「うう、スカート落ち着かないです…」
いつもと違うヒラヒラしたスカートを押さえながら歩く。しかしこの服本当にダブルドライバーが似合わないな。
【せっかく美人さんなのにあんな格好してたから着替えさせたよ】
「いやきもいですね!?」
【同性だから気にしない気にしない】
「…それでも嫌ですが!?」
同性、同性か。まあほとんど正体は確定だな。今は全く意味ないが。ダブルドライバーが反応しないのが本当につらい。しかしなんで反応……あっ、きりたんが起きてないとかだろうか。
「えっと、とりあえず大きくなる薬とかは飲まなくて助かるんですけど…このあとどうするんでしたっけ」
「君が死ねばいいのさ」
「っ!?」
襲いかかってきた杖の一撃を、バックステップで回避。襲ってきた奴を睨みつけると、そこにいたのは派手な山高帽を被った、これまた派手ながらボロボロの燕尾服を着てJ状の杖をクルクル振り回して狂笑を浮かべる怪人。
「いかれた帽子屋…マッドハッター!」
「君はアリスじゃない。君がいる限りアリスは来ない。だから死んでくれ!」
【あ、言い忘れてたけど主人公の役割に割り込んでるから登場人物にとって君は敵だよ。チャシャ猫みたいな無害なのもいるけど】
「味方キャラでも敵であると!わかりやすい!」
振り回される杖を、紙一重で避けていく。スタッグフォンは取られてしまったらしいが腕にはスパイダーショックが、ポケットにはバットショットが入っていた。杖の一撃をスパイダーショックで受け止め、バットショットを取り出してギジメモリを装填。バットショットを飛ばして閃光で目くらましして体当たりさせる。
「今のうちに!ストーリーは無視してでも最後にいけばいいのでしょう!?」
【そうだね、「おわり」まで行けば出してあげるよー。いけるものならね】
「なんですって?」
【それでは左をご覧ください。私を中々楽しませてくれたあと力尽きて倒れた一般OLになりまーす】
「!?」
アナウンスの言う通り走りながら左を向くと、そこには白骨化しているOLの服を着た遺体が。しかも一つや二つじゃない。服は様々だが、数えきれないほどの白骨死体が道の脇に転がっていた。
「っ……お前!何人、犠牲にしたんですか!こんなことして、何を…!」
【最高の映画を作るため!君達のアドリブで最高の物語を作るのさ!其の名もネバーエンディングフェアリーテイル!】
「センスないですね」
【………あっそ。そんなこと言っていいんだ?】
「え?」
瞬間、マッドハッターに追いかけられていた森が一瞬にして切り替わる。トランプの城ってことは終盤の場所!?振り返ればマッドハッターも消えていた。
「いいんですか?もうおわり間近ですが」
【ハートの女王とその兵隊、切り抜けられるものならやってみせてよ】
また、読んでる途中でページが捲られるようにして城の庭に移動される。そこにいたのはクロッケーをしていたハートの女王。しかしその手にはフラミンゴ、ボールの代わりにハリネズミ、ゲートは部下の兵隊と言う傲慢で非常に怒りっぽい暴君だ。
「私はアリスとクロッケーするのが役目なの!お前もさっさと死んでアリスを寄越しなさい!」
「お前も…?」
気になることを言いながら激昂するなりフラミンゴでハリネズミを打って来るハートの女王。咄嗟に宙返りで避けて着地。バットショットを飛ばして兵隊を牽制し、スパイダーショックから糸を飛ばし兵隊から槍を奪い取って、続けて打たれたハリネズミを打ち返す。打ち返されたハリネズミが激突したハートの女王は爆散。「不思議の国のアリス」のラスボスともいえるハートの女王を倒したことで勝利を確信する。
「やった、これで!」
【帰れると思った?】
しかし、高速で光景が巻き戻って行き気付いたらまた最初の森の中に立っていて。思わず目を見開いた。
「なんで…」
【お伽話はページを戻せばまた読める。繰り返し読んでいくことで理解が深まる。おわりになんてさせないよ。私が満足するまで何度でもページを戻すんだから!夢で終わらせない!】
「ふざけるなー!!!」
勝手な言い分にブチギレる。確かに本と言うのはページを戻すことで何度も読めるけどおわりがあるからいいんでしょうが!するとまた現れるマッドハッタ―。
「また会ったな偽物アリス…!」
「しかも記憶引き継いでるんですか道理で恨みが深いはずですよ今畜生!」
【無限ループって怖くね?】
「お前が言うな!」
真面目に死ねばいいのに、と素で思ってしまうぐらい性格悪いんだがこのドーパント。とりあえず吸い込まれたはずのきりたんとついなさんを捜そう、と思ったその時だった。
「そういえば、この間の奴と同じ異様な力を使っていたな貴様。ならばこれだ」
《ユートピア!》
「ガイアメモリ!?」
マッドハッタ―が突如ガイアメモリを取り出したかと思うと額に挿入し、黄金色なれど頭部の仮面は左側が欠けて目が覗き杖を持つ左右非対称のドーパントとなる。なんで!?
【以前取り込んだ人間が持ってたものだねー、面白いでしょ?】
「ふざけんなください!?」
降り注ぐ浮かんだ瓦礫の雨。これは結構、不味いかもしれない。
「風よ、吹け吹け!吹くがいい!」
「服などいらぬ!熱かろう?脱げ!脱げ!」
「じゃあかしいわ天候の分際で!?」
まったくなんなんやこの世界。どこかの平原で、クソ寒い暴風を吹き散らす顔のある暗雲と、ギラギラと輝き熱気を放つ太陽に、延々と追いかけられてるんやけど?アナウンスは「北風と太陽」「おわりまで行けば出す」とか言ってたか?うち、絵本とか一切読まないで育ったからどうすればいいのかわからんのやけど!
「おのれ!おのれ!」
「旅人よ!何故脱がない!」
「暑さと寒さが一緒に来たらちょうど良くて脱ぎたくても脱げんわいボケ!」
脱げばいいんか?一応乙女やから嫌なんやけど。すると暗雲と太陽が頷き合うと一体化し、光り輝く人型の雲みたいな姿になるとその手にガイアメモリを取り出して…なんやと!?
《ウェザー!》
「風よ吹け!吠えろ太陽!唸れ雷!砕け豪雨!凍てつけ吹雪!」
風神雷神かサムライを思わせる姿となると次々と暴風、熱線、雷撃、水流、冷気を放ってくるウェザー・ドーパント。中々に凶悪なメモリやな。
「…はっ、なんの因果かWのメモリか。上等や!」
《アクセル!》
「変…身!」
《アクセル!》
うちはアクセルに変身、ウェザー・ドーパントに立ち向かった。
「ったく、なんでオレがこんなことを…」
窓ガラスを吹きながら溜め息を吐く。ボロボロで貧相な服を身に纏って結構でかい家の掃除をやらされている。それもこれも、オレを「シンデレラ」と呼び姉を名乗る女二人と継母を名乗るクソババアのせいだ。美しくもないくせにオレに命令してるんじゃねえ。…あかりと一緒に映画館に突入したはいいが、あかりを庇って吸い込まれてしまった…やらかしたなあ。
「シンデレラ!それが終わったら、王子様の所に行く前に死になさい」
「そうよそうよ。貴方はシンデレラの代わりにならないわ」
「召使にするのもいいとは思ったけどあの子じゃないとね…!」
「あ?何を言って…」
《タブー!》
《クレイドール!》
《テラー!》
振り返ると、姉二人と継母は芋虫の様な下半身の女性型のドーパントと土人形のドーパント、マント付きの巨大な仮面を帽子のように被った古代の王を思わせるドーパントと化していた。
「…あー、そういうことか。掃除よりよっぽどやりがいがあるじゃないか」
《ゴールド!》《パイレーツ!》
「変身!」
《ゴールデンパイレーツ!》
ジョリーロジャーを描くようにポーズを決めてドライバーを開閉。エルドラゴへと変身してパイレーツカリバーを構え、破壊光弾の雨と召喚された巨大なドラゴンに立ち向かい、破壊光弾を薙ぎ払いドラゴンを蹴り飛ばす。
「王子様に会いに行くなんて性に合わないんだよ。感謝するぞクソババア共!」
【…なんでノリノリなのこの二人?】
「ううっ、ここは…」
目を覚ます。顔にかかっている頭巾をどかすと、それは赤い頭巾で。周囲を見渡すと森の中だった。見れば手にはパンとワインが入った籠が握られている。…えっと?
【君は可愛い可愛い赤ずきんちゃんだ!…あれ?知らない?まあいいや、知らない子がやっても面白そうだしね!】
「フェアリーテイルですか…ゆかりさん、聞こえますかゆかりさん」
【あ、きりたん起きましたか!早速半分力貸してほしいのですが!】
ダブルドライバーが腰に付けられたままだったので呼びかけると返事が帰ってきて安心する。じゃあ早速…とサイクロンメモリを取り出そうとするも、目の前の茂みからそれが出てきて固まってしまう。
【きりたん?どうしましたか?】
「…それは無理そうです」
「グルルルル…!」
現れたのは私よりも大きな狼。どんなストーリーなんですかね赤ずきんって!
【可愛い可愛い赤ずきんちゃん、お婆さんの家にお見舞いしに行く途中に狼さんに襲われ食べられてしまいました!アハハハハ!】
「ファング…はこの世界にはいない、なら!」
連絡手段だからかスタッグフォンは消えていたが、懐に入っていたデンデンセンサーでの甲殻で狼の爪攻撃を受け止め、もう片方の手でフロッグポッドを起動。一度地面に降りてから跳躍し、顎に強烈な一撃を与えて怯ませた。
「キャイン!?」
「今です!」
フロッグポッドを回収して全力で走る。この世界のどこかにいるゆかりさんと合流するしかありません。あの狼は脳震盪を起こしているはずなのでこれなら逃げられるはず……
《スミロドン!》
「はい?」
振り返ると、狼が口から吐き出したのだろうガイアメモリをたしっと前足でボタンを押し、咥えてポイッと空中に投げると背中に直挿し。立ち上がり、その姿が狼男…ではなく、どう見てもネコ科のドーパントへと変貌する。スミロドン・ドーパント…!?
「それでいいんですか狼さん!?」
「キシャア!」
「はやっ、回り込まれた!?」
【きりたん!きりたん!大丈夫ですか!?】
ゆかりさんの声が脳内に木霊するが尻餅をついてしまった。まずい、終わった………。
「させない!」
その瞬間、飛んできた光の矢が激突してスミロドン・ドーパントの胸で爆ぜる。振り向くと、そこには三日月を模した平べったい弓盾を左腕に装備している、熊の毛皮の様な装甲を上半身に纏い猟犬の毛皮のスカートを身に着け、足が鹿の様になっている女性の様なドーパントがいた。アルテミス・ドーパント…ということは。
「大丈夫ですか!?怖がらないで、私が守りま…すから………きりたん?」
「ずん、姉、さま…?」
聞き慣れている様な気がする呼びかけに、自然とそのワードが口から出た。やはり、姉、なのか……。
「何で襲われてるのにダブルになって……そうか、あの恐竜がいないのね」
「っ…!」
ファングメモリが不在で私が変身できないことに気付いたのか近づいてくるアルテミス・ドーパント。襲われる、と目を瞑った瞬間、ガキンッと鉄同士がぶつかる音が聞こえた。
「…え?」
「きりたんは……もう、絶対に、殺させない!」
目を開けると、スミロドン・ドーパントの爪を弓盾で受け止めているアルテミス・ドーパントの姿が。守って、くれた?そのままアルテミス・ドーパントが矢を飛ばし、それを避けるスミロドン・ドーパントの攻防が繰り広げられる。…一か八かだ。
「ゆかりさん、変身しますよ!」
【え?そっちも襲われてるんじゃ…】
「アルテミス・ドーパント…東北純子、いやずん姉さまと合流しました!私を守ってくれるらしいので、信じます!」
《サイクロン!》
【っ…きりたんがそう信じたなら、きりたんが信じる貴方の姉を信じましょうとも!《ジョーカー!》】
「【変身!】」
「危ない!」
倒れそうになった私を抱きかかえる感触がした。ずん姉さまに抱えられてスミロドンの襲撃を避けたらしい。ちょうどいい、体を任せよう………
「【変身!】」
《サイクロン!ジョーカー!》
ユートピア・ドーパントの念動力で捕まり、振り回されていたところきりたんがメモリを送ってきたのでサイクロンジョーカーに変身。風を操り無理やり着地。周囲の地盤を浮かび上がらせて追撃を放とうと突き出されたユートピア・ドーパントの杖を回し蹴りで蹴り飛ばす。
「ぐぅ!?」
「それがなければ攻撃できないでしょう!とどめです、マッドハッター!」
《ジョーカー!マキシマムドライブ!》
「「ジョーカーエクストリーム!」」
そのまま風に乗って飛び上がって分裂、飛び蹴りを叩き込んで爆散させた。爆発から出てきたマッドハッタ―から帽子と杖をもらい、変身を解いて帽子を頭に被る。山高帽ですがまあ悪くないですね。
【すみません、ゆかりさん!ずん姉さまと早速話してきます!】
「あ、はい。いってらっしゃい…それぞれの居場所を知りたかったのですけど」
…さてと。とりあえずまっすぐ進んだらループするから、横に行くか。
何気に水都消滅+仮面ライダー全滅の危機である。
役職はそれぞれ
・ゆかり×不思議の国のアリスのアリス
・きりたん×赤ずきんちゃんの赤ずきん
・ついな×北風と太陽の旅人
・リリィ×シンデレラのシンデレラ
・純子×???
・マッドハッター×ユートピア(杖繋がり)
・狼×スミロドン(獣繋がり)
・北風+太陽×ウェザー(天候繋がり)
・姉その一×タブー(姉)
・姉その二×クレイドール(姉)
・継母×テラー(親)
となってます。メモリは一応一般の人間の、ということにしてます。リリィはあとから来てあかりを庇って吸い込まれた模様。無限ループで敵しかいない世界で打開策はあるのか。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。