内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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大変お待たせいたしました。


今回はステルス兄貴さんのご協力をいただいて作成いたしました。大変ありがとうございます!!


第百二十七話 罠 中編

『白い花』からの情報で地球連邦政府の大統領をはじめとする政府高官らの護送情報を手に入れたパルチザン。

 

軌道上に展開している宇宙艦船に護送されては地上に居るパルチザンたちでは手を出せない。

 

なにしろ、今のパルチザンは宇宙艦船を保有していないからだ。

 

シリウス恒星系やプロキオン恒星系では防衛軍の宇宙艦船が何隻か存在しているが、彼らに占領下の地球へ派遣を要請すると、暗黒星団帝国は地球に打ち込んだ重核子爆弾を起爆させる危険性がある。

 

よってシリウス恒星系・プロキオン恒星系に潜んでいる宇宙艦船に地球への派遣は要請出来ない。

 

それに長距離通信を行うと敵に傍受される危険もある。

 

なので、政府高官を助け出すには収容施設にまだ居る間に襲撃をして救出をしなければならない。

 

しかし、此処でこの情報に疑問を持つ者が居た。

 

それは、ガーディアン連隊の隊員たちであった。

 

特に疑問を持ったのが、移送理由の『施設の老朽化』である。

 

これまで情報提供者の『白い花』はパルチザンに有益な情報を与え続け、パルチザンを勝利へと導き、大勢の地球人を救った。

 

しかし、暗黒星団帝国の中に、物凄く頭がキレる者、情報戦に精通している者が居たら、『白い花』の存在に気づき、逆にその『白い花』の名を語り罠にかけるのではないか?

 

そんな疑問が、ガーディアン連隊の隊員たちにあった。

 

だが、今回もこの『白い花』からの情報を信じたパルチザン上層部は作戦を実行する事が決まってしまった。

 

政府高官が捕らわれているとされる施設へは空間騎兵隊の古野間をはじめとする少数精鋭部隊が向かう事となった。

 

ガーディアン連隊は陽動の為に虎の子である戦車を使用する事となった。

 

「ですが、61式で倒せますかね?」

 

「ん?」

 

小島がまほに疑問を投げかける。

 

「暗黒星団帝国が襲来してきた時、当然防衛軍も戦車隊で応戦しましたが、敵の三脚戦車には我が方の新鋭01式戦車の二連装陽電子衝撃砲は三脚戦車にキズ一つつける事も出来ませんでした」

 

三脚戦車相手に防衛軍の誇る新鋭の01式戦車はまさに一方的に破壊された。

 

「パトロール戦車ならば、何とか相手にすることは出来ると思いますが‥‥」

 

「‥‥」

 

陽動となれば、当然相手にはあの三脚戦車が出てくるだろう。

 

もし、三脚戦車を相手にしたらあの悪夢の一夜同様、一方的に撃破されてしまう。

 

そこで、まほが三脚戦車相手に練りだした対策が‥‥

 

「‥実弾だ」

 

「えっ?」

 

「三脚戦車を相手する際は、光学兵器ではなく実弾を使用する」

 

「じ、実弾ですか!?」

 

まほの対三脚戦車戦術に小島は思わず声が裏返る。確かに61式は01式と異なり、波動エンジン理論がイスカンダルから伝来する以前に基本設計がなされたので実弾運用を前提にされているので実弾戦術は可能なのだ。

 

「そうだ。光学兵器が効かなければ、実弾で‥徹甲榴弾で三脚戦車の相手をする」

 

「ですが、光学兵器でさえ相手の装甲に無効化されました。実弾で効きますでしょうか?」

 

「何もあのノッポ足を破壊しなくてもいい」

 

「と、言いますと?」

 

「ひょろ長い足と胴体の付け根‥あの部分だけ狙って壊すことが出来たらどうなると思う?」

 

「あのひょろ長い足と胴体部分が‥‥」

 

小島は敵の三脚戦車の姿を思い浮かべ、まほの言うように足の付け根とコックピットである胴体の付け根を壊した姿を想像する。

 

「あっ、なるほど、転倒しますね」

 

「そうだ。あの形状で一度転倒すれば重機を使わなければ起こすことは出来ない。戦闘中にそんな悠長な事をやっている余裕があると思うか?」

 

「ありません。せいぜいコックピットから脱出するのでいっぱい、いっぱいですね」

 

「そういう事だ。何も相手を木端微塵に破壊しなくても戦闘中に無効化することが出来ればいいのだ」

 

「了解です。ありったけの徹甲榴弾を戦車に詰め込みますね」

 

「そうしてくれ」

 

まほは対三脚戦車の戦術をガーディアン連隊の隊員たちへ通達するが、この戦術もまだ一度も三脚戦車相手に試した事の無い戦術であり、完全に破壊することを念頭にいれていないので戦闘後、敵に修理され再び戦線に復帰される可能性は充分にある。

 

だが、今まほが出来るのはこれが精一杯であった。

 

やがて、各隊準備が整い作戦は実行に移された。

 

収容所周辺には空間騎兵の他に北野、ティアナの姿もあった。

 

「いいか、現在地は此処だ。政府高官らを収容している独房は此処‥‥東、ロジャー隊は裏口へ回れ。俺、北野、ランスターの三人は東側の通用口から忍び込む‥‥いいな?」

 

収容施設の地図を見ながら古野間が最終確認を行う。

 

「たった三人で大丈夫ですか?」

 

「それは、お前らがどれだけ敵を引き付けてくれるかにかかっているよ。いいな、シグナル3で陽動開始‥‥シグナル5で作戦中止、撤退だ。ガーディアンの連中にも急ぎ暗号通信で送れ」

 

「了解」

 

「さて、北野、ランスター‥‥準備はいいか?」

 

「緊張はしていますがね‥‥いつでもいけます!!」

 

「私も‥これまでの訓練の成果を十分に活かしてみせます!!」

 

北野もティアナもコスモガンの最終調整を終え、古野間に準備が出来たことを伝える。

 

「よし、行くぜ!!」

 

こうして政府高官救出作戦は実行された。

 

 

作戦が開始され、政府高官が収容されているとされる施設を歩く中、北野もティアナも違和感を覚える。

 

「あ、あの北野さん‥‥」

 

「ん?なんだい?」

 

「‥‥その‥何かおかしくありませんか?」

 

「ランスターさんも気づきましたか?」

 

「はい。移送するにしてはあまりにも手薄過ぎる気がします」

 

「僕もこの施設に入ってから、そう思っていたが‥やはり妙だ‥‥」

 

政府高官を移送するのだから、当然その情報が外部に漏れる可能性を考慮して警備は厳重にする筈だ。

 

しかし、施設内はあまりにも警備が手薄過ぎる。

 

此処まで来て、敵の警備兵を一人も見かけない。

 

警報装置の類も見ない。

 

「これってもしかして‥‥」

 

ティアナは今回パルチザンに齎された情報が誤報‥あるいは罠なのではないかと思い始める。

 

誤報ならば早々に撤収すれば被害は無いが、もし罠だった場合は‥‥

 

「うん‥‥古野間隊長。どうもおかしいとは思いませんか?あまりにも警備が手薄過ぎると思うんですけど‥‥?」

 

「ああ‥なんだか臭うな」

 

古野間もこの施設の違和感を覚えていた。

 

「古野間隊長。作戦を中止して早々に撤収した方がいいかもしれません。あの情報が誤報なら兎も角、敵の罠だったとしたら‥‥」

 

ティアナは撤退を古野間に進言する。

 

「そうだな。撤退準備を始めてくれ‥ただ、独房だけは一応、確認しておこう」

 

誤報、罠の可能性もあるが、この施設に誰か捕らわれている可能性も否定できない。

 

そこで、古野間はせめて独房エリアだけでも確認してから撤退する事にした。

 

やがて、三人は独房エリアの手前にあるドアまで辿り着いた。

 

しかし、此処まで来る間、やはり警備兵の姿は見えなかった。

 

(巡回も見張りも無い‥‥やっぱり変だわ)

 

ティアナの違和感はまずます強くなった。

 

「此処から先が独房エリアだ‥いいな、開けるぞ!!」

 

「は、はい」

 

「了解」

 

此処に来るまでの間、警備兵は居なくても、もしかしたらこの先の独房エリアに集中的に配置されている可能性もある。

 

北野とティアナは手にしたコスモガンを構え、古野間はドアのロックを解除する。

 

ドアが開き独房エリアへと入ると、そこには警備兵はおろか収容されているとされている政府高官の姿もなかった。

 

「そんな‥‥」

 

「誰も‥いないだと‥‥!?そんなバカな!?」

 

「古野間隊長、やはりこれは罠です!!直ぐに撤退を!!」

 

此処に来て、誤報の可能性よりも罠の可能性が高いと判断したティアナは古野間へ撤退するように伝える。

 

「あ、ああ‥こちら古野間!!シグナル5だ!!急げ!!」

 

古野間は急ぎ別動隊、陽動部隊へ撤退を伝える。

 

「聞こえるか!?東、ロジャー!!シグナル5だ!!すぐに撤退しろ!!‥‥おい、東、ロジャー!!」

 

古野間が別動隊に連絡を入れるが、別動隊からは応答がない。

 

すると、

 

「いくら連絡を入れても無駄だ」

 

「「「っ!?」」」

 

さきほど自分たちが入って来たドアの向こうには銃を構えた占領軍の兵士とマントをつけた士官らしき一人の軍人が立っていた。

 

三人は急ぎ物陰へと身を隠す。

 

「裏口に居たお仲間はもうこの世にはいない‥‥悪い事は言わん。君たちも観念する事だ」

 

「ち、畜生‥‥」

 

応答が無い事、そして占領軍士官であるアルフォンの口ぶりから裏口に展開していた東、ロジャーの両部隊は全滅したのだろう。

 

「優秀な君たちのことだ‥‥戦力差が歴然なのは分かるだろう?」

 

「「「‥‥」」」

 

「投降したまえ‥裏口のお仲間を全滅させてしまったので、君たちにはパルチザンの情報を話してもらわねばならんのだ。此処で殺したくはない」

 

(『此処で殺したくはない』って事は情報を洗いざらい聞いた後は殺すってことじゃない)

 

(仲間を売るような真似は絶対に出来るか)

 

ティアナも北野もアルフォンの話を聞いても投降なんて出来る訳がなかった。

 

当然、仲間を殺された古野間も同様だ。

 

「古野間隊長、北野さん、目を閉じて‥そして、敵が怯んだ瞬間、あそこへ‥‥」

 

ティアナは小声で二人に声をかけ、ある場所を指さす。

 

「あそこは‥‥」

 

そして、ティアナは占領軍兵士とアルフォンが居る場所へ閃光手榴弾を投げつける。

 

バン!!

 

「ぐはっ!!」

 

「うわぁっ!!」

 

閃光手榴弾が炸裂しあたりは一瞬の間、光に包まれる。

 

不意をくらった占領軍兵士たちは古野間たちが襲撃してくると思い銃を乱射する。

 

「ま、待て!!撃つな!!」

 

アルフォンが声を上げるが、パニックになった兵士たちは銃を乱射し続ける。

 

やがて、光が収まると、そこには同士討ちをして果てた兵士たちの姿があった。

 

「同士討ちなどしおって‥‥」

 

「侵入者は、ダストシュートから地下施設へ逃げた模様です!!」

 

同士討ちを避けることが出来た兵士が開けっ放しのダストシュートの扉を見つけ、アルフォンに報告する。

 

「地下か‥‥確か下水道に繋がっている筈だが、あそこは全て出入り口を封鎖している‥‥となれば、出口は一つしかない‥‥」

 

「はっ!!これより、出口を封鎖、敵を追い詰めます!!」

 

「よし、行け。ただし発砲は許可するが、決して殺すな!!何としてでも生け捕りにしろ!!」

 

「はっ!!」

 

パルチザン本部を知るには何としてでも捕虜を得なければならない。

 

裏口に展開していたパルチザンの部隊は全員が玉砕したので、情報を掴むには何としてでもあの三人の誰か一人を生きて捕えなければならない。

 

兵士たちは急ぎ出口へと向かった。

 

一方、ダストシュートで地下に逃れた古野間たちは‥‥

 

「大丈夫か?北野、ランスター」

 

「な、なんとか‥‥」

 

「私も‥‥」

 

「ダストシュートか‥‥ふっ、俺にはお似合いだぜ‥‥くそっ、まんまと俺たちは騙されたんだ!!」

 

古野間は自嘲めいた言葉を吐く。

 

「『白い花』が流してきた情報はまったくのデタラメ‥‥偽情報だったんだ!!」

 

「「‥‥」」

 

「これでパルチザンの戦力は激減する。空間騎兵隊の生き残り‥‥優秀なベテランの兵士に若い兵士‥‥みんな失っちまった。この分だとガーディアンの連中も‥‥くそっ!!‥‥もしかして『白い花』自体、敵の策略だったのかもしれないな‥‥最初の内は有益な情報を俺たちに与え、信用を得た途端、土壇場で俺たちを裏切る‥‥もしそうなら、これ以上の打撃はねぇ‥‥」

 

「古野間さん、それは違います!!『白い花』は味方です!!今回は何かの間違いです!!」

 

古野間は『白い花』は占領軍の策略ではないかと疑うが、北野はソレに対して弁解する。

 

「何かの間違いでパルチザンの主力を一度に失う程の被害を出す事態になるか!?」

 

「‥‥」

 

古野間の言葉に北野は言い返せない。

 

状況的に見ると、『白い花』が敵の策略と言われても否定できない程の被害をパルチザンは受けてしまった。

 

「お前、えらく『白い花』の肩を持つな‥‥」

 

「じ、自分は‥『白い花』に会いました」

 

「えっ?」

 

「なに!?」

 

北野は声を押し殺し、自分は情報提供者である『白い花』と直接面識がある事を告げる。

 

「い、一体いつ会ったんですか?」

 

ティアナが北野にいつ『白い花』と出会ったのかを尋ねる。

 

「ランスターさんと小島さんと三人で軍の高官が捕えられていると情報を掴み偵察に行った日だ」

 

「で、でも、あの時、北野さんはデマだったって‥‥」

 

「‥‥」

 

「つまり、味方を欺いてまで正体を隠さなければならない奴って事か‥‥そうまでして正体を隠す『白い花』は一体誰なんだ?情報屋か?上手く敵に潜り込んだスパイか?まさか、敵の内通者だって言うんじゃあるまいな」

 

「‥‥」

 

古野間の問いに北野は俯き『白い花』の正体を言わない。

 

「やはり、敵の内通者なのか!?俺たちは敵の情報で踊らされていたのか!?」

 

「違う!!違うんだ!!」

 

此処で、北野は声を荒げる。

 

「そんなに知りたいなら教えてやります!!『白い花』は敵の内通者なんかじゃない!!『白い花』は‥‥『白い花』は、元ヤマト乗組員の森‥雪さんだ。名前は誰にも教えない約束だった‥‥言えば、みんなが心配するからと‥‥」

 

これ以上黙っていると雪の名誉、そしてパルチザン内に不協和音を齎すと思い、北野は古野間とティアナに『白い花』の正体を暴露する。

 

「えっ?森さんが‥‥『白い花』‥‥」

 

ティアナは『白い花』の正体を聞き、目を見開いて驚く。

 

「あの人は今、とある場所に軟禁されている‥‥そこから小型端末で敵に見つかる危険をおかしてまで我々に情報を提供してくれていたんだ‥‥古野間さんはあの人に会った事が無いから、そんな事が言えるんだ!!あの人は‥‥あの人は、決して仲間を‥地球を裏切るような人じゃない!!」

 

「‥‥もういい、わかった」

 

「しかし‥‥!!」

 

「『わかった』、と言ったんだ。北野‥俺も会った事があるんだ‥‥あの娘にはな‥‥」

 

「えっ?」

 

「古野間さんも森さんと面識が!?」

 

暗黒星団帝国が地球へ襲来して来たあの日、古野間は都市防衛隊として暗黒星団帝国を迎え撃っていたが、宗像と共に伝令任務で司令部へ向かう中、地下通路にて、有人機基地へ向かう雪と邂逅していた。

 

「俺は信じる‥‥いや、信じたい‥‥あいつの目を‥‥」

 

「古野間さん‥‥」

 

「恐らく森さんは、利用されたのではないでしょうか?」

 

ティアナは今回の罠は雪も騙されたのではないかと推測する。

 

「利用?」

 

「はい。森さんは敵の手中の中で、敵の情報を私たちに流していました。そして情報を受け、これまで私たちは暗黒星団帝国に勝ってきましたが、それを逆手にとられたのかもしれません。敵は敢えて間違えた情報を森さんに聞かせて、森さんは間違った情報‥敵の罠だと知らず、その情報を今回私たちに提供してしまったのではないでしょうか?」

 

「俺もランスターの推理通りだと思う。どうやら、厄介な奴が敵には居るみたいだな‥それよりも今は現状を生き抜くことが重要だ」

 

「都市の地下ならデータベースがある筈です‥‥」

 

ティアナは端末を使い、自分たちがいる地下の見取り図を検索する。

 

「あっ、出ました。これが今、私たちが居る地下区画です」

 

「下水道を抜けて‥‥畜生、出口は一つかよ‥‥」

 

「当然、敵は出口を固めているでしょうね」

 

「此処から生きて出るには強硬突破するしかねぇか‥‥さて、行くか?こうなりゃあ絶対に生き延びて、人目でもあの娘に会って礼を言わなきゃな」

 

三人は地上を目指して下水道を通る。

 

しかし、そこには当然占領軍の兵士たちが待ち構えていた。

 

下水道にて激しい銃撃戦を繰り広げコスモガンの他に携帯していた手榴弾で占領軍の兵士を蹴散らしながら地上を目指す三人。

 

ようやく地上へ上がるエレベーターホールまで来るが当然そこもガッチリと守りを固めている。

 

下水道では少数や分散配置されていたが、エレベーターホールは確実に古野間たちが来ると分かっている為か大人数で固め、更には見回る気配もない。

 

「あそこが地上に上がるエレベーターですが‥‥」

 

「くそ、ガッチリと固めてやがるな‥‥」

 

「このまま出て行けばそれこそハチの巣にされますね」

 

「ん?あれは‥スプリンクラー‥‥」

 

どうやってあの包囲網を突破してエレベーターへ行くか?

 

このままモタモタしていると下水道から敵の増援が送られて挟み撃ちにされる危険もある。

 

そんな中、北野は天井にスプリンクラーが設置されている事に気づく。

 

「スプリンクラーがどうした?」

 

「イスカンダルからの波動技術到来以来、防衛軍の武器はショックカノンになりました‥‥つまり、このコスモガンも小型ですが宇宙艦船の砲門と同じ原理のショックカノンです。対してこれまで相手にしてきた敵の兵士が装備しているのは高出力のレーザー銃‥‥」

 

北野は防衛軍のコスモガンと占領軍の兵士が使用しているレーザー銃を比較する。

 

「何が言いたいんだ?」

 

「敵は決定的なミスをしているんですよ」

 

「ミス?」

 

敵自身も気づかないミス。

 

それは一体どんなミスなのか?

 

ティアナが首を傾げつつ北野に訊ねる。

 

「レーザー銃にはショックカノンにはない決定的な欠点がある。レーザー銃は雨や霧などの天候によっては威力が大きく減衰する場合があるんだよ」

 

「なるほど、そのためのスプリンクラーか!!」

 

古野間も北野がこれから何をしようとしているのか理解した。

 

「天候に左右されない屋内戦だから、敵は出力が高いレーザー銃を装備し使用しているのでしょう」

 

「だが、どうやってスプリンクラーを作動させる?閃光弾も手榴弾も使いきっちまったし、この区画の動力は切られているんだろう?」

 

煙を出すための手榴弾は下水道での戦いで使い切り、電力がないのでスプリンクラーは作動しない。

 

これではチャンスがあっても不発に終わる。

 

「建物のコントロール室は非常電源が備わっていた筈‥‥それにそこなら集中管理スイッチがあるので、それを操作すればプリンクラーは作動する筈です」

 

「なるほど‥‥」

 

三人はスプリンクラーを作動させるため、コントロール室へと向かう。

 

コントロール室までは敵の警備はそこまで厳しくなく、三人はあっさりとコントロール室まで辿り着くことが出来た。

 

「何とかなりそうですか?」

 

「ちょっと、まって‥‥あった、これだ」

 

北野がコントロール室にある機器を操作するとスプリンクラーが作動した。

 

「きゃっ!!」

 

「冷てぇ‥‥おい、なにもこの部屋までやることはないだろう?」

 

突然冷や水をかけられてティアナも古野間も驚く。

 

「どうせ濡れるのですから、我慢してください」

 

スプリンクラーが作動しこれで、敵が使用するレーザー銃の威力は落ちた。

 

これならば、あの包囲網を突破できる。

 

三人は一気にエレベーターホールに突入して敵兵の処理と共にエレベーターを目指す。

 

すると、エレベーターが開き、

 

「暗黒星団帝国、地球占領軍少尉アルフォン‥‥参る!!」

 

先程、収容施設に居たアルフォンが戦闘服に着替えて直接前線へとやっていた。

 

(ん?あの士官がもっている銃‥‥此奴らが使用している銃と違う‥‥)

 

(むしろ私たちが使用している銃と同じ‥‥)

 

(ってことは、あの銃の威力は強いまま‥‥)

 

(斃したパルチザンから鹵獲した銃かしら?)

 

(なんにしてもあの士官から倒さないと!!)

 

銃撃戦の中、ティアナはアルフォンに狙いを定める。

 

士官と言うだけあってアルフォンの銃の腕前はかなりのものだ。

 

ティアナはこれまでの経験と訓練から培った俊敏さでアルフォンの銃撃を躱し、逆に彼の手から銃を弾き飛ばす事に成功した。

 

「くっ‥‥」

 

「アルフォン少尉!!此処は危険です!!退避を!!」

 

「す、すまない‥‥」

 

アルフォンは数名の兵士と共に撤退した。

 

やがて、エレベーターホールの戦いはスプリンクラーのせいで占領軍兵士が使用している銃が低出力となり威力が出ず、次々と斃れていく。

 

そして最後の兵士を斃し、三人はようやく息をつくことが出来た。

 

「はぁ‥‥はぁ‥‥か、勝った‥‥」

 

「はぁ‥‥はぁ‥‥あれだけの敵と戦って勝てたなんて‥‥し、信じられませんよ‥‥」

 

北野とティアナがあの人数相手に勝てた事に信じられないと思っている中、

 

(ん?これはあの士官が使っていた銃‥‥)

 

古野間はアルフォンが使用していたコスモガンを拾う。

 

「っ!?」

 

そしてグリップの部分を見て、目を見開く。

 

グリップには『古野間卓』と彫られていた。

 

その銃は紛れもなく自分のコスモガンであった。

 

しかし、そのコスモガンは暗黒星団帝国が襲来したあの日、地下通路を丸腰で有人機基地へ向かっていた雪に手渡したコスモガンだった。

 

(そうか‥‥あいつが‥‥あいつが今回の罠を張った黒幕か‥‥あの娘を利用したわけだ‥‥アルフォン‥‥その名前、忘れねぇぜ‥‥今回の落とし前‥‥そして、仲間の仇は必ず討たせてもらうからな!!)

 

古野間は今回の戦いで失った仲間の仇を討つため、アルフォンへ必ず復讐すると心に誓ったのであった。

 

この戦いで地球側が失った戦力と同等の戦力を暗黒星団帝国側も負った。

 

しかし、例え同じ数でもパルチザンが失った戦力と占領軍側が失った戦力では全く意味が異なる。

 

戦力についてはまだまだ暗黒星団帝国側が優勢であり、そんな中での大きな戦力の消耗はパルチザンにとっては手痛い損耗となった‥‥




次回 罠 後編


次回も気長にお待ちください!

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