ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。ホーク・ドーパントが好評だったようで勢いのまま続き書き上げました。楽しんでいただけると幸いです。


第三話:Mな彼女/疑惑の依頼人

 ダブルがホーク・ドーパントと戦っていた頃、水都に存在する巨大な日本家屋。水都で知らない者はいないというほどの名家「東北家」の邸宅である。その、畳が敷かれ長机が中心に置かれた広間で、「地球」と達筆で大きく書かれた掛軸がかけられた床の間を背に上座に座るのは、この世のものとは思えない透き通った白髪の和服美人。赤い目が細められゆっくりとお茶を啜り、席に座る四人の人間に目を向ける。

 

 一人は髪を濃い緑に染めた女性。ロングヘアーに枝豆を模したカチューシャをつけて露出の少ないなれど上質なあったかそうな格好で、金色の目をせわしなく動かして白髪の女性の様子を窺っている。その膝には奇妙な髪型の黄緑色の髪の中性的な子供が鎮座してニコニコ笑ってる。

 

 一人は肩で切り揃えられた黒髪を揺らし黒いレディースのスーツを着こなしたキャリアウーマンの様な女性。緑色の瞳を怪しく輝かせて姿勢正しく待機している。

 

 一人は桃色がかったふんわりとした茶髪で眼鏡をかけた少女。清楚なワンピースの上から水色のカーディガンを身に付けている彼女は小説家なのかスラスラと手記と筆ペンを手に何やら熱中して書いていた。

 

 そんなちぐはぐな面子ではあるが、彼女たちは「家族」でありそして「組織」でもあった。四人を一瞥し、もう一度お茶を啜った白髪の女性は湯呑を置いて話を切り出した。

 

 

「…ちゅわ。街が騒がしいようですわね?」

 

「は、はい、姉さま。ウナちゃんのラジオによれば鳥人間が街を騒がしているとのことで…」

 

「さすがなのだ!休みなく超人が水都を賑わせているのだ!」

 

「おや。セイカさん、また売れたんですね?せっかくなら教えてくれればよかったのに~」

 

「顧客情報を流すわけにはいきませんし、貴方に教える義理はないですよそらさん?それにガイアメモリ販売は私共の仕事です。売り上げも上々。そんな意外そうに言わないでいただきたい」

 

 

 おずおずと反応する、白髪の女性を「姉」と呼んだ緑の女性。やんややんやと手を叩く中性的な子供。何やら険悪な雰囲気を感じさせる黒髪と茶髪の女性。そんな光景に溜め息を吐きながら白髪の女性は黒髪の女性に向けて笑みを浮かべる。

 

 

「よくやっていますわセイカさん。貴方を家族に迎え入れた判断は間違ってない様ですわね」

 

「お褒めに預かり光栄です至子(いたこ)様。鳥人間…ホークメモリは凡俗なメモリですが、彼を紹介してくれた人間が購入したメモリはこの街の土壌を利用できるメモリでして…至子様の実験のお役にたてるかと」

 

「素晴らしいですわ。さすがは…【ミュージアム】の幹部、ですわね?」

 

 

 そう言って銀色の円形のバックル…ガイアドライバーと金色のガイアメモリ…ゴールドメモリを取り出す白髪の女性、東北至子に続く様に同じガイアドライバーとゴールドメモリ、または銀色のシルバーメモリを取り出していく女たち。次の瞬間、広間には五体の怪人が鎮座していた。それは自分たちが人間と言う器を捨て去ったという存在証明。または後戻りできない諦念の形。または純粋無垢な魂の在り方。または決して崩れない忠誠心の表れ。または抑えきれない好奇心の笑み。

 

 

 彼女たちの名は東北家。またの名をミュージアム。水都にガイアメモリをばら撒く悪の根源である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私達はダブル、二人で一人の探偵だ。依頼で捜していた鷹嘴飛翔が変貌したホーク・ドーパントを撃破したところに突如現れた濁流の怪物。口封じなのかタカハシくんが飲み込まれてしまい、咄嗟にスタッグフォンを取り出しコードを入力しながら振り下ろされてきた巨腕の一撃を避ける。反撃に拳を叩き込んでみるが沈み込んでしまいビクともしない。それどころか、こっちが引きずりこまれる…!?

 

 

『ゆかりさん!こいつに直接攻撃は危険です!ヘドロ、いやタール…?何のメモリですかねこれ』

 

「殴る前に言ってほしかった!あとメモリの正体知るよりこの状況をどうにか…」

 

「ゴボアァアア!?」

 

 

 今更警告してきた相棒に文句を垂れてると、濁流の怪物が巨大な物体に轢かれて消し飛ぶ。現れたのは後方支援兼高速移送装甲車リボルギャリー。助かった、これなら…!リボルギャリーの下に両手を沈み込ませてちゃぶ台がえしの要領でひっくり返す濁流の怪物。すかさずスタッグフォンで遠隔操作、背部のリボルハンガーを回転させて体勢を立て直すと同時に吹き飛ばす。

 

 

「ゴボボォオオオッ!」

 

『逃げます!便利な身体ですね…!』

 

「追いかけますよ!」

 

 

 すると濁流の怪物は人型から流動体へと変形、水路に逃げ込んだのでスタッグフォンでハードボイルダーを呼び出し搭乗、追いかける。リボルギャリーには事務所に戻ってもらって、今は追跡に専念せねば。

 

 

「っ、厄介、ですね!」

 

『水場を最大限に活用している!この街じゃこの上なく厄介な敵です!』

 

 

 水路からたびたび飛び出してくる流動体の塊による攻撃を避けながら必死に追いかける。水都の象徴の一つである風を悪用したホーク・ドーパントの次は水都の美しさを象徴する水を活用するドーパント。私を怒らせてそんなに楽しいですか!

 

 

「タカハシくんを取り戻さなければ!あのままでは窒息死か溺死です!」

 

『ここはトリガーで引き剥がすのがよろしいかと』

 

「その手で行きましょうか、相棒!」

《トリガー!》《サイクロン!トリガー!》

 

 

 バイクを運転しながらジョーカーメモリと取り出したトリガーメモリを交換し、青く染まった左ボディの胸部に出現した拳銃「トリガーマグナム」を手にして風の弾丸を水路を泳ぐやつ目掛けて撃つと、弾けた風が打ち上げて濁流の流動体が空中に飛び出して道路にべちゃりと落ちる。そして現れたのは異形の怪人。

 

 

「ゴボボ……私の邪魔をするな探偵…!」

 

 

全身がドロドロと溶けていて片目が潰れ残った目がギョロリとこちらを睨み、両掌が異様に大きく引き摺っている。意外と小柄だ、女性だろうか?まるで溺れているかのようなくぐもった声を出すドーパント。なんのドーパントなのか。

 

 

「おや、私…いや、私達を探偵と知っていますか。有名人になったものですね?」

 

 

 なんで私が探偵なのか知っているのか気になったが、今はそれよりタカハシくんだ。奴の身体に取り込まれている以上、手出しができない。するとそのことに気付いたのか歪な笑みを浮かべるドーパント。

 

 

「そんなに奴が心配か?なら返してやろう!」

 

「っ!?」

 

 

 そう言って右手の振りかぶると掌がゴボゴボと泡立って、勢いよく振るわれると同時に泥の塊が飛んできて咄嗟に避ける。そしてそれの正体に気付く。水分を抜き取られてミイラの様になっているが、タカハシくんのなれの果てだった。

 

 

「ハハハ……!見ろ!ヒモ野郎にお似合いの末路だ!」

 

「貴様…!」

 

 

 怒りのままにトリガーマグナムを向けて弾丸を放つが、ドーパントの肉体にドプンと音を立てて当たったかと思えば擦り抜けて行く。物理攻撃無効タイプか、厄介な。

 

 

「ゴボボ……やった、やった……ウヒヒ……ハハハ…!」

 

 

 トリガーマグナムの弾丸を受けながら笑い声を上げて流動体となって路地裏に逃げ込むドーパント。慌てて追いかけるが、次の瞬間路地裏から見覚えのある女性が出てきたことで咄嗟に物陰に隠れて変身を解く。

 

 

【どうしたんです?ゆかりさん、いきなり変身を解いて】

 

「………今あの路地裏から出てきた女性、今回の依頼人です」

 

 

 ベルトによる交信で相棒に伝えたそれは、今回の依頼人である佐藤紗々良さんその人で。タカハシくんの亡骸に気付いて駆け寄り泣き崩れるその姿は本当のことにしか見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事務所に帰るなり待ち受けていたのは、怒り心頭のあかりであった。

 

 

「先輩!あれはどういうことですか!」

 

「待って。説明は後でしますから」

 

 

 恐らくきりたんが目の前で倒れたのだろう、それはあとにしてテレビを付ける。鷹嘴飛翔の死は地方局「水都テレビ」で大々的に取り上げられた。ささらさんは警察から事情聴取を受けてるらしい。そしてニュースで取り上げられたのは衝撃的な事実の数々。タカハシくんは生前自身に保険金をかけていて、その受取人が家族ではなくささらさんであること。ささらさんはこれまで数多くの男性と付き合ってきて、そのほとんどが怪死していること。テレビではモザイクが掛けられていたもののささらさんの所属する大学…千絵美尾大学での評判もかなり悪いようであると。今思えば、私に抱き着いてきたのも彼女の癖のようなものだったのだろう。

 

 

「うう…私達、騙されてたんですか…?」

 

 

 それを事務所で見るのは私、あかり、そしてきりたんの三人。あかりは信頼していたささらさんの悪女っぷりに顔色を悪くしていて、きりたんは無感動に納豆食パンとかいうよくわからないものを咀嚼していた。

 

 

「犯人は決まりですね。ドーパントが消えた先から現れただけでも確定的なのにこれだけ動機があれば言い逃れもできないでしょう」

 

「…でも、私は彼女の涙が偽物とは思えないんです」

 

「先輩!?」

 

「情で犯人を見逃すんですか?ドーパントの危険性はよく知ってますよね?このままだと証拠不十分で解放された彼女がまた犯行を犯すかもしれませんよ?」

 

「あのー、ドーパント、とは…あ、はい、黙ってます」

 

 

 気になったのか尋ねようとして空気を読んだあかりに内心感謝しつつきりたんを真っ向から睨み付ける。きりたんの言ってることが正しいとはわかっている。だけどどうしても、あの涙が引っかかる。

 

 

「…彼女のことを調べ直してきます」

 

「それでも貴方はハードボイルド気取りの探偵ですか?そんなんだから貴方はハーフボイルドなんですよ!」

 

 

 ハーフボイルド。ハードボイルドには遠く及ばない半熟卵。たびたび甘い判断をする私に対してきりたんの使う呼び名。今回ばかりは言い返せなかった。それでも、言い返せなくてもできることはある。ダブルドライバーと所有している三本のメモリを取り出し机に置くと驚いた表情を浮かべるきりたん。

 

 

「これは置いていきます。今回ばかりは…貴方の手は借りません」

 

「正気ですか?彼女がドーパントなら鷹嘴飛翔の二の舞ですよ?」

 

「おやっさんの教えです。依頼人を信じ抜くこと……私は私の依頼人を信じます」

 

 

 そう言って私はジャケットを羽織ると帽子を手に事務所を後にした。目指すは千絵美尾大学だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あ。探偵さん」

 

「どうも。タカハシさんのことについては…残念です」

 

 

 事務所の結構近場にある千絵美尾大学につくと、ちょうどタクシーからささらさんが降りてくるところだった。白い服は何故か土汚れで汚れている。…彼氏が亡くなったのに大学に来るのはとても怪しいですが…その前に聞きたいことが。

 

 

「ささらさん、聞きたいことがあって来ました。第一発見者だと聞きましたが、ささらさんはどうしてあそこに?」

 

「え?それは、貴方から連絡をもらって……あれ?メールがない…なんで、どうして…?」

 

 

 私の質問に疑問符を浮かべ取り出したスマホを操作するささらさんだったが目に見えて焦り出す。私から連絡をもらった?そんなことした覚えはない。でもそのメールがないのだという。どうか演技でないことを祈るしかない。

 

 

「どうしたの、ささら。そんなところに突っ立って」

 

「あ、つづみちゃん!聞いてよ、この探偵さんからもらったメールが消えてて…」

 

「また嘘?今度は探偵さんまで巻き込んで…」

 

「前のも嘘じゃないってばあ…」

 

 

 そこにやってきてささらさんと仲睦まじく話すのは、青みがかかった黒髪のショートカットが似合う、ちょっとすました態度の女子。緑のスカートに泥が付着しているところを見るに車かなんかに水たまりで受けたのだろうか?ささらさんは機嫌を損ねてキャンパスに向かってしまった。なんか友達?なのか何人かに絡まれていたので一応バットショットを取り出し写真を隠し撮りしておく。するとささらさんを眺めていたつづみさんは溜め息を吐いてその場にとどまっていたので、話を聞いてみることにした。

 

 

「私は探偵の結月ゆかりといいます。あなたは?」

 

「私は鈴木鼓(すずき つづみ)と言います。このたびはうちの親友がご迷惑を…」

 

「親友、ですか」

 

「はい、恥ずかしながら小学からの腐れ縁ですよ」

 

 

 そう困った様な笑みを浮かべるつづみさん。やはり親友から悪い噂が出ているのを気にしているのだろうか。

 

 

「あの、嘘、とは?」

 

「ああ、あの子すぐ嘘をつくんです。特に私の部屋に遊びに来るたび色んなものをとって、それを知らないと言い張る…無自覚なわがまま娘なんですよ、あの子」

 

 

 無自覚。その言葉で思い出すのは事務所で抱き着いてきたあの時のこと。あれもそうだったのだろうか。確かに私が男だったら落とされていたかもしれない。

 

 

「なんでもかんでも無自覚に欲しがって、たくさんの男の人もあの子の無自覚な思わせぶりな態度にコロッと落とされ告白して付き合いだす。なんでか事に至る前にみんな不審死するんですけどね。でもあの子は関与してませんよ、そんな悪知恵が働く子じゃない。やるとしても全力で無自覚にやらかす、それが佐藤紗々良というあの子です」

 

「無自覚にやらかす…」

 

「あんな親友に付き合えるのは私ぐらいですよ。じゃあ私はこれで」

 

 

 そう言ってキャンパスに向かうつづみさん。親友から話を聞いたというのにマイナスな情報しか出てこないのはどうしたものか。…うーん、悪い噂が流れてるなら正確な情報はあまり望めませんし……大学生、つまり大人になりたての子供ならではの情報網を頼るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんなわけでここにきたわけです」

 

「あははー、きりちゃんと喧嘩して、なのにその真下のここに来たんだ!笑えるー!」

 

「こらヒメ。そういじめないの」

 

 

 やってきたのはビリヤード場兼梅酒BAR「鳴花(メイカ)ーズ」…つまり事務所の真下だ。飛び出しといてこの建物に舞い戻るのは格好がつかないが同じフロアじゃないから気にしないことにする。ヒメさんが馬鹿にしてくるけど気にしない、気にしないったら、しない!

 

 

「うん、だけどここに来たのは正解だよ。近場なのもあって、大学生みたいな若者はお洒落な酒を飲める場所を探してここにやってくる」

 

 

 そうクールに笑うミコトさんに、ここに来たことは正解だったと思わずガッツポーズをとる。さて、あとは関連するワードを並べてここのマスターであるミコトさんの聞いたであろう情報を…。

 

 

「あ、そういえばさっきテレビに出てたタカハシって仏さんの名前、この間仕事中に聞いたよ」

 

「え!?ヒメさん、本当ですか!?」

 

「うん。タカハシくんに振られたー!って泣きじゃくってた」

 

「振られた?」

 

 

 のほほんとヒメさんが出した情報。それが全ての答えに繋がっている気がする。すると着信音。スタッグフォンを取り出してみると表示される「あかり」の文字に考える間もなく繋げる。

 

 

「あ、あかりですか?今こちらで新情報が……」

 

《「あ、よかった繋がった。えーとですね、きりたんに頼まれたわけじゃないんですけどー聞きたいことがありましてー」》

 

「なんですか白々しい」

 

《「【ヘドロ】とか【タール】とか【ウォーター】まで調べたけどなんもでないんでーなんか気になるワードないかなー!なんてー」》

 

 

 ……なるほど、「検索」してくれているわけですね。きりたんも意地を張っているのか直接聞こうとはしないらしい。いいだろう、敵メモリの正体も気になってたところです。脳裏に浮かぶのはささらさんの服装で気になったアレだ。

 

 

「追加キーワード「土汚れ」です。……ヒメさんその泣いてた人…この写真の中にいますか?」




登場、水都のミュージアム「東北家」とその頭目、東北至子。フィリップがきりたんな時点で想像ついていたかと思いますが幹部の名前は一応伏せておきます。

濁流のドーパントの正体は一体誰で何のメモリなのか。原作とは一味違った謎をお送りします。ドーパントは容姿でばれそうですが(汗)関係ないけど原作初登場のリボルギャリーのアクションがかなり好きです。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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