「ネットの情報が頼りにならへんからなんとか聞き込みを続けて目撃情報を追ってここまできたはいいんやけど……」
エンジンブレードを入れたゴルフバッグを担ぎながら歩いてきたうちは手帳にかかれた目撃情報と目の前の光景を見比べる。間違いない、ここの近くにあのドーパントが降りてきたのは確かだ。
「ここってたしか、トゥース・ドーパント…弦巻マキを逮捕しにきた時にも来た……ゆかりのうちの近くやんな?」
というか今いる場所の目の前がゆかりの家だったはずや。この近くにドーパント…犯人がいるってことは大したストーカーやんな。
「捜査は足や。一軒一軒家々を巡るかあ」
「やだなあ。そんなのつまらないじゃないですか。行き詰まったなら勘で当てるなりドラマを生んでくださいよ」
「っ!?」
咄嗟にゴルフバッグからエンジンブレードを引き抜いて振り返り、構える。そこには手帳と筆ペンを手にした、清楚なワンピースの上から水色のカーディガンを身に付けている桃色がかったふんわりとした茶髪で眼鏡をかけた少女に見紛う若々しい容姿の美女…東北奏楽がいた。
「快子さんの事件以来になりますかねえ。あの時はどうもどうも、愉しい演目をありがとうございます。大変、面白かったですよ」
「ホワイトアウト……、東北奏楽ァ……!」
「おっと」
快子のことを話題に出されて一瞬で怒りが振り切り、エンジンブレードを両手に握って上段に構えて一気に振り下ろすも、東北奏楽は素早い身のこなしで回避。エンジンブレードの剣先に飛び乗ると筆ペンをうちの目の前に突き付けてほくそ笑む。
「そうカッカしないでくださいよ。私も今日は仕事で来てるんです。仮面ライダーの片割れを攫ったドーパントの調査にね。どうやらミュージアムが関与してないドーパントらしいんですよねえ…」
「そんなもん、知るかー!」
東北奏楽が乗っているエンジンブレードを思いっきり振り上げるとその勢いに合わせて宙返りされ、スタッと華麗に着地して氷柱でWと描かれたガイアメモリとガイアドライバーを取り出したのでこちらもアクセルドライバーとアクセルメモリを取り出す。
「貴方がいるとゆっくり調査もできません。せいぜい面白く戦闘不能になってくださいな」
《ホワイトアウト!》
「うちに質問するな。みんなの仇……今日こそ取らせてもらうで!」
《アクセル!》
「変…身!」
《アクセル!》
そしてうちはアクセルに変身、エンジンブレードを構えてホワイトアウト・ドーパントに姿を変えた奴に斬りかかった。
「【変身!】」
《サイクロン!ジョーカー!》
「はあぁああああ!」
仮面ライダーWのサイクロンジョーカーに変身。二本足の人型形態のブリュンヒルデ・ドーパントを廊下まで押していき、拳のラッシュを叩き込む。しかし殴った部位から炎が吹き上がり、それがブリュンヒルデ・ドーパントの両手に集まっていく。
「なっ…!?」
「ああ!嬉しいですわ!ゆかり様の愛をこの身に受けられるなんて!」
集束した炎を纏った両手による強烈な掌底が叩き込まれ、廊下の突き当たりの壁に激突。崩れ落ちる。
「ぐはっ…なんで…」
『ブリュンヒルデのメモリは使用者が愛を倍増させればその分火力を増します』
「つまり…?」
『ゆかりさんの拳を「愛情表現」と捉えているのか殴れば殴るほど火力が上がるってことかと…』
「ええ…」
「殴り愛、ですわ!」
こちらが殴れば火力を増した炎を纏ったブリュンヒルデ・ドーパントの拳がカウンターで叩き込まれる。無骨に殴り続けるも、あちらの火力が増していくだけで、こちらのリバーブローを華麗に手で受け流したブリュンヒルデ・ドーパントのアッパーを喰らって大きく後ずさる。
「ならば!」
《ジョーカー!マキシマムドライブ!》
「『ジョーカーエクストリー…むがっ!?』」
マキシマムドライブを叩き込もうとメモリを装填して疾風に乗り浮かび上がるが、すぐに頭をぶつけて廊下に叩き落される。…室内でジョーカーエクストリームは使えない…だと?
「痛い…」
『ゆかりさん!前!前!?』
「もっと!もっと!もっと愛をちょうだい!ですわ!」
私達の両手を掴まれて無理やり立たされ、全身発火して組みついて来るブリュンヒルデ・ドーパント。装甲がバチバチと火花を散らす。
「きりたん!ヒートです!」
『そいつに取られてありません!』
「ええ!?…ならば!このお!」
「ああん!」
組みついているのをいいことに膝蹴りを入れて蹴り飛ばす。なんか横に倒れて悶えているが気にしない。今のうちに、金庫の中のケースに入られたままのメタル・トリガー・ルナのメモリを取り返して……
「させませんわ!」
「っ!?」
部屋の入口にこの家屋を閉じ込めているものと同じと思われる炎の壁が展開、弾き飛ばされ廊下に転がされる。
「ぐっ…この炎の壁は…!」
「ゆかり様はご存じのはず。私の愛の炎は私が許した人間以外は通しませんわ!」
『概念系故の固定概念……厄介ですね』
炎の壁に拳を叩き込んで破ろうとするも、腕を振るった時に発生するそよ風で揺らめくだけで貫くことすらできない。これじゃあメモリに手が届かない…!
「残念ですがゆかり様。この部屋に入ることは禁止しますわ。他の部屋ならご自由に。必要なら倉庫も改造してゆかり様のリクエストに応えますわ」
「私は……きりたんもあかりもリリィもいない事務所なんて、悲しいだけです!」
『事務所?事務所を再現したとでも言うんですか!?』
驚くきりたんに頷いておく。できることならこの家をゆっくり案内したいぐらいだ。
「それは駄目ですわ。きりたん…東北記理子はゆかり様を死地に導く。紲星あかりはおやっさん…虚音イフを思い出させるだけ。リリィ金堂に至ってはレズビアンで犯罪者!危険すぎますわ!ゆかり様が襲われたらどうしてくれますの!?」
「寝ている間に奪った人が言っても説得力ねーですよ!?」
『え?』
ムズムズとした慣れない感覚で疼いている下半身にいらつきながら思わず言ってしまい、きりたんの驚いた声が聞こえて気まずくなる。やっべ。探索中に気付いて気にしないようにしていたのについ思わず…。
「…忘れてくださいきりたん」
『いや聞き捨てなりませんが!?』
「気付いていただけたのですわね!?お恥ずかしながら大人の玩具を買うのはさすがにためらいまして……この槍でこう、トンと!」
「トンと、じゃねーですよ!?道理で妙に痛いはずですねこのサイコ!?」
槍を抱きしめて恍惚とした声でそう語るブリュンヒルデ・ドーパントにブチギレる。寝ている間に失っていた気持ちが分かりますか!?とか罵倒するとさらに燃え上がるブリュンヒルデ・ドーパント。物理じゃなくてもいいのか。無敵すぎないだろうか。
「ああ、サイコなどと……よよよ……悲しいですわ。でもわかってくださいまし、その痛みはわたくしからの愛の証ですわ!」
「わかるか!?ファーストキスまでに飽きたらずよくもはじめてまで!」
『ファーストキスまで!?』
なんかきりたんが凄い反応してる。身体年齢小学生には早かっただろうか。すると右側が凄まじい力に溢れて行くのを感じた。
『ゆかりさんの……ゆかりさんのぉおおおお!』
「おおおおお、これ、フレンジーの時の…!?」
グルン、と右側が拳を振り抜いて振り回され、強烈な拳が叩き込まれてブリュンヒルデ・ドーパントを殴り飛ばす。私に意思による攻撃じゃないためか、炎が噴き出さずに攻撃が通用しているようだ。
「痛いですわ!?」
「このまま!」
『絶対に許しません!』
「この頭でっかち!無粋ですわね!」
私を振り回して繰り出した拳は簡単に受け止められ、炎上した業火がこちらまで伝わってきて爆発。その衝撃で階段の下まで転がり落ちる。
「ぐう…」
「貴方達、仮面ライダーWの強みはメモリの交換による多彩な能力の使用によりどんな相手にも対応できるという事ですわ。その戦いを見てきた私は思いました、真っ向勝負では勝ち目がない。急襲して相手のペースに持ち込ませず勝利する、それしかないと。私に対抗できるのは恐らくヒートとメタル。どちらも、いやサイクロンとジョーカー、所在のわからないファングとエクストリーム以外のメモリは今、我が手中にありますわ。勝ったも同然。なのでゆかり様、諦めて我が手中に収まりくださいませ」
「…残念ながら断らせていただきます。理由は分かりますよね?」
「ならどうすると?ゆかり様たちの最強の力…サイクロンジョーカーエクストリームで!この、愛に燃える私に勝てるとでも?」
『なら見せてやりますよ……』
「駄目です、きりたん。今の精神状態でエクストリームは……」
『来なさい、エクストリーム!』
すると甲高い鳴き声がが聞こえ、迎え入れるべく玄関の扉を開けると彼方の空からきりたんを収納しているのであろうエクストリームメモリが飛来するのが見えた。そのまま炎の壁を貫かんとするが、信じられないことが起こった。炎の壁にエクストリームメモリが触れた瞬間、炎が生きている様にエクストリームメモリを包み込んで封じ込めてしまったのだ。
「大事なことなのでもう一度言いますわよ!私の愛の炎は私が許した人間以外は通しませんわ!」
『エクストリームまで…!?』
「それより、きりたんの身体が…!?」
思わずエクストリームメモリの中に入れられたきりたんの身体を心配すると、ショートを起こしたエクストリームメモリからきりたんの身体が排出され、同時に変身が強制的に解除される。
「えっ?なんで……」
「私は知っていますわよ!変身してない方の身体に異常が起きた場合強制的に変身が解除される!推測どおりですわ!」
「ゆかりさん…!」
炎の壁の向こうで黒焦げで火傷だらけのきりたんが立ち上がり、どこからともなくやってきたファングメモリをメモリーモードにして手に取るのが見えた。それで思惑に気付いた私はジョーカーメモリを構えてボタンを押してガイアウィスパーを鳴らした。
「まだ、終わっていません!」
《ジョーカー!》
「牙の切札、ですか。相手にとって不足無し。不覚にもわたくし、トゥース・ドーパントとの決着を肉眼で見届けた時は魂が震えましたわ!」
「吠え面かかないでくださいよ!」
《ファング!》
槍を抱えて身を悶えるブリュンヒルデ・ドーパントにきりたんが啖呵を切りながら、炎の壁を挟んで並び立った私達は同時に叫ぶ。
「「変身!」」
《ファング!ジョーカー!》
《アームファング》
ファングジョーカーにきりたんの身体で変身するなり、アームセイバーを展開して炎の壁を斬り裂いてエクストリームメモリの救出を試みるが揺らめくだけでビクともしない。
「そんなもので私の燃えるような愛が裂けるわけがないですわ」
「そんな、あらゆるものを斬り裂く牙も通じない…!?」
『ならマキシマムでぶちぬきましょう!』
《ファング!マキシマムドライブ!》
槍をその場に置いて意識を失っている私の身体を抱きかかえながら高みの見物を決め込むブリュンヒルデ・ドーパントの姿を炎の壁ごしに見据えてタクティカルホーンを三回押し込んで右足首にマキシマムセイバーを展開して跳躍。
「『ファングストライザー!』」
グルグルと回転しながら炎の壁に突っ込んでいき、恐竜の頭部のようなオーラと共にメモリに描かれている「F」の文字が浮かび上がらせて連続で斬撃を叩き込む。
「そんな…!?」
『ファングのマキシマムドライブも通じないとは…』
しかし炎の壁は揺らぐだけで突破はできず、私の身体を例の倉庫に置いたらしいブリュンヒルデ・ドーパントが炎を纏った槍をくるくる頭上で回して構えていて。
「愛の炎よ、燃え上がれ!
「『!?』」
投擲された炎を纏った槍が咄嗟に回し蹴りの要領で振るったマキシマムセイバーと激突し大爆発を起こし、次の瞬間私は倉庫で目覚めた。
「きりたん…!?」
「彼女なら木端微塵に吹き飛びました。これでもう、なにも心配することはありませんね?」
「そんな…」
倉庫の扉を開けて現れたマユさんの言い放った言葉に、私は愕然となるしかなかった。
※あれを奪ったとは一回も言ってない。
それはそうと、端的に言って詰みである。史上最強の理詰めの敵に打つ手はあるのか。
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