ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。代表作になったエヴリン二作やポケモン蟲ほど人気は出ないけどがっつり趣味の産物なので行けるところまで行きまっせ。今回から明確にそういう描写が出るので「アンチ・ヘイト」のタグを一応追加しておきました。

今回は今までの事件の真相が明らかに。8000字越えと長い推理パートです。楽しんでいただけると幸いです。


第四話:Mな彼女/決壊した濁流

 手がかりを知ってそうなヒメさんに、千絵美尾大学で絡まれていたささらさんとその周囲を撮影したバットショットの画像を見せると、ヒメさんはにんまり笑って指を差した。

 

 

「このアングル隠し撮りかな?いーけないんだー…うん、タカハシくんに振られたって酒の勢いで泣きじゃくってたのはこの子だよ」

 

「…やっぱりですか。あの違和感の正体はこれか」

 

 

 犯人は分かった。でも動機が……少し小さい。私の考えが正しければ、まだわかってない事実がある筈だ。きりたんに頼るのが速いのだろうが……すると、のんびりしてたヒメさんが慌ただしく動き始めたかと思えばちらほらと客が入ってきた。この店の混みだす時間帯になったらしい。ちらっとミコトさんを見ると、ほくそ笑んで手をひらひらと揺らした。

 

 

「客の迷惑にならない程度なら聞き込みしても構わないよ?」

 

「助かります」

 

 

 そして私は大学生らしき人間に片っ端から聞き込みを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二時間後、私は冷える夜の風を受けながらハードボイルダーを走らせていた。

 

 

「まさかとは思ってましたが…そのまさかでしたね」

 

 

 動機は分かった。でも、まだ気になることがある。不審死したという、ささらさんの彼氏たちのことだ。

 

 

「というわけで事件の捜査資料を見せて欲しいのです」

 

「あんだと、探偵!お前なんかに見せる資料はないわよ!」

 

 

 やってきたのは水都署。守秘義務もあるので今回の事件を捜査してるとだけ話して、捜査資料を見せて欲しいと頼んだのだが頼んだ相手が悪かったらしい。垂れた犬耳の様な髪型が特徴の年若い女性刑事、有阿緒音(ありあ おね)。すぐ犬の様に噛み付いてくる犬猿の仲だ。

 

 

「落ち着きなさいワンちゃん。花さんはいないんですか?」

 

「だーれが犬だこらあ!」

 

「なにこんな夜に騒いでんの。あ、ゆかりじゃん。いらっしゃい」

 

 

 話にならないとしておちょくっていると、奥から低い声が聞こえてきて振り向く。そこにいたのは一見銀髪のイケメン長身の青年に見えるが列記とした女性である不破花(ふわ はな)さん。私が尊敬している数少ない人間のひとりだ。やんちゃしてた頃からずっと面倒を見られてるので頭が上がらない。

 

 

「あ、不破先輩!こいつがまたしゃしゃり出て…」

 

「ちょうどよかった花さん!急いでいるんです、至急見せて欲しい捜査資料がありまして」

 

「なるほどね。いいよ。緒音、案内してあげて。でも代わりに、なんかわかったことがあったらすぐ教えてね」

 

「そんな、花先輩アイツに甘すぎません!?」

 

「恩に着る花さん!ほら有阿刑事、早く早く!」

 

「だから誰が犬……言ってないな。よし、ついてこい探偵!」

 

 

 ちゃんと呼んでやると機嫌を直して案内してくれるワンちゃん。ちょろい。おちょくってなんだけどこの人本当に刑事なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、検索開始です」

 

 

 愛用している何も書かれてない白紙の本を手に意識を集中する。

 

 

「あのきりたん、なにを…?」

 

「私は脳内に地球の記憶を全て内包しているんです。ゆかりさんのネーミングですが「地球(ほし)の本棚」と呼んでいます。全てを閲覧したわけではないので事あるごとに調べてしまうのが難点ですが…普段はゲームに集中することでそうなることを防いでるわけです」

 

「ああ、だからゲーム…」

 

 

 このあかりさんという方はゆかりさんが捜査に協力させていた。つまり信用していいということ。口外しないだろうと信じて話すことにします。説明を終えて、意識を本棚に向ける。白い空間に無数に陳列する本棚。いつもはゆかりさんがキーワードを並べてくれてたけど今回は自分で頑張ろう。

 

 

「犯人が佐藤紗々良だろうとそうでなかろうとゆかりさんが必ず見つけ出します。私がするべきことは、敵のメモリの正体を探ること。…キーワードは「濁流」「粘性」」

 

 

 キーワードを喋って入力することにより本棚が移動して減って行く。見えてきたのはヘドロやタールといった想像通りの物から、ウォーターやスライムといった液体系のもの。試しにヘドロの本を手に取って読んでみるが特性がかみ合わない。タールも同様だ。ウォーターは論外、スライムは近いが濁流が使える訳ではない。

 

 

「…恐らくあと一つ、キーワードが足りません。いつもはゆかりさんが何かしら思いつくんですが…」

 

「だったら電話しましょうよ。仲直りです」

 

「…私が謝る理由がわかりません。嫌です」

 

 

 私にしては珍しく、ゆかりさんの行動にキレていた。私の正論を感情論で一蹴するし、自分の身を顧みないのも気に入らないし、なにより……私とゆかりさんの絆だと思っていたダブルドライバーを置いていかれた。怒りとも違う、この感情は一体なんだろう。

 

 

「なら私が聞きます!」

 

「ちょっ、まっ」

 

「…あ、よかった繋がった。えーとですね、きりたんに頼まれたわけじゃないんですけどー聞きたいことがありましてー」

 

 

 あまりに白々しい聞き方に何とも言えない顔になる。嘘を吐けない性格というやつか。ゆかりさんの後輩と言うのもわかる気がする。

 

 

「【ヘドロ】とか【タール】とか【ウォーター】まで調べたけどなんもでないんでーなんか気になるワードないかなー!なんてー………え?追加キーワードで「土汚れ」?」

 

 

 気まずかったがあかりさんが代わりに聞いてくれた。さすがはゆかりさんだ、情に絆されながらも探偵としての責務は果たそうとする。だから私は彼女の相棒をやっている。

 

 

「追加キーワード「土汚れ」…これは」

 

 

 そう入力すると本棚が減って行き、一冊の本が残って手に取る。ビンゴだ。その題名は「MUD」マッド…泥だ。

 

 

「敵のメモリが分かりました。あかりさん、ゆかりさんに…」

 

「あ、すみません。切られちゃいました…」

 

「………」

 

 

 どんだけ私と話したくないんですかね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やはり、ですか」

 

 

 朝になるまで資料室で調べたのはささらさんの彼氏たちが不審死したという事件の捜査資料。タカハシくんのようにミイラの様になったりの他、不自然な階段での転落死、浅瀬で足を滑らせ溺死、なにも水がないところで溺死、トラックに轢かれる(運転手の証言では不自然にいきなり足が止まったとのこと)など色々あるが、全員の衣服に土汚れがついていたという記載があった。警察はこの11人の事件は関連性はなくミイラ以外は全て事故死と推理した様だが違う。あの濁流のドーパントの仕業だ。そして大学生たちへの聞き込みによると、この面々の共通点はささらさんと付き合ったことだけじゃない。

 

 

「…ん?」

 

 

 メールが届いた着信音が聞こえてスタッグフォンを開く。差出人はささらさんで、【話したいことがあるので水都第二野外ステージで待ってます】とあった。電話ではなくメール、というのが引っかかった。それに水都第二屋外ステージといえばイベント以外では人が寄り付かないことで有名だ。…懐のダブルドライバーを入れている部分に手を触れて、置いてきたことを思い出す。

 

 

「……あかりに一応連絡を入れておきますか」

 

 

 私になにかあってもどうにかしてくれるはずだ。それにあの人が犯人なら……早く止めないと、不味いかもしれない。急ごう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 水都第二屋外ステージ。水都を二つに分ける大きな万宵(まよい)川の南側、万宵川が一望できる川辺の丘の様な場所に存在する、音楽祭などの都市を上げたイベントで使われる屋外ステージだ。普段はミュージシャンを志す若者が練習に使われていたりするが、今日は静かだ。

 

 

「あ、探偵さん!ささらを見ませんでした?」

 

「つづみさん、どうしてここに?」

 

 

 屋外ステージについてハードボイルダーから降りていると息を切らしてやってきたのは鈴木つづみさん。すると携帯を取り出しながらこう言った。

 

 

「昨日別れてからささらと連絡つかなくて…携帯のGPSを見てここまで来たの」

 

 

 ほら、と言いながらスマホの通話記録を見せるつづみさん。その様子は親友を心配しているそれだ。

 

 

「私はささらさんから話したいことがあるからここに来るように、と言われて」

 

「ってことはここにいるのね?ささら、いるのー?!」

 

 

 呼びかけながらステージに向かうつづみさんに付いて行く。するとステージ最前列の席前の通路で突っ立っているささらさんが見えた。その手に握られているのは、スマホと……ガイアメモリ、ですか。

 

 

「あ、つづみ、探偵さん…どうしてここに?」

 

「どうしてって、ささらを捜してきたのよ。どうして電話に出なかったの?心配したのよ」

 

「それが昨日からスマホを失くして…」

 

「じゃあその手にあるのは何?」

 

「それは、家に電話が来て知らない声でスマホを拾ったからここで待ってるって言われて、来たらこれが置いてあって…」

 

「また変な嘘をつくの?それにその手にあるの、ガイアメモリ!じゃあ、タカハシくんを殺したのは…そんな、なんでよ、ささら!」

 

「し、知らないよ!ここに置いてあったから拾ったの!」

 

「そんなものがこんなところに落ちてるわけないでしょ!」

 

「ち、違うの、私は本当に……」

 

 

 怒号を浴びせるつづみさんにたじたじなささらさん。今にも泣き出しそうだ。…言質はこれぐらいでいいかな。

 

 

「はい、そこまでです」

 

 

 二人の間に割って入る。すると救いのヒーローでも見るかの様な視線を向けてくるささらさんに対し、本当に驚いた表情を浮かべるつづみさん。

 

 

「どうして…ささらがガイアメモリを持ってるのよ!?探偵さんならそれがどんなに危険か知って…」

 

「はいまず待って。なんで、ガイアメモリの名前を知ってるんですか?」

 

「そ、それは……友達との会話で話題に出たから…」

 

「それでも見た目まではわかりませんよね?なのに貴方は確信して言った、まるで実物を知ってたみたいに。それともう一つ。ささらさんは「置いてあった」と言いました。なのに貴方は「落ちていた」と言った。認識の違いですね。ささらさんは誰かの忘れ物だと思って言ったのに対し、貴方はまるでここに落として行ったと言わんばかりにおっしゃる」

 

「…何が言いたいのかしら?」

 

 

 スン、と無表情になって問いかけてくるつづみさん。ささらさんは理解が及んでいない様で目を白黒させている。

 

 

「いえ、おかしいなあと。まだありますよ。タカハシくんを含めて11人もいたささらさんの恋人たち。彼等にはある共通点がある。それはつづみさん…貴方と交際していた、もしくは友人関係だった人達です」

 

「っ…!?」

 

「特にタカハシくんとはつい一ヶ月前まで交際していた様ですね。千絵美尾大学の院生たちから聞きました。さらに言えば、鳴花ーズで貴方が愚痴っていたのを店員が聞いている。その店員にこの写真を見せたら快く教えてくれましたよ。それは貴方だと」

 

 

 バットショットを取り出し写真を見せ、手前に映っているつづみさんを指で突きつける。すると目に見えて狼狽えた。酒に溺れて愚痴った己の失態を恥じているのか。

 

 

「ところでささらさん。探偵に依頼したと貴方はつづみさんに言いませんでした?」

 

「え、あ、はい。タカハシくんが見つかるかも、と心配していたつづみにも…」

 

「それで合点がいきました。それで初見なのに私を探偵だと見抜いた。あの怪物は潜伏が得意なタイプと見ました、恐らくどこからか尾行してたんでしょうね。探偵であるのに恥ずかしい話です」

 

「…なんの、話かしら?」

 

「貴方が怪物として私と対峙したって話ですよ。それならあのタイミングでタカハシくんを攫ったのも頷ける」

 

「で、でも!メモリはささらの手にあるのよ!?現行犯、言い逃れできない!なのに探偵さんは私がドーパントだと…」

 

「はいダウト。ドーパントの名前まで知ってるんですね?大方、メモリの力を利用してスマホを盗み、一緒にメモリを置いておいてささらさんに握らせたのでしょう?私にメールを寄越して一緒に見ることでささらさんをドーパントに仕立て上げようとした」

 

「ち、違う!ささらが…!」

 

「恐らく、昨日の追跡劇で貴方が逃げ込んだ路地裏からささらさんが出てきた理由でもある件のメールも貴方でしょう。昨日のささらさんのスカートに付いていた土汚れは貴方がマンホールに逃げ込むなりでその時に付いたと見た。貴方の服についてたのは変身時に付いたのでしょうか?」

 

「で、でも!ささらがメモリを持っていたのは貴方も見たでしょ!?自分の目を信じないの!?」

 

「ではそんなにお望みなら、文字通り動かぬ証拠というものを見せてあげましょう」

 

 

 そう言ってささらさんからガイアメモリを受け取る。まるで水たまりから泥が跳ねた様に飛沫の形でにMと書かれているそれを突き付け、ボタンを押した。咄嗟に左腕を右手で握りしめるつづみさん。

 

 

《マッド!》

 

「メモリのガイアウィスパーを鳴らすとそれに呼応する様に使用者には生体コネクタが出現します。ささらさんにはそれがない、そして…!」

 

「っ…!」

 

 

 右手で隠れた左腕から、特徴的な刺青の様な線が見えた。生体コネクタ。ドーパント特有の動かぬ証拠だ。苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべるつづみさん。メモリはこちらにある。チェックメイトだ。

 

 

「もう言い逃れできませんよ?」

 

「つづみ、タカハシくんを…ううん、みんなを殺したの?どうして……」

 

「どうして?…どうしてって、貴方のせいに決まってるじゃない!ささら!」

 

 

 心配するささらさんに激昂するつづみさん。今まで溜め込んできたものが爆発したような憤怒の感情がびりびりと伝わってくる。

 

 

「子供の頃から私のものを次から次へと盗んで…!でもそれはまだいいわ、子供のやることだもの。怒りはしたけど貴方に悪意がなかったから我慢できた。だって私達、親友だもの。でも、高校時代からの幼馴染に、私の所属したサークルの男共……飲み会で出会ったあっくんにゆーくん……勇気を出して告白して付き合えたショウタ……そしてなにより、自然と仲良く話せる関係だったタカハシくん……私と関係を持った男たちを、貴方は次から次へと天然で誘惑して盗んでいって……!しかもそれに悪意がないなんて、どこに怒ればいいのよ!?」

 

 

 語られた独白は同情できるもので、しかしささらさんは言われて初めて気付いたようだ。恐らく、盗っただなんて思いもしなかったのだろう。親友の物を無自覚に欲しがるわがまま娘…昨日、つづみさんが言ってた通りだ。

 

 

「溜め込んで溜め込んで、私の心は淀んでいった……その時出会ったのよ、魔法の小箱に!私は迷わずマッド()のメモリを選んだ……初めて変身した時の快感は忘れられない!そして私は思ったの、ささらは悪くない、靡いた男共が悪いんだって。だから私、ささらが盗るたびにあの手この手で殺して行ったわ…」

 

「それが不審死事件、ですか」

 

「タカハシくんも最初は殺そうと思ってたけど、彼が就活で失敗して落ち込んだことをささらから聞いて。思ったの、メモリを紹介すればタカハシくんはささらより私を選んでくれるかもって。でも失敗だった。タカハシくんは怒りのままに自分を落とした「WATER SCALE」の子会社やその店員を襲って行った……それに熱中するあまり行方を晦ませてささらが探偵に依頼した…私はささらから話を聞いて焦ったわ。タカハシくんが捕まれば私の事も話すかもしれない。だから殺したの。私やささらよりも復讐に熱を持った馬鹿なんていらないもの」

 

 

 そう語るつづみさんは何でもない様に手をひらひらと揺らして嗤う。人の心を失くしたのだと確信できた。

 

 

「自分から引き込んでおいて保身のために殺したというのですか…でも、なんでささらさんを身代りに?」

 

「私はささらが好き。親友として、好き。だから殺したくない。だけどもう疲れたの。だから…殺さないで退場してもらうことにした。逃げ道に呼んで、探偵さんに懐疑心を植え付けて、もういらないメモリを持たせて……完璧だった、完璧だったはずなのに…!」

 

「その、貴方と出会った時の庇っているようで疑わせてくる会話が引っかかったんですよ。つづみさん。自首してください。既に警察は呼んであります。私が呼べばいつでも…」

 

「そうはいかないわ。私は捕まるわけにいかない、人並みの幸せをいい加減味わせてよ!」

 

「っ、花さん!」

 

 

 そう叫んでタックルしてきたつづみさんに突き飛ばされる。咄嗟に花さんたち警察を呼ぶが、握っていたはずのものが無くなってることに気付いた。メモリが、ない。タックルされた時に奪い取られたのか…!

 

 

「警察だ!その手に持ってるものを捨てろ!」

 

「アハハ……この水の街にいるかぎり、誰も私を捕まえる事なんてできないわ…!」

 

《マッド!》

 

 

 私を守るように前に立った花さんが周りを取り囲んだ有阿刑事含めた警官達と共に拳銃を手に警告するも、つづみさんはガイアウィスパーを鳴らして狂笑と共に左腕の生体コネクタに挿入して目や口、鼻に耳など全身の穴から黒い泥を溢れさせて包まれ、マッド・ドーパントに変貌。警官たちが弾丸を撃ち込むも、沈み込んでしまいまるで意味をなさない。

 

 

「あ、あ…つづみが、怪物に…」

 

「ささらさん、逃げてください!」

 

「邪魔よ!ささらぁ……貴方の事は好きだけど貴方がいる限り私は幸せにならないの。死んでくれる…?」

 

 

 ささらさんの手を掴んで屋外ステージから逃げ出そうとするも、警官たちをその大きな両掌で薙ぎ払い流動体になって追いかけてくるマッド・ドーパント。メモリの毒素が、彼女の最後の人間性まで奪ってしまったのか。ささらさんを連れて草むらに入る。…ダブルドライバーとメモリを置いてきたのは失敗だった。

 

 

「ささらさん。私が囮になります。あなたはその間に警察の元に向かって保護されてください」

 

「でも、探偵さんは?!」

 

「ご心配なく。私はハードボイルド探偵……依頼人を守り抜くのが仕事です!」

 

 

 そう啖呵を切って飛び出す。すると人型に戻っていたマッド・ドーパントは私に向けて手を振るい、泥の塊を飛ばしてくる。視界の端でささらさんが警察の方に向かったのを確認、攻撃を避けつつスタッグフォンできりたんに連絡を取ろうとするも、泥の塊を避けようとして落としてしまった。

 

 

「しまっ…」

 

「よくも邪魔してくれたわね探偵さん…貴方はそうね、タカハシくんみたいにミイラにしてあげる…!」

 

 

 そう笑いながら歩み寄ってくるマッド・ドーパント。万事休すか、と思ったその時。巨大車両が突っ込んできてマッド・ドーパントを轢き潰した。既視感を感じさせるそれはリボルギャリーで、ハッチが開いて顔を出して降りてきたのはきりたんと、青い顔で目を回しているあかりだった。…あかりは放ってていいかな。

 

 

「きりたん…」

 

「まったく、世話が焼けますねえ私の相棒は。あかりさんに居場所と真相を連絡したのはナイス判断です。おかげでここまで来れました。あかりさんにはお礼に今から起こることを見せようと思うんですが…いいですね?」

 

「…怒って、ないんですか?」

 

「別に?私が犯人だと信じ込んでいた佐藤紗々良は犯人ではありませんでしたので私の過失です。でも、これを置いていくのはもう勘弁してください」

 

 

 そう言ってダブルドライバーとメモリ三本を手渡してくるきりたん。その目もとには泣いた痕があった。……ダブルドライバーは私ときりたんが繋がっている証だ。それを置いて行ったことがかなり心に来たらしい。さすがに反省だ。するとタイミングよくリボルギャリーを持ち上げてマッド・ドーパントが顔を出した。やはり物理攻撃は効果が薄いようだ。

 

 

「ゴボボォオオ!この程度で、私を倒せるとでも…!」

 

「わかりました。今回も半分力を貸してください、相棒?」

 

「もちろん。私達は二人で一人の探偵ですからね。あかりさん、私の体を頼みます」

 

「え?え?」

 

 

 困惑するあかりを置いてダブルドライバーを腰に装着。ベルトにして左手に持ったジョーカーメモリを、横に立ったきりたんは右手に持ったサイクロンメモリを構える。それはまるで二人合わせてWを描く様に。

 

 

《サイクロン!》

 

《ジョーカー!》

 

「「変身!」」

 

 

 そして二人同時に叫び、きりたんが装填して転送されてきたサイクロンメモリをダブルドライバーのソウルサイドに装填、続けてボディサイドにジョーカーメモリを装填。倒れたきりたんをあかりが受け止めるのを確認し、ダブルドライバーを展開する。

 

 

《サイクロン!ジョーカー!》

 

「え、ええええええ!?」

 

 

 黒と緑の竜巻に包まれ、私達が変身したのはダブル。驚くあかりを無視して、お決まりのポーズを決める。

 

 

「『さあ、お前の罪を数えろ!』」




題名の「Mな彼女」は泥のマッドと狂気のマッドをかけてました。

というわけで真犯人マッド・ドーパントは鈴木鼓でした。原作通り依頼人が犯人にも見える様に書きつつ別の犯人を用意するって言うなんちゃって叙述トリックでした。犯人は分かっても動機までは分からなかったって人が結構いそう。なおささらさんはこれで正気って言うね。無意識って怖い。

・マッド・ドーパント
『泥』の記憶を宿したドーパント。自らの肉体を泥化して敵の攻撃を受け流したり、泥を取り込んで巨大化したりできる。片目が潰れていて両掌が異様に大きい泥の人型の様な姿の怪人。正体は鈴木鼓。モチーフは泥田坊。

次回、最初の事件完結。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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