内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百十九話 探究者

シリウス恒星系において第七艦隊の救出に成功した内惑星系艦隊特別選抜演習艦隊とヤマト、雪風・改、蝦夷、明石。

 

その後の会議によって暗黒星団帝国本星へ重核子爆弾起爆装置の破壊を決定した地球艦隊は暗黒星団帝国本星までの遠征の為の艦隊再編を行う。

 

ただ、暗黒星団帝国本星の位置の関係上、巡洋艦以下の艦艇はシリウス恒星系に残留する事が決定された。

 

これは巡洋艦以下の艦艇では長距離航海に不向きと判断されたからだ。

 

(完結編の巡洋艦や駆逐艦が大型化したのは今回の件やヤマトⅢの宇宙開拓や惑星移住が関係しているんだろうな‥‥)

 

(暗黒星団帝国は原作通り地球へやって来た‥‥となると、この先の太陽の異常やボラー連邦、ディンギル帝国もいずれは地球に牙を向けてくる‥‥)

 

(その時は、何としてでも原作の様な未来ではなく、もっと違う結果に‥‥犠牲者を極力少なくしなければならない‥‥)

 

(とは言え、まずは地球を救わなければならないか‥‥)

 

暗黒星団帝国戦役後に起こり得る未来での戦いにおける犠牲者を今回の一件を踏まえて少なくしなければならないと決意する束であるが、現状地球を救う事が最優先だ。

 

暗黒星団帝国本星へ向かう為の戦艦、戦闘空母、無人艦を中心にした遠征艦隊はまず、敵の中間基地があると思われる太陽系から二十万光年先の宙域へとワープした。

 

 

さて、此処で再び視点を地球に戻そう。

 

 

地球 極東管区 海鳴市

 

 

「‥‥‥‥」

 

暗黒星団帝国による地球占領から数週間が経過したある日。

 

フェイトとティアナは買い出しに出かけ、神堂、シャルロット、シルビアはセカンドハウスに残って子供たちのメンタルケアーやリンネの祖父の看病をしている。

 

この突然の占領下で学校も機能を停止して、子供たちは学校へ登校できず自宅待機が続き、宇宙戦士訓練学校や士官学校も占領軍の統治下におかれ、学生、教官たちは寮で軟禁生活を余儀なくされている。

 

そして、市街地の彼方此方には、ライフルを構えて市民を監視している暗黒星団帝国の兵士の姿がチラホラ見えた。

 

(子供たちを連れてこなくて良かった‥‥女性や子供に対する乱暴狼藉はないみたいだけど、銃を向けられるのはやっぱり気持ちのいいモノじゃあないしね)

 

こうした占領下では占領軍の兵士による女性や子供に対する性的暴行事例は必ずと言っていいほど起こる。

 

それは管理局でも例外ではない‥‥

 

しかし、不思議な事に暗黒星団帝国の占領下ではそう言った事例は今の所確認できていない。

 

だが、報道規制は敷かれているため、今の地球‥日本以外の国の現状がどんな状況になっているのか、詳しい状況は分からないものの、市民たちの噂話から今でもメトロポリス東京では、軍を中心とする抵抗勢力が暗黒星団帝国軍に対して、パルチザン活動をしていると言う。

 

無論、暗黒星団帝国にとって不利となるような情報はテレビ、ラジオ、ネットでは出回らないが人の口に戸は立てられぬという言葉の通り、市民の間では常識となっていた。

 

この情報はフェイトたち管理局組の耳にも入っていた。

 

(管理局が似たようなことをやっても地球の人々は徹底抗戦をするのかな?)

 

(絶対そうなると思います)

 

フェイトは念話にてティアナにもしも管理局がこの地球を管理下に置いた場合、この地球に住む人々は管理局に対してもパルチザン活動をするのかと問うと、ティアナはこの地球が管理局の管理を受け入れる筈もなく、仮に管理局がこの地球を管理下においても地球人たちは管理局に対して抵抗の刃を向けるだろうと返答する。

 

タタタン!!!ドドドドドドドドド!!!

 

海鳴市の郊外から今も戦闘音が聞こえる。

 

以前ならば異常事態だったが今や日常となってしまった。

 

しかし、パルチザンは地球人で構成されている為、市街地戦をして民間人を巻き込んだりはしていない。

 

各地でパルチザンやレジスタンスの抵抗の証ともいえるレベルで銃声や砲声が鳴り響き、暗黒星団帝国軍がわずかながらも疲弊し始めているのはもはやだれが見ても明らかなレベルなのだ。

 

(‥‥‥‥)

 

そんな中、ティアナはあることを考えていた。

 

買い物を終えてセカンドハウスへ向かっている中、

 

「ん?あれは‥‥」

 

公園でフェイトは何かに気づいた。

 

そして、公園へと入って行く‥‥

 

「えっ?ちょっと!!フェイトさん!!どこに行くんですか!?」

 

公園に入っていくフェイトを慌てて追うティアナ。

 

やがて、フェイトは公園内にあるベンチに向かう。

 

「あっ、貴女は‥‥」

 

ティアナも追いつき、ベンチに座っている人物を見て驚いた。

 

 

さて、そんな地球から時空管理局の本局に視点を移そう。

 

 

時空管理局 本局 次元航行艦 第六バース

 

 

「そんじゃあ行ってくるな、なのはちゃん」

 

はやては見送りに来たなのはに声をかける。

 

「う、うん。気を付けてね?はやてちゃん」

 

なのはははやてのことを心配していた。

 

この日、はやての指揮するLS級『ヴォルフラム』はある任務のために緊急出航することとなったからである。

 

その任務と言うのは第二の地球がある世界へと赴き、かの世界の状況を把握するということだ。

 

何故かと言うと、ここ最近の地球側からの交信が予定されていたにも関わらずに全く地球からの交信が無い上に、こちらから呼びかけても全く反応がないからである。

 

フェイトたちの安否が不明なために安否を気にかけていた穏健派は頭を抱えて、強硬派は地球側の突然のフェードアウトに『これは地球連邦政府がハラオウン執務官たちを誘拐したのだ』と騒ぎ始めた。

 

このまま放置しておくと強硬派がもう一つ地球に対して大規模な侵攻を行いそうだったので三大提督からの裁可を取ったリンディ提督がはやてに頼んで太陽系への調査をお願いしたのだ。

 

『クライスラー』の一件もあったので、万が一防衛軍側に捕捉された時は、こちらの来訪目的をちゃんと伝え、防衛軍の指示に従うようにはやてには徹底された。

 

勿論、はやて自身も格上の防衛軍と矛を交えるつもりはないので、その点は十分に承知していた。

 

そして、はやては早速ヴォルフラムの乗員たちを招集して出航することとなったのだ。

 

その際になのはも同行したいと言ってきたのだが、はやてとしては危険な可能性があるし、なのはに危険な目に遭ってほしくなく、管理局上層部としても管理局のエースであり、旧機動六課の中でも最も有名ななのはに万が一のことがあれば管理局の威信にかかわる。

 

という理由から許可が下りなかった。

 

実際に今回の確認任務でもはやてに任せる事も管理局側は当初は渋ったが、防衛軍との接触が管理局内でも一番多く、世界は若干異なるとはいえ、同じ地球人と言う事ではやてがこの任務に就くことになった。

 

そのため、今回も見送りに来ていたのだ。

 

「大丈夫や。なんかあったらすぐに逃げるしな」

 

「う、うん」

 

そうはやては気楽に言っていたがなのはは何か嫌な予感を感じていたのだ。

 

それから数日後、はやての乗るヴォルフラムは太陽系外縁部のオールトの雲の中にいた。

 

「一体どうなっとるんや!?以前は警告を受けた宙域でしばらく待っとったのに全く接触がないし、地球の艦を一隻も見かけへんで??」

 

「そうですね。一体どうなっているんでしょう?」

 

はやては以前防衛軍の次元潜航艦と接触した経験からその宙域を経由して接触を図ろうとしたのだが数時間待機していたにも関わらず、一切の接触がなかったのだ。

 

しかも発見されやすくビーコンの出力、レーダーレンジも最大出力にしてある。

 

普通であれば防衛軍のレーダーに捕捉されていて哨戒艦が来るか警告文が送られてくるはずであるが、それさえない。

 

「しゃーない、此処は危険を承知でもう少し前進するで」

 

「えっ?危険ではありませんか?」

 

「危険は承知の上や。でも、今回はどうしても彼方さんに見つけてもらわなアカンのや」

 

「は、はい。航海長‥前進だ」

 

「りょ、了解」

 

はやては何か嫌な予感を感じつつも艦を前進させていたのだ。

 

すると‥‥

 

「や、八神艦長!!」

 

「ど、どうしたんや?そんなに慌てて」

 

「後方から高速で接近してくる複数の艦があります!」

 

「なんやて!?すぐに映像をモニターに出してや!!」

 

「はっ、はい!!」

 

オペレーターが声を上げて艦船の接近の報告を上げてきたのだ。

 

それを受けて、はやては防衛軍の艦かと思い、映像で確認しようとしたが、

 

「な、なんや?あの艦は!?」

 

「黒い‥円盤?‥防衛軍の新型艦でしょうか?」

 

「いや、あの艦影は防衛軍とは思えへん‥‥」

 

グリフィスは黒い円盤の艦艇は防衛軍の新型艦かと思うも、これまで何度か防衛軍の艦艇と遭遇して来たはやては本能的にあの黒い円盤が防衛軍の艦とは思えなかった。

 

はやてとグリフィスはこの時はまだ知らなかったが、この艦隊は暗黒星団帝国軍の哨戒艦隊であった。

 

実は暗黒星団帝国側は地球占領後、哨戒行動は行ってこなかったが連日の防衛軍次元潜航艦部隊の群狼戦術による補給路遮断と戦力を削る漸減邀撃作戦(ぜんげんようげきさくせん)によって、占領軍直掩の艦隊が激減してしまったことに頭を抱えたカザンの指示によって、駆逐艦・護衛艦の機動力を重視した哨戒艦隊が編成されて補給艦隊が毎回撃滅されている小惑星帯の哨戒を行っていたのだ。

 

そして、運悪く地球を占領している暗黒星団帝国の哨戒艦隊にヴォルフラムは発見されてしまったのだ。

 

 

暗黒星団帝国哨戒艦隊

 

「ん?なんだ?あれは地球の船か?」

 

管理局の次元航行艦は当然、防衛軍の宇宙艦艇とは構造コンセプトが異なるので、暗黒星団帝国の人間が管理局の艦を初めて見たとしたら困惑するのも納得できる。

 

「分かりません。データベースにはあのような艦影の艦はありません。ただしライフメーターには反応があるので、あの艦は有人艦です」

 

「ふむ、だとするとおそらく地球の新型艦だろう」

 

「では、連日我が軍の輸送船団を襲撃しているのはまさかあの艦!?」

 

「その可能性があるな‥‥全艦、これまで散っていた同胞たちの為にあの艦は絶対に沈めるぞ!!」

 

『応!!』

 

暗黒星団帝国側は時空管理局のことを知らなかった関係でヴォルフラムを連日輸送船団に被害を与えている地球の艦と判断してしまった。

 

実は時空管理局との交渉を担当していた束が一計を案じており、ジャブロー要塞基地のコンピューターにのみ時空管理局案件のデータを入力しており、第一都市司令部のデータは敵に占領された際には自動的に消去されるようにされていたのだ。

 

というかそもそも防衛軍総司令部守備隊も占領される直後に機密書類すべてを焼却処理し、コンピューターも物理的に完全に破壊していたせいで機密データのすべてが処理されてしまったせいで暗黒星団帝国軍は管理局の存在はおろか防衛軍の機密を確保できなかったのだ。

 

「攻撃準備完了!!」

 

「よし、撃て!!」

 

そして暗黒星団帝国軍の哨戒艦隊はヴォルフラムへ発砲を開始した。

 

 

ヴォルフラム 艦橋

 

 

「不明艦隊発砲!!」

 

「んな!?回避や!んでもって退避や退避!!」

 

はやてはその報告を受けて即座にルキノに回避とこの宙域からの退避を命じた。

 

 

「了解!ただかなり荒っぽくなっちゃいますよ?」

 

「かまへん!!それよりも人命第一や!!」

 

そうしてルキノの巧みな操艦技術で小惑星帯を潜り抜けながらヴォルフラムは逃げ回る。

 

「いきなり警告無しで撃って来たという事はあの黒い円盤は防衛軍の艦では‥‥」

 

「無いっちゅうこっちゃ!!」

 

ヴォルフラムは障害物を利用して暗黒星団帝国の艦艇を振り切ろうとするが、そもそも艦の性能差がありすぎる。

 

「だ、駄目です!!振り切れません!!」

 

「くっ‥‥!!」

 

本局を出航したばかりの時は万が一の時は逃げ切れる自信があったが、現実はどうだ?

 

障害物を利用しても逃げるのは精一杯どころか捕捉されかけている。

 

(管理局の艦は此処まで性能が劣っていたんか‥‥)

 

(これはちょっと不味いかもしれへんな‥‥)

 

ヴォルフラムは管理局の艦でも最新の部類に入る艦だが、現状を見る限り管理局の艦は防衛軍の艦はおろかあの黒い円盤にさえも勝てない。

 

はやてはこの時、自身の死を覚悟した。

 

 

次元潜航艦 SS伊400 発令所

 

 

「西住殿、逸見殿からの報告です。時空管理局の物と思われる艦が暗黒星団帝国軍の哨戒艦隊の追撃を受けているようです」

 

「時空管理局??なんでここにいるの??」

 

みほはゆかりが持ってきたエリカからの報告に首を傾げた。

 

時空管理局については哨戒部隊の指揮官として勤務していた関係上みほも知っているが、このくそ忙しいときになんで来たのかと思ったからである。

 

「それは分かりません。ですが、『クライスラー』とやらの一件がありましたし、あの組織が一体何の目的で再びこの宙域に来たのか‥‥」

 

地球は暗黒星団帝国の占領下なので、フェイトたちのお迎えに来たとは思えず、クライスラーみたいに再び領海侵犯しに来たとも思えなかった。

 

「いかがいたしましょうか?西住殿」

 

「僚艦に通信、敵艦隊殲滅行動に入る」

 

「に、西住殿。それは管理局の艦を助けると言う事ですか?」

 

「このまま見捨てるのは人道上問題がありますし、あの管理局の艦を追っているのは暗黒星団帝国の哨戒艦隊‥‥今後の私たちの活動にも影響を及ぼしかねません、今なら注意があの管理局艦に向いているから、殲滅するには絶好の機会だと思うけど?」

 

「そ、そうですね。亜空間通信ブイで僚艦に緊急伝!!魚雷発射室は直ちに雷撃準備!!」

 

ゆかりは急ぎ僚艦と連絡を取り、攻撃準備を行う。

 

「赤色灯を点灯!!」

 

ビィーーー!!ビィーーーー!!

 

「潜望鏡を上げ!!」

 

そしてみほが潜望鏡を覗くと逃げ回るヴォルフラムと悠々と直進している暗黒星団帝国軍の哨戒艦隊が見えた。

 

「全発射管斉射用意!!くれぐれも管理局の艦に当たらないようにね!!」

 

「全発射管斉射用意完了!!」

 

「ってぇ!!!」

 

そしてSS伊400や周辺に潜んでいる次元潜航艦から魚雷が放たれた。

 

 

ヴォルフラム 艦橋

 

 

「くっ、振り切れない‥‥」

 

「もうだめだ‥‥」

 

「此処までか‥‥」

 

ヴォルフラムの乗員たちは既にあきらめていたが、

 

 

ドガァァァァン!!!

 

 

「へ!?」

 

「な、なんや!?」

 

暗黒星団帝国軍の哨戒艦隊に突如、多数の魚雷が襲い掛かり全艦轟沈したのだ。

 

「自爆?‥いや、そんな訳が‥‥」

 

「しかし、あの円盤が全て全滅したとなると我々は助かったと言う事でしょうか?」

 

「‥‥」

 

現状の脅威は去った。

 

しかし、自分たちを追いかけまわしたあの円盤の艦隊が何故、全滅したのか?

 

新たな脅威がまだ潜んでいるのではないか?

 

はやては油断できず、緊張した面持ちのままであった。

 

そこへ、ヴォルフラムのそばにSS伊400を始めとする防衛軍の次元潜行艦が次々と浮上した。

 

「至近距離に艦船反応多数!!」

 

「一体何処から!?」

 

「本艦を取り囲むように出現しています」

 

ヴォルフラムのモニターに映るのはどれも先ほどの円盤の様な艦でも彗星帝国の艦でもなく、潜水艦に似た艦影を持つ艦であった。

 

 

次元潜航艦 SS伊400 発令所

 

「通常空間に浮上」

 

「僚艦も管理局艦を包囲する形で浮上しています」

 

「‥さて、まずは管理局の人に来訪目的を聞かないとね。逸見機と赤星機には引き続き周辺宙域の哨戒を下令」

 

「了解」

 

一先ずこの宙域の脅威を排除した防衛軍の次元潜行艦隊は次いで管理局艦の来訪目的を尋ねる事にした。

 

 

ヴォルフラム 艦橋

 

「か、艦長。あの潜水艦に似た艦は‥‥」

 

「ああ、間違いない‥防衛軍の艦や‥‥」

 

「艦長、防衛軍の艦より通信が入っております」

 

「通信回線を開いてや」

 

「了解」

 

ヴォルフラムのメインモニターには、自分と大して変わらない年齢の女性軍人の姿が映し出された。

 

『時空管理局の皆さん、地球連邦へようこそ。ご来訪の目的は?ビザはお持ちですか?』

 

と、その軍人は、はやてたちに早速来訪目的を尋ねて来たのだった。




次回 抵抗運動

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