ボイロ探偵W   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。今回はAtoZ編のエピローグとなります。楽しんでいただけると幸いです。


第八十二話:AtoZフォーエバー/残された君の名は

「っはあ!はあ、はあ……生きている…のですか?」

 

 

 水都某所。トレーラーに偽装し水都に持ち込んだアベルーニの簡易研究室にしてCOEFONTの仮拠点。緑色の液体に満たされたポッドから自動で排出され目覚めたミリアルは、何も身に纏ってない状態でぺたぺたと緑色の粘液がついた足でトレーラー内を歩き、傍のポッドの中で眠っているもう起きもしない空っぽのブロッサとウララのボディを一瞥する。

 

 

「…そうか、リリィ金堂は私達の弱点を知らずに私を倒したのですね…早く、姉さんの加勢に行かないと…」

 

 

 壁の一部を触れると回転して現れたスーツケースを手に取り、中に入れられた一張羅に袖を通してハンドガンを手にしたミリアルはハンドガンを懐にしまってトレーラーの荷台から人目を気にしながら外に出る。ちょうど周囲の人々は何かに気を取られてミリアルの存在には気付かない。それを確認してから道に降り立ったその瞬間、一陣の風が舞ってミリアルの髪がふわりと撫でられた。

 

 

「姉さん…!?」

 

 

 その風に視線を取られて、見てしまったのは自分のオリジナルにして全てを尽くさんとした最愛の姉の最期。黄金に輝くサイクロンジョーカーエクストリームとなったダブルにエターナルが蹴り飛ばされる、その瞬間の光景だった。

 

 

「「「うおおおおおおおおっ!」」」

 

「「「やったぁあああああっ!」」」

 

「そん、な……」

 

 

 爆音の様な歓声が上がる中で、ミリアルは信じられないと言った視線を空に向けたままぺたんとその場に座り込み涙を流す。アリアル・ボルコフは悪魔だった。それでもミリアルにとっては、この世でただ一人の最愛の姉だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。エターナルに勝利したとはいえ、水都タワー崩壊に街中で暴れたT2ドーパントやヒートルナ・ドーパントの幻影ドーパントの被害。COEFONTは、決して軽視できない爪痕を水都につけた。ドーパントの被害こそ外の仮面ライダーによって最小限に抑えられたらしいが、それでも水都アウトレットモールなどは一時休業しているらしい。

 

 そして傷を癒した私達は、COEFONTに破壊された事務所は現在鳴花ヒメ・ミコトの二人が修理中なので杏璃万結の自宅だった第二事務所で今回の依頼人であるキリエ・T・ノーマンに報告書を渡していた。

 

 

「私はFBIに戻るわ。…財団XのCOEFONTから送り込まれたスパイでCLEARだけど、受け入れてくれるって上司から」

 

「それはよかった。…貴方に罪が無いとはいいません。でも罪を数えてやり直せたあなたなら、大丈夫だと思います」

 

「……私が成長した姿って改めて見るとなんかムカつきますね」

 

「お前が実年齢ならキリエと同じぐらいだもんな。いたっ」

 

 

 報告書を渡す横でリリィがきりたんに脛を蹴られている。なんかいつもの光景である。あかりも、深呼吸してからキリエさんの手を握る。

 

 

「同じCLEARとして…いつでも相談に乗ってくださいね。私達は、仲間ですから」

 

「ええ。あかりもなにかあったら頼ってね。…そうだ、COEFONTといえば…捕らえたアベルーニの証言から奴等の拠点だったトレーラーを見つけてFBIのエージェントが調査したのだけど、不可解なところが一つだけあったらしいの」

 

「不可解なところ、ですか?」

 

「ええ。ウララとブロッサは再生された意識の無い肉体が残っていたらしいのだけど、ミリアルだけいなかったの。何か知らない?」

 

「ミリアルだったらリリィさんが相手したはずですが…?」

 

 

 そう言うあかりの視線が向けられると、リリィは首を傾げた。

 

 

「ああ、ちゃんと倒したぞ?」

 

「チップは破壊しましたか?」

 

「チップ?……あー」

 

 

 私に言われて思い出したのか顔を青くさせるリリィに、私ときりたんとあかりとキリエさんは頭を抱える。完全に忘れていたようですね…。

 

 

「…ならどこかに生きてるのかしら。すぐに指名手配して…」

 

「あ、ちょっと待ってください。電話です。もしもし?」 

 

 

 するとスタッグフォンが着信音を鳴らしたため開いて相手を確認する。ミコトさんだ。

 

 

「はい、もしもしミコトさんですが?どうしました?」

 

《「あー、ゆかり?事務所にお客さんなんだけど…」》

 

「お客なら今は休業中だとお伝えくだ……」

 

《「いや、この間襲撃してきた一人の黒髪の女の子なんだけど…どうする?」》

 

「はい?」

 

 

 ……指名手配があっちから来るなんて私、聞いてない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 念には念を入れて、水都第二屋外ステージに来てもらうようミコトさんに連絡して、私とあかりでやってきた。きりたんはミュージアムの件もあるので第二事務所でお留守番である。リリィはもしものための護衛だ。キリエさんは念のためにFBIの仲間を引き連れて周囲で待機している。そこには、以前見た格好なれど数日間彷徨っていたのか薄汚れた姿になったミリアルが、その手に壊れたロストドライバーを大事そうに握りしめて待っていた。

 

 

「ミリアル・ボルコフ……」

 

「私に名字はありません。ただのミリアルです」

 

「…なんで、投降したんですか?」

 

 

 あかりが警戒しながら尋ねる。一度騙されているのだ、警戒して然るべきだろう。するとミリアルはお腹を撫でながら答えた。

 

 

「…単純な理由です。CLEARは人一倍エネルギーを消費する……もう限界なんです、このままだと飢え死にしてしまう…復元できるアベルーニも捕まったとニュースで知って、頼れるところは貴方達しかいなかった」

 

「…水都タワーでの惨劇については後から知りました。あれだけのことをしておいて、私達に助けを求めるのですか?」

 

「許してくれとは言いません。だけど、私には、死ねない理由がある…!」

 

 

 そう言ってエターナルの物であろうロストドライバーを握りしめるミリアル。その目には決意が宿っていた。

 

 

「この拾った命は最後の砦。私が死ねば誰も本当のアリアル姉さんを知る人間がいなくなる。それだけは耐えられない。捕まえると言うなら抵抗します。だけど、私を保護してくれると言うのなら……罪滅ぼしでもなんでもします。人殺しでも、なんでも…!」

 

「…はあ。そんなこと望みませんよ」

 

 

 ミリアルは強い。例えメモリが無くても、キクさんと西友がやられた精神干渉能力もあって苦戦必至だろう。今ここにはあかりやキリエさんたちもいる。守って戦うのは分が悪い。…わかっていてキリエさんと一緒にいる時を狙ってこちらに接触したな。計算高い、油断ならない奴だ。………でも。

 

 

「アリアルを思う気持ちは、本物ですね」

 

「…はい。ひしひしと伝わってきました。……キリエさん。さっそくだけど頼ってもいいですか?」

 

「……私も立場が危ういのに、ずるいわねあかり。わかった、司法取引しましょうミリアル」

 

「キリエ。感謝します」

 

 

 姿を現したキリエさんに頭を下げるミリアル。あかりも今回の一件で厳かになったなあと感心した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで新しい仲間です。司法取引で私達に協力すると言う形で減刑することになりました」

 

「よろしく」

 

 

 数日後、完全に修復された紲星探偵事務所で、私の紹介で入って来てぺこりと頭を下げるミリアル。椅子に座っていたリリィと、コーヒーを注いでいたついなさんは噴き出した。私とあかりときりたん以外に知らせてないのだから当たり前だ。

 

 

「アホか!マフィアのボスの次はテロリストまで入れるなんてどんな探偵事務所やねん!?」

 

「というわけでじゃねえよ。オレ、こいつまだ許してないぞ」

 

「私の仲間みたいなものだから放っておけなくて…無理やりキリエさんになんとかしてもらいました!」

 

「それ言われると何も言えへんやろがい」

 

「まったく…後輩か。こき使うから覚悟しろよ。…えっと」

 

 

 殺し合ってなおちゃんと覚えてなかったのか言いよどむリリィに、ミリアルは告げる。アリアルを生かし続けるために引き継いだ名を。

 

 

「私はミリアル。ミリアル・ボルコフ。アリアル・ボルコフの妹です!」




燃費が悪いのと死ねない理由からミリアルが仲間入り。ハンドガンはさすがにFBIに取り上げられました。

次回からは「怪盗I参上」編。豪華客船を舞台に船上ミステリー開幕です。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
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