未だに彗星帝国残党軍の脅威が拭い去られていない地球‥‥
防衛軍としては早急にこの脅威を取り除かなければならず、宇宙艦艇の造船所では新造艦、そして鹵獲した彗星帝国の宇宙艦艇の改良作業を急ピッチで行い、第十一番惑星奪還作戦の為に月~火星圏、火星圏~木星圏では新兵たちの訓練が行われ、土星圏では再び彗星帝国の残党が地球へ侵攻して来るのではないかと厳重な監視と警戒態勢が敷かれていた。
防衛軍が軍の再建と第十一番惑星の奪還の為の作戦立案、訓練を行っている某日‥‥
横須賀にある宇宙艦艇造船所では、ある特殊艦艇が就役しようとしていた。
ドックには防衛軍の軍人や地球連邦政府、ドックの関係者たちが集まっていた。
「次元潜航艦か‥‥まさか防衛軍がそんな特殊艦艇を保有できるとはね‥‥」
「うむ、ガミラスとの戦いからみると考えられないな」
束も内惑星艦隊総司令官として今日の進水式に呼ばれており、ディアーチェも束の副官として同じく今日の進水式に参加していた。
「これもワープ機関同様、ガミラスからの恩恵なのだろうが、そのガミラスとかつて戦っていた我らにしてみれば複雑な思いだ」
ディアーチェが本日、進水する特殊艦艇‥‥防衛軍初の次元潜航艦について自分が抱いた印象を口にする。
「まぁ、そのガミラスも彗星帝国からの技術交換で手に入れた技術みたいだけどね」
彗星帝国戦役時、ガミラスの総統デスラーは彗星帝国に救助された後、ヤマト打倒の為に彗星帝国と同盟を結び、両国は技術交換を行った。
ガミラス側は彗星帝国に瞬間物質転送機の技術を送って、その結果彗星帝国はメダルーサ級殲滅型重戦艦の建造にこぎ着けることが出来た。
一方、彗星帝国はガミラス側に高射輪胴砲塔と潜宙艦の技術を提供した。
ガミラスは暗黒星団帝国がマゼラン星雲に襲来した後、ガミラス星を失い現在は第二の故郷となる星を探して、宇宙を放浪する身となっているが、第二の故郷を発見したあかつきには高射輪胴砲塔を搭載した新型艦やガミラス製の次元潜航艦を建造するだろう。
「そう言えば、フェイトたちが乗って来た管理局の艦‥‥性能的には我々よりも劣るらしいが、艦種に『次元』がつくのならば、今回の次元潜航艦の建造にあたって何か参考になったのか?」
「うん。真田君やトチロー君が解析してそのデータを造艦部に提出したみたい。やはり、次元潜航艦となると通常の宇宙艦艇と比べて、異次元空間で万が一事故が起きたら乗員の救助は絶望的だからね。この世に『完璧』『絶対』は存在しないけど、人の命が掛かっているからこそ、造るには『完璧』 『絶対』に近づけなければならないんだ」
地球は第二次イスカンダル遠征にてガミラスとの間で技術交換を行い、その結果ガミラスが保有していた次元潜航艦の設計図を受け取り、そこから独自に次元潜航艦を建造した。
地球型の次元潜航艦の建造にあたってはガミラスからの設計図の他に真田、トチローたち造船局や科学技術局の技師や研究者たちが解析をした時空管理局の次元航行艦のデータも使用されていた。
この次元航行艦のデータが、後々にガミラスが建造するであろう次元潜航艦と地球の次元潜航艦の違いになる事だろう。
もっともその現実は時空管理局にとっては悪夢であり脅威に違いない。
「そう言えば忍さんのコレクションの中で進水したばかりの原子力潜水艦が独立国を宣言する内容の漫画があったんだけど、まさか次元潜航艦の艦長がそんなことする訳がないよね?」
「よさぬか、縁起が悪い」
進水式前に束とディアーチェが次元潜行艦について会話をしている中、その次元潜航艦の乗員‥艦長となる西住みほは緊張していた。
何しろ防衛軍では初の次元潜航艦なのだから‥‥
しかも束が指摘したように万が一、異次元での潜航中に何らかの事故が起きればそれは自分を始めとする全乗員の死に繋がる。
次元潜航艦ではなく、水の中に潜る潜水艦でもこれまでの歴史の中で多くの事故が起きて、大勢の乗員が命を落としている。
自分の些細なミスでそのような事故が起きる可能性は十分あり、みほとしてはそれが大きなプレッシャーとなっていた。
そんな緊張しているみほの背後から、声をかける人物が居た。
「西住殿!!」
みほに声をかけてきたのは、くせ毛が特徴的なシフォンショートボブの女性であった。
「えっ?ああ、秋山さん」
「また西住殿の艦とご一緒できるとは思ってもみませでした!!光栄であります!!」
「うん。私も秋山さんが一緒で心強いよ」
「不肖、秋山優花里!!西住殿からそう言われ、感激であります!!」
「ちょっとオーバーだよ‥‥」
みほと秋山の付き合いは宇宙艦隊勤務からで、みほが磯風型改宇宙突撃駆逐艦TF198の艇長を務めていた時、秋山は副長を務めていた。
今回、みほが次元潜航艦の艦長になり、秋山も引き続きみほの補佐役として副長を拝命した。
「いやぁ~それにしても我が防衛軍も次元潜航艦‥星の海を潜る艦を建造できるとは‥‥ガミラスとの戦いの時には想像もできませんでした」
秋山も偶然であるがディアーチェと同じ思いを抱いていた。
「うん、そうだね。でも、未知なる分野であるからこそ、今後の発展の機会でもあるけれど、その分どんな事故が起きるのか分からないリスクがある発展途上の分野だよ‥‥正直、私には荷が重いよ」
「いえ、西住殿ならば大丈夫ですよ。私も精一杯西住殿をフォローさせていただきます!!」
「ありがとう。秋山さん、期待しているね」
「はい!!」
「進水式後に直ぐ出航するみたいだから早速ブリーフィングを行うから、乗員をブリーフィングルームに集めて」
「了解であります!!」
式典前にみほは乗員たちを集め、顔合わせを含めたブリーフィングを行う。
ブリーフィングルームには各部署の長が集まる。
「皆さん、初めまして‥艦長の西住みほです」
「副長の秋山優花里であります」
「私は通信長兼聴音手の武部沙織。よろしく」
「わたくしは水雷長を拝命いたしました五十鈴華です」
「航海長‥‥冷泉麻子」
「機関長の中嶋麗羅です」
各部の長との顔合わせと自己紹介をする。
「あれ?すみません、艦長」
沙織が何かに気づきみほに質問する。
「なんでしょう?」
「スペック表を見ると、今回の次元潜航艦には艦載機が搭載できるみたいなんですが、艦載機のパイロットの人は居ないんですか?」
みほが艦長を務める次元潜航艦には二機の艦載機が搭載可能であり、当然この後に控えている任務を考慮すると搭載すべき機体である。
しかし、現状その機体はまだ搭載されていなければ、その機体を操るパイロットの姿も見えない。
「艦載機に関しては、月基地で搭載予定になっています」
「なるほど‥‥それで、パイロットってどんな人なんですか!?やっぱりカッコイイ男の人とかですか?」
沙織がみほに食いつくようにパイロットについて質問する。
「沙織‥ガッツき過ぎだ‥‥」
そんな沙織に対して冷泉は窘めるように言う。
「何よ!?それじゃあ麻子は気にならないの?」
「全然‥‥わたしはわたしの役目を果たすだけだ」
「もぉ~麻子は相変わらず異性に興味無さ過ぎ!!」
「お前が有り過ぎるだけだ。正直引くレベルだぞ」
「むきー!!」
沙織と冷泉のやり取りからこの二人もみほや秋山の様に関係性は長い様だ。
「えっと、それで、パイロットについてなんだけど、私の方でもまだ情報は入っていなくて‥‥月基地に行けば分かると思うよ」
「まぁ、当然だな」
みほの返答に冷泉は当たり前の回答であるかのように呟いた。
やがて進水式の時間となり、乗員たちを始めとする関係者たちは会場へと赴く。
「へぇ~次元潜航艦っていう艦種だからまさかと思っていたけど、艦影も潜水艦そっくりな艦影なんだ‥‥」
ドックには星の海よりも水の海の方がしっくりくるような艦影を持つ次元潜航艦が一隻鎮座していた。
整列しながらチラッとその艦影を見た束はその感想を口にする。
恐らく初めて次元潜航艦を見た関係者たちも同じ印象を持っただろう。
やがて、軍楽隊が『君が代』を演奏する。
今回就役する次元潜航艦の艦籍が日本だからだ。
今後、戦艦と同じく各国でも次元潜航艦の建造は進められるだろう。
そして藤堂長官が壇上の上に立ち、
「本艦をSS伊400と命名する」
藤堂が艦名を宣言すると艦橋脇にある布が取り外される。
そこには『SSイ400』と記されていた。
このSSとは、SPACE SUBMARINE の略語である。
そしてこの伊400という艦名は第二次世界大戦時、アメリカのワシントンD.C.やニューヨークへの攻撃を意図して建造された世界初の潜水空母ともいうべき艦である。
とはいえ史実では完成が遅すぎたのもあって戦局の悪化により目標が変更され、パナマ運河攻撃を命じられ出航するも訓練に明け暮れつつ進んでいたら、ナチス・ドイツが降伏して大西洋の艦隊が太平洋にさっさと移動してしまい攻撃の意義がなくなったためにアメリカ艦隊の集結拠点でもあるウルシー泊地へ搭載機晴嵐を特攻させるように命じられ、姉妹艦伊401とともに出撃したが日本が降伏したために米軍に接収されてしまうという戦果を挙げられず、戦後は技術調査の後、ソ連に伊400の構造や技術が渡るのを恐れたアメリカがハワイ沖で自沈処分した不運な艦である伊400からつけられたのだ。
とはいえこの艦にはかつての同名艦が望んでいたであろう戦果を挙げることを願ってその名がつけられている。
拍手と共にくす玉が割られ、軍楽隊は『艦隊行進曲』を演奏する。
制服組の軍人たちは敬礼をして、政府関係者は胸に手を当て防衛軍初となる次元潜航艦の就役を祝福する。
そして地球連邦政府大統領と藤堂がみほたち次元潜航艦の乗員たちに祝辞を述べ、次にみほが乗員たちへ訓示を行うといよいよ出航となる。
「波動エンジン、異常なし。補助エンジンエネルギー充填80%」
「副長、出航準備整いました」
「出航、錨をあげろ」
上甲板には手空きの乗員たちが整列し、式典参加者たちに敬礼をしてみほは艦橋甲板に立ち敬礼をしているので出航の指揮は一時副長の秋山が執っていた。
錨が上がり波動エンジンが唸りを上げ始める。
「微速前進0.5」
「微速前進0.5」
やがて伊400はゆっくりと動き出しドックを出る。
制服組の軍人たちは敬礼をして伊400を見送る。
ドックを出た後、艦外に居た乗員たちは艦内へと戻り、秋山は指揮権をみほに返す。
「出航水路へ進入」
「波動エンジン内へエネルギー注入」
「補助エンジン、第二戦速へ‥‥」
波動エンジンのエネルギーが充填されるまでは通常の宇宙艦艇同様、海を航行する伊400。
「波動エンジン内エネルギー上昇、エネルギー充填90%」
「補助エンジン最大戦速へ‥‥」
「波動エンジン内エネルギー充填100%」
「現在、補助エンジンの出力最大」
「エネルギー充填120%、フライホイール始動」
「波動エンジン点火十秒前‥‥九‥‥八‥‥七‥‥六‥‥五‥‥四‥‥三‥‥ニ‥‥一‥‥接続」
「点火」
「伊400浮上」
伊400は海面を浮上して空へと舞い上がる。
潜水艦にそっくりな艦影の伊400が空を飛ぶのは、なかなかシュールな光景であるが、乗員たちは真剣に機器を操作していた。
「大気圏脱出‥‥」
「波動エンジン、大気圏外出力へ‥‥」
「艦長、それで針路は月で良いんだな?」
冷泉が操舵桿を操作しながらみほに行く先を訊ねる。
「うん。このまま月基地へ向かって。そこで搭載される艦載機とパイロットの人を乗せるから」
「了解」
宇宙へ上がった伊400は搭載する艦載機、コスモセイランとそのパイロットとの合流を目指して月基地へと向かう。
一方、その頃月基地では‥‥
「先ほど、地球より連絡が入った。君たちが乗艦する特殊艦、次元潜航艦SS伊400は地球を出て間もなく、月基地に到着する予定だ。防衛軍初となる次元潜航艦で色々と通常の艦艇とは異なる部分も多々あると思うが、頑張ってくれ」
「「承知しました」」
月基地の司令官の前にはコスモセイランのパイロット二人が居り、司令官の訓示に敬礼をする。
「それで、次元潜航艦の艦長はどんな方なんですか?」
パイロットの一人が司令官に合流する予定の次元潜航艦の艦長について質問する。
「艦長はこの人物だ」
司令官が伊400の艦長‥みほの顔写真付のプロフィール画像を見せる。
(えっ!?みほじゃない!?みほが次元潜航艦の艦長!?)
みほの顔を見てパイロットの一人は声や顔に出さないが、この後合流する次元潜航艦の艦長がみほである事に驚いていた。
やがて、その伊400が月基地の管制宙域へとやって来た。
「艦長、まもなく月基地の管制宙域に入る」
「月基地から通信です」
沙織が月基地からの管制通信をスピーカーへ切り替える。
「こちら地球防衛軍月面基地、接近中の艦船に告ぐ、所属と艦名、コードを送信せよ」
「こちら地球防衛軍次元潜航艦、SS伊400。艦籍コードは‥‥」
みほは月基地へ艦名とコードを伝える。
「認証しました。ようこそ月基地へ‥‥貴艦は第44ドックへ着陸されたし」
「了解。第44ドックへ着陸します」
伊400は月基地から誘導されたドックへと着陸した。
ドックへと着陸した伊400は早速、搭載予定の艦載機、コスモセイランの搭載作業が行われる。
整備員たちは月基地の整備員たちと共にコスモセイランを伊400に搭載する。
宇宙に出れば自分たちがコスモセイランを出撃、格納する作業を行うのだから‥‥
「あれが、コスモセイラン‥‥コスモタイガーやコスモパイソンとは全然機影が違いますね」
「まぁ、次元潜航艦に搭載する艦載機と言う事でこの機体も新型の特殊機体だからね」
秋山が搭載作業を見学しながらコスモセイランについての感想を口にする。
「西住艦長、こちらがコスモセイランのパイロットです」
整備員がコスモセイランのパイロットをみほの下に案内してきた。
「あっ!!」
「‥‥」
みほはコスモセイランのパイロットの一人を見て目を見開き、顔を綻ばせ、
「エリカさん!!」
パイロットの一人、逸見エリカに抱き着いた。
次回 慣熟訓練
銀河鉄道物語の小説を一話試し書きしたのですが読みたいですか?
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