水都市歩色町が一望できる立体駐車場の屋上で、水都タワー方面を見下ろす私とあかり、そして方相氏とハイドープの頑強さで復活したついなさんとリリィ。警官隊が止めようと動いていたようだが、失敗したのかパトカーの残骸が転がっていた。
「しっかし派手にやられましたねえ」
「ミリアルはいなかったはずなのであれはアベルーニ一人でやったってことですよね…」
「うちがいなかったばかりに…」
「不意打ちはしょうがないと思うがな?まあオレは名誉の負傷だが」
ブロッサとウララを倒したモノの、まだアリアルとミリアル、そして倒したがメモリを奪えなかったアベルーニと敵に回ったキリエが残っている。戦力差は歴然だ。少しでも素早く乗り込もうと、私とあかりはマシンハードボイルダーと、ついなさんはエンジンブレードを搭載したディアブロッサ、リリィはマシンミダスホイーラーに搭乗している。
「…ついなさん、リリィ。本当に公園のミリアルとアベルーニは任せていいんです?」
「エターナルに勝てるのはお前ら二人ぐらいやろ。露払いは任せときぃ」
「変身できないがちょうどいいハンデだ。オレのドライバーで頑張ってこい、あかり」
「個人的には戦い慣れてないあかりを連れて行くのも憚られるんですけどね」
「一人で行くのは無しですよ、ゆかりさん!」
頼りになる二人と、怖いだろうに気丈に振る舞うあかりに思わず苦笑する。…さて時間をかけてもいられない。
「行きますか」
《ジョーカー!》
「はい!」
《エクストリーム!》《メタル!》
私はロストドライバーを腰に取りつけT2ジョーカーメモリを手に取り、あかりはダブルドライバーNEOを腰に取りつけT2エクストリームメモリとT2メタルメモリを手に取り、それぞれドライバーに装填。私はJを描くようなポーズをとり、あかりは両腕を交差して、勢いよく振り下ろしてダブルドライバーNEOを展開する。
「「変身!」」
《ジョーカー!》
《メタルエクストリーム!》
私は漆黒の風に包まれ、仮面ライダージョーカーに変身。あかりはガンガンガンガンと音を立てながら積み上がるようにして鋼のブロックに包まれたかと思えば罅割れて砕け散る様にして仮面ライダールクスに変身を果たすと、ついなさんとリリィも合わせてそれぞれのマシンを発進させた。
一方、水都タワー前公園では、アベルーニとミリアルが次々とやってくる水都市民に飽き飽きとしていた。
「市民が仮面ライダーからT2メモリを奪い取ることを期待してたわけだが、てんで駄目だな。ミュージアムのメモリばかりだ」
「私達が失敗したのにそんなことを求めるなんて酷でしょう」
「俺もお前たちに期待しすぎたよ、まさかブロッサとウララが完全に死ぬとはな」
「…CLEARに幻滅しましたか?」
「期待はずれなのは最初からだ。アリアルを満足させることができなかったからな。せめて道具として役立て」
「…はい、わかりました。姉さんの為なら私は道具で構わない…」
アベルーニの言葉にミリアルが複雑そうな表情で返していた時だった。三つのエンジン音が轟き、アベルーニとミリアルがその方向を向くと、三台のバイクが並走して走って来ていた。それを見て逃げ出す市民たち。誰が来たのか察したアベルーニは笑う。
「仮面ライダー…!来たか!さっき渡した財団Xからパクった奥の手の出番だ。ミリアル!」
「承知しています!姉さんの元には行かせません…!」
そう言ってミリアルが取り出したのは、M/Tと鉄と銃で描かれたダブルたちのものと同じ形状のガイアメモリ。アベルーニも炎と月でH/Lと描かれたガイアメモリを取り出し、同時にボタンを押して二重に重なったガイアウィスパーを鳴らす。それは、財団Xがミュージアムには秘匿してダブルを参考に開発した試作型複合メモリTypeFusionガイアメモリ「TFメモリ」だった。アベルーニが「退職金」と称して盗み出したものである。
《メタル!/トリガー!》
《ヒート!/ルナ!》
そして、それぞれかざしたアベルーニの額とミリアルのはだけさせた胸元に浮かび上がった生体コネクタに挿入すると、アベルーニは胸部より上が燃え盛る炎に包まれたルナ・ドーパントの様な姿に、アリアルはスレンダーで右腕のライフルが消えた全身のいたるところに鋼の装甲を身に着け、砕ける様に割れた頭部の右側からメタル・ドーパントの様な赤い複眼が露出したトリガー・ドーパントの様な姿に変身。ヒートルナ・ドーパントが腕を振るって燃え盛るマスカレイド・ドーパント…ヒートルナマスカレイドを大量に召喚した中に、スピードを上げたついなとリリィが突っ込んでいく。
「なんや強そうになったなあ、堪忍せい極悪人、アベルーニ!」
「相手にとって不足無しだ、ミリアル!」
「いいね、方相氏のCLEAR作ってみたかったんだ如月追儺…!」
「リリィ金堂…!貴女を逃した不始末はこの手で…!」
激突する四人を尻目に、ハードボイルダーを走らせ水都タワーに辿り着いたジョーカーとルクスは、後ろ髪を引かれながらも内部に突入した。
ついなさんとリリィに異様なドーパントになったアベルーニとミリアル、マスカレイド軍団の相手を任せて水都タワー内部を駆け上がって行く私達。そして中枢部に辿り着くと、きりたんとキリエさんが拘束されぐったりしている中心に据えられた巨大な機械を見上げていたアリアルがこちらに気付く。
「アリアル・ボルコフ!きりたん…とキリエさんを放しなさい!」
「やあ。待っていたよ結月ゆかり、いや仮面ライダージョーカー。そして仮面ライダールクス、紲星あかり…君が私達に敵対するのは心底残念だ」
「どの口が…!私を殺そうとした癖に…!」
「そこは勘違いしないでほしい。私は本心から君が仲間になることを望んで勧誘した。君を殺そうとしたのは部下たちの暴走だ。…まったく、兄さんめ。私が落胆するぐらいならと始末しにかかるとは……謝罪しよう」
そう言って頭を下げるアリアル。しかしすぐに頭を上げると無感情な顔で見てきた。思わず、変身もしていない少女に怯む。改めて見れば高校生ぐらいだ。NEVERだから本来の年より若々しいのだろうか。
「だがしかし、東北記理子とキリエは別だ。彼女たちはこの機械…エクスビッカーを制御するための生体パーツだ。返すわけにはいかないね」
「だったら無理矢理にでも…!」
「取り返します…!」
「残念ながら君達の相手は私じゃない」
そう言って、C-サイクロンメモリとF-ファングメモリを手に取るアリアル。ボタンを押すと二本を纏め、背後のぐったりしているきりたんの首に突き刺した。
《サイクロン!》《ファング!》
「なにを…!?」
「…これ、は……」
「ウォオオオオオオオオオンッ!!!」
するときりたんの身体が膨れ上がり、二メートル大の全身から白い牙が生え揃った刺々しい姿のサイクロン・ドーパントの様な姿の怪人……言うなればサイクロンファング・ドーパントに変貌。咆哮を上げる。頭の刃はきりたんの包丁の髪飾りを思わせるが、知性の欠片も感じられないその姿からきりたんの面影は感じられず、ショックを受ける。
「まさか二本挿しが上手くいくとはね……今の彼女の精神はエクスビッカーに閉じ込められている、いわば抜け殻だからかな?」
「きりたんを、よくも…!」
「ゆかりさん、来ます…!」
「ウォオオオオオオオオオンッ!!!」
斬撃を伴った疾風が吹き荒れる。私とルクスは構えるしかなかった。
財団Xの開発した試作型TFメモリのヒートルナ、メタルトリガー登場。原理は親子丼ドーパントと同じです。
それとは別に二本挿しのサイクロンファングも誕生。苦戦必至です。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。