ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。過去編その二。ゆかりときりたんのファーストコンタクトです。楽しんでいただけたら幸いです。


第二十三話:Sの終演/囚われの悪魔

「さあ、お前の罪を数えろ。化け物退治は「裏」の仕事。加減はもうできないでございやすよ」

 

「言ってくれるわね。やりなさい!」

 

 

 スカルに変身したおやっさんにマスカレイド・ドーパントをけしかけるアルテミス・ドーパント。スカルはマスカレイド・ドーパントを拳と蹴りで蹴散らすが、それに気を取られたところで空中に浮かびあがったアルテミス・ドーパントの放った光の矢の雨が降り注ぐ。近くにいたマスカレイド・ドーパントを持ち上げてぶん投げて盾にするスカル。さらにバックステップで光の矢の雨を避けて行くが、避けきれずに帽子に掠ってしまった。

 

 

「お気に入りの帽子に傷をつけやしたね?お礼をくれてやりやしょう」

 

 

 そう言ったスカルの胸部にトリガーマグナムによく似た銃が出現。それを手に取り、乱射して光の矢を撃ち落としていく。弓を振るうアルテミス・ドーパントと銃を撃ちまくるスカルの攻防は、埒が明かないと踏んだのかアルテミス・ドーパントが上に光の矢を放ち天井を瓦解してスカルを押し潰したことでひとまずの終わりを迎えた。

 

 

「おやっさん…!」

 

 

 叫びそうになった口を慌てて塞ぐ。瓦礫を押しのけてスカルがピンピンした様子で現れたからだ。痛みを感じていない様子のスカルに怖気づくアルテミス・ドーパント。

 

 

「骸骨は、それ以上殺せない。今のあたしは死人も同然です」

 

「死体は死体らしくくたばってなさい!」

 

 

 そして再びマスカレイド・ドーパントたちとアルテミス・ドーパントに挑んでいくスカルを余所に。私は物音を聞いて振り返ると、そこには病衣の様な服を着た裸足の幼い女の子がペタペタと足音を鳴らしながら扉の先に消えて行く光景があって。さっきも言いましたが人生には「決断」という名の分かれ道があります。特に、取り返しのつかない分かれ道には二つの声が囁きます。そのうち一つは必ず死神の罠なんです。この時、私が選んでしまったのは死神の誘う道でした。

 

 

「彼女を助ければおやっさんも見直してくれるはずです…!」

 

 

 あまりにも異様な存在に、彼女こそ「運命の子」だと結論付けた私は、おやっさんとの約束も忘れてその場を離れてしまった。忘れもしません、私はこの時初めてきりたんと出会ったのです。

 

 

「あの、あなたが「運命の子」ですか…?」

 

「誰ですかお前」

 

 

 だけど、私と相棒の最初の出会いは間違いなく最悪でした。このときのきりたんは今の生意気さはそのままに、無気力で薄気味悪い幽霊の様な少女でした。

 

 

「…ふっ。ここの人間じゃありませんね?組織に選ばれるような知能があるとは思えません」

 

「んなっ!?年上に向かってなんて口を聞きやがるんですか…!」

 

「年上なのが何か関係が?」

 

「このハードボイルドな面構えがわからないなんておこちゃまですね!」

 

「ハード…ボイルド?」

 

 

 いきなり馬鹿にされて悔しかったのでかっこつけながら指摘するも、少女は無視して傍の機械を弄ります。目の前のモニターのはガイアメモリの設計図の様な物が、すぐ傍のガラスケースの中には完成品のガイアメモリが並んでいて、少女がそれを作っていたのは明白だった。

 

 

「ガイアメモリ!?貴方が作ったんですか…!」

 

「ん?それは…」

 

 

 問い詰めようとすると少女は私の手に握られたトランクケースに興味を寄せて。突撃されて奪われたばかりか、少女はおやっさんにしか開けれない筈のケースを開けてしまったのです。その中にあったものこそ、ダブルドライバーとジョーカー、メタル、トリガー、サイクロン、ヒート、ルナの新型ガイアメモリでした。中身を見るなり大興奮する少女に、私は怒りを募らせます。

 

 

「これは凄い!凄いですよ!誰が考案したんですかこれ!?このドライバーの使用者は私と一体化できる!同時に二本のメモリを使え、私の知識全てを備えた究極の超人が生まれる!はははっ!どんな頭をすればこんなものを作れるんですかね!?」

 

「なにがおかしいんですか!この、悪魔!」

 

「なんですか、邪魔しないでください」

 

「あなたたちの作ったメモリのせいで水都がどんなに泣いてるか、わかってるんですか!?」

 

「水都…というのはよくわかりませんが。拳銃を作っている工場の人間は犯罪者ですか?」

 

「っ…」

 

「違うでしょう。使って悪事をする人間が悪い。私はただ、より効果の高いメモリを見たいだけなんですよ」

 

 

 そう無感情に言う少女に、私は分からなくなった。本当に哀れな囚われの女の子なのか。こんな子供を助けるだなんて、正しいことなのか?こんな、悪魔みたいな少女を助けるだなんて…!

 

 

「邪魔をしないでくださいよ。どうせあなたはガイアメモリの実験体か何かでしょう?あなたにピッタリなメモリならあとで私が選んであげますよ。そうですね……切札にも最悪なカードにもなる道化師、ひょうきん者を意味するジョーカーなんてふさわしいと思いません?」

 

「ふざけないで!」

 

 

 悪びれないどころか私を馬鹿にする少女を、怒りのままに突き飛ばしていた。すると少女は奥の機械に入って姿を消してしまった。今思えば転送装置だったのだろうか。

 

 

「この時私はビルの最奥にして中枢部、ガイアタワーに転送されてました。自分では出られない檻の様な場所でありながらその時の私は気にせず、気になって仕方のなかったことを検索したのです。ハードボイルド、興味深いと思いました」

 

 

 私は一心不乱にトランクケースを手に元いた場所に戻りました。そこには、壊れたロストドライバーを腰に付けたおやっさんが壁によりかかってました。

 

 

「おやっさん!」

 

「…おまえさん、どこに消えてやした?」

 

 

 おやっさんに睨まれて、少女を見つけたため離れていたこと、少女との会話、そして少女がどこかに消えたことを正直に話すと、私は珍しく怒ってる様子のおやっさんに委縮するしかありませんでした。

 

 

「お前さんは馬鹿野郎でございますね。なんで言われたとおりにしなかったのか。あの子を押さえていれば今頃脱出もできていたでございやしょう。…参りますよ。時間がない」

 

「………なんで、助けないといけないんですか!あんな、あんな悪魔みたいな奴なんですよ!?あの子におやっさんが命張ってまで助ける価値があるんですか?!」

 

 

 気付けば不満を爆発させていた。それぐらい、その時の私に依頼を成し遂げようなんて思いはなかった。ただただ、あの少女を助けたくなかった。

 

 

「怪物の元を…ガイアメモリを作っていた悪魔なんですよ!?あんな、あんな娘のために…私は嫌ですッ!絶ッ対に………嫌です、呑めません!」

 

「…お前さんなら呑めるはずなんですがね、ゆかり。命を張る価値ならありますよ。彼女も水都に住む一人の人間なんでさ。本当なら母親の胸に抱かれて、姉弟(きょうだい)に囲まれて、幸せに育っていたはずなんでございます。だが引き離されたんです。助けておやりなさい、ゆかり」

 

「でも、でも…!」

 

「彼女が悪魔に見えるなら、悪いのはそう書き換えた奴等でございましょう。あの子自体は真っ白な紙と同じです。…半人前のお前さんの中であたしが唯一尊敬しているところがあります。それは、弱い者には決して力を振りかざさず、むしろ手を差し伸べてやれる…そんな心根でございます」

 

 

 その言葉に、涙が溢れていた。おやっさんが私を認めているところがあった。それがたった一つの小さなことでも、嬉しかった。

 

 

「友人を守り、水都を愛することができるお前さんなら…あの子も救える。恐らくこれはあたしじゃできないことです。…お守りです、壊れていますが弾除けぐらいにはなるはず」

 

 

 そう言って手渡してきたのは、罅割れたロストドライバー。それはおやっさんがもう変身できないことを表していた。

 

 

「おやっさん、私は…」

 

「恐らくあの子はこの建物の中枢部に融合している。まだ間に合う、行きましょう」

 

 

 私達はビルを駆け抜けた。襲いくるマスカレイド・ドーパントを二人でけちらし、最奥部まで辿りついた。そこにはひし形の宝石の様な機械に取り込まれている少女の姿があったのだ。

 

 

『…帰ってください。私の読書の邪魔をしないでください』

 

 

 少女は私達の存在に気付くとそう言ってきた。なんのこっちゃと首を傾げていると、おやっさんが合点が言った様に説明してくれた。

 

 

「あの子は今、地球(ほし)の本棚に入ったようでございますね」

 

「ほしの、本棚…?ってなんなんですか…?」」

 

「彼女は地球の記憶そのものと頭脳が直結してしまっているという話でございやす。脳内に地球が抱える全ての知識が「本」という形になって現れ、それを自在に検索することができる…そう聞いています。その地球の記憶を悪用し、人間を怪物に変える悪魔の小箱…それが」

 

「ガイアメモリってことですか…」

 

 

 彼女が「運命の子」で悪人に利用されてるってそう言う事だったのかと納得する。

 

 

「…あの子を装置から引き出すことはもう不可能。救出する方法はただ一つ、彼女が自分の意思で出るしかありません。…このメモリに残ってるエネルギーで彼女の世界に接触できるかどうか…試してみやすか。ゆかり、入り口を見張っていなさい」

 

「おやっさん…大丈夫なんですか?」

 

「今度こそ約束を守ってくださいよ」

 

《スカル!》

 

「…わかりました!」

 

 

「言われるなり私が入り口を見張ってる間に…なにがあったんですかね?きりたん」

 

「ではここからは私が話しましょう。私は困惑してました。ハードボイルド、という言葉を調べるたびに不可解でした。ゆかりさんがハードボイルドという人物像とは程遠かったので」

 

「ゆかりさんぇ…」

 

「いや草。お前ら芸人になれるで」

 

「余計なお世話ですよ今畜生」

 

 

 そんな困惑している私の元に、彼はやってきました。消滅していく己のガイアメモリを見て哀愁を漂わせていた彼の存在に私は気付きます。

 

 

「…すみませんね、スカル。お前さんの力を憎んだこともありましたたが最後に礼を言いますよ」

 

「…その特殊なメモリの力ですか。まさかこんな強引な方法で私の本棚に入るだなんて…」

 

「さあ、行きやしょうかお嬢さん」

 

 

 そう手を差し伸べてくる男の手を、私は払いのけた。

 

 

「…いいえ、それは無理です。ここにいろと言われています。あの「狐」を名乗った女に」

 

「狐……ああ、そういうことでございやすか。では質問をば。あんた様は今まで一つでも、自分で決めて何かしたことはありますか?」

 

「自分で…決める…そんなこと、する意味が…」

 

「じゃあ今日が最初でございますね。自分自身の決断でこの暗闇の牢獄を出るのでございます。そして自由になったら…お前の罪を数えろ」

 

「私の、罪…」

 

 

 そう言われてフラッシュバックしたのは先程であった女性に怒鳴られた言葉の数々。思わず目を見開いた。

 

 

「あたしは虚音イフ。しがない探偵でございます。あんた様の名前は?」

 

「…きりたん。それだけは、覚えています」

 

「きりたん。いい名前じゃないですか」

 

「…はは、目覚めて初めて名前を呼ばれましたよ。…いいものですね」

 

 

 そう言って私は、泣き笑いを浮かべて男の手を取ったのだ。ガイアタワーが砕け散り、現実の私は虚音イフに身体を抱えられて下ろされた。

 

 

「問題はここからですよ虚音イフ。この島から逃亡するなど不可能に近い」

 

「なんとかしますよ。あたしの助手もいる」

 

「…彼女はあまりに不完全だ。助けになるとは…」

 

「結月ゆかりと言うんですがね。確かに半人前でございますがちょうどあんた様にない物を持っている。仲良くしてやってください。ゆかり、きりたんと言うそうです」

 

 

 そんな会話の後に駆け寄ってきたゆかりさんは手を差し伸べてきて、私は驚くしかなかった。

 

 

「おやっさん、代わります。きりたんと言うんですか。可愛い名前ですね。私は…多分あなたとは合わない。でも、貴方の事情を知らなすぎた。なのに一方的に罵倒してしまったのは謝ります。だから…私達に貴方を救わせてください」

 

 

 そんな言葉に何も言えなくなって。…油断してしまった。入り口に立ち銃を構えた黒服たちが見えて私は思わず叫んでいた。

 

 

「危ない!」

 

「え?」

 

「っ…!」

 

 

 私はゆかりさんと一緒に突き飛ばされた。突き飛ばした虚音イフは背中に三発も弾丸を受けて倒れ込んでいて。帽子がひらひらと舞い落ち、血が流れていく。慌てて駆け寄る私達。

 

 

「おやっさん!おやっさん!」

 

「虚音イフ…!」

 

「…一瞬判断が鈍りやした…あたしもまだまだ甘いでございますね……」

 

「おやっさん、血が!私、どうすれば…!」

 

 

 流れる血と倒れ伏した虚音イフに混乱するゆかりさんに、虚音イフは力を振り絞って帽子を手に取りゆかりさんに被せた。

 

 

「ゆかり………この依頼、お前さんが引き継いでくれ……あの子を、きりたんを頼みましたよ…」

 

「よして、くださいよ…私に帽子はまだ早い、まだ早いですよ…!」

 

「似合う女になれ、なんて無責任、ですかねえ…」

 

「おやっさん?おやっさ――――――ん!!!」

 

 

 最期に安心させるように笑みを浮かべて息絶える虚音イフと、絶叫するゆかりさんに。私は己の罪を自覚した。そうか、これがそうなのか。街を、人を泣かせるということ……これが私の罪だと、自覚したのだ。瞬間、降り注ぐ光の雨。私に当てない様に周りに放たれたそれの影響で穴が開き、虚音イフの遺体が階下に落ちて行く。そして現れたのは、アルテミス・ドーパントだった。

 

 

「死んだ…また死んだ…死んでしまったのね、スカルの男。少し、安心した。人の気も知らないであんなこと言うから死ぬのよ。残るネズミ一匹を殺せば、いいのね!?やりなさい!」

 

 

 自分に言い聞かせるようにそう叫んだアルテミス・ドーパントの声に応じて、戦闘ヘリが現れ機銃掃射が襲いかかり、私はゆかりさんに手を引かれて物陰に隠れる。私を殺したくないのか威嚇射撃だったから助かったが、このままではゆかりさんまで死んでしまう。そう思った。

 

 

「そのとき私の内心にあったのは後悔でした。私が最初に約束を守っていれば今頃脱出していておやっさんは死ななかった…そんな、後悔が」

 

「お爺さま…二人を庇って、死んだのですね」

 

「なんちゅう男や…一度会ってみたかったな」

 

「話を戻します。どうするべきか、考えた私が手にしたのはゆかりさんがずっと持っていたトランクケースでした」

 

 

「貴方はさっき、私を「悪魔」と罵りましたよね」

 

「こ、こんな時に何を?」

 

「悪魔と相乗りする勇気、貴方にあります?」

 

 

 開いたトランクケースの中身を見せて私はそう尋ねた。それが、始まり。




フィリップと違って、名前(?)を覚えてるが故の「名前を呼ばれる」という心地よさ。風都探偵のフィリップと名付けられるシーンが印象的でしたが今作ではこうしてみました。

次回はこの続き…と言いたいところなんですが番外編を投稿する予定です。この話の続きは次々回。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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