甲板の端、死角になるところに気絶したミリアルを置いて歩くミリアル、という不思議な光景。ミリアルは一息つくと額の汗を拭い、来た道を引き返した。
「予想外のことも起きたけど、「真実の愛」は手に入れた……あとは港に到着するまで隠れ続けるだけですね」
ミリアルの口調で喋るその人物は、階段を下りていく。と、階段を降り切った時だった。黒い弾丸に背後から胸を撃ち抜かれ、よろめくミリアル。その姿がぶれて、枯れ枝が組み合わさって人型になったような怪人に姿を変えて膝をつく。細長い竹の様な顔を背後に向ければ、そこには別の怪人がいた。
「そうはいかないのだよ、怪盗Iとやら。他人に化けられるようだが迂闊だな、口にするとは」
そこにいたのは、これまた異様な怪人だった。四角い漆黒のヘルメットを被っている様な頭部に、万年筆の様な形状の右腕を持ち、ドロドロの黒い液体が人型を作っているような体をしているが、腰には宝玉の様なものがついておりそれがドーパントだと示していた。その怪人を目に入れた枯れ枝のドーパントは苛立たしそうに舌打ちする。
「…財団、Ⅹ…!」
「容疑者に入れられている以上、時間をかけるとばれてしまう。「真実の愛」は返してもらうぞ」
右腕を上げ、左腕で押さえて黒い弾丸を乱射するドロドロのドーパント。枯れ枝のドーパントは細い体を駆使して全弾スレスレで回避。遠距離攻撃を持たないのか、長いリーチの四肢を振るって格闘戦を仕掛ける。
「無駄だ」
するとドロドロのドーパントの左腕が溶けて振るい、ドロドロの液体の壁を作り上げて枯れ枝のドーパントの脚を受け止める。枯れ枝のドーパントは脚を引き抜こうとするも抜けずにバランスを崩し、そこに万年筆の形の右腕を槍の様にして突き出すドロドロのドーパント。その細い胸を貫く、といったところで、枯れ枝のドーパントはふと、長い腕を船の壁に触れた。
「むっ…!?」
瞬間、枯れ枝の様な体が硬質化してドロドロのドーパントの右腕を弾く。そのまま液体の壁を貫かれて顔面を殴り飛ばされ、ひっくり返るドロドロのドーパント。
「ぐぬっ……なるほど、そういうメモリか。面白い…!」
「私の邪魔をするな、財団Ⅹ…!ミュージアムからも手を引け!」
「そう言うってことはそれがどういうものか知っているらしいな。引くわけにはいかんのだよ。我々もビジネスだ。今日の取引を潰した報いを受けてもらおう…!」
そう言って掲げた右腕に、左手を押し付けて何かを流し込んで右腕を膨張させていくドロドロのドーパント。まるで盛り上がった筋肉の様に膨らんだ右腕をかざし、防御態勢をとる枯れ枝のドーパントに向ける。
「喰らえ、鉄をも撃ち抜く弾丸だ。圧縮、発射!」
「っ…!」
瞬間、ドパン!という爆音とともに音速で放出される漆黒のレーザー。枯れ枝のドーパントは硬質化した腕を組んで防御を試みるも、両腕ごと胴体を貫かれてしまう。
「ぐあああっ!?」
変身が解けて、その場に転がる枯れ枝のドーパントだった人物。出てきたその人物を見て、興味深そうに左手で顎を擦るドロドロのドーパント。
「…ほほう?これはこれは……怪盗Iの正体がまさかこんな……」
「何の音ですか!?」
そこにやってきたのは、騒ぎを聞きつけた結月ゆかり。ドロドロのドーパントを見て、ダブルドライバーを構えて腰に取り付ける。
「貴方が今回の事件の犯人ですか…!」
《ジョーカー!》
「探偵、邪魔をしないでもらおう。私はただ犯人を追い詰めていただけだよ。ほらこの通り。…む?」
そう言って背後を促すドロドロのドーパントだったが件の人物の姿はすでになく。ポリポリとヘルメットの様な頭部の頬を搔きながら振り返る。
「グランがどうだったかは知らないが私に君たちと敵対する意思はない。ここは引いてくれないだろうか」
「財団Ⅹを見逃す理由はありません。どっちにしろドーパントは倒して捕らえるだけです…!変身!」
《サイクロン!ジョーカー!》
サイクロンジョーカーに変身し、殴りかかるダブル。しかしそのドロドロとした液体に覆われた左腕で拳は受け止められ、胸部に右手の銃口を突きつけられる。
「仕方ない。降りかかる火の粉は払うまで」
「ぐっ!?」
そのまま何度も銃弾を受け、吹き飛ばされるダブル。黒い弾痕を見て、ある事実に思い至る。
「これが、行方不明の銃弾の正体?あなたが伊藤廻殺しの犯人ですね…!」
『レーザーとも違う…何ですか、今の』
「如何にも。彼は財団Ⅹの不利益になるので始末させてもらったよ。君たちも不利益になるというのなら同じ末路を辿るといい!」
「くっ…」
《メタル!》《サイクロン!メタル!》
サイクロンメタルに変身し、メタルシャフトを回転させて弾丸を防ぐダブル。弾切れの概念がないのか無尽蔵に放たれる弾丸に、防戦一方だった。
「なんて制圧射撃…隙がありません!」
『こうなればこちらも攻撃に転じるしかありません!』
《トリガー!》
「ノーガード戦法ですね!やってやります!」
《サイクロン!トリガー!》
サイクロントリガーに変身、メタルシャフトが消えて代わりに胸部に現れたトリガーマグナムを手に取り、連射力の高い風の弾丸で敵の弾丸を相殺するダブル。しかしドーパントは左手を溶かして壁を作り上げて風の弾丸を防ぎ、壁から銃口だけ出して一方的に攻撃し始めた。
「そっちだけ防御するとずるいですよ!?」
『一体何のメモリなんですかね…?』
ダブルは左手でトリガーマグナムを連射したまま、右手にバットショットとギジメモリを手に取り、いったん物陰に隠れて敵の弾丸を避けながらバットショットにギジメモリを装填する。
「バットショット!」
《バット!》
物陰から飛び出し、ドーパントに突っ込んで壁の裏側に入るとフラッシュ攻撃を行うバットショット。それにドーパントの目がくらんだところで物陰から飛び出し、トリガーメモリを引き抜いてトリガーマグナムのマキシマムスロットに装填すると、飛んできたバットショットをトリガーマグナムに合体させるダブル。
《トリガー!マキシマムドライブ!》
「『トリガー・バットシューティング!』」
一点集中させた精密射撃が放たれ、壁を撃ち抜いて破壊するダブル。しかし、壁が崩れたそこにドーパントの姿はなかった。
「逃がしましたか…」
『とはいってもここは逃げ場のない船の上。水を移動できるようにも見えませんでしたし、まだこの船の中にいるはずです。……しかし、あの言いぶりからするともう一人犯人がいたようですが……』
「そっちが怪盗Iですかね。…うん?これは……」
ドロドロのドーパントが促していた場所に向かい、あるものを見つけて拾い上げるダブル。
「……これは、なんですかね?」
見つけたのは、黒い液体で塗られた写真らしきもの。変身を解いたゆかりは首を傾げつつ、それをしまってその場を後にしたのだった。
正体不明のドーパント×2。これで正体わかる人いたらすごい。
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