内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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前回で海戦が始まるとしたのですが不審な来客の方が長くなったので次回に…


第百二話 第二次土星沖海戦前・不審な来客

第十一番惑星周辺宙域に配置していた無人観測衛星によって捕捉されたガトランティス残党軍の大艦隊による第二次地球圏侵攻‥‥。

 

雷王作戦以降、彼らに動きが無かったので、地球連邦政府、防衛軍としては彼らが人知れずに太陽系から撤退してくれれば良かったのだが、彼らはまだ地球を諦めていなかった。

 

ガトランティス残党軍の第二次地球圏の侵攻‥この事態を受けて地球連邦政府は防衛軍総司令官の土方に迎撃命令を下す。

 

命令を受けた土方総司令はすべての基地・艦隊の即応可能な艦艇を総動員して土星沖を再びガトランティスとの決戦場に定めた。

 

この命令によって束が率いる内惑星艦隊でも直ぐに動員する事ができる艦艇を総動員して束とディアーチェも翌日に控えていた管理局との通信会談をヤマトの技師長兼副長の真田に任せて、侵攻するガトランティスを迎え撃つために土星圏へ出撃した。

 

 

その頃、太陽系外縁部を防衛軍の一個艦隊が航行していた。

 

この艦隊は内惑星艦隊に所属する第一外周警戒艦隊であった。

 

第一外周警戒艦隊 旗艦 アナンケ級指揮型戦艦ユリシーズ

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「まさかガトランティス艦隊が再び来襲するとはなぁ?」

 

「まったくしつこい連中ですね」

 

「全くだ。既に国家元首も本土も失ったのだから、さっさと太陽系から出て行けばいいものを‥‥」

 

「彼らにもおそらく面子があるのでしょう」

 

「その面子とやらで、無駄死を強いられる兵や民間人があまりにも不憫だな」

 

「そうですね」

 

アナンケ級指揮型戦艦の生産艦の中でも最新型に近いユリシーズの艦橋では副長とレーダー長が雑談していた。

 

内惑星艦隊の中でもユリシーズは話題に富んだ艦であり人員も常識的な人材で運行されているが艦に襲来する不運でネタにされている艦でもあるのでこのような雑談も容認されているのだ。

 

「お前ら何、無駄話をしているんだ!?」

 

「「すっ、すみません!!」」

 

とはいえ艦長のニルソン中佐は生真面目な面もあるので準戦闘態勢である第2種戦闘配備が敷かれているのに雑談をしているのは容認できず二人を叱りつけた。

 

「‥全く、いくら何でもこんな時期に来なくてもいいだろうに‥‥空気が読めん奴らだ‥‥」

 

そう言う二ルソン中佐も今回のガトランティス残党軍の侵攻に対して愚痴っていた。

 

なにせ今回の外縁部哨戒任務に当たっては本来の艦艇数以上の艦が動員されていたので臨時指揮官の二ルソン中佐はストレスが溜まっていたのだ。

 

現在の第一外周警戒艦隊の艦隊編成は以下のとおりである。

 

 

・艦隊旗艦 ユリシーズ

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・マゼラン級戦艦 オクチャブルスカヤ・レボルチャ

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・伊吹型防空重巡洋艦 クラースヌィイ・クルィーム、インディアナポリス

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・サラミス級巡洋艦 プエブロ・ シャーロット ・ミネアポリス

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・秋月型駆逐艦 フレッチャー・ジャイアット ・バーニー ・ルース

 

 

・レパント級ミサイルフリゲート艦 エストシン ・サミュエル・B・ロバーツ ・イングラハム

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・ホワイトアーチャー級巡洋艦 ホワイトアーチャーⅠ・ホワイトアーチャーⅡ (ホワイト艦隊からの援軍)

【挿絵表示】

 

というかなりの陣容である。

 

 

この艦隊の本来の任務は担当宙域の哨戒だけであったが、管理局との交信の件で万が一にも管理局艦が領海侵犯してくるかもしれないと言う懸念から外周警戒を任務とするすべての艦隊は訓練課程の艦を含めて大増員されている関係で各艦隊指揮官の負担がかなり増えていたのだ。

 

地球圏へ管理局艦が来て問題を起こされても困るし、現在の太陽系はガトランティスの残党軍がまだ掃討されていない状況下‥そんな中、管理局艦が太陽系にちょっかいを出しに来てガトランティスの残党に見つかり撃沈されても地球連邦政府・防衛軍は責任を持てないが、管理局側はきっと地球側に責任があると騒ぐに違いない。

 

こうした管理局との無用なトラブルを避けるために防衛軍は通信ポッドが設置されている宙域まで哨戒任務の艦隊を派遣していたのだ。

 

二ルソン中佐がイラつきつつも時空管理局との交信のための通信ポットがある宙域まで進出しガトランティス艦隊、管理局艦への警戒を行い始めていたその時‥‥

 

「か、艦長!前方に展開中のホワイトアーチャーⅠ・Ⅱより次元転移反応ありとの報告です!!」

 

先行していたホワイトアーチャーⅠ・Ⅱが次元転移反応を捉えた。

 

「なに!?急速後退しろ!!全艦後退!」

 

突如として艦隊前方にワープアウト反応のような反応が確認されたと報告が入り、二ルソン中佐はホワイトアーチャーⅠ・Ⅱを含めて艦隊を急ぎ後退させた。

 

やがて次元転移反応が収まり、その宙域に現れたのは‥‥

 

 

「あ、あれはっ!?」

 

「本部より報告にあった時空管理局の次元航行艦では?」

 

管理局強硬派の意向を受けて密かに太陽系への侵入を企んで通信ポット近くに転移してきた次元航行艦『クライスラー』であった。

 

 

次元航行艦『クライスラー』

時空管理局 次元航行艦『クライスラー』 ブリッジ

 

「次元転移終了しました」

 

「よし、これより通信ポットに記録されているログから第二の九十七管理外世界の座標を調べるぞ」

 

「はっ!」

 

次元転移を終えたばかりのクライスラーのブリッジでは早速通信ポットのログを調べ、ヤマト世界の地球の座標を得ようとしていたが、この時のクライスラーのブリッジ内はおろか艦全体の空気は冷え切っていた。

 

なにせこの任務に張り切っているのは強硬派に属する艦長と副長、あとは何人かの“海”所属の高ランク魔導士のみであり、その他の局員たちとしてはこんな危険かつ外交問題になりかねない任務は心底ごめんだったのだ。

 

それにこの任務が例え成功したとしてもその功績の恩恵を受けることが出来るのは艦の幹部局員、高ランクの魔導士局員のみ‥‥

 

クライスラーが出航前に今回のこの任務の危険性を進言した先任士官の局員は艦長から謹慎処分が下されて艦を降ろされた。

 

この任務に対してやる気の無い乗員たちにとっては艦を降ろされた先任士官が羨ましかった。

 

自分たちも敢えて艦長に不服を申し立てて艦を降ろしてもらおうと思ったのだが、不服を言う前に出航準備が整いクライスラーは出航してしまったので渋々従っているのが現状なのだ。

 

ただ、この時に次元転移直後で最新のステルスシステムが作動していなかった事、

 

そしてレーダーが通常空間用に変更している事がこの艦の運命を‥‥強硬派艦長らの命運を分けることになった。

 

 

第一外周警戒艦隊旗艦 アナンケ級指揮型戦艦『ユリシーズ』 艦橋

 

「副長。近々管理局の艦が来るというのは月村司令から聞いているか?」

 

「い、いいえ。明日管理局との交信を予定していたそうですが、管理局の艦が来るとは一言も‥‥」

 

来訪予定がない管理局の艦が来た事でユリシーズの艦橋内の空気はざわめく。

 

「と言うことは何か?あの艦は図々しくも外交交渉の最中である上に敵軍の侵攻中に堂々と他国の領海を侵犯しようとしているということか?それとも偶然この宙域に迷い込んで来た艦か‥‥」

 

「ま、まぁ状況だけを見ればそうなるかと‥‥」

 

「よし、臨検を掛ける」

 

「えっ?艦長、いきなり臨検ですか!?」

 

「迷い込んで来たにしろ、明確な目的があるにしろ、事情を聞く必要がある。臨検隊を直ぐに用意させろ!」

 

「はっ!!臨検隊よ~い!!コスモシーガル三番機降ろし方!」

 

「ホワイトアーチャーⅠ・ホワイトアーチャーⅡに停船命令を出すように指示を」

 

「はい!!」

 

こうしてユリシーズより指示を受けたホワイトアーチャーⅠ Ⅱは警戒しつつクライスラーに急速接近していった。

 

 

時空管理局 次元航行艦『クライスラー』 ブリッジ

 

『こちらは地球防衛軍ホワイト艦隊所属のホワイトアーチャーⅠである。前方の次元航行艦に告げる。直ちに停船し、本艦隊の指示に従え!!』

 

「か、艦長。接近中の艦より停船命令がきております」

 

「なに!?」

 

クライスラーの通信士がホワイトアーチャーⅠから停船命令が来たことを報告する。

 

クライスラー艦長である彼はひどく驚いた。

 

何故第二の九十七管理外世界の艦隊がこんなところにいる?

 

あの艦はなんだ?

 

何故ここまで航行できる?

 

魔法技術もない蛮族が何故?

 

そして、どうして魔法を使える我々魔導士に対して偉そうに命令する?

 

そんな疑問がクライスラーの艦長の脳裏をグルグルと過るが、普通の主権国家からすれば領海侵犯されたら臨検するのは当然のことであるし、そもそも他国の軍艦が所属も告げずに領海を航行するのは国際法違反なのだ。

 

しかし、管理局にとって宇宙全てが管理局の領海であると思い込んでいるので、こうして他の勢力から‥‥魔法も使えない蛮族に命令される事に対して著しくプライドを傷つけられたと判断する局員も居る。

 

このクライスラーの艦長もそういうタイプであった。

 

ホワイトアーチャーⅠからの停船命令を受け艦長はとち狂った指示を出す。

 

「アルカンシェルの用意をしろ!」

 

「「「はい!?」」」

 

なんとこの艦長は接近してくるホワイトアーチャーⅠ Ⅱに対してアルカンシェルを撃ち込む命令を下したのだ。

 

この指示にクライスラーの乗員たちは驚愕した。

 

普通に臨検をしてきた艦に対しての発砲命令。

 

ただでさえ射撃レーダーを照射するだけでも国際問題に発展する案件なのにそれ以上ヤバイ発砲命令を即座に下してきたのだ。

 

「ちょ、ちょっと待ってください艦長!発砲はさすがにまずいですって!!」

 

「うるさい!低レベルの局員は俺の指示を黙って聞いていればいいんだ!!」

 

「なっ!?」

 

流石にこれは国際問題モノだと考えに至った戦術長がたしなめたが彼女は魔導ランクがCであったために無視されてしまった。 

 

そして彼女の制止も無意味と言わんばかりにアルカンシェルの発射準備をしてしまった。

 

 

ホワイト艦隊派遣艦『ホワイトアーチャーⅠ』 艦橋

 

 

「艦長、管理局艦に高エネルギー反応があります!!」

 

「またワープしてこの宙域から離脱しようとしているのか?」

 

「いえ、先ほどの次元転移反応とは異なります!!恐らく波動砲のような決戦兵器のエネルギーを充填しているものと思われます!!」

 

「ホワイトアーチャーⅡに通達!!小ワープをして回避しつつ管理局艦の至近距離へワープアウト!!ワープアウトと同時に管理局艦の武装と機関を攻撃し、相手の動きと攻撃手段を奪う!!」

 

「了解!!」

 

クライスラーのアルカンシェルの発射準備を見たホワイトアーチャーⅠ Ⅱは小ワープの準備を始める。

 

そしてクライスラーからホワイトアーチャーⅠ Ⅱに向けてアルカンシェルが発射されるも二隻は小ワープによって簡単によけられてしまう。

 

 

時空管理局 次元航行艦『クライスラー』 ブリッジ

 

「喰らえ!!蛮族共が!!」

 

クライスラーからアルカンシェルがホワイトアーチャーⅠとホワイトアーチャーⅡに向かってアルカンシェルが発射される。

 

しかし、アルカンシェルがホワイトアーチャーⅠとホワイトアーチャーⅡに命中する前に二隻の艦影が歪んだと思うと消えてしまった。

 

「な、なに!?消えただと!?」

 

「接近中の武装艦、次元転移したものと思われます!!」

 

「おのれぇ~蛮族共がぁ‥‥どこだ!?連中は何処に行った!?」

 

クライスラーの艦長がホワイトアーチャーⅠとホワイトアーチャーⅡの行方をオペレーターに尋ねた直後、

 

ドガァン!!ドガァン!!

 

「「「「うわぁああ!?」」」」」

 

クライスラーを凄まじい振動が襲い掛かる。

 

「な、なんだ!?」

 

「じ、次元転移した武装艦が本艦の至近距離に‥‥!!」

 

「武装艦からの攻撃を受け、機関部被弾!!機関停止!!」

 

「アルカンシェルにも被弾!!アルカンシェル発射不能!!」

 

「なっ‥‥!?」

 

ホワイトアーチャーⅠとホワイトアーチャーⅡの正確無比な砲撃でクライスラーの機関部とアルカンシェルの砲座部分は破壊され、動くことも抵抗する術も失った。

 

まさに達磨状態となってしまったクライスラーはあっけなくホワイトアーチャーⅠとホワイトアーチャーⅡに拿捕されることになった。

 

拿捕されたクライスラーはホワイトアーチャーⅠとホワイトアーチャーⅡは牽引ビームにより、この宙域から一番近い宇宙要塞、ソロモンへと護送されることになった。

 

 

土星沖 内惑星艦隊臨時総旗艦『アマテラス』 艦橋

 

土星沖に即応できた内惑星艦隊所属の艦とともに主力艦隊に合流し、連合艦隊を編成していた束だったが‥‥

 

「月村司令、地球に居るヤマトの真田技術長から通信が来ていますけど…?」

 

「へ?ま、まぁとりあえずつないで?」

 

「はい」

 

ギンガが真田から通信が来た事を報告し、通信回路を開く。

 

「真田くんから通信‥一体何だろう?」

 

「まぁ、彼奴のことだからくだらない内容ではないかと思うが‥‥」

 

そうして通信回路が開かれアマテラスのパネルに真田の姿が映し出された。

 

『束、ちょっといいか?』

 

「ん?どったの?真田くん、あれ?トチローくんまで‥地球で何かあったの?」

 

真田の後ろにはトチローの姿もあったので、地球で何かあったのかと思った。

 

『実はな。さっき内惑星艦隊に所属している第一外周警戒艦隊から緊急連絡が来たんだ。なんでも管理局の次元航行艦を拿捕したそうなんだ』

 

「「「「「はい?」」」」」

 

真田の言葉にアマテラスの艦橋メンバーは唖然とする。

 

「えっ?ちょっ、それマジ!?誤報や保護とかじゃなくて、拿捕!?」

 

『ああ。間違いない』

 

「い、一体どうしてそんな事に‥‥?」

 

一体何があって管理局の艦を防衛軍が拿捕する事に至ったのかを束は真田に尋ねた。

 

『なんでも哨戒中に例の通信ポッドがある宙域に転移してきたらしくてな?それで事情を尋ねようと臨検しようとしたら、連中警告も無しにいきなり砲撃を叩き込んできて応戦したホワイトアーチャーⅠとホワイトアーチャーⅡが機関部と陽電子砲らしき武装を破壊して動けなくして拿捕したんだと』

 

「それで、連中はいったい何しに来たのだ?通信なら明日のはずだぞ?」

 

ディアーチェが管理局の来訪目的を尋ねる。

 

「もしかして工作員を送り込もうとして来たのかもしれないね」

 

「「「「「あ、ありえそう…」」」」」

 

(一体“海”は何をしているの?)

 

(これじゃあ、フェイトさんたちの立場を危うくするって思わなかったの!?)

 

束の予測にアマテラス艦橋内に居たほとんどのメンバーは同意し、元管理局員で“陸”所属だったギンガは“海”の上層部の行動に呆れつつ内心頭を抱えていた。

 

もし、侵略目的で次元航行艦を派遣したとしたら、フェイトたちにスパイ疑惑がかけられて軍刑務所に収監されてしまう可能性だってある。

 

そうなれば“海”は自らの手で管理局のエースを担う優秀な局員を失う行動をしたのと同じだ。

 

しかもフェイトは養子とは言え、現役の“海”の統括官の養女であり、義兄も現役の提督である。

 

管理局内部が荒れるのは当然の事で、“海”がフェイトたちの身柄を奪い返す為に大部隊を派遣する可能性もある。

 

そうなれば、管理局と防衛軍との間で武力衝突も考えられる。

 

地球はただでさえ、ガトランティスの残党がまだ太陽系内に居るのにこの上管理局との二正面作戦を展開しなければならないし、管理局側も防衛軍の宇宙艦艇相手に満足に戦えるのかと言う疑問もある。

 

『まぁ、拿捕した管理局艦はソロモン要塞に護送して乗員たちは来訪目的について尋問するらしいから、管理局艦についてはソロモンの連中に任せておけ。お前らはしっかりと地球を守り切ってくれよ。それと明日の管理局との事も任せてくれ。それじゃあな、生きて戻って来いよ』

 

『まぁ、そう言うことだ。戦闘前に悪かったな』

 

「大丈夫、大丈夫~♪教えてくれてありがとね~、じゃあね~」

 

こうして真田たちとの通信が終了した直後に、

 

「総旗艦アンドロメダより通信です!!『敵艦隊接近!全艦戦闘配置!』」

 

“海”の行動に呆れつつもアンドロメダからの通信が来るとギンガも直ぐに切り替えて目の前の戦いに集中する事にした。

 

「了解!総員第一種戦闘配置!」

 

「「「「「了解!!!」」」」

 

こうして土星圏にて第二次ガトランティス戦役が始まった。




次回 第二次土星沖海戦勃発

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