内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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お待たせしました!!


第百二十二話 白い花

さて、ここで一旦視点を暗黒星団帝国によって占領され、混沌とした情勢下の地球に戻そう。

 

森雪は司令部地下の高速連絡艇乗り場にて、敵兵の狙撃を受けて意識不明の重体となった所を暗黒星団帝国のアルフォン少尉の保護下に置かれて内務長官の屋敷に幽閉されていた。

 

屋敷内ではある程度の自由はあったが、彼女は地球のために抵抗する気は決して揺らいではおらず、ベランダに出て風に当たっていた際に目撃した発光による暗号信号の解読を行っていた。

 

(防衛軍のパターンだと‥駄目ね。文章にならないわ)

 

最初は現在使用されている防衛軍暗号で解読を試みたが、文章にすらならなかった。

 

(空間騎兵隊の物だと…サ…ヒ…ド…マ…ヌ…これも駄目ね)

 

空間騎兵隊の物だと文章らしきものにはなったが意味の無い物になったので駄目だった。

 

(内惑星系艦隊の地上防衛部隊の物は‥‥いえ、あそこの暗号通信は二重の暗号システムだからそもそも解読が難しすぎるからパルチザンが使う訳がないわ)

 

内惑星系艦隊の地上防衛担当部隊が使用する暗号は旧日本陸軍を参考にして薩摩弁を使用しており、総司令部で勤務していた雪でも解読標を見ながら解読しても理解できず、薩摩弁翻訳標を読まないと理解できないほど難しかったのだ。

 

それを余裕がないパルチザンやレジスタンスが使用するとは思えない。

 

実際にこの薩摩弁を使用した旧陸軍の暗号は太平洋戦争当時に旧海軍の暗号を解読しまくっていたアメリカ軍でもこの暗号の解読に手を焼き、『日本語ではない!!』と考えて言語学者総動員で解析して捕虜経由でようやく薩摩弁だとわかっても傍受から二か月経過していたという話があるほどである。

 

(っ!?‥そうよ!!今の防衛軍のパターンじゃないわ!!今の信号パターンだと司令部を占拠した敵にすぐさま解読されてしまう!!)

 

地球を占領し、防衛軍司令部を占領軍の司令部として使用している暗黒星団帝国占領軍ならば、現在の防衛軍が使用している暗号通信も抑えている筈だ。

 

雪はその結論に至り、過去の暗号パターンを必死に思い出した。

 

(確か…ガミラス戦争以前の国連宇宙海軍時代の暗号パターンだと‥キ…タ…レ…コ…コ…デ…マ…ツ…『来たれ、ここで待つ』!!)

 

雪は暗号信号の解読に成功し、アルフォンが戻ってくる90分の間に移動に30分、話に10分必要と仮定した場合は建物から出る・戻る時間は双方共に20分のみだ。

 

すぐさま雪は隠し持っていた分析端末を頼りに脱出を試みることとなった。

 

食堂で兵士が置き忘れた銃を手に入れ、エアコンルームにあるメンテナンス業者用の為の出入り口から外に出る。

 

そして、発光暗号信号を灯していた場所へと赴く途中の道端に白い花が咲いていた。

 

「‥‥あなたたち‥‥踏みにじられても頑張って生きているのね‥‥」

 

つい最近まで激しい戦火の有った場所にも関わらず、懸命に花を咲かせている白い花に声をかけつつ、自分もこの花の様に負けていられないと自分に言い聞かせた雪は発光暗号信号を灯していた場所へと向かった。

 

 

一方、その頃‥‥

 

 

「ふむ‥本当に良いのか?彼女たちは例の時空管理局の局員なのだろう?信用できるのか?」

 

「こちらの技術を盗み取ろうとしているのではないか?」

 

「管理局の技術は我々よりも遅れていると聞いているしな」

 

「まぁ、彼女たちの上司に当たる人物が責任を取ると言っているから良いんじゃないか?」

 

ティアナ・シャルロット・神堂の三人は、シャルロットの伝手を使い時間を掛けつつもパルチザンへの入隊を志願していた。

 

とはいえ防衛軍側としては人材が確保できるのはありがたいがゴタゴタに乗じて軍の機密情報を抜き取れても困るし、ティアナたちがパルチザン活動に参加している件について、管理局側が後々に難癖付けてくるとも限らないので当初はティアナたちへの不信感があり、パルチザン活動の参加を拒否するべきであるという意見が大多数であった。

 

しかし、彼女たちの上司であるフェイトが管理局に文句は言わせないと断言し、誓約書に署名してもいいと言ってきたことや人手不足が深刻すぎることなどから藤堂長官の『信頼のおける者の下において監視しておいて万が一の場合には身柄を拘束しておく』という方針で採用となった。

 

まぁ、藤堂や西郷そして監視担当となった北野と古野間は彼女たちの人柄からそんな事態にはならないとは思っていた‥‥

 

そして現在、ティアナは西住まほ一佐が指揮する『ガーディアン連隊』に連絡要員として派遣され、北野とともに内務長官の屋敷にとらわれている防衛軍関係者に連絡を取ろうとしていた。

 

「よし、これで連絡が取れるといいんですが‥‥」

 

暗号信号を北野が送り、ティアナはその間、北野の護衛をしていた。

 

「と言うかこれ大丈夫ですかね?ガミラスとの戦争前の暗号だと、分からない人もいると思いますし、内惑星系艦隊地上防衛担当部隊の暗号の方がよかったんじゃ‥‥」

 

北野の送った発光による暗号信号の暗号にガーディアン連隊からティアナ同様、護衛として同行していた小島エミ三等宙佐はそう苦言を呈した。

 

「いえ、内惑星系艦隊の地上部隊が使用している暗号は、はっきり言って我々でも理解ができない場合があるのでこちらの方がいいんです。それに敵は現行の暗号パターンを入手していても旧国連宇宙海軍時代の暗号は知っていないでしょうし」

 

「あぁ~確かに私たちも分からなくなることありますしね~」

 

(いや、それはそれでどうなのよ‥‥)

 

(味方にさえ解読不能な暗号何て意味ないじゃない)

 

北野と小島の会話を聞いたティアナはある意味で呆れていた。

 

そりゃそうだ‥使っている側でも理解できない場合がある暗号なんて軍用暗号としては失格だ。

 

ちなみに、この薩摩弁暗号はデザリアム戦後に改正されて通信手が理解しやすいものに変更されることとなる。

 

「さて、皆さんは一応隠れていてくれませんか?万が一敵に理解されて突入してきた場合、全員が集まっていたら一網打尽にされてしまいますからリスクを分散させた方がいいです」

 

「‥‥そうですね。ではしばらく近郊のビルに潜んでいますね。さっ、行きますよ?」

 

「あっ、はい!」

 

そう言って小島とともにティアナは北野がいるビルから数軒隣のビルに潜伏した。

 

 

某ビル内

 

「やれやれ、ランスターさんも大変だよね~」

 

そう言いながら小島は対物狙撃銃の点検をしていた。

 

ティアナはそんな小島を見ながらある疑問を抱いて聞くことにした。

 

「あ、あの‥小島さんはなんで防衛軍に入隊したんですか?」

 

ティアナの周りには女性の軍人も居た。

 

管理局ならば、女性の局員は珍しくはなかったが、管理局と防衛軍は戦い方が全然違う。

 

魔法も使えず、質量兵器を使って殺るか殺られるかの戦いが防衛軍での戦い方だ。

 

そんな危険な世界に眼前に居る女性軍人は何故、入ったのかやはり気になる。

 

「えっ?いきなりな質問だね?」

 

小島はティアナの質問に驚きつつも答えることにした。

 

「そうだね‥私は一佐と同じ熊本って所の出身だったんだけど、高校に進学した頃からガミラスとの戦争が始まってね?」

 

そう言いながら小島は遠い目をし始めていた。

 

(私が六課に入ったあたりね‥‥)

 

ティアナが小島と同じ年齢の頃、自分は既に管理局員として六課に配置された頃で、その時点では、ティアナの方が戦場?経験のアドバンテージがあった。

 

しかし、ガミラスとの戦争映像を見る限り、自分が管理局で潜った一番過酷だった戦場‥JS事件での決戦時となった市街戦と比べると大きな差がある。

 

「遊星爆弾で近所の知り合いも同級生もたくさん死んじゃったんだ」

 

「‥‥」

 

「それで、仇を討とうと思って宇宙戦士訓練学校に入学したまではよかったんだけど訓練課程の初期の訓練を履修している最中に終戦しちゃったんだ。それでガトランティス戦役の時も訓練課程が終わってなかったんだけど、ガトランティスとの戦いでは軍が大きな被害を出してね。それで訓練校も繰り上げ卒業をすることになって、司令部付きになったのもつい数か月前なのよ」

 

と話始める。

 

「正規の軍人にやっとなれたと思ったら、地球はこの有様‥結局、所属している部隊が壊滅しちゃって西住一佐の指揮で私たちは生きていけたみたいなもんだよ」

 

「‥小島さんは異星人への復讐心から軍人になったんですか?」

 

ティアナは小島の話を聞いていつの間にかそんなことを聞いてしまっていた。

 

かく言う自分も執務官を目指して兄が殉職し、当時の兄の上官たちが殉職した兄を葬儀の場で馬鹿にして兄の名誉を著しく傷つけた事から自分が兄の意志と夢を告ぎ、当時兄を馬鹿にした上官連中を見返してやろうと言う意気込みから執務官を目指した。

 

「いや‥まぁ、最初はそうだったかな?でも訓練学校で訓練を重ねていくうちに考えが変わってね」

 

「えっ?」

 

「背後に居るであろう生き残った友達や家族、それに親しい人たちのことを守るためっていう思いに変わったんだ。確かに私の友達を大勢殺された恨みもあるけど恨みに囚われ続けても生きていけないからね~」

 

と小島は気楽に言った。

 

(ギンガさんもやっぱりそんな気持ちで軍人になったんだろうな‥‥)

 

小島は当初ガミラスに対する憎しみから軍人を目指したが、訓練校に在学中にガミラスへの復讐から大切な人を守る為にと変わった。

 

ギンガはガミラスへの恨みは無いが次元漂流した自分を温かく‥そして快く迎え入れてくれた人たちを守る為に軍人になったのだと改めて知る事になる。

 

自分や神堂たちもそんな気持ちから今回、パルチザン活動に参加したのだ。

 

(やっぱり、この世界の人たちはこうした思いを持っているからこそ、強いんだろうな‥‥)

 

ティアナはしばらくの間茫然としており、結局北野が戻ってくるまで話し合っていた。

 

 

小島とティアナが周囲を警戒しつつ話している中、北野の方は‥‥

 

「動かないで‥‥今、私の銃が貴方の頭部を狙っているわ」

 

突然背後から声をかけられた。

 

それは女性の声であり、北野には聞き覚えがある声だった。

 

一先ず北野はこちらが抵抗をしない事を示すために両手を上げる。

 

「答えて‥‥光で信号を送ってきたのは貴方なの?」

 

「そ、その声は!?」

 

もう一度、声をかけらえて北野は確信し、振り返る。

 

「北野君!!」

 

「雪さん!!無事だったんですね!!」

 

てっきり、古代たちと共にヤマトに乗艦していたと思っていた雪がまさか地球に居た事に北野は驚いた。

 

「ヤマトに乗艦していると思ったのですが、まさか地球に居たなんてビックリしましたよ」

 

「実は‥‥」

 

雪はこれまでの経緯を北野に話した。

 

「そうですか‥‥それで雪さんはあの館に‥‥我々の下にはあの館に防衛軍関係者が軟禁されているとしか情報が入って来なかったので、信号はイチかバチかの賭けだったんですよ‥‥しかし、良かったです。雪さんが無事で」

 

「北野君もちょっと見ないうちにたくましくなったわね」

 

「あっ、いや‥その‥‥ありがとうございます」

 

「北野君、ヤマトについての情報を知っている限り教えて欲しいのだけれど‥‥」

 

雪はアルフォンからイカルスへ向かった高速連絡艇からは生体反応が探知できなかった事を意識が回復した時に語られた。

 

アルフォンが言うには艇内で気圧かガスなどの何らかの事故が起こり、乗り込んでいた乗員たちは全員死亡したモノと推察される。

 

意識を取り戻したばかりの雪はその話を聞き古代が死んだと思い涙を流すも、時間が経つにつれて何かの間違いだと思い始めていた。

 

暗黒星団帝国は確かに地球よりも科学技術が優れている星だろうが、彼らだって人間なのだから間違いはある筈だ。

 

実際にヤマトはイカルスから発進しているような事を暗黒星団帝国の兵士たちはボヤいていた。

 

ヤマトが無事ならば古代もきっと生きているだろうと自分に言い聞かせてきたのだ。

 

そして今、パルチザン活動をしている北野とこうして会えた。

 

彼ならばヤマトについての情報を何か知っている筈だ。

 

「残念ですが、詳しい事は‥‥僕たちが掴んだ情報はヤマトがイカルスの偽装基地から飛び立ち、太陽系外へと向かったと言う事だけなんです。誰が乗り組んでいるのかまでは‥‥」

 

「そう‥‥」

 

しかし、北野もヤマトが発進した情報は持っていても誰が乗り込んでいるのかまでの正確な情報は持っていなかった。

 

「で、でも大丈夫ですよ。古代さんたちは殺しても死なないような人たちですから。さあ、元気を出して下さい、クヨクヨしているなんて雪さんらしくありませんよ」

 

「ありがとう‥北野君‥‥そうだ、コレを持って行って」

 

雪は北野にブローチ型の端末を渡す。

 

アルフォンも流石にこれがブローチ型の端末とは気付かなかったようで、調べる事も没収する事も無く、雪に持たせたままであった。

 

「コレは?」

 

「前に真田さんに造ってもらったの‥‥ブローチ型の緊急用通信端末よ。地球の何処にも使っていない周波数だから盗聴されにくいわ。でも、長時間回線をひらいていると、逆探知されるかもしれないから。情報は収束通信で送るわね」

 

「送るって‥‥雪さんはまさか、あそこに戻るつもりですか?」

 

北野としてはこのまま雪をパルチザン本部まで案内する予定だったが、雪は再び内務長官の屋敷戻り、敵から情報収集し、パルチザンに送ると言う。

 

「ええ、私を監視しているのは暗黒星団帝国の情報・技術将校なの‥‥彼の下に居ればあの重核子爆弾を含めて敵の内部事情を知ることが出来る筈よ」

 

「‥‥」

 

危険な任務であるが敵の情報が入れば、雪の言う通りあの重核子爆弾の弱点や敵の動きを知ることが出来る。

 

それに雪は自分が止めても、止まる女性ではない。

 

北野は渋々であるが雪を見送る事にした。

 

「‥‥分かりました。通信は毎晩二十三時丁度、三秒間だけ回線を開きます」

 

「いいわ‥‥二十三時丁度ね‥‥収束通信の解凍パスワードは‥‥『エイユウノオカ』でどう?」

 

「了解です」

 

「それじゃあもう戻るわね‥‥それと皆には私の事を内緒にしておいて‥‥皆に心配をかけたくないの。それと先輩としての命令よ。良いわね、絶対に死なないで!!何が有っても生きるのよ!!」

 

アルフォンが戻ってくる時間なので、雪は急いで戻って行く。

 

「雪さん‥‥」

 

北野は去ってゆく雪に敬礼し彼女を見送った。

 

雪を見送った後、北野は小島とティアナの下へ合流する。

 

「それで北野さん。待ち人は来ましたか?」

 

「いえ、あの情報はどうやらデマだったみたいです。あれから待ちましたけど、誰も来ませんでした」

 

北野は雪に言われた通り、彼女の存在を秘密にした。

 

「そうですか‥‥」

 

「この状況下です。デマ情報も流れてくるでしょう」

 

「そうですね。さっ、それよりも此処を離れましょう。あまり時間をかけると敵にみつかりますから」

 

「「はい」」

 

(雪さん、必ず地球は取り戻します。だから雪さんも必ず生き延びて下さいね)

 

北野は去り際に雪が居る内務長官の屋敷がある方向をチラッと見た後、急ぎその場から撤収したのだった。

 




次回 中間補給基地奇襲

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