楽しんでいただけたら幸いです。
ゆかりさんがついなさんとの約束を守り見つけた真犯人。それは、三つ目の殺人で首を斬られて殺されたはずの赤井快子だった。
「そうだよ、私が神威岳を名乗ったウェブ・ドーパントの正体だ」
メモリを弄びながら何でもない様にそう言って笑う赤井快子。三人もの人間を殺害し、幼馴染二人に重傷を負わせた人間とは思えない笑みだった。
「お前、なんで…!」
「探偵さんが気になったことから答えて行こうか。なんでついながいて驚かなかったのか?ついなを巻き込むためにわざわざ捜し出して連れ戻した。太刀筋が同じ?当たり前だよ、私は師匠の弟子だもの。なんで三人目の死体の首を断ったのか?私と同じ背丈の百合子に私の服を着せて首から上を斬ることで私に見せかけるために決まってるじゃん。「し」って言いかけた理由?師匠を師匠と呼びそうになったから。悲鳴を上げた理由?は…正直やらかしたね。ただ臨場感を持たせたかっただけなんだけど…素人じゃこれが限界か」
「んなこと聞いてないわ!なんでこんなことしたんや!」
「は?決まってるでしょ。師匠が死ぬことになった原因、方相氏が憎くて憎くて憎くてしょうがないからだよ!!」
何でもない様にゆかりさんが気になったことについて答えていたと思えば死んだ目で怒鳴り散らす赤井快子。精神が不安定だ。ガイアメモリの影響もあるだろうが、これは……。
「…恋慕?」
「そうだよ!師匠に恋していたよ!悪い?!生憎と、師匠の目にはついなしか映ってなかったから告白する前に失恋したけどね!大好きだった。私が並ぶことを諦めたついなの隣に立とうと努力して実際に追い付いた師匠を尊敬していた。私もついなと並びたくて、教えを乞いた。なのに、ついな!貴方がいたのに!師匠は死んだ!師匠だけが死んだ!」
激昂して捲し立てる赤井快子。今まで解き放てなかったのだろう激情を解き放っているのだろうか。こういうのはゆかりさんが相手すべきなんだけどなあ。
「方相氏じゃなかったらあんなバケモノに挑むこともなかったんだ。方相氏じゃなかったら知らない誰かのために命を張ることも無かったんだ。天才のついなですら勝てないんだよ!?凡人の師匠が勝てるわけないじゃん!逃げればよかったのに、方相氏だから逃げれなかった!方相氏が、方相氏なんて習慣が!存在しなければ師匠は死ななかった!……あの人を私から奪ったのは方相氏だ。だから私は方相氏を許さない」
「そんな、そんなの!悪いのはうちだけやんか!与一を、隆斗を、百合子を!殺す必要なんてなかったやんか!?」
「ついなが方相氏で居続けるからだよ、方相氏を名乗りながら刑事でもあろうとするからだよ。トラウマになったのなら方相氏なんてやめてしまえばよかったのに。方相氏であり続けながら復讐しようと足掻いてるのを知らされてさ。改めて見返したら師匠が死んだのにそれを当たり前だと断じて仕事を続けるみんなを見てさ。怒るなって方が無理だよ!」
メモリを握った手をガタガタと震わせる赤井快子。明らかに正気ではないし、言っていることがおかしくなってきてる。
「知らされたやと…?まさか、そのメモリを渡したのは…!」
「この村で方相氏が生まれているって知ってやってきたホワイトアウトの人にもらったんだ、これを。もちろんすぐにこれを使って殺そうとしたけど返り討ちにされた。手も足も出なかった。人間は自然災害には敵わないんだ。自然災害を相手に復讐しようとしてるついなは馬鹿だよ。でもさ、だったらこの復讐の矛先をどこに向ければいいのよ。……そんなの、もう!師匠が死んでも平然としていた方相氏なんていうクズどもを殺すしかないじゃない…!」
「快子、落ち着け。お前の考えは支離滅裂や。メモリの毒素でおかしくなっとる」
「おかしくないよ!正当な復讐なんて存在しない!許せないから殺す!それだけだ!」
《ウェブ!》
糸が通った糸車でWを描いたメモリを右のつむじに突き刺して姿を変える赤井快子。目が糸の束でグルグル巻きになってて現実を直視しない蚕を模した頭部、糸車の様な肩はからころと無意味に回り続けて空回りしている感情を彷彿とさせ、全身に纏った糸の…今回は白無垢を模した装甲で侍にも見えるが繭に閉じこもっているだけの様にも見え、青黒い虫の様な四肢は醜い心の中身を曝け出してるよう。ウェブ・ドーパントは糸刀を手に構えると、肩の糸車を高速回転させて大量の糸を放出する。
「なにを…!?」
「邪魔はさせない。ついなをこの手で殺す邪魔はさせない…!」
現れたのは、全身白いが露出している目が黒く光ってるウェブ・ドーパントの分身が四体。私に向かって飛びかかってきた。振り下ろされた糸刀をどこからともなく姿を現したファングメモリが弾いてくれて難を逃れる。
「ゆかりさん!」
《ファング!》
【ほい来た!エクストリームは無理ですが…《ジョーカー!》】
「【変身!】」
《ファング!ジョーカー!》
ファングメモリを変形させてジョーカーメモリを装填させたダブルドライバーに装填、ファングジョーカーに変身して迎え撃つ。
「快子……お前はうちの罪そのものや。うちが絶対に倒す!倒して所長を助ける!うちかて仮面ライダーの端くれやからな!」
《アクセル!》
「二回も私に敗れた癖によく言えるね!」
「三度目の正直って奴や。変…身!」
《アクセル!》
ついなさんはアクセルに変身。エンジンブレードを手にして糸刀とぶつけ合う。動きのキレがいい。吹っ切れてる。剣の勢いでウェブ・ドーパントを押している。
「
《エレクトリック!》
「無駄や!」
ほどけた糸剣による八つの斬撃を、電撃を纏ったエンジンブレードで斬り払うアクセル。そのまま斬撃をウェブ・ドーパントに叩き込むがやはり斬り裂いた糸の装甲は修復されてしまう。何て耐久力だ。
「ハハハハハッ!無駄よ!私の執念の糸は、決して断ち切れない!」
「むっ!?」
ほどけた糸を集束させて蛇腹剣の様にした糸剣を叩きつけられて吹き飛ばされるアクセル。さらに左手を突き出して蜘蛛の巣状に糸を展開して盾にするウェブ・ドーパント。アクセルは物ともせず斬り裂いて突っ込もうとするが、斬った糸はアクセルの身体にまとわりついたかと思えばピンッと張って拘束する。身動きの取れないアクセルに連続で斬りつけて行くウェブ・ドーパントだったが、アクセルがスロットルを回して赤熱化し灼熱の炎を纏ったことで拘束が解かれ殴り飛ばされる。
「ぐあっ!?」
「快子、お前はうちに勝てへん。ガイアメモリなんぞに手を出したお前は、うちにも、岳にも、絶対に敵わへん!」
「私の防御を崩してから言いなさいよ!」
両肩の糸車が高速回転し、次々と糸玉を射出してミサイルポッドの如く攻撃するウェブ・ドーパント。アクセルはエンジンブレードを横に構えてその場で高速回転し次々と糸玉を弾いて撃墜していくが防ぎきれず炸裂。弾けて糸の斬撃が連続して炸裂してアクセルの装甲を罅割らせて吹き飛ばした。駄目だ、アクセルの装甲でももう耐えきれない…!
「がはっ…」
「もう私はついなを越えた!師匠の剣で、ついなを!……ついなを、越えれたよ、師匠…!」
「じゃあかしいわ!なにが岳の剣や!確かに岳の剣を再現はできとったが、メモリの力に頼って与一や隆斗や百合子を殺し、恵に勝っといて!なにが岳の剣や!恥を知れ!」
「う…うるさい、うるさい!私の剣は師匠の剣だ…!手も足も出ないお前が、好き勝手言うなあ!」
激昂して突進してきたウェブ・ドーパントにアクセルはエンジンブレードを投擲して吹き飛ばし牽制、トライアルメモリを取り出した。
「それは…!?」
「うちの仲間が持って来てくれた新しい力や。お前の剣が怖くて使うのを躊躇してたが…覚悟は決めた!」
《トライアル!》
「これは贖罪や。奴へ復讐するよりも大事なことがある、それは今、お前を止める事や!」
《トライアル!》
アクセルメモリを引き抜き、ボタンを押したトライアルメモリを信号機の様な形状に変形、ドライバーに装填。オフロードバイクのタイヤとスポークで描かれたTの文字が浮かび上がり、トライアルメモリの信号の色が赤から黄色に、同時に通常の赤いアクセルから黄色い姿…イエローシグナルに変化し、信号が青になると同時に全身の装甲が弾け飛んでその姿を変えた。
「今こそ呪われた過去を…全て、振り切るで!」
全身蒼く、軽量化されていて印象が変わる。バイクフォームにならないからか全身から変形用パーツが取り除かれているが、残されている背部と脚部のタイヤはディスクタイプからスポークつきのオフロードタイプに変更。オフロードバイク用ヘルメットを模した形状の頭部のオレンジ色の複眼が輝く。仮面ライダーアクセルトライアル。
「呪われた、過去だと…?お前は一生師匠の事を引きずれ!その責任があるでしょう!」
「そんなこと、岳が望むわけがあらへん!あいつのガワしか見てないお前が岳を語るな!」
「そんな紙装甲で受けれるか!
糸剣がほどかれ、八つの斬撃が同時に複雑な軌道を描いて襲いかかる。それをアクセルトライアルは高速で動くことで当たることなく駆け抜けてパンチ。怯んだウェブ・ドーパントは糸剣を元に戻して乱舞を繰り出すが、そのすべてをアクセルトライアルは高速で体を逸らすことで避けていく。
「
糸刀を円形に振るい、格子状に展開された糸が煌めきアクセルトライアルを拘束せんとするがアクセルトライアルは高速のバックステップで回避。落ちていたエンジンブレードを拾うと高速の乱舞で斬り裂いて糸の檻を破壊する。
「やりますね!」
『こちらもそろそろ決めましょう』
四体の分身と戦っていたこちらだったが、既に二体は撃破した糸の残骸がその場に転がっている。本物ほどの技量はなくただ単に襲いかかってくるだけだから怖くはない。タクティカルホーンを三回叩く。
《ファング!マキシマムドライブ!》
「『ファングストライザー!』」
そのまま回し蹴りで二体同時に破壊。アクセルトライアルにウェブ・ドーパントが気を取られている間に人質のあかりさんを助けに行く。
「だ、だけど!私の装甲を突破することはできない!そうでしょ!?」
「どうやろな?…あえて言わせてもらうわ。さあ、お前の罪を数えろ」
エンジンブレードをその場に突き刺してトライアルメモリを引き抜きストップウォッチ型に戻すアクセルトライアル。
「力を貸さんかい、トライアル!」
そして即面のボタンを押すとタイマーが作動し、放り投げると同時に最高速度だろう速さでウェブ・ドーパントに接近。咄嗟にウェブ・ドーパントは糸刀ではなく糸玉を射出して迎撃せんとするが、それを全てアクセルトライアルは回避して目前まで迫る。
「はああ!」
「がっ!?ぐっ!?」
速すぎて気付いていないウェブ・ドーパントに拳を繰り出し怯ませるとそのまま連続蹴りに移行。T字を描く様に連続蹴りを叩き込み、全ての糸の装甲に何度も何度も蹴りを浴びせて破壊していく。修復が間に合っていない。そのまま本体にも何度も蹴りを叩き込み、落ちてきたトライアルメモリをキャッチしタイマーを止めるアクセルトライアル。それは10秒にも満たない攻防だった。
《トライアル!マキシマムドライブ!》
「9.8秒、それがお前の絶望までのタイムや!」
「そんな、そんなあぁあああああああっ!?」
そしてウェブ・ドーパントは爆散。ついなさんが復讐の闇を振り切って手に入れたのは、大切な者を救うための10秒間だった。
「があ!?」
ウェブメモリが排出されて砕け散り、倒れる赤井快子。だがその様子がおかしい。胸を押さえて掻き毟ってる。慌てて駆け寄るアクセルトライアルと、あかりさんを救出して駆け寄る私達。
「あっ、がっ…」
「なんや!?何が起きてる!?」
「これはメモリの中毒症状…!?まさか」
『まさかってなんですかきりたん!?』
「…ホワイトアウトに渡されたメモリと言ってましたが、奴がただのメモリを渡すとは思いません。この症状からして五倍の毒素が実験として使われていたのだと思われます…正気を失ってたのも無理もない。そんなもの、人間には耐えられない…方相氏でなかったら即死してもおかしくない代物です。」
「そんな、そんな馬鹿なことがあるか!」
変身を解き、拳を地面に叩きつけるついなさん。するとそれを見た赤井快子が手を伸ばした。
「ごめんね、ついな……私、どうかしてた。自業自得だから、気にすること、ないよ…」
「気にしないわけないやろ!?せっかく正気に戻ったのに…」
「………ああ、でも……これで、師匠の、みんなのところに……謝らないとなあ…」
そう涙を流しながら言い残して、赤井快子は消滅した。残ったのは倒された時に衝撃で落ちたマフラーだけで。ついなさんはマフラーを握りしめながら涙する。
「こんな、こんなことって…」
一部始終を見ていたあかりが涙を流して怒りに震える。気持ちはみんな同じだ。
「…うちはあいつを許さへん。岳を殺したばかりか快子を狂気に落として仲間を殺させて……絶対に許さへん」
『ホワイトアウト…私達も許すわけにはいきません』
「絶対に止めましょう…!」
そう改めて決意する私達だった。
こうして
「鬼も元は人間だったんか…」
「メモリを介さず地球の記憶の影響を受けているので自我は失っているものと思われます。方相氏は簡単に言うとドーパントにならずにその力を引き出せる人間の姿をしたドーパントみたいなものですね」
後部座席に座っているきりたんの声を聞きながら、快子さんのマフラーを巻き後部座席にあかりを乗せたついなさんと共に水都への帰路を走る。色々納得しました。
「そういえばついなさんは村に残らなくても…?」
「たまに帰郷はするがな。今のうちが守るべき場所は水都や。これからもよろしくな、所長。きりたん。……ゆかり!」
「…っ!はい、よろしくお願いしますついなさん!」
このメンバーでこれからもやっていく。そう信じていたのが覆されるのは水都に帰ってすぐだった。
《ゴールドラッシュ!》
「オラオラオラオラ、オラァ!」
水都に帰ってすぐ、出くわしたドーパントに変身しようとした矢先。ガスタンクのような丸みを帯びた姿の…恐らくタンク・ドーパントに次々と攻撃を叩き込むのは見知らぬ仮面ライダーだった。全身金色のダブルに赤い海賊を思わせる装甲が上着の様に身に付けられてる、腰に蒼いダブルドライバーを巻いた姿の仮面ライダーは黄金の光を纏って次々と拳を叩き込んでいた。
「い、いいのか!?俺を倒せば街一つ消し飛ぶぞ!」
「「「「なっ!?」」」」
追い詰められたドーパントの言い放った言葉に驚く私たち。そんなの、事実ならどうすれば…
「汚い花火するなら一人でやれよ、派手にな!」
《ゴールド!マキシマムドライブ!》
謎のライダーはドライバー左側のメモリを引き抜いて腰のマキシマムスロットに装填。両手を地面に触れると黄金化して津波が発生しドーパントを取り囲み上空にタワーの様に変形させて打ち上げると、その手に海賊のカットラスの様な武器を取り出すと鍔のスロットにドライバー右側の赤いPと描かれたメモリを装填。グルングルン振り回す謎のライダー。その光景にデジャヴを感じた。
「オレの名前を覚えて逝きな!仮面ライダーエルドラゴ、ってなあ!」
《パイレーツ!マキシマムドライブ!》
「
そして両手で構えて振り上げると黄金の斬撃をタワーに放たれ、タワーを伝って斬撃が遥か上空のドーパントに炸裂し爆散。街一つは言いすぎだったが一角は吹き飛ばすほどの大爆発が発生した。黄金のタワーをアスファルトに戻し、乗っていたドーパントだったであろう太めの男にどうしたものかと悩んでいた謎のライダー…エルドラゴはこちらに気付くと、周りに他の人間の目がないことを確認してからドライバーを閉じて変身を解除する。現れたのは、脳裏に浮かんでいた知っている人物だった。
「リリィ金堂…!?」
「よっ、久しぶりだな仮面ライダー」
リリィ金堂。エルドラド・ドーパントにしてガイアメモリマフィア、エル・ドラードの首魁だった女がそこにいた。
というわけでオリジナルライダー、エルドラゴ登場。リリィの過去編やったのはこのフラグだったのだ。
快子の動機はメモリで暴走した復讐心と恋慕でした。雁字搦めの「過去」という糸に縛られ前も見えなくなっていた哀れなドーパント、というデザインになってます。
そんなウェブ・ドーパントに引導を渡したアクセルトライアル。Wのメモリの相手というのが皮肉です。
方相氏の正体は人間の姿をしたドーパント、鬼はメモリを介さない不完全なドーパント。原作でも風都だけに「アレ」があるのもおかしい話なので日本中に漏れ出している地球の記憶があるという持論からこういう設定になりました。要は簡易版フィリップ。
・タンク・ドーパント
「貯蔵庫」の記憶を宿したドーパント。ガスタンクのような丸みを帯びた姿で機動力は非常に低いが、エネルギーを無尽蔵に貯め込む能力を持ち、下手に攻撃すれば町一つ消し飛ばすほどの危険なドーパント。リアクター・ドーパントの下位互換的存在。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。