「……なにをしてるんでしょう…?」
「知らん。あいつが、リリィ様を……!」
「落ち着け西友」
先刻一緒にやってきたリリィさんが変身したエルドラゴがドーパントと対峙した際に、咄嗟に外まで投げられて無事ですんだ私が、応援に呼んだキクさんと西友さんを連れて隠れながら戻ってくると、客席を縫うようにバタバタと歩きながら顔がない本棚の化け物が自分の顔であるはずの本をペラペラ捲りながら一喜一憂していた。
「あー!そうじゃない、そうじゃない!物語に逆らうのは面白いけどシンデレラが王子様をぞんざいに扱うのは駄目でしょう!?あーもうグレーテル!お兄ちゃんのために力を貸すのはいいけど今の君はヴィラン!そんなぶれぶれじゃ困る、困るよ!そうだ、確か青い鳥が集めているメモリにちょうどいいのがあったな…そうすれば面白いんじゃないか?いいねいいね、そうしよう!」
「…?」
映画館の入り口からそっと覗きこむがなんだろう、監督気取り…?すると疲れたのかどかっと客席に座りメモリを腕から引き抜くドーパント。
「あー疲れた!館長も先輩もみんな死んだし、ここには私しかいないから一休みするかあ」
「…あれは」
現れたのはいろとりどりの頭。あれはたしか、映写技師見習いの
ガタッ
「誰?!」
「リリィ様を……返せ」
「ちっ、しょうがない…!」
すると逸ったのか西友さんが素手で突撃。キクさんも包丁二本を逆手に持って高速で体勢を低くして駆け抜ける。
「仮面ライダーの仲間か!?お前らも吸い込んでやる!」
《フェアリーテイル!》
すると桐谷洸は本棚でFと描かれたメモリを取り出し左腕の生体コネクタに突き刺し、フェアリーテイル・ドーパントに変身。顔の本をペラペラと高速で開いてエルドラゴを吸い込んだ風が巻き起こる。
「オオオオッ…!」
すると西友さんは風に逆らって跳躍、風を乗り越えてドーパントに接近し、頭頂部にオーバーヘッドキックを叩きつける。スーツ姿なのにすごい。
「あいたぁああ!?」
「こいつ、他のドーパントに比べて断トツに弱いみたいですね!」
さらに接近したキクさんがフェアリーテイル・ドーパントの脛に斬撃。痛かったのか足を押さえてピョンピョン跳ねるフェアリーテイル・ドーパントを背中から蹴り飛ばすキクさん。ゴロゴロと無様にフェアリーテイル・ドーパントが転がり、さらに西友さんが腹部をサッカーボールキックで蹴り飛ばされてさらに転がって行き壁に激突してようやく止まった。
「ぐええっ…よくも、よくもお伽話の神である私を足蹴にしたなあ!」
「関係ない……早く、リリィ様を返せ……!」
「首ギロチンしないだけマシだと思ってください」
「裏切った愚か者が……反吐が出る」
「はあ!?言ってる場合ですか狂信者!?リリィさん助けるためでしょ!?」
「俺一人で……充分!」
「はーこいつ、頭氷河期みたいにカチンコチンですか!はーこいつ」
いきなりいがみ合い喧嘩を始めるキクさんと西友さん。というか西友さんが一方的に喧嘩を売ってしまってる。あれ、私、呼ぶ人選間違えました?
「隙あり!」
「チィッ……!」
するとフェアリーテイル・ドーパントが再度構えた自分の頭部である本を構えてページがパラパラと開閉し風が発生。しかし、西友さんはそれに気付くなりキクさんを蹴り飛ばして自身も後退し、風から逃れる。
「なにい!?」
「お前のせいだな?裏切り者」
「あんたのせいでしょうが!」
驚愕するフェアリーテイル・ドーパントを挟んでまたいがみ合う西友さんとキクさん。しかし深呼吸すると西友さんが提案した。
「仕方ない……援護しろ。不愉快だがな」
「最初からそのつもりです。ちょっとは氷が溶けたようで」
「黙れ。行くぞ……!」
「こんの…!」
キクさんに向けて吸い込むフェアリーテイル・ドーパントの後頭部…だと思われる本棚に踵落としが炸裂。振り返ったフェアリーテイル・ドーパントの背中に二連撃で包丁が叩き込まれる。その繰り返し。蹴りが、包丁が、振り返り続けるフェアリーテイル・ドーパントに次々と炸裂して本棚と中に入っている本の山がボロボロになっていく。
「痛い痛い痛い!何なんだお前ら!?中の奴等をループさせる暇もないぞ!?」
「元エル・ドラードのナンバー2ですが、なにか?ループはよくわかりませんがさせない方がよさそうです」
「そして、俺こそがリリィ様の真の部下だ。早く出さねば……お前を潰す!」
「ヒィィイイイイッ!?」
…なんというかその、生身でドーパントをフルボッコにする元マフィア怖い。
「クルォアアアアアッ!」
「させない!」
「このお!」
「なのだあ!」
ケツァルコアトルス・ドーパントの突進しながらの光弾をきりたんの身体を抱えたアルテミス・ドーパントの光の矢が撃墜し、サイクロンジョーカーの私達とエクスタシー・ドーパントが両翼を受け止める。とにかく、止めないと…って!?
「なのだああああああ!?」
「持ってかれて…!?」
受け止めようとしたのだが、そのまま空に連れ去られてしまった。この高所から落とされたらさすがにヤバい…手が滑って、落ちる…!?
「うわぁああああ!?」
「さーせーるーかー!」
「イナズマサカリィ!」
たまらず落下してしまうと快晴の空に稲妻が走り、ケツァルコアトルス・ドーパントに直撃。さらに私達は横抱きに受け止められる。それは、仮面ライダーアクセル バイクフォームと、仮面ライダーエルドラゴ ゴールデンサンダーだった。
「無事かゆかり、きりたん!」
「いやおかげさまで無事ですけど…あれ、ついなさんはともかくリリィまで、なんで?」
「……恥ずかしながらあかりを庇ったらそのまま…」
「あー」
「うちは完全に油断してやな。してやられたわ」
「仮面ライダー全滅じゃないですかやだー」
『とにかく、手伝ってください!グレーテルっていうキャラクターが「おわり」という文字を見つけたら出られると教えてくれたんですが、そのグレーテルがドーパントにされてしまって…!』
再び舞い上がって光弾と突風を放ってくるケツァルコアトルス・ドーパントを見上げながらきりたんが叫ぶ。
「よくわからんがわかった。とりあえずあのデカ鳥を倒せばいいんだな」
「いや、出口の「おわり」とやらを見つけた方が早いやろ。場所は分かってるんやろ?」
「わかってますけど、城の上で…」
「こんだけ数がいるんや。分かれた方がいいやろ」
『…なら!』
ケツァルコアトルス・ドーパントの光弾がすぐ近くで爆発するが、きりたんはアクセル バイクフォームに飛び乗ってエルドラゴ、アルテミス・ドーパント、エクスタシー・ドーパントに向けて叫んだ。
『私達が「おわり」を解放するまで時間稼ぎをお願いします!』
「わかったわ!」
「グレーテルは僕が止めるのだ!」
「任された!」
《ゴールド!マキシマムドライブ!》
こちらに向けて放って来た光弾を、エルドラゴが地面に手を付けて黄金の壁を形成して防御。私達はアクセル バイクフォームのハンドルを握ってトランプ城に向けて加速する。スピードに乗って平原を駆け抜け、門まで肉薄する。
「何者か!ここはアリスを待つハートの女王の…」
「私がアリスですよ文句があるかあ!」
「「「うぎゃあああああ!?」」」
門に屯っていたトランプ兵を轢き飛ばし、体当たりで門を開けて場内を爆走する。えっと、一番高い塔は……西のあれか。
「ついなさん、西!」
「あの上の扉か!了解や!」
群がるトランプ兵を蹴散らし、ハートの女王がフラミンゴで打って来るハリネズミを手刀で弾きながら塔を目指し、いつぞやのラプトル・ドーパントを追いかけた時の様に外壁を登って行く。
「クルォアアアアアッ!」
「『っ!?』」
「なんやと!?」
しかし、平原の方からケツァルコアトルス・ドーパントが飛来。その翼で壁面から薙ぎ払われてしまう。もう少し、なのに…!
『まだです!』
《ルナ!》《ルナ!ジョーカー!》
アクセルが落ちて行くのを尻目に、きりたんが手を動かしてルナジョーカーに変身、右手を天に伸ばすが、届かない。目の前にケツァルコアトルス・ドーパントが迫る。
「くそっ…」
『何故かフェアリーテイルの横槍がない今がチャンスなのに…!』
「さ!せ!る!か!なのだぁああああ!」
すると凄まじい勢いで平原の方からなにかが飛んできてケツァルコアトルス・ドーパントに激突。それはエクスタシー・ドーパントで。平原から大跳躍してきたというのか…!?
「グレーテルは僕が止めるのだ…!」
「きりたん、手を貸して!」
『へ?』
すると飛んできたアルテミス・ドーパントが伸びた先の右手首を掴んで弓に番えて天に向けて発射。凄まじい勢いで上空に射出されるダブル。すぐに、扉の眼前まで飛び上がる。
「頼むのだ!ライダー!グレーテルを、解放してやってくれなのだ!」
「…ミュージアムの願いを聞くのは癪やけど…!」
《アクセル!マキシマムドライブ!》
「美しい兄妹愛だと見た。任せろ!」
《サンダー!マキシマムドライブ!》
地上ではアクセルとエルドラゴがエクスタシー・ドーパントの願いで彼が空中に放り投げたケツァルコアトルス・ドーパントを挟み込むようにライダーキックを繰り出そうとしていて。私達も、それに習う。
《メタル!》《ヒート!》
《ヒート!メタル!》
「決めますよ!」
『この世界におわりを!』
《メタル!マキシマムドライブ!》
ヒートメタルに変身し、メタルシャフトにメタルメモリを装填。両端から炎を噴いて推進力を得て扉に突撃する。
「『メタルブランディング!』」
「「ライダーツインマキシマム!」」
上空と地上で同時に炸裂し、瞬間。扉から「わ」の字が飛び出して空高く飛んでいく。見れば、上空だからこそ見えた他のシンデレラ城と、恐らく白雪姫の城からも「お」と「り」の字が飛び出し、空で合体する。
【ああー!?なしなし!邪魔者の相手をしていたら何時の間にー!?巻き戻れ巻き戻れ、ああ、私の力が通じなギャー!?】
外でなんかあったらしくアナウンスからの悲鳴を聞きながら地上に降りると、元に戻ったグレーテルと蛇門が抱き合ってた。
「ヘンゼルお兄ちゃんじゃないけど…嫌いじゃなかったよ、お兄ちゃん」
「こっちこそ、夢を叶えてくれてありがとうなのだ…」
「じゃあね、皆さん。私達をただの人形だと思って弄ぶ神様をぶん殴ってやって!」
そう笑顔で見送られ、私達は眩い光に包まれた。
「ん?まさか…そんな、そんな…馬鹿なああああああ!?」
キクさんと西友さんに斬られ蹴られていたフェアリーテイル・ドーパントの様子が変わり、その本が捲られ始めると眩い光が劇場を照らしだす。そして光が晴れると、ゆかりさん、きりたん、ついなさん、リリィさん、東北純子さん、東北蛇門さんが現れていた。やった…やった!
「ゆかりさん!きりたん!ついなさん!リリィさん!無事でしたか!」
「リリィ様…!」
「無事でよかった、リリィさん…!」
「あかり!貴方達が頑張ってくれてたんですね!」
「よくやったお前ら。あとは任せろ」
駆け寄る私と西友さん、キクさん。ボロボロのフェアリーテイル・ドーパントを見て何があったのか悟ったのか、楽しそうに向き直る六人。
「ひ、ヒィイイイイッ!?そんな馬鹿な、私の世界から出てこれた奴なんて今まで一人も…!」
「貴方はいくつか間違えた」
「私達をなめてドライバーの類を奪わなかったこと」
「ループで何とでもなるからと油断しきっていたこと」
「キャラクターたちから大事な人間を奪い、反骨心を抱かせたこと」
「人間たちが貴方の言うことを聞く役者だと思い込み好き勝手させたこともそうですね」
「まあ言いたいことは一つです」
ゆかりさんときりたんが交互に言いつつ、指を突き付ける。ついなさんはエンジンブレードを、リリィさんは握り拳を向けて。
「「さあ、お前の罪を数えろ」」
「絶望がお前のゴールや」
「ド派手に散りな」
《サイクロン!》《ジョーカー!》《アクセル!》《ゴールド!》《パイレーツ!》《アルテミス!》《エクスタシー!》
ただの人間相手にもやられるドーパントの前で、死刑宣告の如く次々とメモリが鳴らされていく。しかもエクストリームメモリまで来た。
「「「「変身!」」」」」
《サイクロン!ジョーカー!エクストリーム!》
《アクセル!》
《ゴールデンパイレーツ!》
仮面ライダーダブル、アクセル、エルドラゴ、アルテミス・ドーパント、エクスタシー・ドーパントに囲まれ、せめてものとまた絵本の中に閉じ込めようとするフェアリーテイル・ドーパント。
《プリズム!》
「「これでもうお伽話は読めません」」
「私のアイデンティティがー!?」
しかしエクストリームの力で完全に無力化されてしまったフェアリーテイル・ドーパントに、一斉攻撃が炸裂。あっけなく爆散してメモリブレイクされ、重傷の桐谷洸が転がるのだった。南無三。
深夜。救急車に乗せられ、警察病院に連行される桐谷洸。しかしその救急車の進む先の道路の上に立つ着物姿の女がいた。
《ナインテイルフォックス!》
救急車の赤い光に照らされながら女は九尾の狐の怪物に変身。巨大な尻尾を振るい、救急車を転倒、炎上させてしまう。護衛の警官が出てきて銃を向けるが、尻尾が変形した口で噛みちぎり、そのまま後部に乗せられた桐谷洸を眼前に引き摺り出すナインテイルフォックス・ドーパント。
「うっ、うう…やめて…もうやめて…」
「よくもわたくしの…いや、「俺」の計画を邪魔してくれたな……ガイアインパクトを起こすための生贄は替えが効かん。台無しにするところだったんだ。命を持って償うといい」
「う、う、うあぁああああああ!?」
紅い眼光が睨み付けると共に九尾が伸びてそれぞれ口を開いて噛み付き、断末魔と共に八つ裂きならぬ九つ裂きにしたナインテイルフォックス・ドーパントは舌なめずりすると変身を解き、炎の灯りに照らされながら東北至子は水都の闇夜に姿を消した。
その後、東北姉弟が礼を言って自分で帰って行き依頼は解決。したかと思われたが、犯人である桐谷洸は連行中に連行していた人間ごと何者かに皆殺しにされたことをついなさんに知らされた。ミュージアムの粛清なのだろうか。それはわからない。だけど、今回の事件は一つの謎の答えに辿りつけるきっかけになったのは確かだ。
「…東北家は代々イタコの家系、その中でも東北至子の力は歴代で最も強い……」
集めた資料に描かれた事実を反芻する。…間違いない。今の東北至子…ナインテイルフォックス・ドーパントは……娘に霊媒させた東北外道だ。
まさかの変身できない組大暴れ。一般人にも負けるドーパント。
そしてナインテイルに始末されるフェアリーテイル。「俺」と言い出したその正体はまさかの…?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。