内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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お待たせしました!!今回は管理局との絡みに変更しました!!


第百二十五話 招かれざる者たち

さて、選抜艦隊が中間補給基地を撃破して、暗黒銀河の境界面へと航行していた頃…。

 

 

シリウス恒星系

 

 

シリウス恒星には多数の艦艇が集結していた。

 

選抜艦隊の編成の際に選考から漏れるか航続距離の問題から居残りとなった艦、そして束と藤堂の封印命令書を受けて合流した残存艦艇がシリウス恒星系に停泊していたのだ。

 

補給艦や工作艦などが暗黒星団帝国軍からの猛追を振り切って合流してきた艦艇の修理・補給に追われ、中小艦艇は周辺警戒を行っていた。

 

 

晴風型重雷装駆逐艦 『晴風』

【挿絵表示】

 

「両舷前進十二速~」

 

「暇だね~」

 

副長兼航海長の宗谷ましろが操舵を行っている最中、水雷長の西崎芽衣はそうぼやく。

 

元々、晴風型も選抜艦隊に同行する予定だったのだが、内惑星戦争前に設計・運用を開始されたレパント級ミサイルフリゲートと地球ガミラス戦争後に地球防衛宇宙海軍連合艦隊で水雷戦隊の主力を担うために設計・建造された秋月型突撃駆逐艦をニコイチしたような様の晴風型重雷装駆逐艦は、打撃力は十分な物であった。

 

しかし、このシリウス恒星系までの航海ならともかく、地球から四十万光年先の暗黒星雲‥あるいはさらに先に進むかもしれない今回の作戦においては何よりも航続距離…というか補給等の問題があったのだ。

 

打撃力を重視した晴風型重雷装駆逐艦は秋月型の艦首とレパント級ミサイルフリゲートの船体中部と後部を無理やり合わせたような小さな船体にこれでもかと武装を搭載させた関係上、居住性は最低限度確保しているが補修部品・生活用品等の保管庫が極端に少なくなってしまったのだ。

 

まぁ、補給艦を同行させればよいし、食料はOMCS(オムシス)でなんとかなるのでここまでは問題にならなかったのだが、今回の敵本星急襲作戦では鈍足で非武装の工作艦・補給艦は安全面を考えると同行させられない。

 

戦艦や戦闘空母の類には工作室があるので自前でどうにかすればよいのだが、巡洋艦・軽装甲巡洋艦・駆逐艦の類はどうにもならない。

 

よって、集結してくる防衛軍の生き残り艦艇たちをまとめ上げるためにもアンドロメダ級戦艦二番艦『ネメシス』を筆頭にして中・小艦艇が居残っていたのだ。

 

そして晴風型重雷装駆逐艦のみで編成された《第一重雷装駆逐隊》は哨戒任務のためにシリウス恒星系からニ~三光年ほど離れた宙域を航行していたのだ。

 

「水雷長、確かに暇だがそれはいいことだぞ?敵が来ないということなのだからな」

 

「えぇ~でも、魚雷撃ちたい~!!カチコミ艦隊に同行したかったよぉ~!!せっかくタマとも久々に会えたのにぃ~!!」

 

「おい、それが本音か!!」

 

水雷長の西崎は極度のトリガーハッピーであり、訓練校時代には実習先となっていたレパント級ミサイルフリゲートにて教官の指示を無視して対艦ミサイルや空間魚雷を全弾ばらまいて複数隻で潰す予定だった標的艦十数隻を単艦で殲滅してしまうというほどの問題児でもあるのだ。

 

この事件がきっかけで一年間の停学処分を食らってしまい同級生で親友でもあったが、現在は武御雷にて砲術長補佐をやっている立石志摩と立場の差ができてしまったせいで会えなかったが艦隊再編時の交流会的な物の際に再開しており、久々に一緒に戦えると思っていた矢先に晴風が居残り組となったことで若干拗ねているのだ。

 

「まぁ実際問題この艦は月村司令の肝いりで建造されたそうですけど、建造当初から存在が疑問視されていましたからね~」

 

そう言うのは艦橋要員ではないが航海科であり、司令部等への報告書を作成したり敵艦艇を識別データから確認したりする任務に就いているこの晴風の艦橋要員の中でもムードメーカーでありつつトラブルメーカーでもある人物‥納沙幸子だ。

 

「なんせ搭載武装の大半が実弾兵器。光学系の武装は艦首上下に搭載されている二連装12.7㎝陽電子衝撃砲以外は艦尾の対空パルスレーザー砲塔のみ、レパント級以上でも最新型の秋月型以下の速力。これでどうやって『活躍しろ』っていうんでしょうか?」

 

彼女はデータベーススペシャリストを取得しており、常にタブレットを持って記録や計算、情報収集している関係上、晴風型重雷装駆逐艦の問題点も知っているのだが、それはあくまでもデータだけ。

 

束が対暗黒星団帝国戦の切り札として用意していたことは知らなかった。

 

「ぼやいている場合か!まったく‥‥各部見張り員及び船務長、周辺に反応並びに物体はあるか?」

 

『こちら艦橋上部見張り所、何も見えません』

 

『右舷艦橋見張り所も何も見えません』

 

『左舷艦橋見張り所も同じくです』

 

「レーダーの画面が宇宙物質の影響で真っ白です!!」

 

『通信は友軍艦艇のもの以外は聞こえません~』

 

『亜空間ソナーも何も聞こえません』

 

「ってええぃ!!一斉に言うな!!私は聖徳太子ではないのだぞ!!」

 

護衛艦猿島時代から相変わらずの乗員たちの規律の緩さにましろは頭を抱えたが、彼女自身もすでに慣れたので一度叱った後は放置した。

 

「どうもこの宙域は宇宙物質の影響でレーダーの類が全滅みたいです」

 

「…壊れる心配はないのか?」

 

「あっ、それは問題ないそうです」

 

そんなこんなありつつ晴風は姉妹艦の沖風・天津風・時津風とともに宙域哨戒を続けていたが‥‥。

 

『あら?‥こちら宙測員の万里小路ですわ。前方より次元変動を感知、何かがワープアウトか転移してくるものと思われます』

 

「なに!?くっ!!『総員!!こちら副長のましろだ!!急速後進を行う!!何かにつかまれ!!』通信長!!沖風・天津風・時津風にも伝えろ!!」

 

『はっはい!!』

 

万里小路からの報告を受けたましろは急速後進の指示を艦内放送にて知らせ、通信長の八木鶫には僚艦にも通達するように指示をした。

 

 

ガクゥン!!

 

 

そしてその影響で急激なGが掛かったがなんとか晴風以下第一重雷装駆逐隊はその宙域で急制動を行って止まった。

 

 

バシュウ!

 

 

「遅れてごめん!!しろちゃん!!状況は!?」

 

そして時を同じくして非直だったので、自室で休んでいた艦長の岬明乃が艦橋に飛び込んできた。

 

「報告します。前方宙域に何かしらの物体がワープアウトする前兆を捕捉したので駆逐隊全艦を一時停止させました」

 

「分かった。ありがとうしろちゃん。それで…『こちら艦橋上部見張り所!前方から何かがワープアウトしてきます!!』っ!ココちゃん!データとの識別用意!!」

 

「はい!」

 

そして前方からある艦がワープアウトしてきたのだが‥‥

 

「え?」

 

「あれは‥‥?」

 

その艦様は晴風乗員たちが見たこともないものだったのだ。

 

 

 

時空管理局所属 次元航行艦 『サンタフェ』 艦橋

 

【挿絵表示】

 

晴風以下第一重雷装駆逐隊の前に姿を現した艦隊は時空管理局の次元航行艦隊であった。

 

この艦隊は時空管理局強硬派がはやてがSS伊400と遭遇した際の報告を受けて地球防衛軍の生き残っているであろう艦艇に対していちゃもんを付けて拿捕・接収して我が物にしてやろうという意図から派遣されてきたのだ。

 

この作戦に動員された人員は基本的に強硬派メンバーやその部下のみであり、穏健派や低ランク魔導師に知られれば面倒なことになるとの判断からその類の者は除外されていたのだ。

 

「転移終了しました」

 

「よし、直ちに第二の第97管理外世界の艦艇を捜索して、艦を拿捕するのだ。管理局の管理下に置かれていない軍事組織などあってはならんのだ!!」

 

‥‥地球の者達からすれば『中華思想か?』と白い目を見られたであろうことは言うまでもない。

 

「提督!前方に四隻ほどの艦影を確認しました!データから第二の97管理外世界の艦であることは間違いありません!!」

 

「しかもエネルギー反応から本艦よりも小型の艦の様です!!」

 

「ほう…諸君!我々は幸先が良いぞ!!すぐにその艦に艦首を向けよ!!そして投降を呼びかけ拒否すれば直ちに沈めて残骸を接収するのだ!!」

 

「「「応!!」」」

 

と艦長以下意気揚々とした様子であったが、艦橋に偶々諸事情で来ていた臨検班メンバーで排除されなかった二人の穏健派のうちの一人でもある『小鳥遊ホシノ』は呆れ果てていた。

 

(馬鹿なんですかね?こいつらは‥‥あの地球の艦相手に時空管理局の船がかなうわけがないのに‥‥仕方ありません。ユメ先輩を引き連れてさっさと脱出艇で逃げましょう。そうしましょう)

 

 

そう考えて彼女は『すみません。ちょっとお手洗いに…』と言って艦橋を抜け出して自身の訓練校時代の先輩であり臨検班に所属していた『梔子ユメ』を無理やり引き連れて脱出艇へと向かうべく走った。

 

「急いで逃げますよ!!ユメ先輩!!」

 

「えっ?ちょっと、逃げるって何処に?それにどうして?」

 

「艦橋で艦長たちは第二の97管理外世界の艦に喧嘩を売るつもりです。いくら相手が小型艦でも、噂では第二の97管理外世界の艦は管理局の次元航行艦よりも強力らしいです。このまま此処に居れば、次元の海の藻屑になりますよ」

 

「えぇぇぇー!!ちょっと待ってよ!!管理局は第二の97管理外世界と戦争をするつもりなの!?」

 

「艦橋に居た艦長たちの話を聞く限りそうですね」

 

「そ、それってヤバいんじゃあ‥‥?」

 

「だからこうして早く逃げないとヤバいですって!!」

 

小鳥遊は梔子の手を引き、急いで脱出艇のある格納庫を目指した。

 

 

晴風 艦橋

 

 

「識別できました!ワープアウトしてきた不明艦は『時空管理局 XV級次元航行艦』です!艦艇数は五隻!!」

 

「時空管理局?」

 

「えっ?なんで?時空管理局が此処に‥‥?」

 

晴風メンバーはいきなりの時空管理局の出現に困惑した。

 

まぁそりゃそうである。

 

時空管理局のことは以前、軍では講習が行われており、かなり怪しい組織であるということは理解していたがなんでこの宙域にいるのかがわからない。

 

だが、その理由は直ぐに判明した。

 

「艦長!時空管理局艦から通信です!『直ちに機関を停止させてこちらの指示に従え!!抵抗、拒否する場合は撃沈する。次元世界はすべて時空管理局の管理下である』です!」

 

「「はぁ!?」」

 

この報告に明乃もましろも愕然とした。

 

この宙域は、一応は地球の影響下にあり、どこの国家の領土でないことは既に確認されている。

 

一時期はガミラスの影響下であったが、地球・ガミラス戦争後は完全に地球の影響下なのだ。

 

シリウス恒星系での演習直前に遭遇した管理局の艦もそんなことは言ってこなかったと聞いている。

 

「ど、どういうことだろう?」

 

「まぁ、ともかく相手は交戦の構えです。こちらも応戦体制を敷いておくべきかと‥‥」

 

「そ、そうだね!総員第一種戦闘配置!!」

 

『総員!第一種戦闘配置!』

 

明乃は困惑しつつもましろの意見具申を受け入れて戦闘配置を下令しする。

 

艦内には警報が鳴り響き、乗員たちが駆け足で配置に着く。

 

「つぐちゃん。管理局艦に返信!『この宙域は地球連邦の影響下である。地球連邦傘下でない時空管理局がこの宙域で権限を行使することは全くの筋違いである。万が一武力を行使するならばこちらは自衛の為、全力を持って応戦する』って」

 

「はっ、はい!!」

 

明乃にしては珍しく強気な発言であるが、防衛軍軍人ならば当然の主張であった。

 

そして、明乃は八木に返信の内容を伝えて返信させた。

 

(暗黒星団帝国で手一杯なのに、厄介な時に横やりを入れて来て面倒な‥‥)

 

(それに管理局の目的はこの晴風自体のような気がする‥‥)

 

明乃は管理局の通信内容から、このシリウス恒星系を管理局の領土にしたいと言う意思よりも晴風を始めとする防衛軍の宇宙艦船を欲しがっているように感じた。

 

 

時空管理局所属 次元航行艦 『サンタフェ』 艦橋

 

「前方の小型艦より返信」

 

「なんと言ってきておる?」

 

「はっ、『この宙域は地球連邦の影響下である。地球連邦傘下でない時空管理局がこの宙域で権限を行使することは全くの筋違いである。万が一武力を行使するならばこちらは自衛の為、全力を持って応戦する』‥‥以上です」

 

晴風からの返答を受け取った管理局強硬派であるが、その内容は自分たちの要求を拒否するどころか、『その喧嘩、買ってやるよ』と言う感じの内容だった。

 

こんな内容の電文を受け取った管理局強硬派が黙っているわけがなく‥‥

 

「ふん、魔法も使えぬ蛮族共が‥‥こちらが下手に出れば付け上がりおって‥‥攻撃だ!!撃沈しても構わん!!ある程度の残骸を回収できればそれでいい!!ジャスティス・カノン撃て!!」

 

「はっ、ジャスティス・カノン発射!!」

 

晴風の返信を聞き、次元航行艦は主砲であるジャスティス・カノンを放った。

 

 

晴風 艦橋

 

「管理局艦発砲!!」

 

「なんだと!?」

 

「最大船速!!面舵一杯!!!」

 

「面舵一杯!!」

 

管理局の次元航行艦から、いきなりビームを発砲してきた。

 

晴風は即座に回避し、沖風・天津風も回避に成功したが、艦隊最後尾にいて転舵に遅れた時津風は船体下部に被弾してしまった。

 

『時津風被弾!!』

 

「えっ!?」

 

「時津風の状況は!?」

 

『時津風から報告!!『我、艦尾付近に被弾!!艦底部右舷側放熱フィン損傷!!機関部にもダメージが発生!航行不能!!』』

 

なんとよりにもよって放熱フィンと機関部に損傷を受けてしまったのだ。

 

晴風型重雷装駆逐艦はその大火力な火器を運用し速度を出すために波動エンジンをその船体に見合わないほどの高出力機関にしている関係上、機関部は非常にデリケートなのだ。おまけに排熱のためにレパント級ミサイルフリゲートから受け継いだ放熱フィンも使用しているので排熱板が破損すれば速度が低下してしまう。

 

「そんな!!」

 

「時津風が!!」

 

時津風からの報告に晴風艦橋員たちは驚愕した。

 

『『ネメシス』の本隊からも通信があり、艦の増援を出撃してくれるそうですが到着まで三十分程かかるとのことです!!』

 

そして続く報告は喜ばしい物であったが、三十分も逃げ回るわけにもいかないし、航行不能状態の時津風を抱えてそんなことはできない。

 

というか管理局側はここぞとばかりに時津風に殺到し拿捕しかねない。

 

そうなれば機密保護の観点から時津風を撃沈するしかなくなってしまう。

 

勿論、乗員の脱出何て待っていられない。

 

つまり、時津風の乗員ごと時津風を処分しなければならないのだ。

 

「‥‥しろちゃん。正当防衛の要件はもう満たしているよね?」

 

「え?ええ、『急迫不正の侵害があること』これは先の電文で満たせます。次に『防衛の意思があること』これは当然ですがね。そして『防衛の必要性があること』これも同じく、そして最後に『防衛行為に相当性があること』‥‥これは今正立しました」

 

「よし!我が第一重雷装駆逐隊は正当防衛のために戦闘に突入するよ!!沖風のもかちゃんと天津風のちーちゃんに伝えて!!」

 

「了解!!」

 

「時津風の無念を晴らす!!一艦残らず葬り去る!!」

 

この言葉を合図に第一重雷装駆逐隊にとって初の単独戦闘が開始された。

 

まず、航行不能状態の時津風とその護衛についた沖風の後部VLSと両舷のミサイル発射管から多数の対空・対艦ミサイルが発射された。

 

その数は原子力空母を有していないソ連海軍が米海軍機動部隊と戦うために生み出した戦術である『ミサイル飽和攻撃』を彷彿とさせた。

 

管理局側はレーザー砲塔で迎撃を試みようとしたが束が暗黒星団帝国軍との戦を想定して肝いりで設計させた晴風型重雷装駆逐艦に搭載されているミサイル群は通常のミサイルに比べてはるかに高速であり、防空巡洋艦である伊吹型でも何とか迎撃できるか否かというレベルの高性能さを有している。

 

対空戦闘はおろか対艦戦闘さえもまともに想定していないXV級ごときでこのミサイル弾幕を防げるわけがない。

 

結局、五隻いるXV級はこの攻撃で旗艦を除く四隻すべてにミサイルが殺到したことにより四隻中二隻が瞬時に爆沈し、残りのニ隻も爆沈寸前まで追い込まれ、沖風からの精密な砲撃によって轟沈した。

 

旗艦はこの惨事を見て戦意喪失したのか転進しようとしたが全速で突入してきた晴風と天津風が至近距離で主砲を発砲。

 

至近距離から艦橋と機関部を蜂の巣にされて旗艦である『サンタフェ』は轟沈した。

 

 

天津風 艦橋

 

「敵艦隊撃沈を確認。全滅です」

 

「御大層な事を言っている割には大したことないじゃない。時空管理局、恐るるに足らずね」

 

天津風の艦橋で管理局艦の全滅の知らせを受けた艦長の高橋千華が呆れるように呟く。

 

『ダメだよ、ちーちゃん。侮っちゃあ』

 

そこへ、明乃が忠告をいれる。

 

時空管理局は確かに怪しい組織ではあるが、その全容全てを理解している訳ではない。

 

管理局にはもっと強力な艦、武器がある可能性は充分にある。

 

「はい、はい、分かったわよ。それよりも急いで時津風を曳航して、援軍と合流しましょう。管理局の第二陣が控えていないとは言い切れないしね」

 

『うん。そうだね』

 

晴風と天津風は航行不能となっている時津風の曳航準備を行う。

 

その間、沖風は周辺の警戒をしていたが、

 

 

沖風 艦橋

 

「知名艦長、本艦の至近に脱出艇らしき小型艇が居ます!!」

 

沖風のオペレーターが小型艇の反応を捉える。

 

「モニターに映して」

 

「はい」

 

沖風の艦橋モニターにはこの宙域から逃げようとする小型艇の姿が映し出される。

 

「‥‥通信長」

 

「はっ!!」

 

「小型艇に通信を入れて」

 

「了解」

 

沖風の通信長は小型艇へ通信を入れる。

 

この小型艇こそ、『サンタフェ』から脱出した小鳥遊と梔子が乗る脱出艇だった。

 

 

脱出艇 コックピット

 

「ま、まさか、あんな小型艦にXV級全部が‥‥」

 

「だから言ったでしょう!?第二の97管理外世界に喧嘩を売るとヤバいって!!」

 

「でもこれからどうしよう‥‥この脱出艇で本局まで戻れるの?」

 

「それは‥‥」

 

脱出艇の航続距離ではとても本局‥いや、此処から一番近い管理世界へ辿り着くのも難しい。

 

そんな中、通信が入る。

 

『停船せよ。貴艦は完全に捕捉されている。停船しなければ撃沈する。貴官らには寛大な処置を約束する』

 

沖風からの通信‥これは事実上の降伏命令であった。

 

「ど、どうしよ‥‥」

 

「どうするもこうするも此処は指示に従わないと待っているのは『死』のみですよ」

 

仮に相手を振り切っても管理局の庭先まで辿り着けずに漂流し、その先に待っているのは『死』‥‥

 

指示に従わなければ攻撃をされて『死』‥‥

 

生き残れる道は相手の指示に従うだけだ。

 

「‥‥」

 

梔子は現実を理解して顔を俯かせる。

 

(あの艦に乗った時点で私たちの運命は決まっていたのかもしれないわね‥‥)

 

小鳥遊も梔子と同じく現実を受け入れた。

 

第二の97管理外世界と管理局は犯罪者引き渡し条約も結んでいない。

 

自分たちは第二の97管理外世界から見ると領海侵犯を起こした犯罪者だ。

 

もう二度と、ミッドチルダの地を踏むことも家族と会う機会も訪れないかもしれない。

 

だが、それでも生き残ることが出来る。

 

「先輩‥‥」

 

「エンジンを止めて‥‥」

 

「‥‥はい」

 

小鳥遊は脱出艇のエンジンを止めた。

 

この戦闘での管理局側の生存者は戦闘開始前に脱出艇で脱出し、沖風に収容された『小鳥遊ホシノ』と『梔子ユメ』の二人だけであった。

 

そしてこのことが管理局本局に伝わったのがこの戦闘から二週間経った後であった。

 

 

管理局本局

 

 

「なんやて!?それは確かなんかクロノ君!!」

 

『ああ、しでかしてくれたよ。XV級五隻がやられたそうだ』

 

「な、なんてこった‥‥」

 

はやては頭を抱える。

 

「‥‥それで、被害は?」

 

「XV級五隻が行方不明だ」

 

「‥‥生存者は?」

 

「第二の97管理外世界が暗黒星団帝国に占領されているから詳しい情報が入ってこないのだが‥‥恐らく全滅と見た方がいいだろう」

 

「‥‥」

 

クロノが苦々しく呟き、はやては顔を引き攣らせる。

 

「そ、それで、管理局は今回の件についてどう対処するつもりなんやろう?」

 

「ん?どう?とは?」

 

「今回の件を口実に管理局がもう一つの地球へ攻め込むって事態がおこらへんかな?」

 

「‥‥少なくとも今すぐにではないだろう。今、地球は暗黒星団帝国に占領されている。あの地球を占領するくらいの力を持った世界だ。管理局ではとても対処できないだろう」

 

クロノは今の地球に対して武力制裁をしても逆に管理局が返り討ちにされるだろうから、管理局が事を起こすにしても今ではないと予測した。

 

「でも、いずれは事を起こすってことかいな?」

 

「‥‥おそらく」

 

「‥‥」

 

管理局よりも力のある世界の存在を管理局員全員とは言わないが、管理局がそう易々と見過ごす筈がない。

 

絶対に管理下に置こうとするはずだ。

 

(管理局がもう一つの地球を狙うとしたら、地球が暗黒星団帝国から解放された直後‥‥)

 

(戦後の混乱と地球が暗黒星団帝国との戦いで疲弊した隙を狙うのではないだろうか?)

 

(地球側も時空管理局がこれまでしてきた行いから当然警戒する筈だ)

 

(だが、地球がフェイトたちの返還する為に交信が再開された時、地球が暗黒星団帝国から故郷を解放した証拠となるが、それが戦後直後だとは限らないかもしれない)

 

(いずれにしてももう一つの地球との戦争は避けなければ管理局は破滅する‥‥)

 

(管理は無理でもせめて交流か同盟に持ち込めれば‥‥)

 

クロノはもう一つの地球との戦争回避について早期に取り組むべきだと決心するのだった。




次回 罠

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