内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百二十九話 要塞の罠

暗黒星団帝国に地球が占領されつつも、地球本土、シリウス・プロキオン両恒星系にて地球軍がレジスタンス活動を必死に繰り広げている中、暗黒星団帝国本国を目指している選抜艦隊は、敵の中間補給基地を破壊後もひたすら暗黒星団帝国本国を目指していた。

 

そして、この先の針路についての作戦会議がヤマトにて行われ、各艦の艦長たちはリモートにて参加した。

 

「全員揃ったな?それでは説明を始める‥‥太田、映してくれ」

 

ヤマト航海長補佐の太田が作戦室のコンピューターを操作すると、画面には宇宙空間よりも漆黒の星雲が映し出される。

 

「こ、これは‥‥!?」

 

『うへぇ~真っ黒だ‥‥』

 

『宇宙空間なのに、それ以上に黒い‥‥』

 

『まるで、ブラックホールみたいだ‥‥』

 

「これが、大山がキャッチした『暗黒星雲』だ。観測の結果、この星雲の直径は約10万光年以上あると分かった。全く発光しない星雲なので、その存在は今まで地球から観測できなかったんだ‥‥」

 

『なるほど、此処まで来たから観測する事が出来た訳か‥‥』

 

地球の宇宙開拓もまだ始まったばかりだからこそ、地球の危機でなければこんな所までは来ない。

 

今回は、地球を救う為に‥『暗黒星団帝国の本国を目指す』と言う大義があるからこそ、この宙域へと来て、この『暗黒星雲』を発見、観測することが出来たのだ。

 

「直径10万光年と言うと、我々の銀河系に匹敵する大きさだな」

 

守が暗黒星雲と銀河系の大きさがほぼ同じ事に気づく。

 

「うむ、艦長の言われる通り、この暗黒星雲の大きさは銀河系に匹敵する。中には暗黒物質で出来た星が存在しているかもしれん。その意味ではこいつは暗黒星雲というよりも『暗黒銀河』と言った方がいいだろうな‥‥」

 

『暗黒銀河か‥‥』

 

『確かに銀河系とほぼ同じ大きさで、暗黒星雲、暗黒物質だと確かにこの星雲は暗黒銀河と言う言葉がぴったりだな』

 

(暗黒銀河‥‥なんか、闇落ちしたギンガちゃんみたい‥‥)

 

(原作のstsでは、スカリエッティに洗脳されていたから、あの状態が暗黒ギンガになるのかな?)

 

束は暗黒銀河と聞き、そんな印象を抱く。

 

「見ればわかると思うが、この星雲はただ巨大だと言うだけじゃない。中心部にはガス状の物質が渦を巻いて充満しており、向こう側からの光を全く通さないんだ」

 

『それじゃあ、向こう側に一体何があるのか分からないって事?』

 

「そうだ。行ってみないとわからない」

 

流石の真田も大山も未知の星雲の先に何があるかなんて分からない。

 

「星雲を突き抜けるにはかなりの危険が伴うな‥‥しかも星雲内は一体何が待ち受けているのか分からない‥‥どうします?連続ワープで迂回していきましょうか?」

 

ヤマト航海長の島は未知なる空間を進むリスクを考慮して、連続ワープで迂回してリスクを回避する事を提案する。

 

「いや、それは難しいな」

 

しかし、真田の見解では連続ワープでの迂回は厳しいと言う。

 

「我々がこうして此処まで航海して来たように、銀河間の何もない宙域ならば、10万光年と言う距離はあっという間に通過できるだろう‥‥だが、この星雲を迂回するとなると話が変わって来る‥‥」

 

「なにか危険でも?」

 

古代が真田に質問する。

 

「うむ、見ろ。この星雲の回転速度はすさまじく、しかも速度は外縁に行けば行くほど速く、激しくなっている。星雲の膠着円盤から外れてもその渦は大きく広がっているだろう。なにぶん、見えない物質だから確認出来んのだが‥‥もし、ワープ中にこの渦の中に巻き込まれるような事があれば、一巻の終わりなってしまう可能性もある」

 

真田が観測データから外縁部の回転速度を表示する。

 

『うわぁ~すごいスピード‥‥』

 

『こんな渦に巻き込まれたらいくら、戦艦と言えど、ヤバいな‥‥』

 

「すると、できるだけ外部には向かわず、そのまま突き抜けた方が良いわけですか?」

 

「そうだ。暗黒星雲の中心部は比較的、回転が緩やかだ。此処を抜けて行こう。ただし、中心部がガスや暗黒物質などが高密度に充満しているだろうから、長距離ワープも行えなくなるだろう」

 

『ガスとかが高密度だと、レーダーにも支障をきたしそうだね』

 

「そうだな」

 

『レーダーの効きも悪く、ワープも使用不可か‥‥危険な航海になりそうだ‥‥』

 

「一見すると、無謀で危険な航海のように思えるが、我々が目的地である暗黒星団帝国の本星にたどり着くにはそうするしかない‥‥それが俺の結論だ」

 

『まぁ、暗黒星団帝国の連中も此処から地球に来た訳だし、航行できないって訳じゃないだろうけど‥‥』

 

「うむ‥‥航海長、航路の方はどうする?」

 

守が島にこの暗黒星雲における航路を尋ねる。

 

「我々の現在針路は、暗黒星雲降着円盤のこの地点を指しています。これの針路を変更するわけですが、正面には広大なガス帯があるため、一旦降着円盤の表面ん五出てそこから中心部を目指す方がいいでしょう。ガス帯さえ回避すれば、降着円盤表面まではワープで進める筈です」

 

「うむ、悪くないな‥‥」

 

島の航路設定に真田も賛同する。

 

「だが、できるだけ外側に流されない様に気を付けてくれ。渦に巻き込まれては元も子もないからな」

 

「了解です」

 

「よし、それでは各員、各艦、持ち場に戻ってくれ。‥‥ここから山場だ。皆、よろしく頼むぞ」

 

針路と航路が決まり、作戦会議は終了した。

 

 

武御雷 艦橋

 

「おっ?作戦会議は終了したか?」

 

束が艦橋に戻るとディアーチェが声をかけてきた。

 

「うん。とりあえずこの先の針路と航路が決まった」

 

「それで、これからどこへ向かうのだ?」

 

「この先に銀河系に匹敵する大きさの暗黒星雲が観測された。その中心部を突っ切る」

 

「暗黒星雲?」

 

「そう‥‥」

 

束はディアーチェを始めとする艦橋に居る乗員たちに暗黒星雲と航路について説明する。

 

「まさか、そんな星雲が存在するとはな‥‥」

 

「宇宙にはまだまだ謎が数多くあるって事だよ」

 

「で、でも、それって大丈夫なんですか?黒い星雲と思わせる巨大なブラックホールなんてオチじゃないですよね?」

 

武御雷航海長の鈴が涙目で暗黒星雲が巨大なブラックホールではないかと尋ねてくる。

 

「大丈夫、ちゃんとした星雲だよ。ブラックホールじゃない‥‥とは言え、地球からこれまで観測されなかった未知なる星雲だけどね。そういう意味では危険な宙域だ。それでも、暗黒星団帝国の連中はこの星雲を通ってマゼラン星雲や地球に来た訳だから、地球の艦でも十分に航行できるはずだよ」

 

「なるほど、しかし、仮に通り抜けたとしても敵は我々が敵の本土を目指している事を知っている筈だ。出口には敵が待ち構えているのではないか?いや、それ以前に暗黒星雲は彼奴等にとっては自分たちの庭同然‥だとしたら、この暗黒星雲の中に敵の哨戒艦隊が潜んでいる可能性もあるな」

 

「その時は戦うまでだよ。どんな危険や罠があろうと、私たちに『引き返す』と言う選択肢はないのだから」

 

此処で引き返しても地球は救えない。

 

地球を救うにはただ一つ、突き進むだけだ。

 

「機関長、エンジンの方は大丈夫?」

 

「おう、どんな荒波も戦闘が来ても大丈夫でぇい!!」

 

「戦術長、戦闘配置のまま暗黒星雲を突っ切るよ!!」

 

「了解!!」

 

(いよいよだ‥‥きっとこの先にはアイツが待ち構えている筈だ‥‥)

 

前世の知識がある束にはこの先に待ち構えている敵が以前戦ったアレであると確信を持っていた。

 

「両舷全速!!針路、暗黒星雲中心部!!」

 

選抜艦隊は地球人類として初の未経験の空間を進んで行く。

 

当然、ディアーチェが指摘したように敵の哨戒艦隊も存在しているだろうし、想像を絶する未知の宇宙自然が待ち構えているかもしれない。

 

それでも地球を救う為、選抜艦隊は暗黒星雲の中心部を目指して突き進む。

 

やがて、ガス状物質の密度が次第にこくなり、周囲にはダークブルーの雲のような物質が漂い始めた。

 

通常、宇宙空間にこれだけ濃密な物質が存在している事は考えられない。

 

この濃密なガス状物質は濃縮していき、やがて一つの巨星を生み出そうとしているのだろうか?

 

それとも全くの異質の現象なのだろうか?

 

しかし、暗黒星団帝国の者にとってはこれが常識なのだろう。

 

宇宙にはまだまだ地球人類が知らない現象が沢山存在しているようだ。

 

暗黒星雲を航行していると、時折小惑星や岩塊が船体すれすれに通り過ぎて行く。

 

大きさによっては衝突すれば大きなダメージを負うだろう。

 

そんな中、

 

「艦長、レーダーが作動しません!!」

 

武御雷のコスモレーダーがブラックアウトした。

 

おそらく他の艦のレーダーも同様の現象が起きているだろう。

 

「やっぱりか‥‥」

 

作戦会議で暗黒星雲の特徴を聞いていたので、レーダーがいずれ使用できなくなるのではないかと言う予想はまさに的中した。

 

「か、艦長、これは‥‥?」

 

ギンガが束にこの現象を尋ねる。

 

「ガス状物質が濃密になりすぎて、水に近いくらいの密度になった影響だ‥‥これからは有視界航法をとるしかないな‥‥」

 

「有視界‥‥まるで大昔の帆船みたいだ‥‥」

 

「でも、この闇の中を有視界って‥‥」

 

「やりにくいだろうけど、それしかないでしょう?」

 

その時、暗黒物質と濃密なガスの向こうから多数の光源が出現したと思ったら、船体が大きく揺れた。

 

「敵だ!!」

 

やはり、この暗黒星雲の中に敵の哨戒艦隊が居たらしく、哨戒艦隊は遠征艦隊へ艦砲射撃をしてくる。

 

「ビデオパネル、最大望遠で投影」

 

「了解」

 

スクリーンには敵の哨戒艦隊の姿が映し出される。

 

「ヤマトより、『左舷側の濃密な雲海へ退避しつつ、全速で敵艦隊へ接近せよ』と通信が入りました」

 

ギンガがヤマトからの通信を束に伝える。

 

遠征艦隊が反撃せずに雲海へと退避すると、遠征艦隊を見失ったのか哨戒艦隊は発砲を止める。

 

遠征艦隊が雲海へ入った後も敵の哨戒艦隊は、発砲は止めたが、捜索を止めはしない。

 

「ちーちゃん、敵との予想距離を想定して」

 

『わかった』

 

束は千冬に敵と遭遇した距離、敵の速度から敵哨戒艦隊の位置を予測させる。

 

『二十秒経過、敵との推定距離、三宇宙キロ‥‥』

 

「全砲門‥砲撃用意‥‥」

 

「了解。全砲門、砲撃用意」

 

『三十秒経過、敵との推定距離‥‥』

 

千冬が逐次、敵の予想位置を知らせる。

 

「右四十度反転、雲海から脱出、敵の側面へ出る」

 

「りょ、了解。右四十度反転、ヨーソロー」

 

武御雷は雲海から出ると千冬の予想位置に敵の哨戒艦隊が居た。

 

眼前に敵の艦船、数十隻を前に束は攻撃命令を下す。

 

「全砲門撃て!!」

 

「発射!!」

 

武御雷に対し横っ腹を晒していた敵の哨戒艦隊は武御雷のショックカノンとミサイル攻撃の前に次々と被弾、爆散する。

 

やがて、他の艦も攻撃に参加すると哨戒艦隊はその数をどんどん減らしていく。

 

不利と悟ったのか旗艦らしい空母が反転して逃げて行く。

 

「敵艦一隻が反転していきます」

 

「どこに逃げる気だ?」

 

「もしかしたら、逃げた先に出口があるのかも‥‥」

 

「よし、全速で追尾‥‥」

 

遠征艦隊が逃げる敵空母を追いかけようとした時、背後から砲撃が来た。

 

「なに!?まだ居たのか!?」

 

てっきり、哨戒艦隊の残存艦と思いきや、背後から出現した艦隊はミヨーズ率いる特務第二艦隊であった。

 

 

特務第二艦隊 旗艦ガリアデス 艦橋

 

「地球艦隊を捕捉しました!」

 

「よし、今度こそ決着をつけてやる。全艦に告ぐ、ヤマトを逃がすな!!」

 

ガリアデスからは艦載機部隊が出撃する。

 

ヤマト以下の各艦は対空砲火で弾幕を張り、敵の艦載機部隊を撃墜していく。

 

しかし、艦載機部隊を撃墜できても特務第二艦隊に背後をとられているこの状況下では不利なのは変わらない。

 

(これ以上、彼奴等を我らが母星へと近づける訳にはいかぬ!!此処が正念場だ!!)

 

ミヨーズが自身に課せられた任務について少々焦りが出てきた時、

 

「ミヨーズ司令。グロータス閣下より通信です」

 

「グロータス閣下から?‥‥くっ、忙しい時に‥‥通信回路を開け」

 

戦闘中ではあるが、グロータスの方がミヨーズよりも階級が上の為、無視する訳にはいかず、ミヨーズは渋々通信回路を開かせる。

 

『ミヨーズ。任務の進捗を伺おう』

 

「はっ、現在、ヤマト以下の地球艦隊と交戦中であります」

 

『座標は?』

 

「暗黒星雲中心点、Y‐30の地点です」

 

『ふむ‥では、貴官の艦隊はそのままポイント、A‐33ポイントまで奴らを誘導せよ』

 

「えっ?それはどう言う事でしょうか?」

 

『なあに、今回の件については聖総統閣下も危惧しておられる様子でな。私が直々に討伐の為に赴いたのだ』

 

「閣下自ら?」

 

『そうだ。そんな訳で、貴官の艦隊は彼奴等を私が言ったポイントまで追い込め。その後は、私が仕留める』

 

「‥‥しょ、承知しました」

 

(くっ、狩人たるこの私が何故、あのような出世欲しかない奴の言いなりにならねばならんのだ?)

 

ミヨーズとしては当然納得のいく命令ではなかった。

 

しかし、例え直属の上官ではないにしろ、軍は階級制の縦社会‥‥ミヨーズはグロータスからの命令を拒否する事は出来なかった。

 

「よし、そのまま予定のポイントまで追い込め。駆逐艦隊は両翼へと展開しろ、くれぐれも所定のコースから外れるな」

 

「了解!!」

 

ミヨーズは互いに腹の探り合いをし合うグロータスが立てた作戦に関心しつつ不安を抱えていた。

 

(この暗黒銀河の中心には巨大なブラックホールがあるが、確実にヤマトを仕留めることができるかは怪しい‥‥だからこそあれを聖総統閣下から賜ってきたのであろうが…あれほどの数が本当に必要か?)

 

ミヨーズはグロータスからの命令に従って、地球艦隊をある座標に目指して誘導していった。

 

 

武御雷 艦橋

 

「えぇい!あ奴らはいつまで追ってくるのだ!?」

 

(‥多分、あのこけしモドキが七体待ち構えているんだろうなぁ‥‥)

 

ディアーチェは特務第二艦隊の必要かつ挑発的な攻撃を受けて反撃したいという思いであったが、この一帯は暗黒物質と濃密なガスの流れがきつく下手に操艦すると暗黒銀河中心部へと流される可能性から反撃できないことにいら立っていた。

 

一方の束は前世の記憶からイスカンダルに出てきたあのこけしモドキが七体は確実に待ち構えていることを知っているので半分憂鬱状態であった。

 

(まぁ、波動カートリッジ弾はイスカンダル救援作戦でもう作成済みだったから各艦に一定数備蓄させておくことが出来ている…多少は手こずるかもだけど大丈夫かな?)

 

記憶を完全に思い出していないときにノリで作成していた物がこんな形で役立つとは束自身も想定していなかったが、転生する前の知識と現実となったこの世界の実際に発生した事件等がところどころ差異が生まれ始めていることから少々不安であった。

 

「暗黒物質のガス帯を抜けます!!」

 

鈴は報告するとともに地球艦隊は暗黒銀河を抜けることに成功したが‥‥

 

「な、なぁ!?」

 

「う、嘘!?」

 

そこにはこけしモドキこと、ゴルバが鎮座していた。

 

「う、右舷にも反応があります!!」

 

『CICの千冬だ!右舷だけじゃない!左舷にも複数隻いるぞ!!』

 

ギンガと千冬の報告に艦橋要員は混乱するばかりだ。

 

「ば、馬鹿な!あのゴルバが七基だとぉ!?」

 

ディアーチェも驚愕していた。

 

(やっぱりか‥‥)

 

一方、束は『案の定七基か‥‥』とある意味安堵しつつ憂鬱な顔であった。

 

 

ゴルバ 指揮所

 

「ふはははははははは‥‥!!どうだ!?驚いただろう!!このグロータスが指揮するこれほどの戦力をもってすれば、貴様ら如き虫けら同然だということだ!」

 

どこぞの雑魚悪役のようなセリフをグロータスは吐く。

 

「しかしヤマトよ‥中間補給基地が破壊されたことは痛かったが、ここが貴様らの墓場だ。これより先は我らの領域、行かせるわけにはいかん!!さぁ!深淵へと続く暗黒星雲の渦に巻き込まれ永遠にさまようことになるがいい!!」

 

グロータスは中間補給基地が破壊されたことはそこまで痛いことだとは思っていないようだが、地球占領軍からすれば飯の補給先がなくなるわ、武器弾薬の整備・補充先がなくなるはでたまったものではないのが現実なのだが‥‥。

 

「全要塞砲撃準備!!ヤマトと付き添ってきた虫けら共を原子の塵に還すのだ!!」

 

 

武御雷 艦橋

 

 

「いやいやいや!!どうすんですか!!あのゴルバが七杯もいるんですよ!!」

 

「一つでも手を焼いたのにそれが七つも‥‥」

 

「早く逃げましょうよ~!!」

 

朝田、レヴィ、鈴は混乱気味で泣き言をいうが現状どうにもならない。

 

「えぇい!お主ら、慌てるでない!!逃げるにも進撃するにもアヤツらを突破せぬことにはどうにもならんだろうが!!」

 

ディアーチェは彼女たちを鼓舞するが、当人も結構テンパっているのが一目で分かる。

 

『そもそも暗黒銀河の乱流影響でワープでの転移も不能だ、と言うか後方にも艦隊がいて逃げ道をふさがれている。しかもあの艦隊は例の空間歪曲干渉機を使用した艦隊の様だぞ‥つまりは敵の精鋭部隊だ』

 

千冬からの連絡に武御雷艦橋は諦めムードが漂った。

 

「まぁ、そこまで悲観的になる必要はないよ」

 

「束?」

 

一方で、束は悲観も驚愕もせず、かなり冷静であった。

 

「ここまでして侵攻を止めたいということはこの先に進んでほしくないんだよ。ということはこの先に何かがある‥‥」

 

「そ、それはそうであろうが‥‥」

 

「諺に『窮鼠猫を嚙む』って言うでしょ?できることはあるよ。それにあっちは致命的なミスを犯しているからチャンスもある」

 

「「「「「ミス???」」」」」

 

「あの要塞をこんな狭いエリアに密集して配置させているから下手に主砲が撃てないんだよ。ご自慢の高威力の要塞主砲を有しているのにいまだに撃ってこないってことは味方に当たる可能性がある。となれば要塞同士の作る円の外側にこっちが出ない限り、相手は艦隊戦力で攻撃するか、主砲以外の兵装を使うしかない。戦えるよ‥‥私たちは!」

 

束の主張は前世の記憶を基にしたものではあったが、『窮鼠猫を嚙む』‥‥これは古今東西の戦場で盛んに発生してきたことだ。

 

希望はある。

 

「そうですね‥‥あきらめては試合終了ですよね!!」

 

「私たちが此処で諦めた地球は奴らのモノになってしまいますからね!!」

 

「ああ!だったら最後まであがいてやろうじゃねぇか!!」

 

朝田、ギンガ、柳原を筆頭に艦橋要員の士気が回復した。

 

「全く、お前にしては希望の持てる主張ではないか」

 

「ちょっとディアーチェ、それはどういう意味なのさ!?」

 

ディアーチェの言動に思わず噛みつく束。

 

さて、選抜艦隊各艦はヤマトの指揮の下、背後から迫ってくるミヨーズ率いる特務第二艦隊と正面に構えるグロータス座乗のゴルバへの攻撃を分かれて行うこととなった。

 

とはいえ‥‥

 

 

武御雷 艦橋

 

 

「駄目です!やはり実弾以外は効果がありません!!」

 

「『アンドロメダ』が拡散波動砲を後方の艦隊に発射!敵艦隊の半数を殲滅しました!!」

 

アンドロメダ以下、蝦夷・イリノイ・アーカンソー・ドレークを主体とする主力戦艦部隊と重無人駆逐艦部隊はミヨーズの艦隊と一進一退の戦いを繰り広げていたが、ゴルバ攻略部隊は手をこまねいていた。

 

なんせゴルバには実弾以外は効果がほぼない。

 

ミサイルや三式弾は各艦の工作室にて山のように製造はしていたがやはり開発するにしても資源は有限だ。

 

エネルギー弾のショックカノンのように好きにバカスカ撃てない。

 

『くっそ!!もう特攻しかないんじゃないの!?』

 

アマテラス級突撃戦艦アラハバキ艦長の千葉沙千帆はそう言うがそう言うわけにもいかない。

 

特攻は文字通り最後の手段だ。

 

おまけに統率の外道とまで言われる戦法を使ってまで勝つわけにもいかない。

 

『こちら工作室!待たせちゃってごめん!ヤマトの真田技師長たちと一緒に波動カートリッジ弾の改良型が完成したよ!!』

 

そんな時、武御雷工作室に詰めていた出雲から希望が持てる報告がきた。

 

この世界において束によってイスカンダル救援作戦中に開発された波動カートリッジ弾であるが、彼女が趣味で作ったのも相まって『もう少し波動エネルギーを封入することができるのではないか?』と予測されていた。

 

そしてゴルバへの有効兵器としても期待されていたわけだ。

 

なので、真田は大山や出雲とともに既存の波動カートリッジ弾を改良した『波動カートリッジ弾・改』をこの戦闘中に完成させたのだ。

 

(ちなみに開発した当人も参加したかったようだが戦闘中に指揮を放棄するわけにもいかないので我慢した)

 

そして各艦の工作室の努力によって一定の数が突貫作業で作成され、各艦の砲よりゴルバに向けて発射された。

 

 

ゴルバ 指揮所

 

「グロータス閣下!敵の実弾攻撃により被害が発生しています!どうも波動砲と同じエネルギーを込めた砲弾のようで‥‥」

 

「むぅ~~!!くそっ!先ほどまで続いていたミサイル攻撃といいこの砲撃といい!実弾などと言う野蛮な兵器を使いおって!!」

 

グロータスは部下からの報告にいら立ちを見せる。

 

「えぇい!!主砲以外の全砲門を開け!テンタクルスの部隊も射出せよ!!一気にヤマトを叩き潰すのだ!!」

 

これに対してグロータスはヤマトを一気に叩きのめすという選択を選んだが、これが彼を破滅に導くことになるとはこの時点では誰にも分からなかった。

 

 

武御雷 艦橋

 

「敵要塞より小型目標多数が出現!!例の無人艦と思われます!!」

 

「やはり仕込んでおったか!?」

 

報告を受けたディアーチェは『やはりか!? 』という感じで応戦を指示する。

 

テンタクルスとゴルバ目掛けて波動カートリッジ弾・改を乱射する地球艦隊。

 

その最中、アナンケ級ユリシーズが発射した波動カートリッジ弾・改が狙ったテンタクルスを逸れてゴルバが開いていたミサイル発射口に直撃し、さらにそこに武御雷が放った砲弾が奇跡的に命中するという珍事が起きた。

 

 

それによって‥‥

 

 

ゴルバ 指揮所

 

「て、敵の砲弾が動力炉を貫通!!誘爆が広がっています!!」

 

「な、何故だ!何故?このゴルバが地球の船如きに…!う、うわぁぁぁぁ!!!」

 

グロータス座乗のゴルバのミサイル発射口からゴルバ内に突っ込んだユリシーズと武御雷の波動カートリッジ弾・改はゴルバの動力炉に直撃し要塞内各所で誘爆が発生する。

 

グロータス座上のゴルバは大爆発を引き起こした。

 

そして事はこれで終わらなかった。

 

どういうわけか周囲に残存していたゴルバも次々と誘爆を引き起こして爆発していったのだ。

 

その誘爆はゴルバが射出したテンタクルスと戦闘宙域に展開していたミヨーズの第二特務艦隊も誘爆に巻き込まれて全艦轟沈するという惨劇となった。

 

ミヨーズとしてはやはり、ヤマトを自分の手で葬り去りたいと言う願望からゴルバがある宙域に接近しすぎた為の不運であった。

 

しかし、地球選抜艦隊は全艦無傷で残存することとなった。

 

 

武御雷 艦橋

 

「やった!!」

 

「やったぞ!!」

 

「やっほーい!!」

 

「あのゴルバを七基も撃破したなんて信じられないぜ!!」

 

「ざまあみろ!!侵略者どもめ!!」」

 

各艦及び各部署であのゴルバを七基一気に葬った事で歓喜の叫びがするが、

 

「たったあれだけの砲弾でこれほどの威力が‥‥?」

 

武御雷の艦橋ではゴルバが起こす大爆発の閃光を暫しの間、唖然とした表情で見つめていた。

 

波動カートリッジ弾は確かに弾頭の中に波動エネルギーが仕込まれているのだが、そのエネルギー量はとてもじゃないが、波動砲には及ばない。

 

しかし、今眼前で起きた爆発は波動砲の威力に匹敵する程の威力だ。

 

「す、凄い威力でしたね‥‥」

 

「これが波動カートリッジ弾・改の威力‥‥」

 

「もしかしたら波動砲と同じくらいの威力があるんじゃない?」

 

「‥‥いや、そんな筈はないよ」

 

誰もが波動カートリッジ弾・改の威力なのかと思ったが、出雲がそれを否定する。

 

「でも、現に敵はあの通り、全滅してしまいましたよ?」

 

「ひょっとすると波動カートリッジ弾の波動エネルギーと敵の動力源のエネルギーが融合して爆発したのかもしれない‥‥」

 

(流石、別世界の私、なかなか鋭い‥‥)

 

(あの爆発の影響は波動融合反応による爆発である事は間違いなさそうだ‥‥)

 

出雲の仮説に束は前世の知識からその仮説が当たっている事に頷くと同時に、敵の弱点が波動エネルギーである事がイスカンダルでのゴルバ戦を含めて完全に証明される事となった。

 

「波動エネルギーの熱効果の影響とか?」

 

「波動カートリッジ弾・改は確かに通常の波動カートリッジ弾よりもエネルギーの量は多いけど、波動砲と比べたら全然比じゃないよ」

 

『‥‥』

 

出雲の言葉に束を除く艦橋員たちは怪訝な表情で窓の外を見つめていた。




次回 白色銀河への道

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