アイビー・ドーパントを逃がしてしまった私達。一息ついて変身解除した私は、自らの肉体に戻って覚醒すると、変身前と同じパーティー会場の中の様だ。
「はっ!」
「お、きりたん。戻ったか。どうだった?」
「あかりさんに身体を預けたはずなんですが……」
「オレの方が背負っていた方が違和感ないからな。あかりならそこにいるぞ」
私を背負っていたらしいリリィに呼びかけられ、下ろされる。なんか西友に羨ましそうに睨み付けられ、あかりさんとミリアルは呑気にスイーツバイキングを楽しんでいた。私達が戦ってた間に呑気なものですね。
「で、なにが出た?」
「財団X。その一人、グラン・S・ベルと名乗ったアイビー・ドーパントと戦いました」
「財団Xがこの船にいるのか。せっかくの休暇だってのに空気を読まない奴等だな」
「それから……ゆかりさんが初峯九王から依頼されました。オークションの目玉「真実の愛」を怪盗Iから守る様にと」
「怪盗I?」
「おや、覚えがあります?」
ケーキを手に取りながら現状説明していると、何やら引っかかったらしいリリィが黄金のモンブランを頬張りながら神妙な顔つきになる。真剣な顔でモンブランをもぐもぐ、飲み込むと口を開く。結構上品なんですよねリリィ。
「いや……なんかすごい聞き覚えのある響きだなって」
「…月読アイのことですか?」
それは思った。私達で「
「検索完了。「真実の愛」とは20年も前に天才彫刻家「
「緑色の鉱石か……金ぴかだったら西友に言って金を用意させて落札でもしてやろうかと思ったんだがな」
「すぐ金用意できるのになんで探偵やってるんです?」
すると呆れ顔のゆかりさんが合流。好物のチーズケーキの皿を手に取って美味しそうにフォークで口に運んでいる。楽しむ気満々ですね。
「お前が誘ったからだろう。オレとしては探偵の仕事は悪くないと思ってるがな。で、その怪盗Iとやらと財団Xを捜せばいいんだな。後者は白い服を着てるだろうから簡単だ」
「そうもいかないようです。私もそう思って道すがら聞き込みをしたんですが、まるで目撃情報が無いのです。既に着替えて潜伏していると思われます」
「とすると、この中にいる可能性が高いか」
見渡すリリィに続いて私も視線を向ける。怪しい人間は…結構いるな。変に目立ってるのが12人、いる。
「あれは初峯九王、この船のオーナーですね。隣にいるのは
「水都の有名なバイオリニストか。最近婚約したと聞いていたがその相手が依頼者か」
「報告しているのは船長の赤城苅南です。メイドのラグナ・ポンドが傍に控えていますね」
「あの目立つピエロメイクは誰なんですかね?」
そう尋ねてきたのはミリアル。あかりさんは一心不乱にもぐもぐして周りを引かせているので他人のふりをしているつもりらしい。促した場所にいたのはピエロメイクを施した長身で緑に染めた髪の男。応えたのはリリィだった。
「
「隣にいるのは警備主任の加賀煉。その横の人は船員名簿で見ました。
「めっちゃ酒を飲んでますね……」
ワインを瓶ごとがぶ飲みしている整備服が似合う茶髪の美女にミリアルがドン引きしている。仕事をしないダメな大人を見たことが無いんだろうな。
「おや。私、あの人見覚えがあります。確かお父様の友人の
ピシッとした白スーツの上から青いマフラーを巻いた男を見てそう言うのは小休止していたあかりさんだ。さすが名家のお嬢様。クローンでもそこは変わりませんからね。そのまま壇上に視線を向ける。
「あそこでマジックを披露しているマジシャンも見覚えがあります。ミラ・マリン。海外の有名少女マジシャンです」
「結構な大物ばかりですね。さすがは天下の初峯家……」
「この調子ならあかりの両親もいそうだな」
「そ、それは困ります!」
リリィに言われてあたふたしだすあかりさん。まあありえるだろうな。紲星財閥といえば東北家、初峯家と並ぶ水都の名家だ。呼ばない理由がない。
「…げっ」
「げってどうしたんだゆかり……げっ」
「リリィまで何を…げっ」
「皆さん?どうしたんです?」
それを見て苦い顔を浮かべるゆかりさんに続いて声を上げるリリィ、私に首をかしげるミリアル。そこには、眼鏡をかけた杏璃万結とそっくりの美女がパーティードレスを身に付けてワインを嗜んでいた。そっくりさん……ですよね?
「リリィ様の怨敵かなにかです?さっき自己紹介しているのを聞きましたよ。
「名前も似てるんですか……」
「お近づきになりたくはないです」
「調査だからそれは無理だぞゆかり」
「ぐふう。……あれ、そう言えばキクさんはどこに?」
そこで、一行の中の最後の一人がいないことに気付くゆかりさん。そういえばそうだ。どこ行ったんだろう、と思っていたら目立つ赤いカツラが視界に入る。
「あいつならあそこだ。…水都の歌姫IAと偶然出会ってな。誘われて萎縮しながら向かってったぞ」
「…リリィあなた、加害者に被害者のもとに行かせるとか鬼畜ですか」
「歌姫IAがそんな性格じゃないことは知ってるだろ?」
苦笑いを浮かべているキクさんの横には、かつての依頼人である
「おや、誰か入って来ましたよ」
「お、美女だな。黄金像にしたい」
「どんな性癖です?」
「リリィ様だからな」
「ミリアルも早く慣れた方がいいですよ…」
その女性はさっきの整備士、
「えっとたしか…乗員名簿で目立ってたので覚えてます。確か名前は
ジャーナリストって書いてあったので覚えてたんですよね」
「ジャーナリスト?ならなにか情報持ってるかもしれないな。接触するか?」
「いやこちらに引っ付かれたら変身も難しいので……」
「それもそうか。よし、西友行って来い」
「御意。根掘り葉掘り聞き出してきます」
「いやあの、荒事はやめてくださいね…」
リリィに言われてそそくさと早足で向かう西友にゆかりさんが力なく警告する。ふむ、元悪党がジャーナリストの元に向かうとか厄ネタでしかない気がする。あ、このカステラ美味しいですね。
~簡単登場人物紹介~
ミラ・マリン:海外の有名少女マジシャン。鏡音リン。
ラグナ・ポンド:インペリアルスター号のメイドの一人。がくぽ。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。