ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。原作で言うナイトメア編始まります。楽しんでいただけたら幸いです。


第三十七話:Fへようこそ/ミュージアムの依頼

「東北家がミュージアムだとわかったのはいいですが…」

 

「私、家族に殺されかけたんですか……」

 

「ううっ、事務所の空気がどんよりしてますぅ…」

 

「オレなんか部下に裏切られたぞ、元気だせ」

 

 

 アレから数日。きりたんがずっと落ち込んでいて、私とあかりとリリィの三人で慰めている。そうなのだ、オクトパスの毒から復活したリリィをあかりが雇ったのだ。あのナインテイルフォックス…調べて分かったが東北家の家長である東北至子と、姉弟の一人であろうアルテミス・ドーパントやエクスタシー・ドーパントに殺されかけたことを引き摺ってるらしい。

 

 

「し、知らなかったかもしれませんし…」

 

「いやアルテミスは変身した瞬間見てたので知ってるはずかと…」

 

「アルテミスなんか戦闘ヘリまで使ってたんですけど…」

 

「……いやでもまさか、家族への情がないなんてことは…」

 

 

 家族のことを検索できないせいか家族の定義が分からず不安になっているようだ。言わない方が良かったかもしれないがエクストリームになると記憶が共有されるので今のうちにと思ったが…。

 

 

「私、家族に愛されていないんでしょうか…」

 

「家族が愛されないなんて、ありえませんよ!」

 

「…少なくとも、アルテミスは愛していると思いますよ」

 

「なんでですか」

 

「だって、手加減してましたもの」

 

 

 ダンデライオンの時に知ったが、彼女は猟犬を操る能力があるらしい。それを初戦で使ってこなかった。ついでにいうとおやっさん…スカルと戦った時に比べて、私達と交戦した時は威力が低かった気がする。そういう旨をきりたんに伝えると幾分か明るい表情となった。

 

 

「…今度幹部と会ったら直に話そうと思います」

 

「あ、それなら東北星香さん…シャーク・ドーパントはやめておいた方がいいかと。彼女、養子らしいので」

 

「あ、なら私とは血縁じゃなさそうですね…」

 

「星香っつーと、あの売人か。私もマネーとかエルドラドとか買ったな」

 

「その節はご購入ありがとうございました」

 

「おーおー、感謝しろよ………ってえ!?」

 

「「「「いつの間に!?」」」」

 

 

 いつの間にか事務所の入り口に立っていたスーツ姿の女性に驚く私達。件の人物、東北星香がそこにいた。

 

 

「まさか攻め込んできたんですか!?」

 

《ジョーカー!》

 

「二位とか言ってたオクトパスを潰したんです、当然ですね…!」

 

《サイクロン!》

 

「決着をつけたいってなら受けて立つぞ」

 

《ゴールド!》《パイレーツ!》

 

「あわわ、事務所で暴れないでください!修理代が!」

 

 

 あかりが慌てる中でドライバーとメモリを用意する私達。しかし星香さんは手を上げて困り顔となる。

 

 

「戦う気はないから勘弁してください。今回は完全に依頼人としてここに来ました」

 

「依頼人?」

 

「あとオクトパス潰したことについては文句ないです、むしろありがとうございます」

 

「相変わらず淡白だなアンタ…」

 

「ちなみにもし私から定期連絡がない場合、今現在ブチギレてる至子様が大暴れするのでご了承ください」

 

「至子…東北至子、ナインテイルフォックスですね」

 

「それで、何を依頼しに来たんですか?」

 

 

 客ならしょうがないので警戒しながらも客席のソファに案内する。リリィが隣に立ち、正面に私とあかりが座り、その横できりたんがファングを肩に乗せ、エクストリームメモリを頭上に浮かばせて睨み付ける。完全警戒態勢である。何故って相手は敵の幹部だ。いくら警戒しても足りない。

 

 

「なんか動いただけで首スパってされそうなので単刀直入に言います」

 

 

 そう言って懐に手を突っ込む星香さん。メモリを出すのかと思ったら違った。二枚の写真だった。濃い緑に染めたロングヘアーに枝豆を模したカチューシャをつけている金色の目の女性と、双葉の様な奇妙な髪型の黄緑色の髪の中性的なニコニコ笑ってる中学生ぐらいの子供。少女の方は見覚えがある。ずんだ広報アイドル、ずん子として有名な街のアイドルの一人だ。

 

 

「東北純子様と東北蛇門様…至子様の実妹と実弟である二人の行方を探ってもらいたい」

 

「!」

 

 

 それはつまり、きりたんの家族の捜索依頼だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、アルテミスとエクスタシーの二人ですか………私達が敵である貴方たちの依頼を受けないといけない理由は?」

 

「今の至子様は家族を失ってなにをするかわかりません。端的に言うなら、水都壊滅の危機です。水都を愛する者としてそれは嫌だ。なのでわざわざ至子様に提言してまで敵である貴方方に頭を下げに来たのです」

 

 

 それは…不味い。端的に言ってナインテイルフォックスは簡単に水都を滅ぼせるだろう。きりたんとリリィ、あかりと顔を見合わせる。特にきりたんは家族が行方不明と聞いて無意識だろうか、心配した顔を浮かべていた。誰も否定的な顔はしていなかった。リリィなんかは「引き受けろ」と言わんばかりに不敵に笑っている。

 

 

「…わかりました、その依頼。引き受けます。詳細をお願いできますか?」

 

「助かります。あれは純子様が蛇門様の趣味に付き合って現在放映中のハイパー戦隊シリーズ最新作「声月戦隊ボイシスターズ」の映画を見に出かけた数日前のことです。どこの映画館に行ったのかはわかりませんが、何時まで経っても帰ってこず……至子様の能力の一つである「尻尾」に何も反応せず、組織を総動員して町中を捜したのですがどこにもいないのです」

 

「…ミュージアムを裏切って水都から逃げ出したという可能性は?」

 

「ありえません。純子様は至子様に逆らうことはできません。「アルテミス」と「エクスタシー」…ゴールドメモリの中でも特に強力なこの二つを与えるぐらいに、家族を失うことを極端に怯えている至子様を捨てて逃げることなんてありえません。それは五年間見てきた私から見た感想ですが。そもそもろくな荷物も持たずに出かけてるのですよ?口座のお金が使われた形跡もないとの報告も受けています」

 

 

 ちょっとだけ情報が開示されたな。東北至子は家族を失うことを恐れている。それにきりたんが関係してるんじゃなかろうか。きりたんだろうと容赦なく攻撃していた矛盾があるが。

 

 

「なるほど…ちなみに誘拐だと仮定して、身代金の要求などは?」

 

「ありません。東北家の人間だと知って襲ったのか、それとも事件に巻き込まれたのか…少なくとも第三者が関与している可能性が高いです」

 

「そんなことができるメモリは?貴方は売人でしょう」

 

「山ほどあるので断定はできません」

 

「それはそうだろうな」

 

 

 リリィが納得した声を上げる。まあ売人である星香さんと、メモリ界隈に詳しいリリィが言うならそうなのだろう。

 

 

「わかりました。なんとか捜してみます。その代わりこちらも知りたい情報を一つ」

 

「なんでしょうか。貴方方の腕は信用してるので前払いでお教えしましょう」

 

「…東北記理子の情報を知りたい」

 

「ゆかりさん!?」

 

 

 驚くきりたんを手で制して星香さんを見つめる。なんだろう、なんでそんなことを?というピンとしてない顔だ。この違和感は…なんだ?

 

 

「東北記理子というのは10年前に亡くなった至子様と純子様の妹で蛇門様の姉である東北家の三女のことです。当時は小学五年生だったとか。そう言えば以前見せられた写真とそこの子供、似てますね。あれ?」

 

 

 どうやらきりたんが東北記理子だとは気付いてないらしい。…つまり、一部の幹部にも知らされてない情報だと言う事だ。どうにもきな臭い。それがわかっただけでも収穫だ。

 

 

「ありがとうございました。それを聞けただけで満足です」

 

「そうですか。ではよろしくお願いします。なにか報告があれば例の埠頭に来てください」

 

「承りました」

 

 

 一礼して去って行く星香さん。すると入れ替わりについなさんがやってきて、すれ違った星香さんのスカーフを見て驚いた表情を浮かべていた。

 

 

「おいゆかり。今の…」

 

「ミュージアムの売人です」

 

「…ゆかりたちに限ってそんなことはないやろうけど…なにがあったんや?」

 

「水都を滅ぼされたくなければ行方不明の幹部二名を捜してほしいんですと」

 

「はあ?」

 

 

 かくかくしかじか。事情を話す。すると事の重大さがわかったのか神妙な顔となった。

 

 

「話は分かった。うちも個人的に調べるわ」

 

「助かります。私達も聞き込みしましょう。きりたんは…」

 

「私も行きます。…姉と弟を襲った犯人がいるのなら許しておけない」

 

「…わかりました」

 

 

 不安定なきりたんは私が連れて、全員出動となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「CINEMA T-ジョイ水都?それって歩歌路町の映画館ですか?」

 

「うん。一緒に来た友達が帰り道でいなくなったりするんだって」

 

「映画館に行って行方不明の人を捜してるならそれかなーと」

 

 

 JKコンビから聞いたのは、とある噂。CINEMA T-ジョイ水都という映画館で映画を見た帰り道、連れがいなくなるらしい。

 

 

「どう思いますか、きりたん」

 

「調べてみる価値はありますね」

 

「あ、メールです。ついなさんも行方不明者届から辿り着いたようで先に向かっているとか」

 

「リリィとあかりさんに連絡してから私達も向かいましょう」

 

 

 別行動中のリリィとあかりに、CINEMA T-ジョイ水都に向かうことをメールで送り、私はハードボイルダーの後部座席にきりたんを乗せて歩歌路町の商店街に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 CINEMA T-ジョイ水都。歩歌路町の商店街にある小さな映画館だ。歩色町にでかい映画館があるのでちょっと寂れてしまっているが数年前までは水都にここしか映画館が無かったために繁盛していた場所だ。今では穴場の映画館として知られている。

 

 

「こんにちは。館長さんでいらっしゃいますか?」

 

「いや、私は映写技師見習いの桐谷洸(きりや コウ)といいます。館長は不在でして…」

 

 

 事務室を訪ねるとハスキーボイスでいろんな色のメッシュを入れた茶髪の女性が顔を出す。どうやら館長は不在らしい。きりたんと顔を見合わせる。

 

 

「紲星探偵事務所のものです。行方不明者を捜しているんですが…えっと、館内を調べても?」

 

「いいですよ。警察の方も来られてなにもなくて帰って行きましたけど」

 

「ん?あ、そうなんですか。でも一応…」

 

 

 ついなさんは既に来て帰ったのか。教えてくれればいいのに。きりたんを連れてトイレや映写室と調べて行く。この映画館に行方不明者がいるならどこかに隠していると思ったが…

 

 

「でも、ナインテイルの「尻尾」とやらで水都のどこにもいないって話でしたよね」

 

「そうでしたね。気配を感じないととかだとすると、ドーパントの力で閉じ込めらているかもしくは別の街に連れて行かれたか…」

 

「ここで犯行が行われたなら痕跡が…うん?」

 

 

 客席までやってくると、きりたんが何かに気付いて座席の下を覗きこむ。私も見てみると、そこには見覚えのある鬼の面が……って!

 

 

「これ、ついなさんの?」

 

「なんでここに……ゆかりさん!画面の方に!」

 

 

 きりたんに言われて振り向くと、画面の目の前にそれはいた。まるで複数の本棚が組み合わさった様な上半身で、ひょろりとした手足が伸び、正面に開いて目が描かれた本の様な顔が浮いているという異様な怪人。よく見れば本棚には「人魚姫」や「赤ずきん」「不思議の国のアリス」「ヘンゼルとグレーテル」「北風と太陽」といったお伽話の名が並んでいて。

 

 

「フェアリーテイル…?貴方が行方不明事件の犯人ですか!?」

 

「ご明察!メモリを知っているなら話は早い。君達も私の映画にご招待しよう!」

 

「生憎と私は絵本よりは推理小説が好きでして。遠慮します」

 

《ジョーカー!》

 

「誘拐した人達をどこに隠したんですか!?」

 

《サイクロン!》

 

「「変身!」」

 

《サイクロン!ジョーカー!》

 

 

 きりたんが座席に倒れ込み、私達はダブルに変身。殴りかかるとフェアリーテイル・ドーパントはまともに攻撃を受けてゴロゴロと転がる。

 

 

「あれ?弱い…?」

 

「いたた…よくもやったな!お前もあの赤い仮面ライダーと同じように苦しめてやる!開け、絵本の扉!」

 

 

 するとフェアリーテイル・ドーパントは自分の顔を両手で掴むと前に突き出した。すると顔の本がパラパラと勝手に高速で捲られ始めてその風で引き寄せられていく。なんとか座席に掴まるも、勢いが凄まじくて逃れることができない。

 

 

「ぐっ、これは!?」

 

『これが何人もの人間が行方不明になった原因…!?』

 

「っ、きりたんの身体が!」

 

 

 風の勢いは強くなり、座席に座っていたきりたんの身体が浮かんでフェアリーテイルの顔の本に吸い込まれていき、咄嗟にきりたんの身体を掴んだが勢いは殺せず、私も本の中にグルグルと回転しながら吸い込まれてしまった。

 

 

「これにてお話は、おしまい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…ここは?」

 

 

 目が覚める。いつの間にか変身が解けていて、周りを見渡す。森…?にしては色がなんか奇怪だけど。紫ってなんだ。

 

 

「あれ、私の服……」

 

 

 見下ろせば、いつもの黒のベストにスラックスではなく、ファンシーな青のワンピースに白のエプロンドレスを身に纏い、縞模様のニーソックスに黒色の靴を履いていた。嫌な予感がして頭に触れるとソフト帽ではなく青いリボンがついている。なんだこの、既視感を感じる格好は。おやっさんから受け継いだ私のトレードマークどこに行った。それに、ダブルドライバーはつけているのにきりたんと連絡が繋がらない。なんで。

 

 

「やあアリス。どうしたんだい?」

 

「アリス?」

 

 

 頭上から声が聞こえてきたので上を向くと、木の上にこれまた奇怪な色の猫(?)がにやっと笑って見下ろしていて。

 

 

「チェシャ猫…?これってもしかして、不思議の国のアリス…ってことはここは、絵本の世界!?」

 

 

 つまり行方不明者は奴の本の中に吸い込まれて……どうやって出れば?すると頭痛がして、耳障りな声が直接脳内に響き渡った。

 

 

【パンパカバーン!お知らせ、お知らせでーす!お伽話の最後までいけば外の世界に出られるよ!最高の映画を作って私を存分に楽しませてね!】

 

 

 そんなフェアリーテイル・ドーパントの声からは愉悦の感情を感じられて。奴の思い通りになるのは嫌だが、外に出るため、きりたんと合流するため。私はかすかな幼少期の記憶を頼りに歩を進めるのだった。




割と落ち込んでいるきりたんを慰めているところにやってきた敵からの依頼。風都探偵のディープ・ドーパント編をイメージしました。

絵本の世界に閉じ込められたゆかりさんたち。ちなみに映画館は原作ジーン・ドーパント編のやつが元ネタ。

・フェアリーテイル・ドーパント
『お伽話』の記憶を宿したドーパント。本体の戦闘能力は皆無に等しいが、絵本の世界の閉じ込めることができる。その気になればナインテイルにも勝てる曲者なドーパント。最後まで行けば出られるらしいが…?

アリスの格好をしたゆかりさんは結構可愛いと思う。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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