今回はホワイトアウトVSエルドラゴ。楽しんでいただけたら幸いです。
数刻前。東北家の屋敷の東北至子の書斎にて、訪れた東北星香はある質問をしていた。
「奏楽さんのあの異常な強さはなんなのか、ですか?」
「はい。差し出がましいことを聞いて申し訳ありません、至子さま。ですがいくらアクセルの記憶を失わせたとはいえダブルを完封したあの強さは異常でした。彼女は我々組織の人間ではなく元々ただの小説家だったはずですが……」
「記録ではそうなってますわね」
そう言いながら考古学の本を本棚に戻し、不敵に笑んだ至子はある一枚の写真を取り出した。東北奏楽と思われる幼い眼鏡の少女が写っている。
「これは幼少期の東北奏楽……
「外道様の頃の…!?」
名前だけしか知らないミュージアム創設の元凶とも言うべき人物の名が出てきたことに驚きを隠せない星香。そんな彼女に引き出しから取り出されたリストが手渡される。それには政界の要人や神威岳の名もあった。
「これは…?」
「奏楽さんがこれまで始末してきた組織の邪魔者のリストですわ。彼女が新参者の幹部だなんてとんでもない。幹部にしたのがつい最近と言うだけで、小説家をしていたそのずっと前、幼少期から組織の殺し屋ですわ」
「道理で小説家の割にあんなに強いんですね」
「それだけじゃないですわ。彼女のハイドープとしての能力は「白の視点」。視界に入った全てを「白」と認識、情報で黒く埋めて行くことでありとあらゆるものを推察して最良の判断を取れる力。この能力の影響で全ての物事がつまらなく感じて「面白い」ことを模索している様ですわ」
「あの口癖はそういう…」
「なにも面白く感じることはないのに「面白い」を問い続ける不憫な子ですわ」
まさか自分の事も言い当ててくるとは思いませんでしたが、と内心毒づく至子もとい東北外道。
「ですがこの写真、本を持っていて怯えている大人しい様子から今の東北奏楽は想像つかないですね」
「ああ。今の彼女はその奏楽さんとは違いますからね。殺人に耐えきれなかったのか彼女は本来の人格を閉ざして快楽的に面白さを追い求める殺人鬼になったわけですが、組織の最大戦力の一つなのですから何も悪いことはありませんわね。彼女なら仮面ライダーを打ち倒して、きりたんと実験体を回収してくれるはずですわ」
「……」
人を人とも思わない冷酷な物言いに思わずゾクッと背筋が震える星香。自分はメモリ売買の成績から養子に迎え入れられたわけだが、もう一人の養子の数奇な運命に思わず同情するのだった。
ダブルとプロミネンス・ドーパントが出て行ったあと、対峙するホワイトアウト・ドーパントと仮面ライダーエルドラゴ。黄金の剣身と紅い持ち手のカットラス…パイレーツカリバーを振るって攻撃するも、瞬時に形成された氷の太刀で受け流され、返しの斬撃を受けてしまう。
「仮面ライダーに鞍替えしたとかいうエル・ドラードのボスですね。私達幹部並みの強さだとか。お手並み拝見」
「上から目線、ムカつくな!オラア!」
床を蹴り右手で持ったパイレーツカリバーを振り回して連撃を叩き込むエルドラゴ。ホワイトアウト・ドーパントは罅が入った氷の太刀を投げ捨て、代わりに両手に冷気を纏って手甲から伸びた三本ずつの爪を装備。白クマを思わせる豪快な動きでエルドラゴの攻撃を弾き返し、脚を勢いよく床に叩き付けそこから凍らせて剣山を床に形成。エルドラゴは突き刺されない様に跳躍し壁を蹴って範囲外に逃れる。
「派手にやるな!こっちもド派手に行こうか!」
《パイレーツ!マキシマムドライブ!》
ダブルドライバーNEOから引き抜いたパイレーツメモリをパイレーツカリバーの柄のスロットに装填、グルングルンと振り回し溢れだした黄金の光を刀身に集束させて振るうエルドラゴ。
「ゴールデンストラッシュ!」
黄金の光の斬撃は剣山を砕きながら一直線に突き進んでホワイトアウト・ドーパントを真っ二つに切り裂くも、氷像だったそれは砕け散り、凍り付いた壁からホワイトアウト・ドーパントが現れ何も装備してないものの触れただけでメモリを無力化する右手を伸ばす。
「無駄だ!」
《ゴールドラッシュ!》
「むっ」
それを気配で察したエルドラゴはダブルドライバーNEOをいったん閉じて、もう一度展開。それをスイッチとして黄金の光を纏ってホワイトアウト・ドーパントの魔の手を弾き飛ばし、弾かれた手を見て不服そうに首をすくめるホワイトアウト・ドーパント。
「私の能力を受け付けないとは…面白くないですね」
「オラオラオラオラ、オラァ!」
そのまま時間切れにならないうちにとパイレーツカリバーを投げ捨て、拳と脚で猛連撃を叩き込むエルドラゴだったが、フウッと息を吹きかける様にして白い霧を発生させたかと思えば氷人形とすり替わっており、霧の中で次々と出現する人影を片っ端から殴り壊していく。そうこうしていくうちに10秒が経過、纏っていた黄金の光が霧散してしまう。
「くそっ、全部フェイクか…!」
「やはりそんな強力な力、そんなに長い間持たないようですね?ですが密室では私も無敵なのです。残念でしたね」
そう言って凍り付いた床から現れて前蹴りを叩き込んでエルドラゴを蹴り飛ばすホワイトアウト・ドーパント。エルドラゴはなんとか受け身を取るが、その瞬間には目の前までホワイトアウト・ドーパントが凍り付いた床を移動して瞬間移動しており、さらに拳の一撃をもらってリリィは壁に叩きつけられ崩れ落ちる。
「があっ…」
「…おや?熱気が消えた……恵さん、やられてしまったのですか。面白くないですねえ」
リリィから外れたゴールドのメモリとパイレーツのメモリをつまみ上げて漂白していると、外でプロミネンス・ドーパントがやられたことを察知してふむ、と顎に手をやるとなにかを思いついたのかポンッと手を叩くホワイトアウト・ドーパント。既にリリィのことは眼中になかった。
「いいことを思いつきました。至子さまに怒られてしまうかもですが、水都を漂白してしまいましょう!ダブルの絶望する顔はさぞかし面白いに違いありません!」
「なんだって…」
なんとか立ち上がるリリィを余所に、両手の間で冷気の竜巻を形成、それを大きく広げて行くホワイトアウト・ドーパント。そしてそれは一気に広がり、水都タワーを中心に大きく膨れ上がり、水都を飲み込んで氷漬けにしてしまったのだった。
「…おや、失敗しました。ダブルも凍り付いてしまってるじゃないですか。これでは絶望した顔も見れないじゃないですかあ」
凍り付いた水都タワーを降りて、漂白した水都で他の住人の氷像に紛れて氷像となったダブルをこつんこつんと小突いて残念そうに口を尖らせる東北奏楽。そこに、コツコツと歩いて九つの尻尾を持つ狐の怪人が現れる。ナインテイルフォックス・ドーパントである。
「なにをしているんですか、奏楽さん」
「あ、至子さま。なにって、水都を漂白したんですよ。面白いでしょう?」
「何も面白くありません。無作為に全てを凍らせて、きりたんどころか純子たちも凍り付いてしまったじゃないですか。私も気付かなければどうなっていたことか……戻しなさい」
「嫌です。至子さまの命令でも、面白い事優先です」
真っ向から反抗する奏楽に、ナインテイルフォックス・ドーパントは苛立ちを表現する様に九つの尻尾を逆立てる。
「…便利だと思って好き勝手させた挙句こうなるとは。もう貴方はいりません。メモリブレイクしてでも純子ときりたんは戻してもらいます」
「できると思ってるんですかあ?ガイアメモリ相手なら私は無敵ですよ?」
《ホワイトアウト!》
尻尾を機関銃に変形させて構えるナインテイルフォックス・ドーパントを前に怖気づかずにメモリを鳴らした奏楽はホワイトアウト・ドーパントに変貌。挑発する様に肩を竦めた、そんな時だった。エンジン音が徐々に近づいて来て、滑走するかのように走ってきた仮面ライダーアクセル・バイクフォームが二体のドーパント目掛けて体当たりしてきたのは。
「危ないですわね」
それを巨大な腕に変形させた九つの尻尾で受け止め、投げ飛ばすナインテイルフォックス・ドーパント。アクセルは空中で人型に戻り着地、エンジンブレードを構える。
「ホワイトアウトに……見た目からしてナインテイルフォックスか。相手にとって不足無しや、いくで!」
「え、うそっ、記憶を漂白したはずなんですが、あれ?」
「…ガイアメモリには記憶が蓄積される。そしてあのベルトは試作型のメモリの力を増幅させるガイアドライバーを応用したみたいですわね。メモリに蓄積されていた記憶を増幅して復活したってところでしょうか。メモリも漂白しないからこうなるのです、詰めが甘いですわね」
そう糾弾するナインテイルフォックス・ドーパントだったが、ホワイトアウト・ドーパントはなにかを堪える様にプルプルと震えていた。それは、感動だった。
「…です。面白いです、あなた!私の「白の視点」を越えてくるなんて!これが面白さ!ああ、素晴らしい!」
「何も面白くあらへんわ。さあ、振り切るで!」
「白の視点」はポケスペのブラックのアレ。というわけで明かされたホワイトアウトの秘密でした。なおさっそく暴走した模様。
ついなの記憶が戻った理由はアクセルドライバーのとくせい故でした。増幅機能って応用幅広そうよね。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。