地球遠征艦隊による中間補給基地陥落と基地の破壊‥‥
その事実は暗黒星団帝国軍地球占領軍にとってまさに青天の霹靂であった。
地球 メガロポリス東京 防衛軍司令部 現:暗黒星団帝国地球占領軍司令部
「な、なんだと!!それは本当か!!」
「はっはい!中間補給基地は消滅!さらに本国は地球艦隊の本国到達阻止のために手すきの艦隊を総動員するとのことでしばらくは自前でどうにかせよと…」
「くそっ!!」
本国からの指令に地球占領軍総司令官のカザンは焦っていた。
本国からもたらされた凶報‥中間補給基地が陥落したとなればただでさえ届きづらかった補給物資の到着がさらに滞り、軌道上に展開している艦隊の主力艦艇も地球艦隊の追撃の為に引き抜かれる可能性が高まる。
そうなればただでさえ苦慮している占領政策がさらに悪化しかねない。
焦ったカザンは賭けに出ることにした。
「…北米という地域に輸送艦部隊の展開は済んでいるのか?」
「は?はい。以前から指示されていたように各地から予備の掃討三脚戦車や空挺歩兵部隊もかき集めて南米制圧作戦への準備を整えましたが‥‥ま、まさか!?」
「そうだ!!すぐに作戦を実行するのだ!!調子に乗っている地球人共に眼に物を見せてくれるわ!!」
「し、しかしそれはいささか危険ではないでしょうか?ま、万が一、失敗したら‥‥」
「蛮族相手に負ける筈がない!!現に我々は地球を占領しているのだぞ!!」
確かに暗黒星団帝国は地球を奇襲とは言え、占領と言うこれまで地球へ侵略して来た星間国家が成し得なかった戦果を果たした。
しかし、占領後は徐々に戦力を削られている。
宇宙では次元潜航艦隊が通商破壊を行っており、地上ではパルチザンが抵抗している。
そして、中間補給基地までも破壊されてしまった。
そんな状況下において南米での一大作戦の実行‥‥
不安でしかない。
だが、カザンには未だに抵抗しているパルチザンに対して見せしめを含めて作戦を実行しなければならなかった。
南米管区 地球防衛宇宙海軍・防衛空軍・防衛海軍・防衛陸軍共用軍事要塞 ジャブロー要塞
ジャブロー要塞は暗黒星団帝国による地球占領後から完成以来初となる最重要拠点としての要塞と化していたのだ。
ジャブロー要塞はそもそもアマゾン流域の地下に存在する鍾乳洞を基にして地下都市建造時のノウハウを活用して建造が進められた大要塞だ。
宇宙艦艇建造ドック・隠ぺい式の航空機発進用のカタパルト・万が一の場合の連邦政府施設・航空基地等と言った軍事・政治施設群や病院や兵器開発拠点、地球全土に通信可能な通信拠点、シェルター。
これらが地下都市以上の耐久度と隠蔽能力を持って暗黒星団帝国軍の監視の目をかいくぐり、なおかつ各地に建設されていた防空施設、トーチカ群によって上陸部隊を跳ね返したのだ。
おまけに敵を跳ね返して以降は、世界各地のレジスタンス・パルチザン組織間の通信を中継することで各地の抵抗運動を成功に導き、東京の藤堂長官らが指揮するパルチザンの方針を各地に伝えて一斉蜂起への調整も行ってきたのだ。
この要塞で一時、世話になっていたシャルロットが自身を含めて、ティアナたちをパルチザンへの参加が出来たのもこの要塞の機能と要塞幹部の推薦があったからこそ叶ったのだ。
束が万が一に備えて建造を進言していたとはいえ束自身も暗黒星団帝国もこれほどの重要な拠点と化すとは想定していなかっただろう。
(実際、地球に帰還してからジャブロー要塞の活躍を聞かされた時に仰天したそうな)
ともかく、そんなジャブロー要塞の活躍もあって地球の抵抗運動は軌道に乗り始めた結果、地球全域の戦闘の主導権は暗黒星団帝国軍から地球に戻りつつあった。
そんな状況下でヤマト以下の地球艦隊の活躍や中間補給基地陥落を知られては暗黒星団帝国軍は一気に劣勢になる。
そのため現状を一気に打開するべく地球占領軍総司令官カザンは最後の賭けに出たのだ。
ジャブロー要塞 防衛司令部
『こちら北方監視所!敵超大型輸送艦及び護衛戦闘機部隊、多数が接近!!』
そんな北方監視所の悲鳴のような報告と同時に『敵部隊接近』を知らせる信号弾がジャブローの密林の各所から無数に上がり始める。
空の彼方には暗黒星団帝国の輸送艦と護衛の戦闘爆撃機がジャブローに迫りつつあった。
「来るぞ!!第一種戦闘配置に切り替えろ!!」
ジャブロー要塞防衛司令官のアントニオ・カラス中佐は防衛司令部から戦闘配置を発令した。
ウゥゥゥ~~~~!!!!!
『敵部隊多数接近!!各員!迎撃態勢に移れ!!』
「総員!第一種戦闘配置!!歩兵部隊と各艦の陸戦隊及び保安科は防衛線を構築して敵の侵入に備えろ!!」
要塞全域に警報が鳴り響き、ジャブロー要塞宇宙艦艇用ドックに偶々入港していて動けずにいたコロンブス級多目的補給艦を発展させた新型試作補給戦闘艦『ペガサス』艦長のブライト・ノアは各所に指示を伝達していた。
『こちら対空ミサイル基地、発光信号確認!方位128!ファイアミサイル!!』
この通信とともにジャブロー要塞の地上部分の敷地内の最も外側の防空ミサイル基地がミサイルを発射した。
それと同時に…
『こちら北部第二監視所!!敵本隊接近!!本隊接近!!』
『かなりの大部隊です!!』
それから数分後、暗黒星団帝国軍による空挺降下が始まったが‥‥
『全対空砲撃て!!弾幕を張れ!!』
『敵は多いぞ!!凡そで狙って撃て!!』
対空砲や対空機関砲群、CIWS、さらには61式戦車5型が自慢の155㎜滑腔砲をそのまま対空目標へ射撃して対空砲火の密度を上げていた。
そして防空戦闘機部隊には最新鋭機が装備されていた。
コスモソウライと呼ばれる最新鋭機である。
・コスモソウライ
月村財閥とロッキードマーティン社がコスモパイソンをベースにして開発していた局地防空用戦闘機である。そもそも試作段階であったコスモパイソンがイスカンダル星救援作戦の際に対戦闘機戦闘においては大活躍したことから防空任務にうってつけだと考えたロッキードと月村の技術陣が総力を結集して開発していた試作段階の最新鋭機である。
ステルス性と高高度性能を有している上に機動性も高いが少々コストが高いのが欠点である。
この最新鋭機の他にも旧式化して、練習機や予備機としてジャブロー要塞の奥深くの倉庫でモスボール保管されていた・もしくはモスボール保管されていたが旧式すぎるとしてメーカーによる解体処分待ちとなっていた機体が総動員されていた。
ガミラス戦役とガトランティス戦役終盤に運用され、予備役送りとなっていた内惑星戦争時代の大ベテラン機の『FF-S3 セイバーフィッシュ』や、セイバーフィッシュと同時期に開発され、とりあえず戦線に投入されていたがその機体性能の悪さから内惑星戦争後に解体処分待ちの命令が下されてそのままの状態で忘れ去られかけていた『FF-4 トリアーエズ』が久々の空を喜んでいるかのように戦闘に興じていた。
そして内惑星戦争終盤に開発が終わったが、大気圏内用の機体だったせいで結局使用されず、ガミラス戦争の大敗によって北米管区の防空隊所属の隼やブラックタイガーが全滅したことから再生産・再配備されていた『FF-6 TINコッド』も防人としての誇りから旧式化著しいものの奮戦していた。
「回せ!!回せ!!」
「エネルギーと弾薬は目一杯詰め込んでおきました!!心置きなく戦ってきてください!!」
整備員がパイロットたちを激励しつつ見送る。
『敵機甲部隊来るぞ!!』
『各員戦闘配置!!戦車隊も回せ!!』
ジャブローの防衛軍は万全の構えで暗黒星団帝国を迎え撃とうとしていた。
さて、暗黒星団帝国軍空挺部隊に視点を移そう。
『第一陣降下準備!!』
『掃討三脚戦車及びパトロール戦車隊降下します。続いて歩兵部隊を降下させます!!』
『第五中隊続け!!』
暗黒星団帝国のジャブロー攻略部隊は次々と威勢よく輸送艦より降下したが‥‥
ブワッ!!!!
ダダダダダダダダ‥‥!!
バババババババ‥‥!!
と表現するしかないほどの密度の弾幕が飛んできたのだ。
※イメージとしてはファーストガンダムのジャブロー攻防戦時の対空砲火が数倍濃いレベルである。
『こんな場所へ降りろだと!?』
『じょ、冗談じゃないぜ!!死にに行くようなもんじゃねぇか!!』
そう泣き言を言った空挺兵は着地する前に第二次内惑星戦争時に運用されていた艦から引っぺがされて要塞砲代わりにされていた20.3㎝連装メガ粒子砲の直撃を食らって文字通り消失した。
『お、降りられるのかよ!?』
ここからは双方の視点を交互に見ていこう。
『こちらAブロック!!増援を!!』
『敵が取り付いたぞ!!なんとしてもジャブロー要塞内部への侵入を阻止しろ!!』
その無線と時を同じくしてパトロール戦車数台が降下に成功するが‥‥
『へっ!降りちまえばこっちのも…』ドガァン!!
着陸直後を61式に狙われて粉砕された。
安心と思いきや…
『地球人どもめ!!こんなところによくも基地なんか!!』
そう言って怒りに任せた戦車兵の操る掃討三脚戦車の砲撃がよりにもよってジャブロー要塞の防壁を破ってしまった。
「来るぞー!!」
「敵の侵入を許したのか!?」
『第三十四号ハッチが突破されたぞ!!』
『第二百四十三区画に敵侵入!!』
数と勢いに任せて侵攻する暗黒星団帝国軍によってジャブロー要塞の防衛線は少しずつ押され始めていた。
『後続部隊続け!!敵に反撃の隙を与えるな!!』
『このまま一気に突破して司令中枢を抑えるのだ!!』
『ふん、所詮は野蛮人。俺たちに勝てると思っているのか?』
暗黒星団帝国軍はそれを感じ取って一気呵成に責め立てようとするが‥‥
ジャブロー要塞 防衛司令部
「百台強の敵戦車隊が降下したようです!!」
「手の空いている部隊はビッグトレー隊の護衛に回れ!!」
「かなりの大部隊だな?」
必死に指揮をとっている防衛司令部スタッフの後ろで呑気にそう言うのは地球連邦の北米管区にて北米管区軍を統括する立場にいるゴップ大将である。
「はい。しかし、このジャブロー要塞すべてを攻撃するには些か少なすぎますね?」
そしてそう相槌をするのはジャブロー要塞防衛副司令官である。
「功を焦って慌てて来たか?」
「ふむ、敵の狙いは統合通信センターのある区画にのみ集中していると‥‥」
「無線を探知されましたかな?」
「ああ、やはり無線暗号を変えたほうがよかったかもね?」
若干、旗色が悪そうな戦況があるにもかかわらず、二人の司令官はなんだか余裕がありそうに言い合っている。
そして、ジャブロー要塞攻防戦はいつの間にか最終局面を迎えようとしていた。
そもそもの話、ジャブロー要塞は地球防衛軍きっての大要塞である。そこに勤務している軍人も比例して膨大な人数だ。
その人員を総動員して迎撃に当たったわけだ。
地球占領軍からかきあつめたとはいえ、元の数が少ない暗黒星団帝国軍に勝てる要素はなかった。
結局、その日の夕方‥日が落ち始めた時間帯に暗黒星団帝国軍は暗闇を利用して現場指揮官の独断により撤退を開始した。
その判断はある面では正しかったが、それは別の地獄の始まりでもあった。
南米のジャブロー要塞があるエリアから北米管区へ脱出するにはジャングルや砂漠地帯を抜けねばならないし、そこにはゲリラ・コマンド兵やレジスタンスが跋扈している。
更に南米アマゾン川流域一帯はジャブロー要塞を建造したとはいえ、地球人類でもいまだ解明しきれていない生物の巣窟なのだ。
有毒生物、人に寄生する寄生生物、未知の細菌‥‥これが地球・ガミラス戦争の際に堕とされた遊星爆弾の放射線によって変異している可能性も否定できない。
何しろ蜘蛛女と言う事例が存在しているのだから‥‥
ジャブロー要塞に勤務する防衛軍軍人でも二~三日に一回は定期健診という名目で徹底的に検査を受けねばならないのだ。
そんな地獄の道のりを踏破して北米管区占領軍の基地に帰還できた暗黒星団帝国軍は全体の数パーセントであったという。
「なんだと!?それで被害は!?‥‥なにっ!?そんなにも損害を出したのか!?」
暗黒星団帝国軍地球占領軍総司令部の賭けは大失敗に終わったのだった。
被害報告を聞いたカザンは唖然とし、力なく椅子に腰かけた。
(こ、こんな報告‥本国へなんて出来る訳がない‥‥)
(サーダ様のお耳に入れば私は忽ち総司令官から更迭され死刑に‥‥)
あまりにも大きな被害を出した事にカザンは、頭を抱える。
幸い今回の作戦実行を本国へは報告を入れてない。
なので、本国がこの作戦の成果を尋ねてくる事は無い。
だが、大きな被害を出した事で今後の占領政策にまたもや支障をきたす事になったのは変わりない。
(こ、こうなれば一日でも早く例の新型戦車の実戦投入を急がなければ‥‥)
此処まで追い詰められているカザンであるが、彼にはまだ切り札がある様だった。
その切り札がパルチザンたちの前に現れるのはもう少し先の事になる。
次回 招かれざる者たち
銀河鉄道物語の小説を一話試し書きしたのですが読みたいですか?
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