ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。今回は核心に迫りまっせ。楽しんでいただけたら幸いです。


第三十五話:死人のO/母親か相棒か

 あのあと、事務所に帰ろうとしたらついなさんがすぐ近くで倒れていたのを見つけた。その手についていた謎のぬめる液体が気になったものの、骨折や打ち身が酷かったのでリボルギャリーを呼んで事務所に運び込んだ。既にあかりもタクシーを使っていたのか帰っていて、ガレージから私達が出てきて驚いていた。

 

 

「うぇ!?ついなさん!?あんなに元気に向かったのにどうして!?」

 

「そんなことはいいから包帯!あとなんか添え木になりそうなもの!」

 

「よく見たらゆかりさんときりたんもボロボロじゃないですか!?」

 

「メモリのダメージは普通の手段じゃ治らないからいいんです!消毒はした方がいいのでそれも!」

 

「は、はい!」

 

 

 ドタバタと救急箱を持ってきたあかりが半泣きでついなさんに治療を施していく。あの役村(えんのむら)の一件以来仲良くなったから気が気でないのだろう。私ときりたんも互いに消毒液をつけたガーゼを傷口に当てて包帯を巻いて行く。

 

 

「…ゆかりさん。ウナちゃんの話、私が東北記理子という名前だということ…本当なんですか?」

 

「まだわかりません。その可能性があるってだけの話です。でも、ウナちゃんにはまだ話さない方がいいと思います。…何故かはわかりませんけど直感です」

 

「…まあ私はただのきりたんです。気にしないことにします」

 

 

 そう笑うきりたん。…本当は知りたいだろうに、無理をして…。しかし東北記理子、東北、か…。水都でも有名な名家の東北家と同じ苗字なのは偶然だろうか。いや、まさかね。

 

 

「それより、今回の敵の狙いがなんとなくわかりました。多分、ついなさんを襲ったのは神威岳の姿をしたなにかです。仮面ライダーばかり直接狙われてるのは恐らく、月読アイを誘き出すため。あのナインテイルフォックス…ミュージアムの首魁であろう人物の言葉からここまでは推理できます」

 

「実験体は何処だってやつですね」

 

「やっぱり、そういうことだよね」

 

「「「!?」」」

 

 

 いつの間にか入り口を開いて立っていた少女に私ときりたんとあかりの驚愕の視線が注がれる。何時の間に。

 

 

「貴方が月読アイですか…?」

 

「そうだよー、できそこないのきみとはこえだけだからはじめましてだね」

 

「できそこなっ……」

 

「だってやっぱり、ナインテイルフォックスにはかなわなかったじゃん。プレッシャーにもかんぜんにまけていたし」

 

「ぐっ」

 

 

 言い負かされて落ち込む私。いやでもできそこないはひどくないですか…?しかも蔑む様な視線は辛い。私が何かしましたか…?いや、「狐」に手も足も出ませんでしたが誰だってああなると思うんですけど。

 

 

「月読アイ。貴方が連れて逃げ出したという実験体は、「狐」に渡さない方がいいんですね?」

 

「うん。だからきりたんだろうとおしえられないし、わたしは「狐」のまえにはでられない。たとえついなやリリィがしんでも」

 

「貴方は私のなんなのですか。私の何を知ってるんですか…!」

 

 

 気にしないとは言った物の、答えを知ってそうな人物の登場に焦ったのだろう、問いかけたきりたんに、月読アイは困った様な表情となり。

 

 

「…んー、ははおやっていったらしんじる?」

 

「え」

 

「!?」

 

「は、母親!?」

 

 

 その一言に固まる私達三人。きりたんなんか驚きすぎて固まっちゃってる。いやでも、どう見ても童女………初峯弥美っていう老婆なのに20代みたいな姿って言う前例がいたか。あれはたしかフレンジーのガイアメモリの影響で恐らくハイドープみたいなもので……あ。

 

 

「もしかして、ガイアメモリの影響ですか?」

 

「のーこめんと。もしかしたらウソかもね?」

 

「いやダブルドライバーやアクセルドライバーやダブルドライバーNEOにメモリを作った人がただの幼稚園児なわけが…」

 

「のーこめんと!」

 

 

 裾をひらひらさせながらそう言う月読アイ。すると目をグルグルさせていたきりたんが正気に戻り、おずおずと尋ねてきた。

 

 

「あ、あの……父親なら遠祢照や木偶蔵さんでわかりますけど、母親とは…なんなんでしょうか」

 

「え」

 

「え」

 

 

 まさかの言葉に固まる私とあかり。いや記憶喪失ならなおさら自分で調べているものと…。

 

 

「あー…やっぱり「家族」にカギがかかってるよね。ワンチャンいうことをきいてくれるかなーとおもったけどあまかったかー」

 

「カギとは…?」

 

「きりたんは「家族」を知ることができないと…?」

 

「「狐」のしわざだね。…いや、せいかくにはアイツか。……いい?結月ゆかりときりたん、ふたりのダブルじゃぜったいにナインテイルフォックスにはかてない。かちたいならわるいことはいわない」

 

 

 頭を抱えるきりたんと、寝たきりであかりに介抱されるついなさんに視線を向ける月読アイ。なにを…。

 

 

「きりたん。結月ゆかりとはわかれなさい」

 

「え?」

 

「そんな勝手な…!」

 

「ダブルはもともとナインテイルフォックスにかつためにつくったもの。きりたんとイフがいっしょにへんしんすることをみこしていたのに、結月ゆかり。きみのせいでイフがしんだばかりか、きりたんのしんようをかちとってしまった。しょうじきいって、めいわくしてる」

 

「っ…!」

 

 

 怒っているかのような月読アイの視線に、あの時見た夢を思い出す。おやっさんが許してくれているなんて私の願望でしかない。その事実を突きつけられた様な気がした。

 

 

「ナインテイルフォックスは「恐怖」をうえつける。その「恐怖」はねづいてえんえんとむしばみ、たちむかえなくなる。たとえ、たちむかえたとしてもほんりょうをはっきできない。だから「凡人」の結月ゆかりじゃかてないんだ」

 

「恐怖…そんなもの、誰も勝てないじゃないですか!」

 

「だからわたしはきりたんのあたらしい「相棒」としてついなちゃんをえらんだ。「復讐」のちからはなによりもつよい。「強い精神力」と「強靭な肉体」、「どす黒い復讐心」をやどしていたついなちゃんとダブルになればさいきょうのダブルがうまれる。そうかくしんしていた」

 

 

 だからついなさんにアクセルドライバーやらを渡した、と。…フレンジーの時のきりたんの判断は正しかったのか。

 

 

「エクストリームメモリのしゅつげんできりたんの「力」がつよくなって、バランスがくずれてきりたんからついなちゃんにもうしでたまではよかったのに…結月ゆかり、おまえについなちゃんはえいきょうされて、じぶんからことわってしまった。そればかりかきりたんと結月ゆかりでサイクロンジョーカーエクストリームにまでいたってしまった」

 

 

 フレンジーとサーカスの時の…あれですか。

 

 

「…だからわたしはあきらめて、ナインテイルフォックスにたいこうできるせんりょくをふやすことにした。「強い精神力」をもってるにんげんならダブルのたたかいを見てめぼしはついたからね」

 

「それが仮面ライダーエルドラゴ…リリィですか」

 

 

 舌足らずな説明で話が見えてきた。つまり私は、月読アイの計画の想定外。「凡人」が首を突っ込むなと、そういうわけだ。

 

 

「わたしは「アイツ」にすべてをうばわれた、ぜったいにふくしゅうしてみせる。そのために「実験体」をわたすことはできない。サイクロンアクセルエクストリーム、それがナインテイルフォックスにたいこうできるゆいいつのちからだとこんかいかくしんした。だからきりたん、結月ゆかりとはわかれてついなちゃんと…」

 

「嫌です」

 

「きりたん…」

 

 

 月読アイの訴えに、真っ向から拒否するきりたん。それに狼狽える月読アイ。まさか断られるとは思わなかったのだろう。

 

 

「なんで、わたしは、きりたんのために…」

 

「決まってます。私の相棒はゆかりさんだけです。虚音イフは恩人ですし、ついなさんは仲間ですが、ゆかりさんとは比べ物になりません」

 

「それはカッコウみたいなものだよ。たよれるあいてが結月ゆかりしかいなかったからにすぎない」

 

「そんなの関係ありません!「今の私」は、ゆかりさんを必要としている。例え貴方が私の母親であっても、ゆかりさんと別れろだなんて言葉に頷けるわけがありません!」

 

「……でも、ナインテイルフォックスにかてないよ?結月ゆかりじゃ、ぜったいに」

 

「勝ちます。次こそは勝って見せます。私達は二人で一人の仮面ライダーですから!」

 

 

 そう断言するきりたんに、怯む月読アイ。私も頷き、きりたんと並び立つ。

 

 

「そうです。諦める理由にはなりません。恐怖が相手だと言うのなら、克服して見せます」

 

「…そのまえに「実験体」をかくほされたらおわりだよ。ミュージアムのもくてきがたっせいされる」

 

「ならなおさら、あなたは出てこないでください。「実験体」を隠し通してください。今回の事件に誘き出されることは駄目です」

 

「そのつもりはもともとないけど…イフのトラウマにおびえている結月ゆかりにかいけつできるかな?」

 

「いえ、今の私にはきりたんがいます。きりたんの相棒として、おやっさんの影を乗り越えるまでです」

 

 

 そう宣言すると、月読アイは初めて私を見て、溜め息を吐いた。

 

 

「…いまのきりたんにとっては「母親」より「相棒」のほうがだいじ、か。ざんねんだな」

 

 

 そう言って月読アイは背伸びして扉を開けて出て行った。…色々衝撃的でしたね。

 

 

「さあ、ゆかりさん。検索を始めましょう。まずは今回の事件を解決するのです」

 

「了解です。ついなさんとリリィの仇を取りましょう」

 

 

 白紙の本を手に目を瞑るきりたん。全幅の信頼を寄せてくれているのだと思うと嬉しくなる。

 

 

「まずは「偽物」です」

 

「ダミー、などが出てきましたね」

 

「強そうなメモリですが、多分違います。次に「神経毒」がキーワードです」

 

「毒で幻覚を見せる、などもあるかもですね」

 

 

 幻覚には見えなかったし、確かに実体があった。ダミーもあるかもですが、だとしたらわからないことがひとつ。恐らく神威岳の偽物だったのに、ついなさんには打撲痕しかなかったこと。つまり…斬撃は使わなかった、いや使えなかった。

 

 

「最後のキーワードは…「ぬめり」です」

 

「ビンゴ。わかりました、敵のメモリが」

 

 

 そう言ってガレージのホワイトボードに書いたその名の頭文字は「O」。その答えを聞いて納得する。…ついなさんとリリィが命懸けで得た手がかりが繋げてくれました。

 

 

「行きましょう。恐らく今もドーパントは月読アイを誘き寄せるために私達を襲うはずです。死者を歩かせて噂を流して誘き寄せてくるはず」

 

「どうやらその人間に関係する死者を利用しているみたいですが……恐らく、私達の関係者に噂を流させるはずです」

 

「だとしたら……リリィの治療をした阪井芽衣子さん、が恐らく狙われますね。電話してみましょう」

 

 

 連絡するとすぐ繋がる。あの人には珍しく慌てた声が聞こえてきた。

 

 

《「探偵さんかい!?今、院内でラピスを見て…」》

 

「やはりですか。今すぐ行きます」

 

「水都総合病院ですか。……ウナちゃんがいませんように」

 

「いや本当にそう」

 

 

 祈りつつ、私はきりたんを後部座席に乗せたハードボイルダーを駆って水都総合病院に向かった。




月読アイというキャラは何故か貫禄があるのだ。見た目園児なのに煙草を吸ってる絵が多い印象。可愛いんですけどね。

そんなわけで色々明かされました。アイはきりたんの母親(自称)で、全てはナインテイルフォックスに対抗し「アイツ」と呼ぶ誰かに復讐するため。「実験体」とは誰なのか。

メモリの正体も発覚。実はライダー全滅間際にまで追い込んだドーパントの正体とは。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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