ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。マキさんの動機や如何に。楽しんでいただけたら幸いです。


第四十三話:Tを止めろ/蝕む親友の闇

「水都で悪さは絶対に許しません!」

 

 

 五年程前。当時、水都を荒していた不良集団を許せなくて、喧嘩を売っていた。私は喧嘩に滅法強かったが多勢に無勢。そこに割り込んで加勢してきたのが、マキさんだった。正義感が強くて、言葉より先に手が出る、そんな人だった。

 

 

「一人の女の子相手に男が何十人も寄ってたかって恥ずかしくないの!?」

 

 

 そう言って啖呵を切ったマキさんは頭突きに蹴りと言った喧嘩殺法で不良たちも圧倒。私も負けられないとばかりに大暴れして数十人はいた不良集団をたった二人で降参させた。そうだ、マキさんは私の親友で、幼馴染で、私の最初の相棒だ。

 

 

――――「もしも、仮面ライダーとしてまた立ちはだかるなら、ゆかりん相手でも容赦しないから」

 

 

 なのに、マキさんはドーパントになって、私は手も足も出ずに叩きのめされて。こちらを睨んできたハイライトを失った目が忘れられない。なんで。なんで。なんで、こんなことに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゆかりさん、ゆかりさん…!」

 

「きりたん…?」

 

 

 きりたんの声で目覚める。事務所の寝床だ。顔を上げると雫が滴り、何事かと頬に触れると、涙だった。寝ながら泣いていたのか…。

 

 

「うなされてましたよ、大丈夫ですか。…まあ無理もありません。まさかマキさんだったなんて…」

 

「…やっぱり、夢じゃないんですね」

 

 

 記憶がフラッシュバックする。不気味な造形のドーパント。ダブルとエルドラゴのどんな攻撃も通じず、圧倒的な格闘センスによる喧嘩殺法で一方的に叩きのめしてきたトゥース・ドーパント。その正体がマキさん…私の大親友。夢であってほしかった。今だって信じたくない。だけど…受け入れなきゃいけない。

 

 

「変身する前。ドーパントに変身する前の後ろ姿を見かけて、まさかと思ったんです。いつも喫茶店「弦巻」で見ていた、仕事する後ろ姿にそっくりで……マキさんがメモリに手を出すだなんて、信じられません…」

 

「ゆかりさん……信じられなくてもこれは現実です。せめて止めましょう。私達の手で」

 

「はい…だけど、どうすれば」

 

 

 きりたんの言葉に頷くも、打つ手なしだ。どんな攻撃も歯が立たず、なんでもかんでも噛み砕いて無力化するあの防御力は如何様にもしがたい。

 

 

「ファングでも恐らく文字通り歯が立たないでしょう。ダブルでは恐らくエクストリームでしか……一応検索しましたがトゥース、つまり「歯」は人体で最も硬い部位です。物を噛み切るための前歯または門歯、とくに硬い物を噛み切るための糸切り歯または犬歯、噛み切ったものを磨り潰すための奥歯または臼歯の3種類に分類されており、表面は非常に硬い白いエナメル質で、内部は歯の全体を支える象牙質と歯を組織に固定するセメント質で構成されています」

 

 

 ごめんきりたん。なんのこっちゃです。専門用語が多すぎる。よくはわからないが、もうなんか字面で硬いと分かる。

 

 

「弱点は「酸」ですが逆に言えば酸以外のものは通用しません。歯はダイヤモンドでなければ削れないくらい硬い組織であり、ちゃんと歯磨きし続ければとんでもない硬さを発揮します」

 

「あれ歯磨きいるんですかね…?」

 

「さあ?そもそも食べてたのが無機物のメタルシャフトか光弾ばかりでしたし…腹を壊すぐらいはしそうですけど」

 

「そういえば屋台や店も食い壊してましたね…あの細身の体のどこに入ってるんでしょうか」

 

「粒子レベルまで噛み砕く能力はあるみたいですね。胃袋には入らない、口だけの機構の様です」

 

「はあ、なるほど」

 

 

 つまり食道が無い口だけが体中に生えるみたいなもんか。あかりっぽいなとは思ったが違ったらしい。っと、あかりといえば。

 

 

「そう言えばあかりは?リリィも。きりたんだけとは珍しい」

 

「あかりさんならリリィのお見舞いです。入院したので」

 

「入院!?リリィがですか!?」

 

「頭蓋骨にひびが入ってたんですよ。パキファケロの時と同じく。メモリの能力によるダメージじゃない物理的なダメージなので水都総合病院に運び込まれました」

 

 

 それほどの威力だったというのかあの頭突き。いや、人体で最も硬い部位での頭突きだ、ひびですんでよかった。…でもあれ?

 

 

「…私も頭突き喰らいましたけどぐわんぐわんするだけでそんなことありませんけど?むしろ全身が痛い」

 

「そういえばそうですね。なんででしょう?」

 

 

 思い出せ、思い出せ。あの時、マキさん…いや、トゥース・ドーパントはエルドラゴの正体がリリィだと知って動揺していた。知っている顔だったからだろう。オクトパスの事件の前に喫茶「弦巻」で食事するついでに「うちの新しい探偵です!」とマキさんに紹介しに行ったことがある。知っていた顔だから動揺した?いや、あれは……。

 

 

「マキさんはうすうす気づいていたのかもしれません…怪事件専門の紲星探偵事務所の探偵で、怪物騒ぎの事件が起きているときに限って喫茶「弦巻」に顔を出さない私が仮面ライダーだと……」

 

「巻き込みたくないからと露骨に距離を置きますからねゆかりさんは。なにかおかしいと感づかれてもしょうがないと言えます」

 

「エルドラゴを倒して案の定知り合いの顔だったから、もう一人の仮面ライダーが私だとうすうす気付いて、手加減した。そう考えられませんか…?」

 

 

 だから私はリリィ程のダメージを負わなかった…そうとしか考えられない。

 

 

「まだ、人の心は残っている…そう、信じたい」

 

「説得すれば止まってくれると?甘いです、ゆかりさん。貴方は何度、そのハーフボイルドによる甘さで説得しようとして痛い目に遭ってきましたか」

 

「ぐっ…」

 

 

 ハーフボイルド。ハードボイルドには遠く及ばない半熟卵。たびたび甘い判断をする私に対してきりたんの使う呼び名を久々に言われた。そう言われたら反論できない。メモリの力の強大さやメモリの毒素ゆえに地球の記憶に飲み込まれたり、精神と肉体を蝕まれることで、怒りや憎しみといった負の感情を助長・増幅させやすく暴走・依存症になってしまうことを知っているのに、悲しい理由があってメモリに手を出した人間の善性を信じて、説得をしてしまう。今回だってきっと…と思ってしまった。私の悪い癖だ。

 

 

「で、でも!マキさんは大親友です!きりたんよりも前の相棒なんです!ちゃんと話せば…!」

 

「虚音イフの相棒でさえ説得を聞き入れずにどうなったか忘れましたか。メモリを利用してしまった人間はもう、手遅れなんです。琴葉葵の様な善意…善意?で使った人間だって暴走したんですよ?エルドラドメモリを使いこなしていた強靭な精神力を持っていたリリィでさえ、毒に影響されていたと言っていたじゃないですか」

 

「リリィすごいですよね、色んな意味で」

 

「反論できないからって話を逸らさない!」

 

「すみません…」

 

 

 いやでもすごいと思ったのは間違ってないんですよ。思い返してみても精神力が並大抵の物じゃないと思うんですよ、と心の中で言い訳してみる。実際に言ったらまた怒鳴られそうだ。

 

 

「まったくもう…ゆかりさん。貴方が憧れるハードボイルドならば、いかなる事態にも冷静さを保ち、自らの感情を押し殺しても為すべき事を為す…そうなんじゃないですか?」

 

「その通りです…でも、私は…!」

 

「邪魔するでー」

 

 

 反論しようとすると、ちょうど同じタイミングでついなさんが扉を開けて事務所に入って来て、三人揃って固まる。ついなさんは私達の間の空気が悪いことに気付いたのか巻き戻る様に後退して。

 

 

「邪魔するんやったら帰ってーあいよー」

 

「「待って待って待って!?」」」

 

 

 どこかで聞いたようなボケをしながら出て行こうとしたのできりたんと一緒に慌てて呼び止める。するとついなさんは不貞腐れながら手にした書類をひらひら振って頬を膨らませる。

 

 

「なんやねん。せっかく弦巻真希の情報を集めて来たってのにうちは邪魔者かいな」

 

「そんなことありませんよ!助かります!」

 

「マキさんの情報……なにか、悪いことでも…?」

 

 

 ついなさんが集めてきた情報、というのに悪い予感がする。私が知らないといけなかった、なにかだという予感が。

 

 

「ああ、それがな。弦巻真希の実家でもある喫茶店「弦巻」なんやが…今月いっぱいで閉店するらしいねん」

 

「え…?」

 

「閉店…ですか。なるほど、繋がった」

 

 

 語られた言葉に呆ける私と、逆に納得できたのか頷くきりたん。喫茶店「弦巻」が閉店……?潰れるっていう事ですか……?

 

 

「なんでもな。半年前から客足が遠のいていたらしいんよ。覚えはあるか?」

 

「たしかに、ここのところ客が少ないとは思ってましたが…」

 

「ここ半年で水都に次々と新しい飲食店ができたり、新メニューが出たりしてそっちに客を奪われて、客足が遠のいたらしくてな。襲われた店は、全部それや」

 

「じゃあ、マキさんの動機は…」

 

「自分の店である喫茶店「弦巻」を潰させないために、ライバル店を襲撃したということですか…?」

 

「そういうことに、なるやろな」

 

 

 重たい空気がその場を支配する。主に私が原因であり、きりたんとついなさんはこちらを見て気を遣っているのが見て取れる。マキさんの店が、そんなことになっていたなんて………いや、違う。あの店は、マキさんの店じゃない。

 

 

「…親父さんのためです」

 

「え?」

 

「マキさんが、自分の正義感を無視してまでガイアメモリに手を出したのは恐らく、マキさんの親父さんのためです」

 

「それはなんでや?」

 

「あの店はマキさんの親父さん…弦巻誠人さんが亡くなったマキさんの母親の夢を叶えようと家を改造して作った店らしいんです。マキさんもミュージシャンになるという夢を諦めてその手伝いを……それだけ、思い入れ深い店なんですよ」

 

 

 マキさんがどんな思いで夢を諦めたのか知っている。それだけに、やりきれない。

 

 

「だからって他の店を壊していい理由にはならへんやろ。ゆかり、お前は許すんか?」

 

「許せるわけがないでしょ…!他の店だって誰かの夢が形になったもののはずです。身勝手に消していい理由にはならない!」

 

 

 それは確かなはずだ。マキさんを見逃す理由にしては断じてならない。

 

 

「なら、行きましょう!ゆかりさん!弦巻真希を止めるんです!」

 

「でも、どこに行けばいいのか…」

 

「それなら任せい。条件に合う店でまだ襲われてないところもメモしておいた」

 

 

 そう言ってメモを見せるついなさんに頷く。絶対に止めて見せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 歩歌路町の商店街。以前JTR事件が起きたあそこだ。そこにある牛丼屋「すい屋」が見える建物の屋上に、マキさんはいた。色んな店をついなさんと手分けしてしらみつぶしに巡ってようやく見つけた。

 

 

「もう少し…もう少しで…!」

 

《トゥース!》

 

 

 トゥース・ドーパントになって飛び降りると、それまでにぎわっていた一般人が逃げて行く。人がいなくなったことを確認してから両手を入り口に向けるトゥース・ドーパントだが、人がいなくなることはこちらからしても好都合だ。きりたんと二人で歩きながらメモリを構える。

 

 

《サイクロン!》

 

「これ以上はさせません、ゆかりさんのためにも…!」

 

「…きりたん。君も仮面ライダーだったんだね。残念だなあ。…ゆかりん。ここに来たってことは、そういうことだよね?」

 

 

 首を傾げて訪ねてくるトゥース・ドーパントに、私は覚悟を決めてメモリを掲げてガイアウィスパーを鳴らす。

 

 

《ジョーカー!》

 

「いいえマキさん。私は、貴方の親友として…貴方を止めます!半分力を貸してください、きりたん!」

 

「『変身!』」

 

《サイクロン!ジョーカー!》《エクストリーム!》

 

 

 メモリをドライバーに装填、同時にエクストリームメモリが駆けつけてきりたんを吸収すると同時にドライバーに装填。開閉してサイクロンジョーカーエクストリームに直接変身する。

 

 

「「プリズムビッカー!」」

 

《プリズム!》

 

「「はああああ!」」

 

 

 歩み寄りながらプリズムビッカーを取り出してプリズムソードを引き抜き、トゥース・ドーパントの間合いに踏み込み一閃。

 

 

「本当に、残念だなあ!」

 

「「なっ!?があああっ!?」」

 

 

 しかし、貫くはずだったプリズムソードの剣先は弾かれてしまい、隙ができた所に歯の肩装甲によるショルダータックルが炸裂。大きく吹き飛ばされる。なんで…!

 

 

「「解析完了……トゥースの能力はあくまで体中の口の開閉。硬さは能力ではなく、肉体の変質…!プリズムメモリでは無効化できない…!?」」

 

「ああ、嫌だなあ…ゆかりん…ゆかりちゃんを殴る感触、嫌だなあ嫌だなあ……!」

 

 

 転倒している私達に駆け寄って襟元を掴んで持ち上げ、歯を出現させて膝蹴りを叩き込んでくるトゥース・ドーパント。何度も何度も叩き付けられ、仮面が罅割れて行く。

 

 

「ああ、なんだろう。このどす黒い感情は。怒りと悲しみと失望が入り混じった、これはあ!」

 

「「これは…!?」」

 

 

 激昂と共に、全ての歯の間から何か黒い物が沁み出して、それを纏った爪による斬撃を胸部のプリズムサーバーに受ける。その瞬間襲いかかる苦しみと激痛。これは、毒…!?

 

 

「はは、白かったのに黒く染まっちゃった…これなら!」

 

 

 悶え苦しむ私達を尻目に、「すい屋」に視線を向けて毒を纏った両腕の爪を振るうトゥース・ドーパント。すると毒が飛んで斬撃となり、「すい屋」に炸裂。当たったところがドロドロと融解してしまうのを目の当たりにする。

 

 

「ハハハハ、ハハハハハハッ!壊れてしまえ!私の夢を奪うもの、すべて!」

 

「「駄目です、マキさん…!」」

 

 

 手を伸ばして叫ぶが狂笑を上げる親友には届かない。変り果てた親友に、(ゆかり)はショックを隠し切れなかった。




父親の店のために暴走し続けるマキさん。エクストリームすら退けパワーアップするトゥース・ドーパントを止められるのか。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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