今回は運命を奔走するあかりの話。楽しんでいただけると幸いです。
《「やあ。我々はCOEFONT。このたび水都タワーをジャックさせていただいた、この水都を浄化する者だ。…変身」《エターナル!》》
テレビの向こうでアリアルがそう言って仮面ライダーエターナルに変身、マントを翻してルナ・ヒート・サイクロン・メタル・トリガーのドーパントの中心で両腕を広げる。
《「さて、水都の全市民に次ぐ。私はアリアル・ボルコフ。またの名を、仮面ライダーエターナル。この水都を守護する新たな仮面ライダーだ」》
「水都の人間が名付けてくれたヒーローの名を名乗るなんて…!」
「来たばかりならともかく今ならわかる、仮面ライダーはこの街の希望そのものや…!」
「俺が名乗るのにどれぐらい苦労してると思ってるんだアイツ…!」
「リリィさんだけなんか違いません?」
仮面ライダーを勝手に名乗ったことに憤っている中でテレビの向こうの演説は続く。
《「我々は水都を浄化…もとい、ガイアメモリに命運を握られた哀れな箱庭の住人を解放する。我々はこのとおり、最新型のガイアメモリと、水都タワーに設置した光線兵器「エクスビッカー」を有している。そして、以前の仮面ライダーは全員無力化。旧型のガイアメモリは全て使えなくさせてもらった。故に我々に抵抗できる者は存在しない。警察、軍などの武力も干渉できない、返り討ちに遭うだけだ。我々COEFONTはこの水都タワーを拠点に、水都を楽園に変えるとここに宣言する」》
「水都をどうするつもりなんですか…」
「楽園と言うとったな。ろくなもんじゃなさそうや」
「エクスビッカーとやらも気になるな」
名前からしてプリズムビッカーを思い出すが関係あるのだろうか…こういうのに詳しそうな月読アイは生憎とどこかに雲隠れしてしまった。よほど自身の娘に手を出そうとしていたのが響いたのだろうか。
《「ところで、今言った最新型ガイアメモリなのだが数本が不足している。この街のどこかに落ちているはずだ。それを我々に持って来たものには十億出そう。我々の仲間として迎え入れることも検討しようじゃないか」》
「…そうだ、T2ガイアメモリ…!」
ついなさんとリリィが回収したものをここに一度置いて来たと言っていた。ならば…!
「ああ。BのバードとPのパペティアーや」
「そこの机の上に置いてたはずだが…ちゃんとあるな」
私の机、もといおやっさんの机そっくりなタイプライターが置かれている机の上を見やると二本のガイアメモリが無造作に置かれていた。
「詳細が分からなかった残るBとFとJとPとLとMとZ、残り7本のうちF…ファングとL…ルナとM…メタル、そしてZのゾーンは敵の手に渡りました。ルナは倒せはしましたが回収できなかった。…さらにこちらが有していたCのサイクロン、Hのヒート、Tのトリガーも奪われてしまいました」
「トリガーメモリはバードとパペティアーと一緒にここに置いておくべきやったな…エターナルに負けた時に奪われてしもうた。面目ない」
「あの感じ、キリエの奴は多分心が折れたな。抵抗の素振りが見れなかった。サイクロン・ドーパントも敵に回ったと考えてよさそうだ」
「…頼りにしていた私達がああも完全に敗北したのです、そうなったとしてもおかしくないですね…」
正直残念だが、元々COEFONTを裏切ってこちらについてたのだ。また寝返っていてもおかしくない。
「幸いなことに居場所は分かった。だがこっちの戦力はエンジンメモリが使えないエンジンブレードと各バイク、そしてリボルギャリーとガンナーAくらいや。ギジメモリも使えなくなっててガジェットも戦力に使えん」
「一応ハイドープの力は残ってるみたいだがな。まあ俺は頑丈なことしか取り柄が無いが」
「でも、T2ガイアメモリは形状からして恐らく私達のドライバーと互換性がある筈です!これを使えば反撃が……?」
そう言いながらもう一度机に視線を向けて、思わず首をかしげる。忽然とメモリが二本とも消えていた。キョロキョロと辺りを見渡すと、一人いないことに気付いた。
「あれ?あかりはどこにいきました?」
「さっき花摘むって言って廊下に出てったぞ」
「なんや、どうしたんや?」
…そんな、まさか。でも、あの自虐的な感じ……COEFONTからなにか接触があったとしたら、まさか…同時に聞こえるエンジン音。聞きなれたものだ。
「T2ガイアメモリが無くなりました!それに同時にあかりも…!もしやとは思いますが」
「くそっ!…オレのせいだ!」
私が言い終わる前に、リリィが舌打ちして部屋を飛び出していくのを、ついなさんと共に追いかける。すると塀の中に置いていたハードボイルダーがなくなっており、リリィがミダスホイーラーで追いかけていったところだった。
「ハードボイルダーを…!」
「ちい!出遅れた!もう塀の向こうで見えへんわ!おい、遠隔操作できひんのか!?」
「あかりが運転しているときにそんなことしたら横転してしまいます!ですが居場所なら…スパイダーショックの発信機をあかりに万が一誘拐された時のためにと付けていたので、それで」
まさかこんな形で使うことになるとは思わなかったが。
「ならうちのバイクに乗りいや!それで、どこに向かってるんや!?」
「えっと、この方向は…事務所?」
そんなところにメモリを持っていくなんて、敵にわざわざ餌を持っていくようなものです…!ついなさんのディアブロッサの後部座席に乗ってついなさんの運転で走り出す。あかり…リリィ、どうか間に合って…!
楽園。それは恐らく、COEFONTと普通の人間が手を取り合い、笑い合える世界。そんな世界になれば、私は……そう考えた瞬間、ゆかりさんたちを裏切ることを心に決めてしまった。トイレに行くふりをしてメモリを盗み、ハードボイルダーにも勝手に乗って事務所までやって来ていた。…これで私も、ゆかりさん達の敵、だなあ。
「あ、本当に来た。待ちくたびれたの、紲星あかり」
「ブロッサ、さん」
半壊した事務所跡にいたのは、気を失っているミコトさんとヒメさんを傍らに転がしている私と瓜二つのタンクトップの人物。ブロッサと呼ばれていた、私の同型機…だったはずだ。私は持って来たメモリ二本をスカートから取り出して差し出す。
「これ…メモリです」
「ありがとうなの。これで、残り一本…ふへへへっ、ここで拾ったけど隠して行方不明ということにしておいたXのメモリと合わせたらこれで三本なの、お手柄なの」
「あの…私、姉妹に憧れていたから貴方に会えて嬉し…
「じゃあ、プロフェッサー・アベルーニに紲星あかりはメモリさえもらえば用済みって言われてるから、消すの」
瞬間。私は腹部を殴られて、その場に蹲っていた。あまりにも重い衝撃と、突然のことで目を白黒させながら顔を上げると、にやにやと笑っている自分と瓜二つの顔と目が遭った。
「がはっ……そんな、私は仲間じゃないんですか…!?」
「私達はアリアルに望まれて生まれてきたの。貴女みたいな初期型とはそもそも存在意義が違うの!大丈夫、貴女は仮面ライダーたちを裏切ったから殺されたってことにするの!あの冷酷なリリィ金堂ならやりかねないの!プロフェッサー・アベルーニの計画は完璧なの!」
《メタル!》
メタル・ドーパントに変身しながら語られたその言葉に、絶望に目を見開く。それじゃあ、私は……なんのために……!
「そんな、じゃあ、私に、仲間なんて……」
「蘇生も出来ない初期型CLEARの生き残りはお前ただ一人なの!わかったら大人しく死ぬの!」
嬉々とするブロッサの両手で握られ、勢いよく振り下ろされる鉄の棒が頭を捉えんとする。あ、駄目だ。これ、死ぬ。そう確信した私の前に、黄金の輝きが割り込んできた。
「させるかあ!」
「えっ……」
金色の頭から赤い液体が溢れて床を濡らす。私を庇って鉄の棒の一撃を頭で受け止めたのは、リリィさんだった。
「リリィさん!?」
「リリィ金堂…!?」
「ぐはっ……こいつに仲間はいない、だと?ふざけんじゃねえ!」
「なのお!?」
鉄の棒を握り、引き寄せて渾身の前蹴りを叩き込んでメタル・ドーパントを蹴り飛ばしたリリィさんだったが、力尽きたのかその場に崩れ落ちるのを慌てて抱える。思わず涙が溢れてきた。
「なんで、なんで……」
「仲間を守るのは当然だろ…?…悪い、オレの言葉で不安にさせちまった。無神経だった。許してくれ」
「そんなの、そんなの……!許してほしいのは私の方で…!」
「誰もお前を非難したりしないさ。仲間だろ。……こいつは、お守りだ。お前に託す、ぞ……」
「リリィさん…!」
そう言って私にダブルドライバーNEOを手渡し、崩れ落ちるリリィさんに呼びかける。ダメだ、このままじゃ……最悪なことは続く。メタル・ドーパントが復帰してきたのだ。
「痛いなの……お前が大人しく死なないからなの……同じ顔なのも不愉快なの…!」
「っ……!」
「それ以上は、させませんよ」
そこに、私とリリィさんを庇うように立つ二人がいた。帽子を押さえて目元を隠したゆかりさんと、怒り心頭と言った様子のついなさんだった。
「…あかり!無事か!心配かけおってからに!」
「ついなさん、ゆかりさん……!」
「邪魔する気なの、仮面ライダー…!…いや、もう変身できないの。ただの探偵なの。なのに立ち向かってくるなんて馬鹿なの!」
「…お生憎と、キレました。ついなさん、ミコトさんとヒメさんを!」
「任せときい!」
無謀にも突撃するゆかりさん。宙を舞って蹴りを叩き込むも、メタル・ドーパントはビクともせず弾き返し、鉄の棒を振るうのをゆかりさんは紙一重で回避していく。すごい、だけどジリ貧だ……。
「いくら怒ろうが、ただの人間がCLEARに勝てるわけがないの…!」
「いいえ。人間、怒りがあればどんな敵にも勝てます。私は怒っている。大事な後輩を騙し、仲間を傷つけられて、それを止めれなかった私自身にも…!」
「だからどうしたの!」
鉄の棒のフルスイングを、避けようと後退したゆかりさんを追うように伸びて……いや、持つ部分を変えて殴り飛ばすメタル・ドーパント。殴り飛ばされたゆかりさんは奥のデスクに突っ込んで引っくり返る。
「私は馬鹿じゃないの!とどめなの!」
「…お生憎と、切札は常に私の所に来るようです。雨漏りの原因がこれとはね」
立ち上がったゆかりさんの手に握られていたのは、ジョーカーメモリ。…いや、端子の色が違う。T2のジョーカーメモリ…!?
「ガレージでこれを取っておいて正解だった。きりたん、力を貸してください」
《ジョーカー!》
そしてゆかりさんが懐から取り出したのは、以前きりたんが仮面ライダーサイクロンに変身した際に使っていたロストドライバー。それを腰に取りつけ、ジョーカーメモリを鳴らしたゆかりさんは真っ直ぐメタル・ドーパントを睨みつけて口を開く。
「変身」
《ジョーカー!》
紫の風が吹き荒れ、納まったそこには黒一色のダブルが立っていた。
「ダブル…!?そんな、馬鹿ななの!?」
「ダブルじゃありません。私は……仮面ライダー、ジョーカー。さあ、お前の罪を…数えろ」
裏切り。そして裏切り。身代わり。変身。ブロッサは言動からは想像できないほど外道です。同じあかりなのにどうしてこうなった。
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