内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百三話 第十一番惑星奪還

SS伊400による第十一番惑星宙域の強行偵察より数週間後、地球とガトランティス残党との戦いに終止符を打つべく地球防衛軍は宇宙艦船の主要艦艇の大半を動員する一大奪還作戦を立案した。

 

その作戦名は『天十一号作戦』。

 

 

「うーん‥天十一号作戦‥‥かぁ~何か縁起悪いなぁ~」

 

束は作戦名が書かれた作戦書を見ながら今回の作戦名について愚痴をこぼす。

 

「そう言うな」

 

束はこの作戦名にげんなりしていたがディアーチェがなんとか宥めようとしていた。

 

「いや、でもさぁ~いくらなんでもこの作戦名はないんじゃない?‥‥遠回しに『生きて帰るな』、『ヤマトは沈め』って言ってんじゃないの?あの北米管区の軍人」

 

そう、この作戦名を決めたのは北米管区の高級士官であり、米国第一主義者でもあったのだ。

 

それなのでアメリカの栄光を汚すであろう極東管区のヤマトには是非とも今回の作戦で沈んでもらいたいというあくどい思いからかつて第二次世界大戦の折、戦艦大和が沈んだ坊ノ岬沖海戦の際の日本側の作戦名『天一号作戦』を参考にして作戦名を考えたのだ。

 

なお余談ではあるが、この発表後その士官はその意図を見抜いた同僚・上官にボコボコにされた。

 

「そうならん為に軍は根こそぎ艦船を動員するんであろうが、おまけに進水式さえまともに済んどらん新造艦まで動員しておるのだぞ?今回の作戦は絶対に失敗は許されんぞ」

 

「まぁね~」

 

そう、防衛軍は‥‥いや、地球連邦政府としては準戦時下状態とは言えさっさとこの戦時体制を終わらせて民間の復興と宇宙開拓に全力を尽くしたいのだ。

 

未だに第十一番惑星に居座り、占領地を複数有するアンドロメダ銀河方面から増援を呼び込み続けているガトランティス残党の臨時政府と思しき組織に対して不可侵条約なりなんなりを結ばせて太陽系から追い出すためにこの奪還作戦には建造が完了し、式典の日程待ちだった出来立てほやほやな新造艦や解体処分待ちの旧式艦や後方支援型の補助艦まで動員させるようにとの意気込みである。

 

なお、前回の侵攻の件もあったので、地球本土を丸裸状態にしておく訳にもいかず、本土防衛のためにホワイト艦隊は地球圏に残ることになっている。

 

おまけにこの作戦に先立って先日強行偵察で成果をあげたSS伊400の他にも北米管区より完成したばかりの次元潜行艦、『SSアーチャーフィッシュ』『SSガードフィッシュ』 

 

欧州管区ドイツ軍区から『SS U-511』『SS U-25』

 

欧州管区イタリア軍区『SSルイージ・トレッリ』も動員され、艦隊進行方向の哨戒と露払いの為に次々と出撃していた。

 

さらにイギリス軍区所属の次元潜航艦が亜空間内で擱座するという事故*1によって急ぎ建造された千早級次元潜航艦救難艦も動員されていた。

 

 

・千早級次元潜航艦救難艦

 

【挿絵表示】

 

武装

 

・20.3㎝連装陽電子衝撃砲×1

・ミサイル・魚雷発射管多数

 

次元潜航艦の乗員救助を行う特務艦。

 

潜航艦救助のために次元救難艇を数隻常備している。

 

さらに艦首には鹵獲したメダルーサ級の転送装置を解析し、ヤマトの七色星団におけるドメル戦法の戦闘データを参考にしたうえでジャブロー基地兵器工廠が開発に成功した艦載機転送装置が設置されており、万が一の場合に対処できる。

 

自衛用にコスモタイガーⅡを五機搭載している。

 

 

おまけに造船所にて九割がた完成していた次期内惑星系艦隊総旗艦『建御雷』をも動員するのだというのだ。

 

【挿絵表示】

 

此処までの戦力を投入しての失敗は決して許されない。

 

「ところでさ、管理局の動向はどうなのかな?」

 

束はディアーチェに管理局の動向についての意見を求める。

 

地球の未来をかけた大事な戦いを控えている今、第三者の乱入はなるべく避けたい。

 

むしろ管理局がしゃしゃり出てきてもガトランティスの残党か防衛軍の流れ弾にでも命中すれば管理局の艦なんてあっという間に轟沈するだろう。

 

その件で管理局が防衛軍・地球連邦政府にたいしてクレームを入れられても困る。

 

「さてなぁ、今のところは妙な動きはなさそうだがな‥‥あっ、そういえば今度の通信の際に我にそっくりな者とフェイトの同僚が顔を出すと言っておったぞ?」

 

「へぇ~に親しい面子と会えるからフェイトちゃんたちも喜ぶかもね」

 

(ディアーチェにそっくりってことは八神はやてでフェイトちゃんの同僚となると高町なのはやヴィヴィオと会うことになるのか‥‥)

 

(生の八神はやてに高町なのはたちと画面越しとは言え出会えるのは嬉しいんだけど、その反面、面倒なことにならなきゃいいけど‥‥)

 

と束は次回の管理局との交信に対して不安を抱えつつも作戦に備えて、準備に取り掛かった。

 

 

 

数日後‥‥

 

 

冥王星宙域には多くの防衛軍の宇宙艦艇が集結していた。

 

その中にひときわ目立つ艦がいた。

 

簡易型指揮戦略戦艦アンドロメダ改級「武御雷」

 

 

武御雷 艦橋

 

「いや~新造艦の座席ってのはいいね~」

 

「こらレヴィ!真面目にやらんか阿呆!!」

 

レヴィ戦術長は新造艦の新品の座席や装置にウキウキであったがディアーチェにどやされていた。

 

「それにしてもこの艦の性能は『凄まじい』の一言ですよ」

 

砲術長の朝田もやや興奮気味で武御雷の性能を褒める。

 

「主砲は50センチ四連装砲、副砲はアンドロメダ級と同じ40センチ三連装砲、おまけにその他にも多数の武装、これで簡易型って言うんですから建造工程八割がたが終わっている次期連合艦隊総旗艦は一体どんな性能なんだか‥‥」

 

「まぁそこら辺は軍事機密だからね~」

 

「月村司令!作戦総司令部から連絡!『作戦開始まであと十分』とのことです!」

 

そこへ、ギンガが総司令部からの指示を伝える。

 

「了解!全艦戦闘配置!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

さて、ここで現在の第十一番惑星の状況について説明しよう。

 

そもそも第十一番惑星には元々守備隊として空間騎兵隊一個連隊が駐屯し、防衛艦隊として磯風改型突撃宇宙駆逐艦とレパント級ミサイルフリゲート、バラクーダ級砲艦等がサラミス級巡洋艦一隻を旗艦として駐留していた関係上宇宙軍港・陸上基地施設や開拓のために居住区を建造中だったのもあって艦隊や軍事勢力・難民が住まうには打って付けだったために白色彗星本星の崩壊から難を逃れた艦隊や彗星帝国難民が占領したままだった第十一番惑星に拠点を築いたのもやむなしといえなくはないだろう。

 

とはいえ戦力はそこそこあるもののまさか地球軍が艦艇を根こそぎかき集めて大兵力で攻め込んで来るとは想定外であり、ガトランティス残党軍司令部では意見が真っ二つに割れていた。

 

「徹底抗戦だ!!そうでなくては大帝や地球との戦いで散って行った英霊たちに顔向けができんであろう!!」

 

「そうだ!!あんな野蛮人共に負けるなんて栄光ある彗星帝国軍人とていあってはならない!!」

 

と、地球との徹底抗戦を主張する者たちと

 

「貴様のそのような個人的忠誠心で命からがら避難してきた一般市民を道連れにする気か!?そもそも地球との戦力差は明らかだ!!ここは交渉で地球との停戦を‥‥」

 

市民にこれ以上の犠牲を強いるのは無体なので、此処は屈辱に耐えて、地球との間に停戦交渉を提案する者と分かれた。

 

「そのようなことをしてもどうせ我らを根絶やしにするとか言ってくるのが目に見えとるわ!!アンドロメダ銀河の植民地から戦力の増強を願えば地球との戦力差は縮まるであろうがぁ!!」

 

アンドロメダ銀河に駐屯するガトランティスの宇宙軍を全てこの太陽系に集結させれば勝てると思い込んでいる者も居た。

 

「到着するまでどれほどかかると思っているのだ!?それにあっちはあっちで面倒な事態になっているのだぞ!!」

 

そう、ガトランティスの植民地であったアンドロメダ銀河では現在ガトランティスからの独立や惑星の奪還を目指すレジスタンスたちによって艦を奪われて惑星の支配圏をいくつか失ったり、艦隊の中から海賊となって好きにやると言って一個艦隊がまるまる出奔するという醜態を晒しており、銀河系の太陽系にまで貴重な艦隊を回す余裕がなくなってきているのだ。

 

「はぁ~‥‥一体どうすれば‥‥」

 

「た、大変です!!地球艦隊による総攻撃が始まりました!!」

 

徹底抗戦か?

 

それとも交渉か?

 

未だに結論が出ないまま、防衛軍の総攻撃が開始された。

 

「「「「なっ!!??」」」」

 

地球側の動きにガトランティス残党の首脳部は絶句する。

 

「ええい!こうなっては仕方がない!応戦だ!市民もいるのだということを忘れるな!」

 

こうして第十一番惑星奪還を目指す地球艦隊と復讐に燃えつつも避難民の安全に気を配って戦闘を行わなければならないガトランティス残党軍との戦闘が始まった。

 

 

まず交戦を開始したのは防衛軍外惑星系艦隊旗艦ドレッドノート級戦艦 ハードラックであった。

 

「敵に情けは無用!!撃って、撃って、撃ちまくれ!!」

 

「イエッサー!!」

 

この艦の乗員は訓練が終わったばかりの新米で構成されていたが威勢は良かった‥‥そう、威勢だけは‥‥

 

「月村司令!外惑星系艦隊旗艦『ハードラック』が艦橋部および前部第一・第二主砲塔に直撃を受けて大破!!」

 

「「はぁ!?」」

 

味方戦艦の被害に束とディアーチェは思わず素っ頓狂な声を同時にあげる。

 

不運(ハードラック)の名に恥じぬちょい役っぷりであった。

 

「初っ端から何をやっているのさ!?」

 

「彼奴等め!!貴重な戦力である戦艦を早々にリタイヤさせおって‥‥」

 

再起動した束とディアーチェはハードラックの乗員たちの愚行にキレる。

 

さて、ここで現在の地球艦隊・・・いや内惑星系艦隊の中でも指折りの幸運艦がこの戦闘中に起こした珍事ついて話そう。

 

そう、あのユリシーズである。

 

この艦もしっかりこの天十一号作戦に動員されていたがこの艦は幸運に恵まれつつも時折不運に見舞われることで有名な艦なのだがよりにもよって今回の戦闘で不運が発動してしまった。

 

アナンケ級指揮型戦艦ユリシーズ 船体下部 廊下

 

「うわ!?くっせー!!」

 

その廊下には大量の茶色の水が発生していた。

 

「えいくそ!なんだってまたオムシスの汚物処理タンクの部屋の真横に直撃した挙句、タンクが破裂して中身が廊下に漏れる事態が再発するかいな!!」ザブザブ

 

「そんなの敵に言えって!」ザブザブ

 

おかげで応急修理班はめちゃくちゃ臭い廊下を船外服を着て現場まで歩く羽目になったがそれでも臭かったのだ。

 

「くそっ、ヘルメットを着用しているのに臭う‥‥」ザブザブ

 

「こんな所で死にたくない!!!」ザブザブ

 

「全くね!!」ザブザブ

 

「くっそーーーーーーー!!絶対に生き残ってやるーーーーーーーーー!!!」

 

「そこぉ!!『クソ』と言う言葉を使うな!!」

 

結局数十分で穴は塞げたが結局、‘ウン‘に関係する話に尽きないユリシーズなのであった。

 

 

そんなこんなありつつも元々根こそぎ艦を動員した防衛軍に数の有利があったのもあって全体としての戦況は防衛軍有利に傾いていった。

 

中には波動機関への改修工事が済んでいなかった磯風型宇宙突撃駆逐艦でカラクルム級を討ち取る猛者もいた。

 

結局ガトランティス側の防衛戦は三十分程度しか持たず、空間騎兵隊・内惑星系艦隊陸戦隊による上陸作戦が開始された。

 

「これ以上の抗戦は無理だ‥‥すでに同胞が傷ついているし、勝敗は決した‥‥」

 

これ以上の犠牲を出さぬために、ガトランティス残党軍は防衛軍に降伏した。

 

その後、終戦交渉の結果、太陽系からの全面撤退と艦船、避難民を残すことも認めず、撤退するまで監視するという条件つきでガトランティスとの間に講和が成立した。

 

これが後の歴史に『ガトランティス戦役』 『一年戦争』と呼ばれた地球とガトランティスとの間に起きた戦争は終戦となった。

*1
SS伊166により必死の救助作業によって死者は出なかった




次回 久々の再会

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