私の名前は
「はあ……うん?あれは…仮面ライダーとドーパント!?」
溜め息を吐きながら甲板の上から海を眺めていた私は、眼下に見えた半分こ怪人の姿を見て鞄から一眼レフカメラカメラを取り出して構える。納められたのは、蔦の特徴を持つ怪人、ドーパントと二色の仮面ライダーの戦いだった。これは大スクープだ…!
「はああ!」
かっこいい見た目とは裏腹に女性らしい声を出しながら殴りかかる仮面ライダー。相手の蔦のドーパントは五指から伸ばした蔦を自在に操って攻撃、仮面ライダーの右腕に巻きつけて拘束して右手の蔦指を何度も振るって叩き付け火花が散る。
『ここはヒートです!』
「了解!」
《ヒート!》《ヒート!ジョーカー!》
するとまた別の女性の…いや、子供の声で喋って赤いガイアメモリを取り出した仮面ライダーがベルトの緑のガイアメモリと交換、黒と緑の姿から黒と赤の姿に変わり、右半身に炎を纏って蔦を焼き尽くして反撃。そのまま蔦のドーパントが放つ五指の蔦を燃やしながら近づき、炎を纏ったパンチを叩き込む。
「あら、危ないわ」
すると蔦のドーパントは両手の五指を絡み合わせて伸ばし、編み込んで蔦の壁を形成。仮面ライダーの炎を纏った拳を受け止めると切り放して、炎上から逃れる。さらに五指を合掌する様に絡み合わせながら伸ばして、組み合わさって槍となった蔦で攻撃。咄嗟に右腕に炎を纏って受け止める仮面ライダーだが質量差に押されて手すりを越えて海上に吹き飛ばされてしまう。
「ならこいつです!」
《ルナ!》《ルナ!ジョーカー!》
しかし仮面ライダーは焦らず、赤いガイアメモリを黄色のガイアメモリと交換。黒と黄色の姿になるとなんと右腕が伸びて手すりに掴まり、それを阻止せんとする合計十本の蔦の攻撃を自在に右腕を伸縮して回避しながらデッキに舞い戻る。私はたまらず連射で激写し続けた。
「あら?しぶといわね」
「ケラケラ笑いながら言っても説得力ありませんよ財団X。私達の戦い方を知っているのでしょう?」
『得体の知れない奴ですね……何が目的なんですか!』
「そんな簡単に教えたら面白くないわ。探偵らしく推理してみたらどう?」
探偵?仮面ライダーは探偵なのか?財団Xとか気になるワードもあるが、仮面ライダーの正体…それがもしわかれば最高の特ダネだ。見逃せない。
「言う気が無いなら仕方ありません」
《トリガー!》《ルナ!トリガー!》
『実力行使です!』
すると仮面ライダーはベルトの黒いガイアメモリを引き抜いて代わりに取り出した青いガイアメモリを装填。左側が青く染まると左胸部に大型の銃が出現し、仮面ライダーはそれを手に取って黄色に輝く光弾を乱射する。あんな軌道じゃ当たらないんじゃ…そう思った瞬間、放たれた光弾は自在に動いて蔦のドーパントに殺到。それがわかっていたのか蔦のドーパントは伸ばした五指で薙ぎ払い、仮面ライダーはさらに乱射しながら突進。
「面白い…!受けて立つわ!」
「エターナルの時の様な不覚は取りません!」
銃を撃ちながら突き出して接近戦に持ち込み、外れた光弾が周囲を飛び交い、五指を伸ばして自在に操る蔦のドーパントと、光弾を自在に操る仮面ライダーが打ち合う。幻想的な光景だ。激写する。どこを撮っても絵になる、すごい。
「中々楽しめたわ。でもね」
「っ!?」
「生憎と、年季が違うのよ」
すると光弾の全てを撃墜した蔦のドーパントが右足を振り上げると、右足が蔦となって伸びて仮面ライダーの左足を拘束。引っ張って仮面ライダーを転倒させ、五指を交差して振るって竜巻の様な連撃が仮面ライダーに襲いかかる。
「潜ってきた修羅場の数なら負けてません!」
《メタル!》《ルナ!メタル!》
左足を拘束され引き摺られた仮面ライダーは青いガイアメモリと取り出した銀色のメモリを入れ替え、背中に棍棒を装備した黄色と銀色の姿に変身。見るからに硬い装甲で猛攻を耐え抜き、横になったまま背中から引き抜いた棍棒を投げつけて蔦のドーパントの腹部に炸裂、怯ませて拘束から逃れると立ち上がり、跳ね返ってきた棍棒を手に取って振り回し、次々と叩きつけて蔦のドーパントを追い詰めて行く。
「これで終わりです」
《メタル!マキシマムドライブ!》
「『メタルイリュージョン!』」
そして棍棒の中央にある機械にベルトから引き抜いた銀色のガイアメモリを装填。振り回した棍棒で金色の輪を大量に描き、一気に飛ばして四方八方から蔦のドーパントを切り刻んだ。だけど上にいる私は見た。当たる直前に、脱皮するかの様に自身に巻き付いている人型の茨の蔦から逃れる、白づくめの服で赤みがかった金髪をツインテールに結んだ年端もいかない少女を。
(あんな少女が、ドーパント?)
思わず呆気にとられてしまい、慌てて写真を撮ろうとするも、少女は近くに転がっていたキャリーケースを素早く手に取るとすぐに私の死角に隠れてしまって撮ることは叶わなかった。
「危ない危ない。時間稼ぎのお仕事はちゃんと果たしたしこれまでね。面白かったわ。また会いましょう、仮面ライダー」
そんな言葉と共に扉が閉まる音が聞こえる。船内に逃げてしまったようだ。仮面ライダーはそれに気付いて追おうとするも、すぐに思いとどまった。それもそうだろう、
「…やられました。財団Xは二人組です。今の彼女は、恐らく囮……」
『本命はもう一人ですか……記憶を共有しましたが怪盗Iとやらもいるのでしょう?せっかくのバケーションが台無しですね』
「そういうもんじゃないですよ。私達は探偵です、事件があるなら解決するだけですよ」
そう言いながらベルトからからガイアメモリを引き抜きながらバックルを変形させ、男装の女性に姿を変える仮面ライダー。あれが、仮面ライダーの正体…!絶対に逃してはならないとカメラを覗き込むあまり、私は背後から近づくその存在に気付かなかった。
「ぎらついた色の、いい欲望ッスね。少しだけいただくッス」
「え…?」
振り返った私はその人物の顔を見ることもなく、なにかを吸い取られた感覚と共に気が遠くなり、倒れ伏す。そして私の手からカメラを拾い上げたその人物は楽しげに笑った。
「こんな新米に撮られてちゃ、世話無いッスよ仮面ライダー。今回は消しといてあげるから事件は任せるッスよ。ウチでも見破れない謎を解くのは、探偵の仕事ッス」
そう言ってカメラを操作してデータを丸ごと消し去ると、その人物は靴音を立てながら去っていくのだった。
謎が謎を呼ぶ。
・アイビー・ドーパント
『蔦』の記憶を宿したドーパント。五指や脚を茨の蔦に変化させて自在に操ることができる。緊急時には脱皮の様に蔦だけ残して変身解除することで離脱する。シルバーメモリだけ合って強力無比。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。