内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第九十話 めでたいめでたい結婚式 後編

急遽、行われることになった古代守とスターシアの結婚式。

 

ヤマトの予備士官室では、今回の結婚式における当事者の守、スターシア、サーシアの一家が待機していた。

 

「すまない、スターシア‥その悪乗りする連中ばかりで‥‥」

 

守は、艦上結婚式にかこつけてお祭り屋と化した同期生や弟、後輩たちのことをスターシアに謝るが、彼の愛妻は黙って顔を横に振った。

 

「私は大丈夫よ、守。貴方の友人や弟さんはイスカンダルを救おうと必死に戦ってくれたのですもの戦いが終わったばかりなのだから、お祭り気分になりたい気持ちは十分理解できるわ。それに、皆さんが私たちの結婚を心からお祝いしてくれているのは本当の事なんだし‥‥それに私、こういう賑やかな雰囲気は生まれてこの方知らなかったから‥‥」

 

スターシアがまだ子供の頃はイスカンダルにはまだある程度の人間が居たのだが、それは妹のサーシアと両親を除けば年老いた使用人が数人だけになっていた。

 

「スターシア‥‥」

 

そのまま身を寄せ合う仲睦まじい夫婦だが、守は突然顔をしかめて、テーブルにあるドア開閉リモコンのスイッチを押した。

 

するとドアが開き、通路には顔を真っ赤にしたフェイトたち管理局組と紙を筒にして耳とドアに当てていた束、一番後方で呆れ切った表情を浮かべている真田だった。

 

「やれやれ、相変わらず勘が良いね、守くん‥‥新婚生活で少しは鈍ったかと思ったのに‥‥」

 

恐縮し切った表情でペコペコと頭を下げるフェイトたち管理局組と違って束はつまらなそうな顔を浮かべる。

 

「皆さん、式まで時間がありますし、折角ですから少しお話しませんか?」

 

気まずい空気の中で、この空気を払拭したのはスターシアだった。

 

勿論彼女の言う『お話』は、なのは方式の『O・HA・NA・SHI』ではなく、談笑の方であった。

 

「あの‥スターシア陛下、一つお聞きしたいことがあるのですが‥‥」

 

「スターシアでいいですよ。私はもうイスカンダルの女王ではないので‥‥」

 

「では、スターシアさんで‥‥」

 

束がスターシアに話しかけるとスターシアは『陛下』はいらないと言う。

 

流石に名前呼びは失礼なので『さん』付けにした。

 

「イスカンダルの宮殿でスターシアさんたちと共に保護したプレシア・テスタロッサとアリシア・テスタロッサの親子についてなのですが、あの二人はどういった経緯でイスカンダルに来たのですか?」

 

テスタロッサ親子の話題が出て管理局組はピクッと反応した。

 

フェイトとしてもあの時、虚数空間へ落ちた筈のプレシアが今になって目の前に現れた事、それに死んだ筈のアリシアが生きている事も気になった。

 

「私自身も詳しい事は分からないのですが、あのお二人はある日、宮殿に突然現れて、私どもも困惑しました」

 

虚数空間で何らかの現象が起き、テスタロッサ親子は虚数空間から現世‥しかもイスカンダルの宮殿に現れたのだろう。

 

「女性の方は大病を患っていましたが、治療の甲斐もあって回復しました」

 

(えっ?プレシア母さんの病気って今のミッドでも治せない病気の筈なのに‥‥)

 

プレシアがPT事件の際、フェイトにジュエルシードを集める事を急がせていたのは一分一秒でも早くアリシアに会いたいと言う思いのほかに自身が不治の病に侵されていた事も関係していた。

 

そして、十年以上の年月が経過した現在のミッドでもプレシアが侵された病は未だに不治の病とされており、ちゃんとした治療方法も特効薬も確立されていない。

 

そんな不治の病をスターシアは簡単に治してしまったのだから驚かない訳がない。

 

「あ、アリシア・テスタロッサの方はどうやって治したんですか?彼女は死亡していた筈では?」

 

フェイトは束に代わって死んでいた筈のアリシアをどうやって治したのかをスターシアに尋ねる。

 

「お子さんの方は、脳死にはまだ至っておりませんでした。それに彼女本人の生きたいと言う強い思いもあり、蘇生手術を施したところ、無事に蘇生する事が出来ました」

 

「「「「‥‥」」」」

 

(えっ?蘇生?蘇生手術ってなに?)

 

(禁忌の魔法?)

 

(スターシアさんはジュエルシードを使ったの?)

 

アリシアが受けたとされる蘇生手術がどんな術式でどんな機材を使ったのかはイスカンダルが消滅してしまった今では確認のしようがないがアリシアが無事に蘇生した事にはかわりがない。

 

しかし、蘇生手術なんて医務官のシャマルでさえそんな術式を知らない。

 

フェイトをはじめとして管理局組も言葉が出なかった。

 

「なるほど、そんなことが‥‥」

 

(‥そういう事だってリニス)

 

束は医務室のリニスに念話を飛ばし、どういった経緯でテスタロッサ親子がイスカンダルに居たのかを伝えた。

 

(そんなことが‥‥)

 

(プレシア・テスタロッサには多少の嘘を含ませて現状を伝えてあげて)

 

(分かりました。その方が良いでしょう)

 

フェイトからPT事件の事を聞いたリニスは今の記憶がないプレシアにPT事件の事は知らない方が良いだろう判断し、プレシアの現状説明をリニスに任せた。

 

イスカンダルに居たテスタロッサ親子についての謎も分かり、束としては、後は結婚式の時間を待つだけとなり、その後はヤマトがイスカンダルを去った後、イスカンダルでどのような生活を送っていたのか束と真田が守とスターシアに尋ねる感じでしばし談笑していた。

 

サーシアも皆に愛嬌をふりまき、管理局組は赤ちゃんのサーシアに対してデレデレと顔を緩ませ、サーシアに話しかけていた。

 

さて、ここで確認であるが、サーシアは地球人とイスカンダル人のハーフ‥‥

 

半分は地球人の血が流れているとはいえ、イスカンダル人の血が当然流れている。

 

そして、サーシアはイスカンダル人の特徴である幼児期の成長速度が速いと言う特徴もちゃんと受け継いでいた。

 

両親である守とスターシアに覚束ない口調で、

 

「‥とっと(お父様)‥かっか(お母様)」

 

と話しかけ、皆を微笑ませていたのだが、次に赤子ゆえの無邪気な波動砲をぶっ放した。

 

「…おっば(おばちゃま)」

 

束を見て、天使の如き可愛い笑顔で宣うたのである。

 

ピシッ!!

 

束の身体全体が硬直する。

 

「『おばちゃま』か‥‥ぶっ、くくく‥‥あーっはははっ!」

 

サーシアの言葉と束のリアクションを見た真田はバンバンと膝を叩くと腹を抱えて大笑いし始めた。

 

「えっ?ど、どうなさったの?月村さんと真田さんは?」

 

真っ白く石化した束と腹を抱えて大爆笑する真田にスターシアは訳が分からずにいた。

 

「「「「‥‥」」」」

 

フェイトたち管理局組は大方の事情を察したらしいが、口に出す=虎の尾を踏むような気がして、あまりの恐ろしさからか何も言えずにいた。

 

それは束の声となのはの声が似ている事も一因であった。

 

「ほっといて良いんだよ、スターシア。いい加減、あいつにも自分の歳を自覚してもらわないと」

 

守はスターシアに気にするなと言う。

 

「ふん、何さ!!真田くんだってサーシアちゃんから見たら『おじさま』じゃないか!!サーシアちゃん、あの強面の鉄仮面男に『おっじ(おじさま)』って言い放っちゃって!!」

 

束は真田も道連れにしようとサーシアをけしかけた。

 

 

「さて、そろそろ私も準備にとりかかるかな」

 

ある程度の時間を消費し、束も結婚式の準備の為に一旦アマテラスへと戻った。

 

束が戻ると時を同じくして、雪がやって来てスターシアにドレスの用意が出来たと伝え、スターシアは着替えに向かった。

 

(スターシアさんのウェディングドレス‥‥一体どんなドレスなんでしょう?)

 

管理局組が念話で会話をし、スターシアのウェディングドレス姿を想像する。

 

(まぁ、どんなドレスにせよ、きっと物凄く似合っていそう)

 

(そうですよね‥‥)

 

(はぁ~サーシアちゃんといい‥スターシアさんといい、良いなぁ~私も結婚したいし、可愛い赤ちゃんが欲しい‥‥皆さんもそう思いません?)

 

シルビアがフェイトたちに結婚話を振る。

 

(えっ?うん‥そうだね‥‥)

 

(でも、私‥相手が‥‥)

 

(わ、私も‥‥)

 

(ご、ごめん‥‥っていうか私自身も彼氏いないんだよね‥‥)

 

結婚話を振ったシルビア本人も地雷を踏んだ。

 

「古代、お前もそろそろ準備に入れ」

 

「あ、ああ」

 

守も着替えの為に真田と共に新郎控室へと向かった。

 

それからしばらくの後、雪が戻って来てスターシアの準備が整ったと知らせが来て、管理局組のメンバーはスターシアの控室へと向かう。

 

スターシアが居る控室のドアをノックして、

 

「失礼します。フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです」

 

「どうぞ」

 

中からスターシアの返答があり、一同は中に入る。

 

「お、お邪魔します‥‥」

 

「「「し、失礼します‥‥」」」

 

一礼して控室へ入室した四人は顔を上げて部屋の主がいる方を見た。

 

「「「「っ!?」」」」

 

極めてシンプルな白いドレスに身を包んだスターシアに一同は息を飲み込んだ。

 

(無駄に豪華にする必要はなかったわね)

 

(やっぱり、王族だから何を着ても気品があるわ‥‥)

 

(内から醸し出す雰囲気が違うから、シンプルなドレスがよく映えるんだ……)

 

(ヴィヴィオも成長したらこんな風になるのかな?)

 

スターシアが身に纏っているウェディングドレスは、これ以上はない程簡素なデザインのミルキーホワイトのドレスだったが、それがかえって良く着映えした。

 

「とても良くお似合いです。スターシアさん」

 

フェイトが代表してスターシアのドレスの感想を口にする。

 

そこへ、

 

「準備出来ましたか?」

 

束が来て、すぐに姿勢を正し、スターシアに向けて挙手の礼をとった。

 

(地球防衛軍の敬礼や挙動に比べると、管理局のそれは、いかにも緩くて遅い気がする‥‥)

 

敬礼一つにしても、治安維持組織と正規軍ではこうも違うのかとティアナは率直にそう思った。

 

束は普段の制服ではなく、式用の大礼服を身に纏い、胸には数々の略章や参戦章も付けていた。

 

「月村さん、今日はよろしくお願いします」

 

「こちらこそ。我が身に余る大役ですが、全力で務めましょう」

 

スターシアの挨拶に、軍人らしい口調で応えた束。

 

「‥‥えっと‥‥月村さん、もしかして緊張しています?」

 

神堂が束に尋ねる。

 

「うん‥‥軍や家柄で色んなパーティーとかには出ているけど、まさか結婚式の立会い人をするとは予想外だったよ。こういうのは沖田艦長や土方教官にこそやって欲しかったんだけどなぁ」

 

「いいじゃないですか。非公式とはいえ、地球防衛艦隊正式発足後、初めて結婚式を取り仕切った艦長になるんですから」

 

そこへ、すかさず雪が意見する。

 

「あの、地球では軍艦の艦長が結婚式の立会い人をする機会は多いのですか?」

 

シルビアが質問をすると、

 

「客船の船長ならそういう機会は多いだろうし、軍艦の艦長が部下の結婚式の司式をした事例も聞いたことはあるけど、非公式とはいえ、女王陛下の結婚式の立会い人というのは前代未聞にして空前絶後だろうなあ」

 

束がこれまでの経験則を答える。

 

「式は予定通り、あと一時間半後に行います。それでは」

 

式の開始時間を告げ、束は控室を後にした。

 

式場であるヤマトの作戦室では、技術班と主計科が総出で床、壁、天井に飾り付けがなされ、急拵えには見えない祭壇も設置された。

 

「ノリノリだな、皆」

 

「まあな」

 

スターシア同様、既に準備が出来たのだが手持ち無沙汰の新郎でタキシードを身に纏った守と真田がその一角にいた。

 

「お祭りはお祭りとして楽しまなければな。生き残った者たちには……」

 

「‥‥そうだな」

 

一瞬、真田の顔が曇った。

 

その意味するところを知っているから、守も無言で頷く。

 

守は相手がガミラスだけであったが、真田はガミラス、彗星帝国、そして今回イスカンダルを狙う未知の敵と三連戦で多くの宇宙戦士の死と向き合ってきたからだ。

 

それから一時間半後‥‥

 

時間通り、古代守とスターシア・イスカンダルの結婚式が始まった。

 

なお、この結婚式でフラワーガールをアリシアが務め、リングベアラーをティアナが務めた。

 

そして、フェイトは新郎の介添で守と共に入場し、スターシアの介添を務めたのは友人代表の真田が務めた。

 

「リニス、アリシアのあの姿をちゃんとカメラに収めるのよ」

 

「わ、分かっていますよ、プレシア」

 

参列席でプレシアはリニスにフラワーガールを務めるアリシアの勇姿をちゃんと収めるように指示を出し、自らもカメラを手にアリシアの写真ばかり撮っている。

 

これではどちらが式の主役なのか分からない。

 

「汝、古代 守よ。健やかなる時も病める時も、妻スターシアと一子サーシアを命尽きる時まで愛し慈しむ事を誓いますか?」

 

束は祭壇で守に誓いの言葉を問う。

 

「誓います‥‥」

 

古代の誓約に頷き、次いでスターシアに向き直る。

 

「汝、スターシア・イスカンダルよ。健やかなる時も健やかならざる時も、夫・守と一子サーシアを、命尽きる時まで愛し慈しむ事を誓いますか?」

 

「はい、誓います」

 

二人の背後にはサーシアを抱いた雪が立ち、後ろに置かれた急造席にはヤマトから古代、真田、太田、山崎ら第一艦橋メンバーに佐渡とミーくん、それにじゃんけんで各班から選ばれた数人。

 

アマテラスからもヤマト同様ディアーチェ、ギンガたち艦橋メンバーにプレシア、リニス以外にくじで選ばれたメンバー、アリゾナからは艦長のアイロをはじめとして艦橋メンバーが出席している。

 

流石にヤマト、アマテラス、アリゾナ全ての乗員はこのヤマトの作戦室には入らないので、出席者は限られる。

 

しかし、この式の様子はカメラでヤマト、アマテラス、アリゾナの各部署に中継されている。

 

(スターシアさん、本当に綺麗ですね‥‥)

 

(うん、本当‥‥)

 

(いいなぁ~)

 

(やっぱり女として結婚式には憧れちゃうな‥‥)

 

「では、指輪の交換を‥‥」

 

まず、守が指輪を手に取り、スターシアの左手薬指にはめる。

 

次いで、スターシアが些か慣れぬ手つきで指輪を手にし、守の左手薬指に通した。

 

リングベアラーを務めたティアナはその様子を間近で網膜に焼き付けるように見入っていた。

 

指輪交換が終わり、ティアナが下がると式場の雰囲気が微妙に変わる。

 

心なしか参列者の目つきが変わり緊張感が漂い始めた。

 

「そ、それでは、新郎新婦よ。誓いのキスを‥‥」

 

洋式の結婚式では最後にこの儀式がある。

 

地球の習慣・風俗に初めて触れるスターシアはともかく、守は皆から注がれる。

 

フェイトたち管理局組は、周囲が目を血走らせ、鼻息を荒くしている様に唖然とした。

 

ここで雪が抱いているサーシアが再び無邪気な波動砲を放った。

 

「チッチュ、チッチュ‥‥」

 

この一言で、緊迫しかかっていた式場の雰囲気は解けた。

 

(末恐ろしい娘だ。束を轟沈させ、この場の雰囲気をほぐすとは‥‥)

 

真田はサーシアの将来性に身震いする。

 

「ほら、娘さんからも言われているよ。さあ、早く」

 

束も祭壇から二人にキスを促す。

 

「…ああ」

 

スターシアは訳がわからずパチクリしていたが、守がベールを上げると状況を悟ったのか、眼を閉じた――。

 

そして、二人の唇は重なった‥‥




次回 結婚式後日談

再びリリカル世界のキャラを地球側につかせる予定なのですが誰がいいですか?戦闘機人らは確定しているのですが‥‥

  • Dr.スカリエッティ
  • エルトリア組
  • アインハルト&ヴィヴィオ友御一行様
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