今回から物語の核心に迫る「死人のO」編を始めまっせ。原作はMOVIE大戦2010になります。あの人もこの人も再登場。楽しんでいただけたら幸いです。
「ちゅわ。皆さん集まりましたわね?」
東北家の屋敷の広間で。集まった幹部たちの顔―――焦燥しきった最愛の妹の顔、ニコニコ笑顔の弟の顔、真面目に引き締めている売買トップの顔、期待の視線を向ける狂人の顔――――を確認して、一息吐いてから続ける東北至子。
「奏楽さんの報告でエクストリームが出現してから数日……昨夜、わたくしの「尻尾」がエクストリームの出現を確認しましたわ」
「…あの、至子姉さま…以前に聞きそびれたんですけど、エクストリームとは…?」
純子の問いかけに「そういえば説明してませんでしたわね」と口元を押さえる至子。一瞬の思考の後に口を開く。
「エクストリームとは究極のメモリですわ。これが出たということはあの女が動いてる証……そして我々の悲願に一歩近づいた証でもありますわ」
「あの女とは誰の事なのだー?!」
「10年前に我々を捨て、実験体を連れロストドライバーの設計図を持って逃げ出したあの女ですわ」
「10年前…となると、私と奏楽さんは知りませんね?」
「10年前とはミュージアムが誕生した時期のお話…面白そうですね!」
10年前と聞いて険しい顔を浮かべる純子と蛇門を見て、なにかあったのだなと察する、養子組の星香と奏楽。
「あの女を引き摺り出して実験体の在り処を知りたいところですわ。そのために……星香さん、貴方の部下に確か「死人の誘惑」を得意とする人間がいましたわね」
「はい。死人を蘇らせて、その言葉でメモリを買わせるという悪徳商法で私は好みませんが…」
「なんですかその人、すごく面白そうじゃないですか!」
「至子姉さまの霊媒の方が凄いのだ」
「悪趣味…」
「死人の誘惑」というワードに思い思いの反応をする幹部たちを、プレッシャーを出すことで諌めてにっこり笑う至子。
「その方を私の直属に配しますわ。父様の悲願、ガイアインパクト…必ず成功させてみせますわ」
その日、ミュージアムが本格的に動き出そうとしていた。
REXとの決戦から十数日。あれからずっとリリィは我が事務所に入り浸ってる。部下二人が忙しくて、暇なんだそうだ。いやラーメン屋台「金堂」の看板娘じゃなかったんかい。え、自分が美人過ぎて逆に客が来ないからキクさんに任せた?ええ……。あかりとついなさんもきりたんが興味を持ってしまったタコ焼き巡りに保護者として付き合って―――多分あかりは自分が食べたかっただけですが―――大阪に行っちゃいましたし……あと何日リリィと二人きりで過ごせばいいのだろう。留守番してもらって喫茶「弦巻」にご飯を食べに行けるからそこは助かるが。
「つまりは……ニートと」
「言い返せん。バイトでもすればいいんだろうが、この美しさのせいか全然採用されなくてな…」
「いや多分経歴のせいでしょ。どこだって元犯罪者を雇いたくないですよ」
「正直は美徳だぞ」
「嘘も方便です」
どうやら履歴書に馬鹿正直に元犯罪者です、と書いたらしい。リリィらしいと言えばそうですが、嘘を吐けない性格は損ですね。すると扉をコンコンと叩く音が聞こえ、「どうぞ」と声をかけると扉が開いてキャスケットを深く被り紺色のコートに身を包んだ眼鏡の女性が顔を出す。
「こんにちは。こちら紲星探偵事務所でよろしいでしょうか…」
「はい。こちら紲星探偵事務所です。猫探しから浮気調査まで、どんな依頼もハードボイルドに解決。現在所長は不在ですが当事務所の探偵の私が承ります。ご依頼ですか?」
「えっと……おかしな話なんですけど」
リリィを客席からどかしながら受け答えする。なんか聞いたことある声だな、とか思ってると。眼鏡と帽子を外し、青い髪と碧眼を見せた女性に目が点となる。
「死んだはずの友人を捜してほしいんです…」
「う、う、ウナちゃん…!?」
歌姫IAに並ぶ人気を誇る水都のアイドルにして大人気ラジオ番組「音街ウナのポジティブ★ワールド」のMC、音街ウナがそこにいた。
「音街ウナ。本名、
大人しく私のデスクに座って見守っているリリィを尻目に、私は依頼人であるアイドルから事情を聞いていた。
「はい。ロストメモリーデイ…知ってます?」
「もちろんです。ウナちゃんの代表曲じゃないですか」
「その曲を作るきっかけになった、10年前、小学五年生の時に亡くした友人をあの頃の姿のままで先日見かけたんです…」
「先日と言うと」
「水都総合病院で起きた大量怪死事件の頃に、病院で精神科の定期検診を受けていた時の事です…」
「あの事件、ですか」
ダンデライオン・ドーパントと対決し私がダウンして、きりたんが事件解決のために奔走した事件だ。未だに記憶に新しい。その精神科の先生が犯人だったわけだがウナちゃんが無事でよかった。
「ライオンの様な怪物に追われながら病院内を走るあの子を見かけて、最初は夢かなとも思ったんですけど」
「んん?」
あれ、なんかデジャヴ。ライオンの様な怪物に追いかけ回される小学五年生なんて心当たりしかないんだが。
「でも最近、死人が蘇って水都のあちこちに出没してるって噂を聞いてもしかしてと思って…」
「あのー、そのご友人の名前をお聞きしても?」
「…東北。
「「!」」
差し出された当時の写真に写る人物とその名前に思わず目を見開く私とリリィ。そこにはウナちゃんであろう少女と、ワンピースを着て笑顔のきりたんが写っていた。……え?きりたんのルーツが知れたかもしれない、というのはいい。だけど……きりたんは、もう死んでいる?背中に氷を突っ込まれたような寒気が私の身体を震わせた。
とりあえずウナちゃんには連絡先を聞いてから丁重にお帰りいただき、私とリリィは無言で睨み合っていた。
「…おい」
「なんですか」
「お前の相棒の出自は?」
「記憶喪失なので知りません。…ああ、そういえば貴方にはビギンズナイトを語ってませんでしたね」
とりあえず情報を共有するために掻い摘んでビギンズナイトの情報をリリィに話した。
「…きりたんは結局何者なんだ」
「きりたん本人も知らないんですよ。何故地球の本棚に入れるのか、何故ダブルの中核になっているのか、何故エクストリームメモリに入ることができるのか…なにも、わからないです」
「それが今日、実は死んでいましたと聞かされたわけか」
「まさかロストメモリーデイがきりたんのことを歌っている歌だったなんて…きりたんが気に入るわけです」
楽しそうにあの曲を聞いていたきりたんの顔を思い出す。まさか自分のことを歌った曲とは夢にも思わなかっただろう。
「で、どうするんだ?きりたんに話すのか?」
「…そりゃあ、黙ってるのは駄目でしょうよ。でもどうしますかね…まだ依頼を受けたわけじゃないですが、ウナちゃんの依頼には応えたいです…」
「なら気になることがあったな」
「気になる事と言うと?」
「死人が蘇って水都のあちこちに出没してるって噂だ」
「それですか」
まあ事実なのだとしたらドーパントの仕業なのだろう。なにがしたいのかよくわからないが。
「とりあえず調べてみますか。リリィは鳴花ーズで聞き込みをお願いします。私は情報屋たちから情報をもらってきます」
「了解だ。…ってオレはここの調査員じゃないぞ」
「暇なんでしょ、手伝ってください。なんならここで働きます?」
「…それもいいな」
「人手が足りないんでいつでも歓迎ですよ。では」
そう言い残して、私はハードボイルダーで水都タワーに向かった。
「死人が蘇る噂、本当らしいっすよ。この間、明峰春を街で見かけたって言ってた友達がいましたし」
「私も沖田君を見ました。怖くて近づけませんでしたけど。歩色町の琴葉神社近くです」
「JTR事件の犠牲者の目撃情報ですか…ありがとうございます」
水都タワーでスイーツを食べていたJKコンビからは目撃情報を。
「ネットだと死人を追いかけた先で「夢を買いませんか?」などと言ってくる美女と出会えるっていう噂がありますね」
「夢を買う…?」
「なんでもそれは、超人になれる夢の小箱、だとも」
「!」
相変わらず公園の「金堂」でラーメンを食べていたネルさんからは確信に迫る情報を。
「全ての情報を照らし合わせると琴葉神社が怪しい、というわけですが…」
「まさかゆかりさん、お姉ちゃんを疑ってるんですか!?」
「どうどう葵ちゃん。うちも死んだお母さんを見たで。葵ちゃんもそんなこと言ってたなあ?」
「私も先日、お父さんを見かけた気がしましたけど…」
琴葉神社の茜さんと、釈放されたらしい葵さんを訪ねると新たな情報を得ることができた。
「…それ、どこです?」
「コンビニから帰る道の途中。ほら、線路下のトンネルがある道や」
「感謝します」
そう礼を言って、いざ向かおうとしたときだった。琴葉家を出た矢先、人気の少ない神社の境内にそれはいた。
「そんな、馬鹿な……」
帽子とペストマスクを被った、着流し姿の初老の男。虚音イフ。おやっさんが、そこにいた。後ろから琴葉姉妹が顔を出す。この二人は、毎年ここに初詣に来ていた他、私が飲み会に誘うなどでおやっさんと顔見知りだった。
「あれ、イフさんや。久しぶりやなあ」
「本当だね、一年ちょいぐらい?…ゆかりさん、どうしたの?」
「おやっさんは…おやっさんは、一年とちょっと前に亡くなっています。この目で見ました…!」
「「え!?」」
「本当に、死者が蘇るだなんて…」
死人が蘇る。まさかとは思いましたが、涙が出てくる。あの時失った、おやっさんの姿だ。よたよたと駆け寄ろうとする。しかし謎の衝撃が私の腹部を襲い、蹲ってしまう。
「ぐっあ…今、のは…おやっさん…?」
おやっさんを見上げると、帽子を手に取りその姿が骸骨男……仮面ライダースカルへと変身。帽子を被り直し、片手で帽子を押さえながらスカルマグナムをこちらに向けた。そん、な……
「さあ、お前の罪を数えろ」
《ジョーカー!》
「っ……変身!」
《サイクロン!ジョーカー!》
銃撃から琴葉姉妹を守るために咄嗟に変身。きりたんがすぐにメモリを装填してくれたためなんとか防ぐことができた。防いだジョーカーの腕がシューシューと音を鳴らして煙が上がる。なんて威力だ。
「二人とも、屋内に逃げてください!」
「お、おう!逃げるで葵ちゃん!」
「え、あ、うん!」
『ゆかりさん!?何事ですか!?なんで、スカルが…』
「死人が蘇るという事件を追っていて遭遇しました。いきなり襲ってきて……私、どうすれば…」
琴葉姉妹を屋内に逃がして、構えるとスカルはスカルマグナムを胸に取りつけて突進、徒手空拳で殴ってきた。咄嗟に受け止め、拳を繰り出すも見えない壁に阻まれて弾かれてしまう。
「なに、が……?」
『スカルの防御力がここまでとは…!ここはエクストリームで…』
「駄目です、おやっさんなんですよ!?せっかく、会えたのに!倒すなんて…」
『ゆかりさん!しっかりしてください!攻撃してくるんですよ!?敵なんですよ!?』
「駄目です、ぐあああ!?」
再びスカルマグナムによる銃撃が私達を襲う。胸部装甲が爆ぜて煙を立てている。さらに銃撃を浴びる。これ以上は不味い。だけど、頭ではわかってるのに…攻撃することが、できない…!
『ゆかりさん!しっかりしてください、ゆかりさん!こうなったら…!』
《ルナ!》《ルナ!ジョーカー!》
『私がやります!』
するときりたんが右腕を動かしてルナジョーカーに変身。右腕を伸ばして攻撃する。しかし見えない攻撃に弾かれ、手首を掴まれて引っ張られ蹴りを入れられ変身が強制解除されてしまう。
「ぐっ、あっ…」
「……」
意識が薄れる中、そのまま黙って帽子を押さえながら去って行くスカルに、咄嗟に手を伸ばしていた。
「待って、待って!おやっさん!おやっさん…!」
しかしスカルは振り返る事も無く。そのまま私は気を失った。
「ゆかりのやつ、琴葉神社に行くとメールしたきり連絡がないってどういうことだ…!」
ビートルフォンでメールが来てないか確認しつつ、ミダスホイーラーで琴葉神社を目指す。アイツに限って大丈夫だとは思うが何かあったのか…?
「っ!」
もうすぐ琴葉神社ってところでそれが見えた。石段を降りてくる骸骨男……仮面ライダースカル。ついさっき、死んだと聞かされたはずの因縁の敵の姿に、ゆかりになにかあったのだと悟る。右手でハンドルを握ったまま取り出したダブルドライバーNEOを腰に取りつけ、さらに二本のメモリのボタンを鳴らして一本ずつ挿してドライバーを展開する。
《ゴールド!》《パイレーツ!》
「変身!」
《ゴールデンパイレーツ!》
そしてエルドラゴに変身しながらミダスホイーラーを全速力でスカルにぶつけた…はずだった。
「なんだこれ、受け止められた…?」
スカルの眼前で止められたミダスホイーラーから飛び降りて飛び蹴りを繰り出す。しかしスカルはバックステップで回避。スカルマグナムを取り出して乱射してきたので、パイレーツカリバーで全弾叩き落とす。
「あの時の雪辱、晴らしてやる!」
パイレーツカリバーを振り回すと分かりやすく後退するスカル。このまま追い詰めようとしたところで、スカルの姿がぶれた。
「え…?」
スカルの姿がぶれて現れたそれに、思わず剣を寸止めしてしまい。金堂雛菊。今は亡き美しかった頃の母の姿に呆けてしまい、その正体に気付いた瞬間には胸元にそれが打ち込まれていて。
「くっそ……」
変身解除され力なく倒れ伏すオレを、母の姿をしたそれは冷めた目で見下ろしてそのまま去って行った。なんとか、ゆかりに、あれの正体を……ああ、駄目か。意識が……。
ついに本人登場、音街ウナこと乙町海鳴の口から語られた「東北記理子」。10年前に亡くなった彼女と同一人物だと思われるきりたんの正体とは。
地味に久々全員集結ミュージアム。実験体を連れ逃げ出した女、というワードが解禁されました。誰読さんのことなんだろうなー?
結構仲良しになってるゆかりとリリィ。事務所に新しい仲間が増える日も近いかも?そんなゆかりの前に現れた虚音イフこと仮面ライダースカル。そしてリリィの前に現れたリリィの母親。そして謎の壁や攻撃。その正体は…?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。