かんで鳥居まで向かっていく茜さん。
「きりたん、もう一人いました!」
《ジョーカー!》
「変身!」
《サイクロン!ジョーカー!》
私は再度ダブルドライバーにメモリを装填してダブルに変身、茜さんに手を伸ばす…が見えない何かにぶつかって転倒してしまう。これは…狛犬の像!?
「自分だけじゃなく、他のものまで透明にできるんですか…!?」
慌てて立ち上がり追いかけると、茜さんをおんぶしたのか目に見えてスピードを増して石造りの階段を下りて行く透明なドーパント。下まで降りると茜さんを透明なナニカに乗せたかと思えば高速で移動していく。車か?
「あ、ゆかりさん!」
「あかり!?」
ハードボイルダーを呼び出して待つかそのまま追いかけるか迷ってたら、ハードボイルダーに乗ってやってきたあかりに驚く。でもナイスタイミングです。
『必要になるかと思ってあかりさんに頼んでおきました』
「さすがきりたん!あかり、葵さんがバステトのドーパントだったので一応見張って…」
「私も行く!」
「え、ええ!?」
葵さんのことをあかりに任せようと思ったら階段の上から跳躍してきた葵さんが後部座席に乗ってきた。あかりはあたふたしてる。
「ほら、早く!お姉ちゃん、逃げられちゃうよ!」
「いや、でも、えっと、あの…?」
『はあ…あかりさん、神社は任せました。行ってきます』
「あ、はい。いってらっしゃい」
するときりたんが勝手にエンジンを回して走り出してしまった。葵さんが腰に手を回してくる。あーもう、しょうがない!
「いきます!全速力で行くので葵さん、絶対離れないでくださいよ!」
「お姉ちゃんの為なら火の中水の中だよ!」
道路に出て一般車をするすると擦り抜けて行く茜さん…もとい透明な車を追いかける。茜さんが横になってるのを見るに後部座席に乗せられているのだろうか。
「もう少し…なっ!?」
次の瞬間、透明な車がすれ違った一般車がいくつか透明になった。ギリギリ、直前まで覚えていた場所から計算して避ける、避ける、避ける。一般車も驚いて停車してるのがブレーキ音から分かる。厄介な能力だ。
「うん?」
透明にされた一般車とすれ違った時、件のゴムの塊が落ちているのが見えた。
「くっ、対向車が邪魔で追い付けない…!」
透明な車は茜さんだけ見せることによって混乱させ、一般車を急停車させて即席の壁にしたり、透明にして妨害したりしてきて中々追い付けない。そうこうしているうちに橋を抜けて南の歩歌路町まで来てしまった。建設中のビルに差し掛かると、透明な車…があるだろう場所から上空に光弾が放たれる。それらは鉄骨を運ぶクレーンを撃ち抜いて爆散、大量の鉄骨が降り注いだかと思えば鉄骨が消えてしまう。
「そんなことまで!?」
不味い、と思ってブレーキした時にはもう遅く、落ちてきた鉄骨の山に激突し投げ出される。咄嗟に葵さんをキャッチして着地。しかしその間にも茜さんを乗せた透明な車は逃げて行ってしまった。
「やられた…」
「お姉ちゃん……」
私達は悔しさのまま拳を握るしかなかった。
バステト・ドーパントとストーカーは別犯人。前回で気付いた人も多かったかな?というわけでバステト・ドーパントの正体は葵でした。怪我した部位で正体が分かるトライセラトプスみたいな感じにしました。
前回バステト・ドーパントが異様に弱かったのは初変身だったため。ある程度分かって使いこなしたのが今回となります。ドーパントって基本的にスペックを理解しているのばかりだからこういうの新鮮だと思ってます。性格は二次創作でよくある姉への愛爆発タイプ。ただ結構まとも。多分まとも。
ドーパントだった犯人と力を合わせて依頼人を守るとかいうダブル原作じゃ絶対ありえない展開。透明のドーパントの正体はもう一人の容疑者だった伊織君。ではその動機とメモリの正体は?ということで次回に続きます。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。