なんか、初見久遠の所に情報を聞き出しに向かった西友が、なにがきっかけなのかリリィの事を語り出して止まらなくなったのでリリィが手刀で意識を刈り取り、結局私が相手することになった。仮面ライダーのことをばれないように情報を聞き出せとか地味に難しいんですが?
「連れがすみません。私、紲星探偵事務所の探偵、結月ゆかりと申します」
「いやあ、私と同じ様な恰好だったから気になってたんですが探偵さんでしたか。道理で~。あ、もう知ってるかもしれませんけど私は初見久遠。新米ジャーナリストです。親友のこの鳴子芽衣に頼み込んで特ダネ目当てに乗せてもらったんですよ」
「やめてよね。知り合いを一人なら乗せてもいいって九王様が言うから招待してあげたってのに」
ワインをがぶ飲みするのをやめて肩をすくめる船の整備員、鳴子芽衣。親友ってことは同い年ですか。その割にはある一部分の差がえげつないことに……いや、私が言えた話じゃないか。
「じゃあ、情報を得たとかじゃないと?」
「特ダネがあるんですか!?ぜひ、教えてくださいよぉ」
目を輝かせてすり寄ってくる初見久遠に、私達が欲しい情報は何一つないと確信。きりたんとリリィに目配せし、他を当たるように伝えた。
「私達も事件を探しているんですよ。それじゃあこれで…」
「そんなわけありませんよね?私をジャーナリストだと知って接触したならなにかしら事件が起きたのは確定です!」
「そうなの?久遠」
「そうなのです!」
「うぐっ…」
適当なことを言って私も離れようと試みるも、初見久遠の鋭い言葉と首を傾げながら見てくる鳴子芽衣に怯んでしまう。ジャーナリストをやってるだけあって鋭いですね…。
「なにかしら情報があるかもしれませんよ?話してみません?」
「ちゃっかりしてますね……内密にしてくださいよ。怪盗Iを名乗る何者かがオークションの目玉を狙っています。私達紲星探偵事務所はそれを阻むことを依頼されました。それで、怪しい人間を探っていたわけです」
さすがに財団Xのことは話せないのでもう一方の事件について話す。視界の端では藤城恩に気さくに話しかけるリリィ、普通の子供のふりをしてミラ・マリンの手品を間近で見学しているきりたん、親関係の話をしているのか伊藤廻と親しげに会話しているあかり、気絶している西友を釘崎檀に診察させているミリアル、有阿衣亞の付き人をしているキクさんと、仲間たちの奮闘している姿が見えた。
「つまり私が怪しいってこと?これでも凄腕の整備士なんだけど?」
「酒瓶話してから言おうか、芽衣」
「だいぶ目立っていたので…気分を害したなら申し訳ありません」
「でも、怪盗って言うぐらいなら普通目立たないのでは?」
「それもそうよね。盗みを働こうとしているなら、私みたいに酒をがぶ飲みしているのもおかしくない?」
「怪しい動きをしていたのが貴方達だけだって言うのもありますね」
久遠さんの言葉に、一理あると納得しかけたが怪しんだ理由を思い出す。他の人間が怪しくないとは断言できないが、根拠はある。
「目立つということは逆に言えば、なにかしら奇抜な行動を起こしてもある程度緩和できるということです。特に、目立っていた物がいきなり地味になれば人間と言うのは無意識に目立つものを探して地味なものを見過ごしてしまうこともあります」
「つまり…目立ってた方が怪しい?」
「はい、なので貴方達だいぶ怪しいです」
財団Xの可能性もなきにしもあらず。グラン・S・ベルを名乗ったあの財団X幹部が時間稼ぎしていた間に潜り込んだと考えるなら、会場の外にいた久遠さんも怪しい。
「…………でも、多分一番目立ってたのあなたたちでしたよ?」
「……………………それはたしかに!」
「納得するの!?」
ジト目のツッコミに、ポンと手を打つ。一本取られた。
「よう、藤城。元気にやってるようで何よりだ。黄金の地獄如来像をオークションしていた時以来か?」
「おやおやぁ、リリィ金堂じゃあないですかあ。エル・ドラードはどこぞの探偵の手で解体されてあなたも監獄送りになったと聞いていましたがあ?」
ゆかりからの指示で、長身で緑に染めた髪でピエロメイクのオークショニアに、知り合いなのでフランクに話しかけると、いつも通り道化めいたふざけた様なかしこまった口調で返してきた。相変わらずだな。どっちつかずの
「人の多い所で人聞き悪いこと言うな。ちゃんと保釈金で出たんだよ」
「相変わらず金で物事を解決しているようで、安心しました。よく見ればナンバー2の【処刑人】呪怨キクとナンバー3の【狂信者】西友蒼司までいるじゃあないですか。エル・ドラードのトップ3が揃っているとは恐ろしいですねえ。今回もご参加なさるので?」
「いいや。今回は仕事だ。探偵として警備させてもらうから安心しろ」
「貴方が探偵…?冗談は相変わらず下手くそですねえ」
「生憎と冗談じゃないんだこれが」
黄金の用紙に記された名刺を取り出して手渡す。それには「紲星探偵事務所調査員 金堂百合」と記されてある。リリィ金堂と名乗っているが本名はこっちなんだよな。それを受け取った藤城はピエロメイクでもわかるぐらい目を見開かせる。
「紲星探偵事務所……紲星財閥のご令嬢の戯れの駒にでもなったんですか?」
「うちの所長の悪口言うのはおすすめしないぞ。うっかり手が出るかもしれないからな」
「おおっと、これはついうっかり。御許しを?」
…特に変なところはないな。笑えない冗談で他人を嘲笑う道化師そのものだ。こいつが最初から財団Xだった、とかじゃないかぎり違和感はない。
「……ところで、オークションにはその……黄金でできたものはあるのか?」
「ありますよお。おすすめは黄金のランプ、ですかねえ。アラビアで発見された、御伽話のルーツらしき代物で……」
「…相変わらず商売がうまいなこの野郎」
西友をさっさと起こして金を集めさせるか。
「ワン、ツー、スリー。ハイ、変わったー!」
「「「わーっ!」」」
ミラ・マリンの余興のマジック。お偉いさん方の子であろう子供たちに交じって最前列に立ち、棒読みで歓声を上げながら拍手する。…見た限り簡単なトリックだ。それを一見ばれないように振る舞っていることから相当腕がいいマジシャンだと分かる。
「あれれ?お気に召さない子もいるみたいだね?」
「そ、んなこと、ないですよ?」
すると見抜かれてしまったのか、顔を近づけられて問いかけられる。演技は上手い方だと思っていたのだが、本職相手だと無意味か。
「私の夢は子供たちに希望を見させること!君もその一人なんだから感動させてしんぜよう!ハイ、ワン、ツー、スリー!」
そう言って帽子から鳩を繰り出すミラ・マリン。地球の本棚と繋がっている私にわからないトリックが無いのが裏目に出てしまった。何時まで付き合えばいいのだろうか。
「お久しぶりです、伊藤さん」
「これはこれは!紲星財閥のあかり令嬢じゃないか!最近見なかったが元気にしていたかね?」
来ているらしき両親が近くにいないことを確認してから、伊藤廻に話しかける。相変わらず暑そうなマフラーだ。
「実は最近起業しまして、そちらの方を優先していてパーティーとかに顔を出せなかったんです……今回はその仕事で知り合った初峯九王さんに招待されて……」
「ほう、それはそれは。さすが紲星財閥のご令嬢だ、あの初峯九王とのつながりを持つとは。どんな仕事か聞いてもいいかな?」
「はい、お爺さまから受け継いだ紲星探偵事務所という探偵業で…」
そこまで言ってしまった、と思い至る。伊藤廻の顔色が明らかに変わった。すぐに顔色を戻し、にこやかに会話を続ける伊藤廻。今の一瞬の表情は、私がCOEFONTだからわかったのだろうか。
「お爺さまと言うと…虚音イフの。そうか、彼の仕事を継いだのか……それはすごい。そう言えば、君の両親に挨拶していなかったな。どこにいるかわかるかい?」
「それならあちらに…」
「では失礼」
そう言ってマフラーを翻して去っていく伊藤廻。……滅茶苦茶怪しい。ゆかりさんに報告しないと。
~簡単登場人物紹介~
ミラ・マリン:海外の有名少女マジシャン。子供たちに希望を見させることが夢。
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