地球が占領されて、暗黒星団帝国軍地球占領軍総司令官であるカザンによる地球占領宣言から半日が経ったが、
此処で少し時間を巻き戻す。
暗黒星団帝国が地球へ襲来した時、各地の地下都市群には戦火から逃れるべく多くの連邦市民たちが集まっていた。
そこには月村家一行やフェイトたちも当然居た。
「リンネ‥一体何処に‥‥?」
昴は避難した地下都市で友人であるリンネを探していた。
「あっ、リンネ!無事だった!?」
そして、ようやく捜し人であるリンネを見つけたので昴は駆け寄るが、彼女の顔は何だかすぐれない。
「あっ、昴‥‥」
「ど、どうしたの?リンネ」
「おじい様が見つからないの‥‥私たちと一緒に避難したはずなのに‥‥」
リンネは慕っている祖父の行方が分からず、右往左往していた。
どうやら避難時の混乱ではぐれてしまったのだ。
「分かった!一緒に探そう!」
「あ、ありがとう!」
そして二人はリンネの祖父を捜す為に地下都市内を歩き始めた。
一方、星奈は皆の元から一人、こっそり離れて地下都市の更に地下へと潜っていた。
『マイ・レディー、この非常時に家族の元から離れてはまずいのではないか?』
「構いませんよ。それにある人に会うためです」
『ん?ある人?こんな地下にか?』
「ええ‥‥手紙によればあの人はこの地下都市の最深部に居る筈ですから」
星奈の返答にルシフェリオンにもし、身体があればきっと首を傾げていただろう。
そんな星奈はルシフェリオンからの苦言に意味ありげな発言をして、ガミラス戦役後に地下から地上へ人類が戻った後、忘れ去られ停止しているエスカレーターを歩いて地下へと降りていった。
彼女の目的はある人物に会うためと言うがそれは一体‥‥??
極東管区 首都直下 旧地下都市 最下層 ZZ-44地区
「‥‥ここですね」
星奈が降り立ったのは旧地下都市の最下層の中の最下層であり、かつては国連軍高官や政治家、役人、富裕層が独占していた地区である。
そしてこの地区は遊星爆弾による放射線や有害植物が放つ毒素が最も届きにくく安全な場所であった関係上、富裕層などの金持ちが金に物を言わせてその居住地を独占していたのだ。
しかし、地球・ガミラス戦争の中期から末期にかけて暴動が頻発したのだ。
最初の頃は軍に警備を任せて、地球が危機に瀕していた時に貴重な物資を貪るかの如くの生活を送っていたが、戦争により軍人の数も減少していた上に軍部としては満足に働かなかったり、地球の一大事なのにまったく貢献せずに軍務にすらつかなかった連中に予算と人員をこれ以上裂けないと警備を解除したのだ。
その結果、ヤマトが帰還する二か月前に発生した最後の大規模暴動の標的となり、金に物を言わせてふんぞり返っていた連中はほとんどがボコボコにされて長期入院か殺されてしまった。
ヤマト帰還後は一般住民の地上復帰が最優先された結果、この地区の後始末は後回しにされていたのだが残されているであろう遺品などをあさりに来る輩が後を絶たなかったのだ。
しかし、半年ほど前からその遺品あさり連中の消息がこの地区に侵入した後に行方不明になるという事態が多発していたので連邦政府は元々立ち入り禁止措置を取っていたがさらに厳しい禁止措置を取っている地区でもあるのだ。
とはいえそれでもトレジャーハンター気取りで侵入して行方知れずになるバカな輩も多く、極東管区では有名な心霊スポットとなり果てていた。
…とはいえ星奈にはその犯人が誰かは薄々感づいていたため今日、この非常時下であっても訪れたのだ。
「周囲は‥蜘蛛の巣だらけですね。はてさて、どこから探せばいいのやら‥‥」
この地区は最下層にあるものの、ある程度は広いので目的の人物一人を探すのは結構手間である。
「ルシフェリオン、怪しい反応があったら教えてくださいね?」
『うむ、承知した』
「ルシフェリオン!!セットアップ!!」
星奈はルシフェリオンを起動させ、バリアジャケットを身に纏い、腕のガントレットから火を出現させて、地下都市の最下層の探索を開始した。
この地区は放棄されていた関係上、埃っぽくて空気も悪く、蜘蛛やネズミ、ムカデ等の害虫・害獣だらけであり、不衛生極まりない環境下であったがバリアジャケットのおかげで何とかなっていた。
そんな星奈のことを地区中央にある大型ビルから見つめる二つの目があった。
「あれ?もしかして星奈ちゃん?」
その頃、ディアーチェと束の押し問答の末に二人はまず第七艦隊との合流を目ざすこととした。
そもそもシリウス星系へ内惑星系艦隊特別選抜演習艦隊は第七艦隊と一緒に入って来た。
実際に管理局の最新鋭次元航行艦、ドミニオンのナタルとはやては春藍を見ている。
しかし、現状武御雷以下の内惑星系艦隊特別選抜演習艦隊は現在、第七艦隊と別行動をとっている。
その理由はこのシリウス星系において束と山南は内惑星系艦隊特別選抜演習艦隊と第七艦隊との間で遭遇艦隊戦を模した大規模な演習をする予定であり、ドミニオンとの邂逅後、第七艦隊は一時、内惑星系艦隊特別選抜演習艦隊と別行動をとり、演習開始時刻に互いに艦隊を動かし、相手の捜索・模擬戦をする筈だったのだが、第七艦隊との連絡が突如音信不通となり、合流する事にしたのだ。
「全艦艇の現状は?」
束はディアーチェとともに艦橋に戻ってくると真っ先に各艦の現状を確認した。
「全艦艇の修理・点検作業は完了しています。ただ‥‥」
「「ただ??」」
「プリンスオブウェールズの乗組員がへそを曲げているとか‥‥」
「「はい~!?」」
実は第七艦隊との分離前に行われた対空戦闘訓練の際におおよその艦艇は対空兵装や自前の高速性・機動力をもって回避したのだがPoW級のみは散々な結果に終わったのだ。
基本的に量産性・コストの安さ・汎用性に重きを置いた設計だったので隠蔽式対空パルスレーザーの数も最低限度だったせいで対空戦闘を主砲と対空ミサイルのみで行わなければならないという致命的欠陥と、乗員の練度の低さも相まって特別選抜演習艦隊内で最も被弾判定を食らってしまったのだ。
それはかつてマレー沖海戦において旧大日本帝国海軍の第22航空戦隊にハチの巣にされて撃沈された当時不沈戦艦の異名を誇った『キングジョージ5世級戦艦2番艦 プリンスオブウェールズ』を彷彿とさせる光景であったのだ。
そのおかげで、イギリス軍区出身者で固められていたPoWの乗組員たちはかつての英国海軍の悪夢を思い出させられたせいか、へそを曲げて拗ねてしまったのだ。
結局特別選抜演習艦隊はまず、PoW乗員の機嫌を直すことから始めることとなってしまった。
此処で視点はシリウス星系からミッドチルダ、時空管理局・本局へ移る。
本局・通信室
「そろそろ、もう一つの地球との定時交信の時間だな」
管理局でもう一つの地球‥防衛軍との交渉役となったクロノが腕時計を見ながら定時交信の時間を確認する。
普段は交信の最後に次回の更新日時を知らせた後、もう一つの地球側から通信回線が開かれるのだ。
そして、交信時間となり、クロノと機器を操作するオペレーターがもう一つの地球が通信回線を開くのを待ったのだか、いつまで待っても通信回線が開かない。
「ん?おかしいな‥‥もう、交信予定時刻は過ぎているよな?」
クロノがオペレーターに確認をとる。
「はい。日時も今日の〇〇時で間違いないはずです」
「‥‥」
それから三十分過ぎてももう一つの地球からは何の応答もない。
「いくらなんでもおかしい‥‥これまでの交信でもう一つの地球が交信日時を間違える事も遅れた事もない筈だ」
もう一つの地球側の交渉役が束の代理人となった事はあったが、此処までまってもう一つの地球側から時間に遅れた事も、何のリアクションも無かったことはない。
「まさか、もう一つの地球側で何かトラブルがあったのか?」
「トラブル‥‥ですか?」
「ああ‥‥もしかしたら、彗星帝国の残党が地球へ侵攻したのかもしれないし、はたまた向こう側の通信機器の故障か‥‥」
これだけ待って、もう一つの地球側からリアクションが無いので、クロノはもう一つの地球側に何かトラブルがあったのだと判断した。
「ひとまず、今日はもう一つの地球側から交信が来ることはないだろうな‥‥もし、何かあれば時間に関係なく、連絡をくれ」
「了解です」
クロノは今日の交信を諦め、通信室を出た。
(‥‥大きなトラブルでなければ良いが)
もう一つの地球側で何らかのトラブルが起きたのは間違いないだろうが、そのトラブルが大きなモノでなければ良いと心の中で思うクロノであった。
それから数日後、テスト航海からドミニオンが本局へと戻って来た。
「おかえり、ナタル姉さん、はやて」
「クロノ」
「クロノ君。わざわざ出迎えに来てくれたんか?」
「ああ、ここ数日、本局で詰める用があってね」
クロノはあれから数日、本局に詰めてもう一つの地球からの交信を待っていたのだが、やはりもう一つの地球側からの交信はなかった。
これでもう一つの地球で何らかのトラブルが起きたのは確信にかわった。
「それで、何か変わった事や大変な事はあったかい?」
クロノがナタルとはやてに試験航海について尋ねる。
「流星群の中を航行するような事はあったけど、コレと言って変わった事は‥‥」
「あっ、シリウス星系で防衛軍の艦隊と遭遇したわ!!」
「えっ?防衛軍の艦隊と!?」
「うん。何か大規模な演習をするみたいで、物凄い数の艦隊がおったわ。あの場にルキノが居たら狂喜乱舞しておっただろうな」
はやては第七艦隊と内惑星系艦隊特別選抜演習艦隊の防衛軍艦艇を見たルキノの姿を想像して思わず苦笑する。
「それ以外に何か変わった様子はあったかい?」
「ん?どう言う事だ?クロノ」
ナタルがクロノに質問の意味を尋ねる。
「実は‥‥」
クロノはナタルとはやてにもう一つの地球からの交信が途絶えている事を話す。
「なんやて!?」
「交信日時に間違いはないのか?」
ナタルはクロノに交信日時の間違いではないのかを尋ねるが、
「間違いはありません。ちゃんとカレンダーや手帳に書き込んでありますから」
クロノとしては今の所、もう一つの地球との交信は最重要事項なので、交信日時を間違えない様にしていた事を伝える。
「なるほど、それでここ数日、本局に詰めていた訳か‥‥」
「それで、もう一つの地球からは未だに連絡がないんか?」
「ああ、無い。此処まで連絡がないとなると、もう一つの地球で何らかのアクシデントが起きているとみて間違いないだろう」
「そんな!?もう一つの地球にはフェイトちゃんたちが居るんやで!?」
「分かっている。しかし、確認をしたくてもこちらからではコンタクトを取る事ができないし、基本向こうから連絡待ちなんだ。おいそれと地球連邦の領海内へ入り込めばクライスラーと同じ轍を踏むことになる」
「‥‥」
確認したくても確認できない現状にクロノは勿論、はやても歯がゆい気持ちとなる。
(一体、もう一つの地球で何が起きているって言うんや‥‥)
クロノの話を聞いて、もう一つの地球に居るフェイトたちの身を案じるはやて。
「それで、クロノ君。なのはちゃんやスバルたちには何て説明するんや?」
「隠し通せるなら隠したいが‥‥いつまで隠し通せるだろうか‥‥」
地球側のアクシデントがいつまで続くのか当然、管理局は分からない。
確かめに行くのは地球連邦内の領海を侵犯するので、確認しに行きたくても行けない。
それになのはやスバルが交信日に休みや非番が重なった時、当然フェイトやティアナと話したがるだろうから、休みが被った日は交信の席に来ることが予測される。
その時、なのはやスバルはもう一つの地球でアクシデントが起きている事を知る事になるが、その前に伝えるべきか?
それともその時までなのはたちにはもう一つの地球で起きているであろうアクシデントについては秘匿させておくかクロノは判断に困った。
次回 再会と抵抗
銀河鉄道物語の小説を一話試し書きしたのですが読みたいですか?
-
読みたい!
-
別にいい