ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。ようやくここまで来れました。凍り付いたW編はこれにて終幕となります。

今回は、襲撃。


第五十八話:凍り付いたW/懺悔の青空

《サイクロン!ジョーカー!》

 

「ついなさん!記憶が戻ったんですか!?」

 

『それにこれは…東北奏楽!?倒したんですか!?』

 

 

 意識が覚醒したらジョーカーメモリが復活していて、サイクロンジョーカーになるとついなさんが血塗れで立っていたので、駆け寄ってみると傍らには砕け散ったメモリと倒れた東北奏楽がいて。きりたんの問いかけに、ついなさんは笑ってVサインを向ける。

 

 

「おう。記憶は戻ったし完勝しといたで…ぎゃあ!?」

 

「ついなー!」

 

 

 背後から神威恵が抱き着いて来て、痛みからか悲鳴を上げるついなさんに思わず笑う。無事とはいかなかったけど、記憶が戻ってよかった。

 

 

「ぐ、う…こ、こは……」

 

「起きたか。逮捕させてもらったで」

 

 

 すると手錠で両手を繋がれた東北奏楽が目を覚まして上半身を起こし、咄嗟に身構える。混乱しているらしき東北奏楽からは、あの邪悪さは感じなかった。

 

 

「あれ、私……そう、だ……私、殺人を……今までなんてことを……」

 

 

 様子がおかしい。青ざめてプルプルと震え始めた。これは本当にあの東北奏楽か?終いには泣きそうな顔で狼狽える東北奏楽に、ついなさんも困惑している。

 

 

「お前、一体どうしたんや?」

 

「如月追儺…私、わたし……今まで、悪いなんて一度も思わなかったのに……神威岳を殺して、ごめんなさい…今までいっぱい人を殺して……ごめんなさい……!」

 

「これは……まるで別人ですね」

 

『恐らくメモリが破壊されたことで隠れていたまともな人格が元に戻ったのでしょう。こちらが本来の東北奏楽だと思われます』

 

「おま、お前!ふざけんのも大概にせえよ!?」

 

 

 激昂して掴みかかるついなさんに、東北奏楽はされるがままだ。終いには殴ろうとしたので、慌てて止める。

 

 

「待ってついなさん!?無抵抗の相手を攻撃するのは駄目だと前に言ったはずですよ!」

 

「散々人を殺して、岳を殺して…!快子を殺して……!うちの記憶を奪って、恵まで巻き込んで!終いにゃ水都中の人間を殺すところだったんやぞ!?ごめんなさいですむわけないやろ!?」

 

「謝ってもどうしようもないとはわかってる、だけど……私には、謝る事しか…」

 

「返せ!岳を、快子を返さんかいド阿呆…!」

 

「ついな……」

 

 

 東北奏楽の顔から本気だとわかったのか、その拳は行き場を失いそのまま泣き崩れてしまうついなさんに恵さんが駆け寄る。さて、どうしたものか……。

 

 

「きりたん、どうしましょう?」

 

『とりあえず場所を移したいですね。ここだとすぐにでも人が集まってしまいます』

 

「じゃあいったん事務所に……」

 

「それには及びませんわ」

 

 

 瞬間、ゴゴゴゴゴッ!と揺れ始める大地。地震、じゃない! 震えと冷や汗が止まらない。本能的な恐怖が襲いかかる。この現象を私たちは知っている。ふわりと上空から舞い降りたのは、目を釘付けになるほどの美貌の怪物。ナインテイルフォックス・ドーパント…!その出現に、集まり始めていた住民が蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。私も逃げ出したいぐらいだ…。

 

 

「東北至子…!」

 

「ちゅわ。お久しぶりですわね、ダブル。先日はうちの妹弟が世話になりましたわ」

 

 

 狐耳が生えた狐の仮面を思わせる紅く隈取りされていて歌舞伎役者の様で笑っている様な顔の視線に射抜かれ、足が崩れ落ちそうになるのを必死に抑える。戦わないでこれか…!

 

 

「至子、様……」

 

「まったく。勝手に暴走して私の計画を台無しにしかけた挙句に仮面ライダーに敗れるなんて、とんだ役立たずですわね?」

 

 

 怯える東北奏楽に向き直りカランコロンと下駄を履いているような脚を鳴らして歩み寄るナインテイルフォックス・ドーパント。そして串刺しにせんと槍状になり伸びた一尾の尻尾を、咄嗟に割り込んで左手で掴んで受け止める。あぶ…なかった!

 

 

「あら?何故邪魔をするのかしら。生ごみを掃除してあげようというのに」

 

「ドーパントでなくなった以上、私達の守るべき対象です…!殺させはしない!」

 

「私に勝てるとでも思ってるのかしら?手も足も出なかった貴方達が」

 

 

 そう言った瞬間、握っている尻尾が鞭の様にしなって天高く振り回され、咄嗟に手放したところに薙ぎ払われて水都タワーに叩きつけられ、内部の通路まで転がされる。そのまま尻尾が斬り離され、一尾のナインテイルフォックス・ドーパント……ただし全身金色の毛皮に包まれ女性らしいフォルムの肢体の上半身を包む複雑な文様が紅く記されている振袖を思わせる高級そうな着物は蒼から紅になっている……言うなればフォックス・ドーパントだろうか、に変形して下駄の様な脚で飛び蹴りを叩き込んできたので回避。一回転しての回し蹴りを叩き込み、首に直撃させた。

 

 

「その程度ですわ?」

 

「がっ…!?」

 

 

 しかしナインテイルフォックス・ドーパントはビクともせず、尻尾を巨大化させてビンタを叩き込んできて、殴り飛ばされた私達は床を転がって行く。分身でこれとか強すぎるでしょうが!

 

 

『こうしている間にも東北奏楽が…!』

 

「一気に決めましょう!」

 

《ヒート!》《ヒート!ジョーカー!》

 

《ヒート!マキシマムドライブ!》

 

 

 走りながらヒートジョーカーに変身し、マキシマムスロットにヒートメモリを装填。右半身が熱き炎に包まれ、右拳を握って抉り込むように叩き込む。

 

 

「『ジョーカーバックドラフト!』」

 

「ぐうっ…!?」

 

 

 その一撃をまともに受けたフォックス・ドーパントは吹き飛んで一尾の尻尾にボフンと戻り、地上で何時の間に復活したのかエルドラゴと相対していたナインテイルフォックス・ドーパントに合体して九尾に戻り、私達は飛び降りてエルドラゴと合流する。見れば、ついなさんと東北奏楽は恵さんが連れて離れたようだ。

 

 

「リリィ!無事でしたか!」

 

「お前たちもな。こいつがミュージアムの首魁か、ホワイトアウト以上に化け物だ」

 

「私のプレッシャーが効かないどころかはねのける貴方に言われたくありませんわね」

 

 

 そうか、リリィは月読アイが探した、ついなさんと同じ精神耐性持ち。フレンジーの咆哮にも負けた私と違って耐性があるのか。これならいける…!

 

 

「何時まで守り切れるかしら?」

 

『サイクロンメタルです!』

 

《メタル!》《サイクロン!》《サイクロン!メタル!》

 

 

 そう言って九つの尻尾を機関砲に変形させて乱射するナインテイルフォックス・ドーパントに、私達はサイクロンメタルに変身。メタルシャフトに風を纏って振り回し、弾丸を防いでいくと弾丸をパイレーツカリバーで斬り弾きながら突進したエルドラゴがヤクザキックを叩き込み、ナインテイルフォックス・ドーパントは仰け反って後退。今度は尻尾を大砲に変形させて爆撃して来てエルドラゴは吹き飛ばされ、咄嗟についなさんと東北奏楽、恵さんを守るべく駆け寄って庇い、背中に直撃を受けてしまう。ダメだ、強すぎる。

 

 

「ゆかり!?」

 

「邪魔をしないでもらいたいものですわ。私は私の秘密を知っているあの子を殺したいだけですのに」

 

「秘密……」

 

 

 …それを知っているから東北奏楽は狙われてる。つまりそれが公然の事実になれば退いてくれるのか…?考えろ、それは……東北奏楽が知り得て、殺してまで守りたい、秘密……。

 

 

「それは、貴方が東北至子ではなく……東北外道(ソトミチ)、だということですか?」

 

『え』

 

「なに?」

 

 

 ブリュンヒルデ事件の直前に、関係者だった弓弦伊織から聞き出した事実を開示する。すると明らかに狼狽するきりたんとリリィ。そう言えばドタバタしてて言ってなかった。

 

 

「……最近嗅ぎまわっていたのはお前だったか」

 

 

 すると声はそのまま口調が変わるナインテイルフォックス・ドーパント。やはり、そうか。

 

 

「正確には、病死した後に東北至子に霊媒させた死人…それが貴方の正体です!東北外道!」

 

『私を殺した、父親…?』

 

「そこまで知られていたなら、もう仮面ライダーを相手取って消耗してまで奏楽を殺す意味はないか。時間を無駄にしたな」

 

 

 そう言って踵を返すナインテイルフォックス・ドーパントは煙と共に姿を消して、同時にプレッシャーが消え去り私達はどっと疲れて尻餅をつく。

 

 

「一か八かでしたが上手く行きました…とりあえず、この場を離れますか」

 

『ゆかりさん、後で話してもらいますからね…』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、東北奏楽は逮捕された。しかしやはり権力で東北家への捜査はできなかったらしくついなさんは憤慨していた。東北家の霊媒は政界も深く根強く関わっているという話ですからね…。直接乗り込むぐらいしかない気がします。

 

 

「その後、東北奏楽は?」

 

「己のやってきたことを悔いている様子や。アイツの自供で行方不明者が何十人も殺されていたことが分かったからな。警察は騒然としているで」

 

 

 そうそう。ついなさんが戻ってきて花さんや有阿刑事は喜んでいた。今回の事件はこうして幕を下ろしたわけだ。

 

 

「……父親が、私の姉を……」

 

 

 きりたんへの遺恨を残して。この遺恨が、大きな事件に繋がることを私達はまだ知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、水都上空を進んでいた軍用ヘリが襲撃されると言う形で始まった。全身真っ白の女が、四人の男女を率いて水都のビルの上で高らかに嗤う。

 

 

「さあ、始めようか!死神のパーティータイムを!!」

 

《エターナル!》




というわけでAtoZフォーエバー編に入ります。真っ白い女は合成音声キャラの一人です。分かる人にはわかるかも?

ナインテイルフォックスの襲撃、答え合わせ。ブリュンヒルデの事件から先延ばしにしていた事実確認がやっとできました。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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