ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。今回で最初の事件、さとうささら編は完結となります。

ミュージアムの幹部も乱入する最終局面。楽しんでいただけると幸いです。


第五話:Mな彼女/本当の友なら

「ふむ。せっかく感情の抑制から解放されたというのに邪魔者ですか。せっかくマッドメモリのフル性能が見られるかと思えば……アフターケアです、“仮面ライダー”を消しますか」

 

《シャーク!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『さあ、お前の罪を数えろ!』」

 

 

 つづみさんが変貌したマッド・ドーパント。泥の記憶の怪物が交互に両手を振るって、巨大な掌の中央から泥の塊を飛ばしてくるのを、風を纏った蹴りで吹き飛ばす。すると振り返りざまにきりたんを抱えて怯えているあかりが目に入る。

 

 

「あかり!危ないからきりたんを連れてここから離れなさい!」

 

「え、え、ゆかりさんですか!?でもきりたんが…」

 

『私はここにいますよ。私の身体を頼みます』

 

「え、きりたん?え、ええ!?」

 

 

 困惑しながらも言われるままにきりたんを抱えて離れて行くあかり。それを見送った隙をついてマッド・ドーパントが右腕を振るって攻撃してきたので振り返りざまにチョップを叩き込むが沈み込んでしまい慌てて引き抜いて距離を取る。

 

 

「学習しないのかしら!私に攻撃は通じないわ!」

 

「風で散らすのが精いっぱいですか、どうしたものか…ところでマッドって狂ってる方です?」

 

『ゆかりさん、英語もわからないんですか…このドーパントのメモリは「泥」。水分を得ることで脅威の粘性と再生力を有します。故に熱が弱点です』

 

「なるほど、さすがきりたん!私の出したキーワードで閲覧しましたか!」

 

『私のメモリを交換しますよ』

 

《ヒート!》

 

 

 照れ隠しの様に右手が勝手に動いてヒートメモリを起動してドライバーに装填、展開。右側が赤く染まり右手の拳に炎を纏う。

 

 

《ヒート!ジョーカー!》

 

「でりゃあ!」

 

 

 高熱の炎により泥が瞬く間に乾いてただの土塊となる。飛ばしてくる泥の塊を拳で打ち砕きながら突進、マッド・ドーパントの振るってきた巨大掌底に真正面から拳を激突。泥で形成されていたのかマッド・ドーパントの右手を粉砕した。

 

 

「ゴボボッ…そんな、馬鹿な…水、水さえあれば…!」

 

「行かせませんよ!このまま一気に!」

 

「行かせない、はこちらの台詞ですねえ」

 

 

 そのままとどめを刺さんとしていると、突如降りかかる何か鋭いものの雨。咄嗟に飛び退いてそれが飛んできた方向を見やると、新手のドーパントがいた。第一印象は重装備の青い騎士、だろうか。内側に牙が付いているフードの様なパーツの中にWを描く騎士の様な顔があり、胴体はYの形のプレートアーマーが特徴的な青い西洋鎧風、右手に一本のノコギリの様な剣を握っている。

 

 

「貴方が何者かは知りませんが、あのお客様を倒されるのは困ります」

 

「ミュージアムの幹部ですか…」

 

「ご明察です。邪魔者にはご退場願おう」

 

 

 そう言って斬りかかってくる騎士のドーパント。こちらの炎を纏った拳を剣の腹でいなし、返しに斬撃を叩き込んできて、それを避ければ剣から牙の様なものが射出され追撃してくる。かなりの手練れだ。この攻防の間にマッド・ドーパントに万宵川まで逃げられてしまった。逃がすわけにはいかない。出し惜しみはできないか。

 

 

《メタル!》

 

「お熱く行きますよ!」

 

《ヒート!メタル!》

 

 

 ダブルドライバーのボディサイドをメタルメモリと交換、左側が銀色となり背中に出現したメタルシャフトを手にして騎士のドーパントの斬撃を受け止め、弾き返す。

 

 

「…む?ならば!」

 

「無駄です!」

 

 

 距離を取って剣を振るい牙の様なものを射出する騎士のドーパントだが、メタルシャフトを回転させて防ぎきり、回転した勢いのまま投げつけてドーパントにぶち当てて跳ね返ってきたのを手に取り追撃に炎を纏った先端を肩から叩きつける。

 

 

「っ…どこからこんな力が…!」

 

『一気に決めますよ!』

 

「了解です、相棒!」

 

《メタル!マキシマムドライブ!》

 

 

 たまらず距離を取る騎士のドーパントに対して、メタルシャフトの中心部のマキシマムスロットにドライバーから引き抜いたメタルメモリを装填。横に構えたメタルシャフトの先端に高熱を灯し、噴射した熱による推進力を乗せて滑走。

 

 

「『メタルブランディング!』」

 

「ぐっ、ここまでとは…!?」

 

 

 その勢いのまま打撃を叩き込むが、騎士のドーパントは剣を盾に直撃を免れ衝撃でゴロゴロと転がる。メモリブレイクは…できてない、か。

 

 

「ふむ…どうやら貴方を侮っていたようです、仮面ライダー」

 

「仮面ライダー?」

 

「おや?ご存じない?街の人間が貴方をそう呼んでるんですよ、仮面を被りマフラーを靡かせバイクを駆る正義のヒーロー…仮面ライダー、とね」

 

 

 街の人達が私達を見て名付けてくれた、その言葉に心の内が温かくなる。これまでは単にダブルとしか名乗って来ませんでしたが…その名は大事に使わせてもらおう。

 

 

「ならば私の、いや私達の名はダブル!仮面ライダーWです!」

 

「なるほど。覚えましたよ、仮面ライダーW」

 

 

 そう言って新たに剣を生成して地面に牙の様な物をばら撒いて砂煙を発生させそれに紛れて姿を消した騎士のドーパント。…強敵だった。いや、今はそれよりも。

 

 

「つづみさんを止めないと!きりたん、どうやって追いかけます?」

 

『ここはハードスプラッシャーで追いましょう。水中に逃げれる奴にはそれしかありません』

 

「私だけだったらタービュラーで馬鹿の一つ覚えみたいに飛んでましたね!さすが相棒です」

 

 

 拾い直したスタッグフォンを操作して呼び出したハードボイルダーに搭乗して、ハッチを開けたリボルギャリーのリボルハンガーでバック走行でドッキング。緑色の後部ユニットを取り外して、代わりにリボルハンガーが回転して設置された黄色い高速艇ユニットに換装して前輪が横になったマシンハードスプラッシャーをアクセル全開、リボルギャリーが万宵川まで射出し、私達は川の流れに乗って流動体に変化しているマッド・ドーパントを追いかける。この先にあるのは海に面している河口にかけられた水都の南北をつなぐ水都大橋だ。

 

 

「つづみさんの狙いは水都市からの逃亡でしょうか…」

 

『いえ、ならば下水道に逃げるはずです。あの方向にあるのは水都大橋…佐藤紗々良を乗せたパトカーが向かった先です』

 

「ということは、目的はささらさん…あ、あれは!?」

 

 

 水面から飛び出した泥の流動体が水都大橋の上で渋滞に巻き込まれていたパトカーに殺到し、人型の姿を取ると後部座席のドアをこじ開けてささらさんを拘束して引きずり出し万宵川に飛び込む光景が見えた。

 

 

『このままじゃ鷹嘴飛翔の二の舞です!』

 

「逃がしません!」

 

 

 そのまま流動体となって海に逃亡するマッド・ドーパントを追いかける。しかしスピードはこちらが上だが水流に紛れて同化。巨大な濁った津波で出来た巨人となって襲いかかって来て、ハードスプラッシャーでサーフィンする様にして逃れるとドライバーのメモリを二本とも外して別の二本を装填する。

 

 

『水があるこの場では奴は無敵です!』

 

《トリガー!》《ルナ!》

 

「ならば炙り出します!」

 

《ルナ!トリガー!》

 

 

 右が金色で左が青の姿になった私達はトリガーマグナムを手にして乱射。放たれた金色の光弾は曲がりくねって津波の巨人の中に隠れた本体を次々と撃ち抜いて分離。しかしすぐに流動体の形態を取って逃げようとするマッド・ドーパント。

 

 

『水がある限り回復し続ける…厄介なメモリですねえ』

 

「ならば水中から引きずり出します!」

 

 

 そしてハードスプラッシャーの水中翼に備え付けられてる魚雷を発射。マッド・ドーパントに直撃させずに近くを爆発させることで水中から岸部に吹き飛ばした。転がるマッド・ドーパントの体内から転がり出るささらさんがけほけほと泥交じりの海水を吐き出している。どうやら無事の様だ。

 

 

「ゴボボボ……くそっ……ささらぁ……あんたさえ、あんたさえいなければあ…!」

 

「けほっ、ごほっ…つづみちゃん、お願い、やめて…!」

 

「させません!」

 

《ヒート!》

 

 

 マッド・ドーパントがささらさんに向けて巨大な掌から泥の塊を飛ばして叩きつけようとするも、ハードスプラッシャーを岸辺に乗り上げて間に割り込むことで阻止。右側を泥で固められてしまうが、同時にガイアウィスパーを鳴らしておいたヒートメモリをルナメモリと交換して熱で泥をボロボロと崩壊させる。

 

 

《ヒート!トリガー!》

 

「っ、熱…!?」

 

「つづみさん。おやっさんの言葉を送りましょう。撃っていいのは撃たれる覚悟がある人だけ、らしいですよ」

 

 

 そのままハードスプラッシャーから降りながらトリガーマグナムから火球弾を乱射。突進してきたマッド・ドーパントに次々と炸裂させ、水分を失ったのか乾いて罅割れ動けなくなる。無理やり動こうとしてボロボロと崩れて行くマッド・ドーパントに、私はトリガーメモリをドライバーから引き抜きトリガーメモリに装填、マキシマムモードに変形させて銃口に灼熱の炎を溜めて行く。

 

 

《トリガー!マキシマムドライブ!》

 

「『トリガーエクスプロージョン!』」

 

 

 トリガーマグナムの引き金を引いて放たれるは灼熱の火炎放射。まっすぐ飛んで行った火炎はマッド・ドーパントの胸部を撃ち抜き、マッド・ドーパントは力なく頭から倒れて爆散。現れたつづみさんの左腕からメモリが排出され、粉々に砕け散った。

 

 

「う、うう……」

 

「つづみ……ごめん、ごめんね…」

 

 

 ガイアメモリはその力の強大さやメモリの毒素ゆえに精神と肉体を蝕まれて暴走・依存症になってしまう人が多い、一種の麻薬のようなものだ。メモリの毒素は怒りや憎しみといった負の感情を助長・増幅させやすく、最終的には暴走に結びついてしまう。それでもなお、ささらさんを最後まで殺そうとしなかったのはたしかな友情が存在していた証左だし、なんなら一度はメモリを捨てようとさえしていたことから、きっとやり直せるはずだ。あとは警察に任せよう。

 

 

「…依頼人を泣かせてしまいましたね」

 

『でも、止めることはできました』

 

 

 ハードスプラッシャーに乗ってその場を後にする。ささらさんの涙を止めることはできなかったけど、この街を泣かせるつづみさんを止めることができた。これでよしとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【HOUKOKUSHO】と英文タイプライターに打ち込んでいく。これは事件が終わるたびにやっている、おやっさんの頃からのルーティンだ。まあ日本語の報告書もあとからちゃんと作るのだが、落ち着くためにいつもやっている。

 

 

「先輩、相変わらず英語ダメなんですね」

 

「うるせーです」

 

 

 あかりに冷やかされながらもこれを打つ。【つづみさんは警察病院に送られた。ささらさんはつづみさんに付き添っているらしい。タカハシくんを見つけ出す、という依頼は達成できなかったが、ささらさんは感謝の言葉を送ってくれた。彼女もある意味加害者だ。無自覚とはいえ彼女のやったことは擁護できない。だけど、この一件で本当に大事なものがわかったようで猛省していた。

 

 今回の事件、実質的に誰も救われてない。水都の現実は甘くない。だが、それが例え現実だとしてもきっとこの私が…】

 

 

「そこ「私が」ではなく「私達」とか複数形であるべきですよね?」

 

「…そうですね、失念してました」

 

 

 椅子に座って携帯ゲームをしていたきりたんに言われて続けて打ち込む。【いや、私達が変えてみせる】…っと。うむ、いいできだ。さて次はささらさんに渡す報告書、とパソコンに向き直る。

 

 

「そうだ、先輩」

 

「なんですか、あかり?」

 

「ダブルとかドーパントとか、まだわからないことだらけですが…私、やりたいことが見つかりました」

 

「ほう?」

 

 

 パソコンに打ち込みながら振り向くと、そこにはあかりが鞄から取り出したこの事務所の権利書が…って、ええ!?

 

 

「そ、それは!?」

 

「いやあ、お母さまに聞いたらお爺さま名義だったので、お爺さまが帰ってくるまで私が預かることになりました。だから私が所長です!これで私、独り立ちできました!」

 

「いやいやいやいや!?」

 

「おお…すごい、それは想定外…」

 

 

 えっへんと踏ん反り返るあかりに全力でツッコみ、きりたんが感心したようにぼやく。いや、たしかにおやっさんがいなくなってからそのまま勝手に使い続けてたので罪悪感が……

 

 

「事務所の名前は紲星探偵事務所に変えた方がいいでしょうか?きりたんに聞いたら「ハードボイルドじゃない」って理由でペット探しとか断ってるらしいじゃないですか、私が所長になったからにはそれも受けますからね!あ、私が所長になったのに先輩って言い方のままだとアレですね。これからはゆかりさんって呼ばせてくださいね!」

 

「はあ…もう、好きにしてください…」

 

 

 …私の助手になるのかなーと思ってたら甘かった。あかりは昔から行動力の化身だった……これから騒がしくなりそうだ。食費どうするんだ、真面目に。




ささらさんが見つけた「本当に大事なもの」とは何かはあえて語らないことにします。

ミュージアムの幹部、シャーク・ドーパントが登場。ナスカポジとなります。そしてあかりが事務所の所長に。次回からはがっつり関わります。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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