地球に再び管理世界‥ミッドチルダからの漂流者として高町ヴィヴィオとアインハルト・ストラトスがくるという事態が発生した。
これはあまりにも予想外で、かなりぶっ飛んだ状況であったが、春藍を旗艦とする第七艦隊と内惑星系艦隊特別選抜演習艦隊は予定通りに出港した。
主な目的は新型波動エンジン試験と艦の慣熟訓練も兼ねた超長距離航海演習であったが、裏の目的として、束は前世の知識から地球へ暗黒星団帝国が侵攻して来る事を知っていたので、地球側の戦力を出来るだけ温存しておきたいと言う目的があった。
「両舷前進十二速~」
「艦隊は木星ガニメデ基地を通過します!」
内惑星系艦隊旗艦である武御雷の艦橋では訓練に向けて大忙しであった。
「えっと、まずは土星沖で補給を受けてその後にワープを敢行。んでもってオールトの雲を抜けてしばらく艦隊陣形を組んでの航海をして超長距離ワープを行って最終的に大犬座α星・シリウス恒星系宙域で大規模艦隊戦闘行動演習を実行すると‥‥」
束は今後の演習日程の確認と補給計画、補給項目を確認している。
「まったく、おまえがこれほどの大艦隊を組まなければもう少し楽になったのだぞ?」
ただ、その量はあまりにも膨大だったので、副官であるディアーチェも手伝っている。
(う~ん‥‥やっぱり、ディアーチェから疑われているなぁ~。まぁ、事情を知らない人から見るとどう見ても今回の演習に参加している艦の数は異常だ)
(藤堂長官や山南司令の協力が無ければ絶対に実現しなかった)
(でも、マジで説明したらややこしいことになるからなぁ‥‥ (-_-;) )
艦隊編成の立案をした束本人もこの大艦隊の補給やら指揮やらに苦労しており、すでに演習前にも関わらず、ヘトヘトなのだが束としては暗黒星団帝国による地球侵攻が予測できている以上、下手に有力な艦艇を地球に残してむざむざ全滅させる気はなかったのだ。
(本音を言うと艦よりも人材をこれ以上失う訳にはいかないんだけど‥‥どうもうまくはいかないな‥‥)
(出来れば、各惑星基地の人にも避難を促したいところだけど、私が暗黒星団帝国の侵攻を進言したところで現時点では信じてくれないだろうからな‥‥)
暗黒星団帝国が地球へ侵攻してくる際、ハイペロン爆弾の影響で冥王星基地、各惑星の衛星基地、火星基地は全滅する事が予測される。
束としては彼らを救いたい所があったが、それはどうしても叶わない。
ガミラスの時も彗星帝国の時もそうだった。
なまじ、前世の記憶を持っているとこうした場面で葛藤を覚えて辛い。
だからこそ、救える命は一人でも救いたいのだ。
この演習艦隊の他にも束は他にもいろいろと手を回していた。
欧州(EU)管区のドイツ軍区のビスマルク級とユーラシア管区のキーロフ級の残存艦、北米管区のアリゾナ級の残存艦といった各国の独自艦をすべてジャブロー要塞のドックに無理やり入渠させ、無人艦を除いたすべての有人艦には極秘命令書を渡していた。
この命令書の内容としては『万が一地球が占領されるようなことがあればシリウス恒星系、プロキオン恒星系、火星・木星間にある宇宙要塞アクシズに集結し、臥薪嘗胆して時を待つように』としていた。
この極秘命令書は副官のディアーチェにすら秘密にしており、束としては結構苦心していた。
一方のディアーチェも最近の束の動向を不審に感じており、束がこっそり渡していた極秘命令書をホワイト艦隊司令官の島田ミカとともに開封し、内容を把握していた。
(束の奴め、あの黒色の艦隊が地球に侵攻すると予測できていたのならば我にも相談くらいせんか!)
と静かに憤っていた。
木星から土星を航行中に艦隊は現在、ヤマトを降りてパトロール艇勤務となっている古代が艇長を務める第十パトロール艇とすれ違った。
「な、なんだ!?あの規模の艦隊は!?」
パトロール艇のコックピットで、古代は演習に向かう第七艦隊と内惑星系艦隊の規模を見て驚愕する。
「すでに太陽系内には彗星帝国は存在しないので、恐らく演習かと思いますが‥‥」
同じくパトロール艇のコックピットに居た操縦士の小栗浩が眼前の大艦隊が演習を行う為に航行しているのだと推測する。
「それにしても凄い数だ‥‥ヤマトもあの演習に参加しているのだろうか?」
古代はパトロール艇勤務になってからヤマトの行方が不明になっていることからヤマトが今、どこで、どうなっているのか気になった。
「いえ見た所、あの艦隊の中にヤマトは居ない様です」
「‥‥そうか」
「艇長、あの艦隊に通信を送りますか?」
「‥‥いや、演習中ならば邪魔はしないでおこう」
演習中ならば、無線封鎖しているかもしれないし、なによりあの艦隊の目的は演習なのだ。
乗組員の訓練を邪魔するのは無粋なので、古代は通信を送らずコックピットから敬礼をして艦隊を見送った。
その後、木星宙域を抜けた艦隊は無事に土星沖に到達した。
「土星のエンケラドゥス基地より補給艦、佐倉丸・笹子丸・ぶらじる丸の出航を確認!補給のためこちらに向かっているそうです」
「補給部隊の中にはジャスティス級高速補給艦のジャスティスも同行しているみたいです」
・ジャスティス級高速輸送艦
地球防衛宇宙海軍が旧式化著しいコロンブス級の後継艦として計画し、試作建造した艦隊追従型高速輸送艦。
とはいえコロンブス級ほどの搭載量も汎用性もなく、武装も増加装備できなかったので大量生産はキャンセルされてしまった不運な艦である。
しかし、その代わりに民間用高速宇宙貨物船としての運用が提案されている艦でもある。
「さて、補給部隊が到着後にワープを行うけど各艦の状況は?」
此処までトラブルは起きておらず、あとは土星圏からの補給部隊と合流後はワープ機関のテストの為に土星圏通過後に艦隊はワープに入ろうとしたのだが‥‥
「巡洋艦青葉にて若干の機関不調があるそうですが問題なしとのことです」
「戦艦ハリマからはタキオン粒子増幅器が初期不調を起こしているとのことです」
「あぁ~。急いで明石技師長たちを向かせて!!」
「はい」
束は急ぎ機関不良を起こしている青葉とハリマの修理を行う為に武御雷の技術班を向かわせた。
いくら航行に支障が無くてもワープ中に不具合を起こしたら、超空間に取り残されてしまう。
機関は万全の状態でワープに臨まなければならない。
そうして久々に登場した明石技師長によってハリマや青葉の不調は治り、各艦ワープを実行した。
此処で視点は地球からミッドチルダへと移る。
防衛軍にて各国が新鋭艦を続々と就航させている中、管理局の方でも新型の次元航行艦を就役させていた。
管理局 本局 ドック区画
「ナタル姉さん!!」
本局のドックに停泊している管理局が就役させた新型艦の近くで補給作業を見守っている管理局の士官に声をかける人物が居た。
「ん?ああ、クロノか‥‥」
士官に声をかけたのは現在、次元航行艦勤務から本局勤務になっているクロノであり、そして、クロノが声をかけた士官は彼の従姉であり、新造艦の艦長となったナタル・バジルールだった。
「新鋭艦の艦長になったって聞いたから‥おめでとう」
「ありがとうクロノ‥‥」
「ん?どうしたの?」
新鋭艦の初代艦長に就任したと言うのにナタルはあまり嬉しそうではない。
「いや、新鋭艦ではあるが、その‥‥あの世界の艦と比べるとやはり‥な‥‥」
「あぁ‥‥」
ナタルの言う『あの世界』が、フェイトたちが滞在しているもう一つの第九十七管理外世界である事を察したクロノ。
「ナタル姉さんもあの世界の事を知っているの?」
「本局に居れば、嫌でもあの世界の事は耳に入ってくる。お前の義妹の事もな‥‥」
「そう‥‥」
「あの世界で運用されている艦の性能と比べてしまうと管理局が自信をもって就役させた新鋭艦と言えど、どうしても見劣りしてしまう‥‥」
「‥‥」
今回ナタルが艦長を務める管理局の新鋭艦、AX級次元航行艦ドミニオン。
管理局がこれまで就役させてきたL級 XV級 LS級の艦影とは異なる形状をしており、最大の特徴は次元航行艦の切り札と言えるアルカンシェルをなんと五門装備していることだ。
大口径のアルカンシェルを艦首に一門、後方のエンジンブロックに片側上下一門ずつの計四門も搭載されており、複数同時発射が可能という凄まじい火力を誇っており、その他にも多数のレーザー砲を搭載しており、管理局が生み出した次元航行艦の中でも最強の火力と推進力を備えている。
だが、管理局が誇るアルカンシェルも防衛軍の波動砲の前ではその威力不足は否めなかった。
そんなドミニオンの幹部人事は以下の通りとなった。
艦長 ナタル・バジルール
副長兼航海長 アーノルド・ノイマン
通信長 ダリダ・ローラハ・チャンドラ
戦術長 ロメロ・パル
機関長 コジロー・マードック
そして、今回のドミニオンの処女航海においてオブザーバーとして参加する事になった人物が居た‥‥
「はぁ~‥‥いくら管理局が作った最新鋭艦とは言え、なんか頼りないなぁ‥‥」
「ですが、そう言ってしまうと管理局全ての次元航行艦が当てはまってしまいますよ」
別室にて待機していたはやてが今回、ドミニオンの処女航海にオブザーバーとして参加することになった。
「まったく、上層部のお偉いさんが気を利かせてくれたのかもしれへんけど、今回の話はありがた迷惑やで」
本局の上層部は、今後のはやての成長の為にと今回のドミニオンの処女航海にオブザーバーとして参加させたのだが、はやてにとっては大した意味を感じられなかった。
「ですが、あの艦の艦長はハラオウン提督の親戚の方が務めるそうですから、無茶ぶりなことはしないと思いますけど?」
「せやね、そこがせめてもの救いや‥‥」
クロノとはもう十年以上の付き合いであり、彼の人となりは知っている。
故に彼の人柄は知っているし、万が一にも今回自分が乗艦する次元航行艦の艦長に問題があるようならば、事前にクロノから連絡が入るはずだが、その連絡が無かったと言う事は、クロノはその人物に信頼を置いていると言う事だろう。
「それで、話は変わるけど、例の件なんやけど、どうやった?」
「お察しの通り、あの時押収した毛皮や角は押収庫から無くなっていました」
「やっぱりな‥‥」
以前はやてたちはとある密猟団からご禁制の品を押収した。
本来ならばその押収品は焼却処分されるはずだったのだが、本局からの指示でその押収品を処分せずに本局まで運んだ。
その後、本局の押収庫に押収品は運ばれたが、はやては本局からのこの指示に対して不信感を抱いており、密かにグリフィスに押収品の行方を調査させていた。
結果、押収品は行方不明になっていた。
「処分された形跡もありません。恐らく誰かが横流しした可能性もありますが、まだその先は調査中です」
「そうか‥‥苦労をかけるけど、引き続き調査を続けてや」
「はっ、承知しました」
「それじゃあ、グリフィス君。暫くの間、艦の事を頼むわ」
「はい。了解です」
はやては本局の不正調査を引き続きグリフィスに任せ、オブザーバーとしてドミニオンに乗り込んで行った。
そして、はやてを乗せたドミニオンは処女航海の為、本局を出航して行った。
ドミニオンが本局を出航してから数日後、視点は演習を行っている第七艦隊と内惑星系艦隊に変わる。演習艦隊はオールトの雲宙域にて防空演習を行っていた。
「航空戦艦翔鶴のエレベーター故障!瑞鶴は波動砲にてトラブル発生!!ラングレーでは火器管制システムに異常があり!」
「赤城・加賀の航空隊、接近します!対空訓練を予定通りに実行し、敵役になるそうです!!」
「うん。演習は順調、順調~♪」
「防空巡洋艦戦隊加速!方位207!」
「対空弾幕薄いぞ!何をやっておるか!!」
「にしてもさすがは一航戦。ガトランティス戦役で壊滅していたのにもうここまで練度が復活しているとはね…!」
(これならデザリアム相手でもなんとか…!)
「にしても五航戦は一体何をやっとるんだ!翔鶴はスクランブル準備中にエレベーターで搭載機に搭載していた演習用対艦ミサイルが外れて誤爆!瑞鶴は艦載機部隊の発進は問題なしだったが波動砲システムで故障ときた!挙句の果てにはラングレーは火器管制が異常をきたすとは!!」
「ま、まぁ新規建造艦だしね…(-_-;) 初期不良って言うのはよくあることだよ。実戦で発覚しなくてよかったじゃん」
(この先、暗黒星団帝国との実戦は必ずあるからな‥‥)
「そうは言うがな!おかげでせっかくの演習だというのに満足に出撃できている航空隊が隼鷹・飛鷹の二航戦と本艦の航空隊と春蘭の航空隊、赤城・加賀の一航戦しかおらんではないか!!」
そう、先ほど二隻の初期不良を直して航行を続けたのだがいざ実戦想定の対空演習を行うと各艦…特に五航戦空母部隊にトラブルが多発していたのだ。
「とはいえまだ時間はあるしさ、確かに訓練で結果を残すのは大切なことだけど、一番は実戦で勝って結果を残す事だよ」
「う、うむ‥‥」
その後、演習艦隊はSS伊400やSS伊14、SS伊401とすれ違いつつ演習航海を続けていった。
「あっ、そう言えばイギリス軍区でなんかトチ狂った少女技術者がWW2時代の変な兵器をもう一度開発しているんだって」
「‥‥は?」
束がイギリスに居る変わり者の事を思い出すとディアーチェは思わず声が裏返った。
欧州管区 イギリス軍区
「ぱんころ~♪」
「だれかこの馬鹿姉を止めてぇ――‐!!」
ゴロンゴロン‥‥!
イギリスの某所では束の言う変人が騒動を起こし、その妹が絶叫する事態が起きていた‥‥
次回 シリウス恒星系
銀河鉄道物語の小説を一話試し書きしたのですが読みたいですか?
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