元ネタは「日本の怖い夜」です。
時系列的にはイスカンダルが消滅して地球に帰還中の辺りです!
束たちがイスカンダルにて暗黒星団帝国相手にドンパチをしている頃‥‥
某日、星奈、箒、昴が通っている海聖小学校でとある噂が立った。
その噂と言うのが‥‥
「は?」
「えっ?」
「「蜘蛛女?」」
「うん、そう!!」
昴が自分のクラス内で持ちきりになっている都市伝説の話を星奈と箒の二人に教える。
「えっと‥‥確か随分昔に仮面ラ○ダーで、クモ男なんて怪人が居たと聞きますが‥‥?それかアメリカでスパ〇ダーマンと言う映画がありましたけど、その類ですか?」
星奈が忍のコレクションから以前に見た特撮番組から蜘蛛女が特撮番組に登場した怪人か蜘蛛女と言うその名前からアメリカの新作映画かと思い昴に尋ねる。
「違うよ、星姉、妖怪だよ。よ・う・か・い」
「妖怪?」
「昴、そんな妖怪なんてモノが存在する訳がないだろう」
星奈は首を傾げ、箒は妖怪の存在を否定する。
「でも、箒姉。実際に見たって言う人が何人も居るし、雑誌にも掲載されているんだよ。ほら‥‥」
昴は一冊の週刊雑誌を星奈と箒に見せる。
「雑誌?」
「それこそ、売り上げを伸ばそうとする雑誌社の策略じゃないのか?」
「良いから此処を見てよ」
「「‥‥」」
昴に言われて星奈と箒の二人はその雑誌を捲り、件の噂となっている蜘蛛女とやらの詳細が載っている記事を読んだ。
二人が読んだ雑誌には以下のような内容が書かれていた。
『怪奇!!蜘蛛女は実在するのか!?』
本誌はここ最近、起きている怪奇事件の犯人が蜘蛛女である事を確信しており、その事件の犯人である蜘蛛女についての情報を集めた。
最初の事件は深夜、残業帰りのOLが帰宅途中、何者かに後をつけられている感覚に襲われ、OLは急いで自宅のマンションへと帰った。
そして、恐る恐る窓の外を窺うと、其処には足が八本あり、四つん這いになって道をペタペタ歩き回っている女の人が居た。
それを見たOLはショックのあまり気を失い、気づいたら朝になっていたと言う。
蜘蛛女の特徴として、昼間は普通の人間だが、夕方ごろになると身体に変化が生じ、いつもお金を払わずに飲食店を飛び出していく目撃情報もある。
次の情報では、この事件での初の死者が出た。
被害者は深夜ビルの清掃をしていた清掃員で、ビルの清掃中に何者かに襲われ、翌日ミイラの様に干からびた状態で発見された。
またこの清掃員の他にもある大学のサークルメンバーの五人が飲み会を行い車で帰宅した所、とあるトンネルの出口付近で蹲る一人の女性を見つけた。
学生たちはその女性に対して不審に思いつつも、そのままその女性の横を通り過ぎた。
すると、その女性は急に起き上がった。
しかし、その姿は人間とは呼べず、四つん這いになっているその身体には八本の足があり、物凄い速さで学生たちが乗っている車を追いかけて来た。
運転手の学生はアクセルを吹かし、何とかその場から逃げようとするも、途中のカーブでハンドル操作を誤り、車はガードレールに衝突。
車に乗っていた五人の内、四人が死亡し、残る一人も一時は意識不明の重体となった。
事故から三日後、意識を取り戻したその学生は警察の聴取にて、トンネルの出口近くで化け物が追いかけて来たと証言するが、酒を飲んでいたため、幻覚でも見たのではないかと警察に思われた。
だが、運転していた学生は車の運転があったので飲み会では酒は飲んでいないと反論する。
しかし、事故を起こしたことによるパニック状態で記憶が混乱しているのだろうと判断され、警察は今回の事故を学生の単なる運転ミスで起きた交通事故としてこの件は片付けられた。
警察はこの事故を単なる交通事故と片付けたが、本誌の記者が学生に今回の事故について詳しく事情を聞こうとしたところ、この学生は突如行方不明となった。
生存者である学生が行方不明となり、この件も事故として処理されてしまった。
そもそも今回の犯人とされる蜘蛛女のルーツは昔から存在した。
大正時代、ある所に蜘蛛の大嫌いな一人の女性が居た。
その女性は家の中に蜘蛛が居ると、箒で叩き潰したり、マッチの火で炙り殺したりと家の中に居る蜘蛛を常に殺していた。
だが、昔から『朝の蜘蛛は殺してはいけない』と言う言い伝えがあるように、クモは家の中に居る害虫を食べる益虫として古来より重用されていた。
しかし蜘蛛嫌いのその女性にとってそれは関係なく、蜘蛛も害虫の一つでしかなかった。
そんなある夜、一匹の小さな蜘蛛が眠っている女性の耳の穴から体内へと入り込んだ。
すると、女性の身体に変化が生じ始めた。
体内に蜘蛛が入っただけではなく今まで殺してきた蜘蛛の呪いも同時に受け、女性の身体が蜘蛛と融合し手足は八本になり、口からは蜘蛛の糸を吐き出すようになり、彼女は妖怪・蜘蛛女となった。
この他にも江戸時代に鳥取県のとある峠道にこの世のモノとは思えない絶世の美女が現われ、道行く男の旅人に「天国は有ると思うかえ?行ってみたいと思うかえ?」と、尋ねて来た。
旅人はその女の不思議な色香に惑わされ、つい「はい」と答えてしまい、その女の人に手を引かれて山の奥へと連れて行かれ、行方知らずとなっていく‥‥
その噂を聞きつけた人形師が一計を思いつき、等身大のからくり人形を峠道に置いた。
すると、例の女が現われ人形に問いかけを始める。
しかし、相手は人形であり答える筈がない。
すると、生臭い臭いと共にその女の本性が浮き彫りとなった。
口元が耳まで裂け、体からは大きな蜘蛛の様な手足が飛び出て、八つの目が二列に並び、巨大な大蜘蛛の姿となり、人形に襲い掛かった。
それを見ていた人形師は火矢を何本も大蜘蛛に射掛けた。
大蜘蛛はこの世のモノとは思えない悲鳴を上げ、山奥へ逃げ込んだ。
人形師が追いかけると、大蜘蛛は住家で子供の蜘蛛達と共に焼け死んでいた。
近くには沢山の人骨が散らばっていたと言う。
「「‥‥」」
「ねぇ、どう?居ると思う?蜘蛛女」
星奈と箒が雑誌から目を話すと昴がキラキラと目を輝かせながら二人に蜘蛛女の存在について尋ねてくる。
「いや、どうみてもやらせ臭い内容だぞ」
「そうですね。生存者の学生が行方不明になってしまったのに何故事故の件について書かれているのか?そんな矛盾点もあります」
と、星奈と箒は雑誌の記事も蜘蛛女の存在も信じていない様子だった。
それから数日後‥‥
「ねぇ、ねぇ、箒姉、星姉」
「ん?なんだ?」
「なんでしょう?」
「これ、見て。蜘蛛女の続報が出たんだよ」
そう言って昴は二人に先日蜘蛛女に関する記事が書かれた雑誌の次号を見せる。
「昴、お前も懲りないな‥‥」
「そんな眉唾な記事を信じるなんて‥‥」
相変わらず箒と星奈は蜘蛛女の存在を信じていないが、昴は未だに信じているみたいだ。
二人は昴がしつこく蜘蛛女の事が書かれている雑誌を勧めてくるので読んでみた。
『警告!!次に蜘蛛女から狙われるのは貴方かもしれません』
蜘蛛女が狙う特徴をピックアップ!!
これで貴方も蜘蛛女から自分を守れる!!
まず、蜘蛛女の特徴を覚えておこう!!
蜘蛛女は襲う相手に糸を巻き付ける。
そして襲われた人は蜘蛛人間にされるか、殺されて餌にされるかのどちらかだ!!
特に二重瞼の人が狙われやすい。
そんな蜘蛛女に狙われるかもしれない貴方!!
蜘蛛女に襲われても助かる方法はこれだ!!
襲われそうになった時に 『鼈甲蜂』 と言う言葉を連呼すれば助かるぞ!!
『鼈甲蜂』は蜘蛛の天敵とされる蜂の一種で、その中でもオオベッコウバチはあの毒蜘蛛として有名なタランチュラでさえ襲って捕食してしまう凄い蜂なのだ。
(なんか昔、都市伝説で流行った口裂け女に対して『ポマード』と言えば助かるみたいな感じですね‥‥)
蜘蛛女から確かる方法を見た星奈は口裂け女の撃退方法と似ていると思った。
それからまた数日後‥‥
海鳴市の隣町にて、『蜘蛛女を見た』 『蜘蛛女に攫われて行方不明者が出た』
そんな噂が海聖小学校で広まった。
箒と星奈が蜘蛛女を信じていない事に昴は蜘蛛女を信じて貰おうと思い、二人を連れて隣町へとやって来た。
「はぁ~何で居もしない妖怪を探しにわざわざ隣町まで来なければならんのだ?」
「まぁ、まぁ、箒。ここは視点を変えて三人でショッピングをしに来たと思えば‥‥」
不機嫌そうに愚痴る箒とそんな彼女を宥める星奈。
やがて、三人は隣町にある一軒のファミリーレストランへと入る。
「それで、どうしてファミレスに?」
「お腹すいたのか?昴」
「違うよ。このファミレスに蜘蛛女が出たって目撃情報があったんだよ。ほら‥‥」
昴が二人に例の雑誌を見せる。
「ああ、確か夕方になると蜘蛛女に変身してお金を払わずに飲食店を飛び出していく‥‥ってやつでしたっけ?」
「うん。特徴じゃあ、服もカバンもなんか古臭い感じの人で靴の底も擦り切れかかっていて、ボロボロのストッキングを穿いた妙な人で競馬新聞も読んでいるみたいなんだって」
昴が小声で二人に人間時の蜘蛛女の特徴を口にする。
「それは普通のおばさんなんじゃないか?」
「私もそう思います」
人間時の蜘蛛女とされる人物像を聞き箒と星奈はどこにでもいるおばさんと言う印象を受ける。
「それだけじゃなくて、ファミレスだとキノコのパスタとコーンポタージュを注文して、その料理にラー油をドボドボかけて食べるらしいんだって」
「うわぁ~確かにそれは人間の食べ物じゃないな‥‥」
「想像するだけで喉が燃えそうですね」
「うん。流石に私でも無理‥‥」
ラー油まみれのパスタやスープを想像して顔を歪める三人であった。
すると、
「ん?あ、あれ‥‥」
箒が小声であるテーブル席の女性を指さす。
「ん?」
「えっ?」
星奈と昴が指をさす方向を見ると、そこには一人の女性が座って居り、食事をしていた。
その女性の格好は服もカバンもなんか古臭い感じで靴の底も擦り切れかかっており、ストッキングもボロボロ‥‥
テーブルには自前で持参したらしきラー油の瓶と競馬新聞が置かれていた。
しかもラー油の量は常人では考えられないぐらいの量を料理にかけている。
それにその女性が食べていると言う料理がキノコのパスタにコーンポタージュだ。
「ね、ねぇ‥‥あの人‥‥」
「く、蜘蛛女の特徴に似ているんですけど‥‥」
「や、やっぱり居たのか?蜘蛛女‥‥」
テーブル席に居た女性はまさに蜘蛛女の特徴と一致していた。
だが、女性は食事が終わるとラー油の瓶と競馬新聞をカバンに入れてテーブルの上の伝票を掴むとレジへと行き、
「領収書ちょうだい。名前は木下でお願い」
「木下様ですね?かしこまりました」
ちゃんとお金を払い領収書を貰って帰って行った。
「あれ?ちゃんとお金を支払っていきましたね」
「ああ‥‥」
「蜘蛛女じゃなかったみたいだね」
ファミリーレストランでの目撃情報はガセだった様だ。
恐らくそのボロボロな服装と変わった食べ方をしていた為、面白おかしくネタにされたのだろう。
次に三人は町外れのトンネル付近に来た。
「昴、此処がその‥学生たちが蜘蛛女を見たとされるトンネルなのか?」
箒が昴に尋ねると、
「うーん‥わかんない」
「えっ?」
昴の回答に箒は唖然とする。
「此処が目撃地点じゃあなかったのか!?」
「あの話に出て来たトンネルの場所は詳しく書かれていなかったから‥‥」
「もう、だから言っただろう。蜘蛛女なんて雑誌社が企画したでっち上げだと!!」
「うぅ‥‥」
眼前にあるトンネルが蜘蛛女とは何の関係もないトンネルである可能性が高く、反対に蜘蛛女が出たとされるトンネルの場所が詳しく雑誌に書かれていない事から箒はやはり蜘蛛女は雑誌社が企画した都市伝説‥つまり作り話だと強調する。
箒の指摘にぐぅの音が出ない昴。
「‥‥二人とも‥もう遅いですからそろそろ帰りましょう」
そんな中、星奈は箒と昴に帰宅を促す。
星奈が言う通り、太陽は既に西へ傾き始めており、今から海鳴に戻っても家に着く頃には薄暗くなっているだろう。
「そうだな。結局蜘蛛女なんて居なかった訳だし‥昴もそれでいいか?」
「う、うん」
元々妖怪なんて居る訳もなく星奈が言うように三人で隣町までお出かけしたのだと思い箒と昴は踵を返す。
「‥‥」
そんな中、星奈だけはトンネルの出入り口近くをジッと見つめていた。
「星姉~」
「星奈、帰るぞ~!!」
「え、ええ‥今行きます」
昴と箒に声をかけられて星奈は慌てて二人の後を追った。
次回 蜘蛛女 後編
水星の魔女を見て重力戦線の兵器やオリジンの艦艇を出して話を書いてみようかと思ったのですが面白いでしょうか?
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面白そう!
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短編でもいいから書いてみて。
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どっちでも
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ダメ