内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百八話 進展?

此処で時系列は少し時間を巻き戻して、宇宙空間にてガトランティス残党軍が地球に対して第二次地球侵攻を行い、防衛軍がその迎撃している間に地球ではヤマトの副長兼技師長の真田が束の代理として管理局との交信を行った日まで遡る。

 

そして、視点はもう一つの地球側から管理局側へと移る。

 

真田から管理局の艦が無断で地球連邦の領海内へと侵入し、臨検にやって来た防衛軍の宇宙艦船に向かってアルカンシェルを発砲した後に、防衛軍の宇宙艦艇に無様にも返り討ちに遭い、艦と乗員たちは防衛軍側に拿捕された事実を真田から聞かされたクロノは、自身の母親であり、統括官と言う役職に就いている上官であるリンディの下へと急いで向かった。

 

 

管理局 本局 リンディの執務室

 

バンっ!!

 

「かあさ‥いえ、統括官!!」

 

クロノは勢いよくリンディの執務室の扉を開け、駆け足でリンディの下へと向かう。

 

「どうしたの?クロノ。そんなに血相を変えて‥‥それと扉はもう少し静かに開けなさい」

 

「そんな悠長なことを言っている場合じゃありません!!先ほど、防衛軍との間で交信をしたのですが‥‥」

 

リンディは勢いよく扉を開けて来たクロノを窘めるが、そのクロノ本人はそんな些末な事を意にもかえさずにリンディに詰め寄る。

 

「一体どうしたの?フェイトたちの身に何かあったの?」

 

そんなクロノの様子を見てリンディも何かあったのだと察する。

 

真っ先に脳裏を過ったのはもう一つの地球に居るフェイトたちの身に何かあったのかだ。

 

「いえ、フェイトたちの事ではありませんが、かなり重大な問題です」

 

「?」

 

クロノはリンディに先ほど、防衛軍から知らされた管理局の艦‥『クライスラー』が起こした愚行を伝える。

 

「それは本当なの?クロノ‥‥」

 

「はい。映像と乗員たちの顔写真も確認しました。乗員の中には僕が知っている人物も含まれていたので、防衛軍側が主張している事は間違いないでしょう」

 

「‥‥」

 

クロノから聞かされた『クライスラー』の愚行の事実にリンディは思わず絶句してしまう。

 

「はぁ~‥‥まったく何を考えているのよ‥‥」

 

そして、再起動をしたリンディは『クライスラー』が行った愚行に対してクロノ同様、呆れる。

 

「向こうの地球にはフェイトたちが居るのに‥‥それで、フェイトたちに何か影響は?」

 

リンディはもう一つの地球にいるフェイトたちについてクロノに尋ねる。

 

『クライスラー』が行った愚行で同じ管理局に所属するフェイトたちにも何らかの影響が出ているかもしれないからだ。

 

地球連邦政府・防衛軍からスパイ容疑で身柄を拘束されているかもしれないとクロノ同様、リンディもフェイトたちの身を案じた。

 

「フェイトたちに関しては領海侵犯の件とは無関係なので、影響はないそうですし、『クライスラー』の一件についてもフェイトたちには知らせないとの事です」

 

フェイトたちが『クライスラー』の一件を知れば、責任感が強いフェイトの事なので、かなり気にするだろうし、ティアナたちもいたたまれない気持ちになるだろう。

 

「そうなの?良かったわ」

 

防衛軍側の配慮とフェイトたちに影響がない事にリンディはホッと胸をなでおろす。

 

「ええ‥‥しかし‥‥」

 

「そうね。管理局は地球連邦政府、そして防衛軍からの信用を完全に無くしたわね」

 

「はい」

 

『クライスラー』の領海侵犯の件にフェイトたちは無関係であっても、組織として時空管理局は地球連邦政府及び防衛軍からの信用を失うのは十分な事件であった。

 

フェイトたちがミッドへ戻れば、地球連邦政府は管理局とは絶対に関係を持とうとはせずにフェードアウトをするだろう。

 

「それで、『クライスラー』の乗員たちに関して、地球連邦政府と防衛軍は何と言っているの?」

 

次にリンディはクロノに『クライスラー』の乗員たちの処遇を尋ねる。

 

この時、リンディはフェイトたちがミッドに戻る際に『クライスラー』の乗員たちも一緒にミッドへと戻り、此方の法律で処罰してくれと地球連邦政府及び防衛軍が提案してくれていることを願っていた。

 

地球連邦政府との関係が途切れれば、こちらが『クライスラー』の乗員たちをどう処罰したかなんて、地球連邦政府は確認のしようがないので、適当に停職と減給あたりの処罰で終わらせるつもりであった。

 

だが、クロノからはリンディが期待する言葉とは180度真逆な返答がきた。

 

「それについてですが、彼らは地球連邦政府の領海を侵犯し、拿捕されたのですから、向こうの法律で処罰してもらうつもりです」

 

「えっ!?」

 

クロノの言葉にリンディは啞然とする。

 

「ちょっと待ちなさい、クロノ‥‥管理局の局員を地球連邦政府の法律で処罰させるつもりなの!?」

 

「はい。何か間違っていますか?第一、管理局と地球連邦政府は国交も犯罪者引渡し条約も結んでいません。フェイトたちは救助者なので、身柄を引き渡してもらえるでしょうけど、『クライスラー』の乗員たちは地球連邦政府の法律を破ったのです。そんな彼らを我々管理局が引き渡せと言われても、向こうから鼻で笑われるだけです」

 

クロノはリンディに対して平然と『クライスラー』の乗員たちを見捨てる事を伝える。

 

「そ、それでも‥‥」

 

しかし、リンディは諦めきれない様で、

 

「今後の防衛軍との交渉で何とかならないかしら?」

 

「それは難しいと思います。ただの領海侵犯なら兎も角、『クライスラー』は防衛軍の艦に発砲までしています。それもレーザーではなく、アルカンシェルを‥‥僕はもう一つの地球に居るフェイトたちの環境に影響がないよう、罪を犯した彼らの身柄の代わりにフェイトたちの安全を保障してもらえるようにしたまでです」

 

「‥‥」

 

「それよりも統括官‥‥この件で『クライスラー』をもう一つの地球へ派遣するように命じた黒幕を見つけ、何らかの処分を下さなければ、統括官自身も監督不行きで何かしらの責任を負う事になると思いますが‥‥?」

 

クロノとしては『クライスラー』の乗員たちもそうだが、その『クライスラー』をもう一つの地球へ派遣させた者も同罪であると思っており、そんなバカな命令を下した者にもそれなりの責任を取らせる気満々でであった。

 

自分は『クライスラー』の愚行に関してはフェイトたち同様、関係ないが、自分が所属している組織の愚行を聞かされてあの交信の場では物凄く恥ずかしかった。

 

その屈辱を晴らしたいと言う思いがあったからだ。

 

母親であり、上官であるリンディに対して皮肉めいた忠告を言ったのも彼女が『クライスラー』の乗員たちを諦めきれない態度に出たので、それを挫く思いもあった。

 

「え、ええ‥‥そうね。早速、今回の『クライスラー』の件に関係する局員たちを急ぎ集めて、話し合わないとね」

 

リンディは『クライスラー』を派遣させることが出来る権力がある者‥‥本局の艦船運用に関する部署に所属する局員‥それも将官クラスの局員の仕業だろうと察し、彼らを集める事にした。

 

 

そして翌日‥‥

 

本局の船舶運用部門および作戦本部、管制司令部等の本局にて次元航行艦の運用に携わるほぼすべての部署の幹部が招集され、さらに“陸”と“空”の幹部も参加の上、会議が始まった。

 

勿論クロノも関係者の一人として出席した。

 

「さて、まずは何故、『クライスラー』を第二の地球に派遣したかについてですが、それについて説明をいただけますか?」

 

リンディがやや目つきを鋭くしながら尋ねる。

 

「はっ、ご説明いたします!」

 

そう言って立ち上がったのは“海”の作戦本部に所属する強硬派の幹部だった。

 

「まず派遣した理由としてはあの世界の調査であります」

 

「待ってくれ!たしかあの世界については三提督の指示で不用意にかかわるなとご指示があったはずであろう!!」

 

と“陸”の幹部からのツッコミに対して、

 

「あのような野蛮かつ危険な世界を野放しにしておくことの方が言語道断です!!なればこそ今後の判断の材料となる情報の収集は当然のことでしょう!?」

 

返答した“海”の強硬派幹部は当然と言わんばかりな理由を述べる。

 

「それを一主権国家に事前の通知なしに領海を侵犯してまで行うことかと問うておるんだ!!それにあの世界にはハラオウン執務官以下四名ほどの局員が保護されているんだぞ!情報なら彼女たちが帰還してきた時に彼女たちから聞けばよかろうが!?」

 

そんな返答に対して“陸”の幹部は不快感をあらわにしながら言うと、

 

「ふん、“陸”の方々はずいぶんと腰抜けなのですな。それにあのような世界は我ら管理局によってこそ管理されるべきです。それに我らの艦を拿捕するなど、我々管理局へケンカを売っているとしか考えられません。即時地球連邦政府及び防衛軍に対して拿捕した艦の返還と局員を不法に拘束した人物の引き渡しを要求するべきであると考えます!」

 

この主張には“海”と“空”の強硬派が大いに賛成の意を示したが、“陸”と“海”の穏健派にとっては頭が痛いどころの話ではない。

 

「貴官はふざけているのか!?相手は主権を持つ法治国家なんだぞ!?一治安組織である管理局の要求に応じるわけがないだろう!?それに『クライスラー』の方からアルカンシェルを発砲した映像もある!!どう見ても非があるのは管理局側ではないか!?」

 

「ふん、そんな映像は改竄された物でしょう。あれだけの技術を持っている世界なのですから、それぐらい簡単に作ることは出来る筈です!!そんな改竄映像で我々管理局を嵌めようとする浅ましい蛮族共ではありませんか!?」

 

「そもそも時空の海(宇宙)の全ては我ら管理局の領域であり、彼らの活動は海賊船の取り締まりと同じなのです!!」

 

強硬派の局員たちは鼻息を荒くしてもう一つの地球の批判と宇宙は全て管理局のモノであると大言壮語を吐く。

 

「相手は主権国家の軍艦だと何度言ったらわかる!!そもそも、艦船技術に関しても管理局と防衛軍とでは、雲泥の差があるんだぞ!!貴官らの身勝手な行動で、あちらに保護されているハラオウン執務官らの身の安全さえも危険にさらしたんだぞ!?それに『クライスラー』が万が一撃沈されていたら、貴官らはご家族にどう弁明する気だったのだ!?」

 

クロノも強硬派局員の意見に対してブチ切れて、反論する。

 

「兎に角、防衛軍側との交信に関して、一任されている小官が既に『クライスラー』の乗員たちについての処遇については、かの世界に委ねております。よって『クライスラー』と乗員たちがミッドに戻って来る事はないでしょう」

 

「ハラオウン提督!!何を勝手な!!」

 

「それこそ、『クライスラー』の乗員たちの家族になんと説明する気か!?」

 

「事実を申せばいいではありませんか!?『私が貴方の家族をもう一つの地球へ送り込んだ結果、貴方の家族は領海侵犯を犯し、拿捕されてもう二度とミッドに戻って来る事はありません』と‥‥」

 

「貴官はふざけているのか!?」

 

「ふざけているのは貴方たちの方だろうがぁ!!」

 

「はぁぁぁ~‥‥」

 

(一体いつから管理局はこれほど傲慢になったのかしら‥‥?)

 

クロノと強硬派局員の白熱した押し問答に流石のリンディも疲れ果てていた。

 

元々、ロストロギアの回収や管理世界への編入など、強硬姿勢な部分があった管理局であったが、JS事件の解決が管理局の傲慢さに拍車をかけてしまったのかもしれない。

 

しかし、地球のことわざに、『井の中の蛙大海を知らず』 と言うことわざがあるように管理局は無限に広がる宇宙の中で、大海を知らないカエルだったのかもしれなかった。

 

その後も会議は白熱し続け、事態の収拾がつかなくなりそうになったので、三提督の法務顧問官であるレオーネ・フィルスが知らせを聞いてやって来て白熱する会議に収拾を齎した。

 

事態の説明を聞いたレオーネはクロノの言う通り、『クライスラー』の乗員たちについての処遇をもう一つの地球へと任せ、今後不用意にもう一つの地球への干渉を固く禁じた。

 

『クライスラー』の乗員たちの家族に対しても派遣した者たちへ説明をするように言うと、強硬派局員は渋々と言った様子で後日説明会を開くことになった。

 

勿論、その説明会は大荒れになったのは言うまでもなく、家族がこぞって『クライスラー』の件をマスコミへリークしてミッドは管理局への不満が上がることになった。

 

 

ここで時系列を一旦戻し一気に一週間後に進もう。

 

地球では各地の造船所にて完成式典が行われていた。

 

イギリスでは量産性と汎用性に優れた護衛戦艦である、プリンス・オブ・ウェールズ級護衛戦艦(POW級護衛戦艦)が

 

【挿絵表示】

 

独逸ではヤマト型の威風を感じさせつつ大航海時代の帆船のような艦尾を持ったビスマルク級護衛戦艦が

 

【挿絵表示】

 

それぞれ欧州管区の派閥の威信をかけて建造され、次期防衛軍の主力を担えるようにとの思いを乗せつつ宇宙に上っていった。

 

そしてその式典と同時刻、防衛軍総司令部にある造船本部では北米・ユーラシア(ロシア)*1・中国(チャイナ)・中央アジア・欧州(イギリス・フランス・ドイツ)管区の造船部門と管区艦隊運用部門の長らが集まって会議を行っていた。

 

「では、これにて各管区の異議はないものと判断しますがよろしいですね?」

 

「ああ‥我が北米管区は、異存はない」

 

「我がユーラシア管区も異議はありません。造船の資金がちゃんと確保できるのでしたらまったく問題ありません」

 

「中国・中央アジア管区も同じく異存はありません」

 

「我らが欧州もです」

 

「結構、ではこれをもって第二次護衛戦艦計画…超戦艦建造計画と次期護衛艦建造計画を決定いたします!」

 

というなんとも夢のある計画が決定されていた。

 

この超戦艦建造計画によって十一月の悲劇の影響で建造中断されていたアリゾナ級護衛戦艦のケンタッキーとイリノイの建造が再開され、ジャブロー基地の特別ドックにて半ば放置状態であったモンタナ級戦艦の建造が再開された。

 

ユーラシア管区ではキーロフ級護衛戦艦が四隻の追加建造が許可された。

 

EUではイギリス・フランスにて超戦艦の建造計画が開始され、ドイツにて新型護衛艦の計画が開始された。

 

そして第一次護衛戦艦建造計画に参加を見送った中国管区も新型の護衛戦艦二隻の建造を目指して計画をスタートさせた。

 

この動きは極東管区にて進められているアンドロメダ改級超弩級戦略指揮戦艦とその簡易型に対抗したものでもあるが、先日の第二次ガトランティス戦役にてただでさえ深刻な艦艇不足が露呈したので何が何でも艦艇数を増やしたいという軍部の切実な思いがこもったものであったのだ。

 

各国は新たに強力な戦艦建造を進めるが、極東管区では戦艦の他に艦隊の中枢を担う小型艦についても話を聞いた束によるゴリ押しで重雷装駆逐艦の建造を決定した。

 

なお、もう少し先の事になるが、今回プリンス・オブ・ウェールズ級の建造にこぎ着けたイギリスであるが、アメリカのアリゾナ級やモンタナ級、日本のアンドロメダ改級超弩級戦略指揮戦艦とその簡易型戦艦に比べると生産性を重視したプリンス・オブ・ウェールズ級は力不足感が否めないと言う意見がイギリス国内に出てしまいイギリスは更なる新型艦の建造の為の設計と資金確保へ奔走する事になる。

*1
一か月ほど前に管区再整理が行われロシア管区からユーラシア管区に名称が変更された




次回 衝動

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