内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百三十話 白色銀河への道

此処で時間は少し巻き戻り、視点はヤマトに乗艦しているヴィヴィオとアインハルトの視点へと移る。

 

暗黒星雲を航行中、ヤマトではヴィヴィオとアインハルトは普段利用しているヤマトの居室から比較的艦の中心部にある医務室に避難していた。

 

現在、選抜艦隊が航行している暗黒星雲は地球艦隊にとっては全くの未知の空間であり、航行中に小惑星や比較的大きな岩塊とすれ違う。

 

万が一、居住区近くに当たれば、艦が傷つきヴィヴィオとアインハルトも負傷するかもしれない。

 

それを避けるための配慮である。

 

「うわぁ~‥‥外は真っ暗だ‥‥」

 

「次元の海の空間や夜の暗闇よりも暗い‥‥星も何もかも全然見えませんね」

 

医務室の一画にある佐渡の居住スペースにあるモニターから外の様子を窺う二人は生涯初めての暗黒星雲の中を進むことに不安を覚える。

 

そして、時々すれ違う小惑星や岩塊に驚いてビクリと身体を震わせる。

 

こんな暗黒星雲なんて地球でもミッドチルダでも見た事も聞いた事もない未知の空間なので、二人が不安になるのも頷ける。

 

「なぁに、花が見えなきゃ月が、月が見えなきゃ星が、星が見えなきゃ雲でも見る‥‥昔っから酒はそうして飲むもんじゃよ、お嬢ちゃんたち。星が見えなくなったのなら、その分、地球からは見れん暗黒物質とやらを拝んでやろうじゃないかい。それが風流ってもんじゃぞい」

 

「「は、はぁ~‥‥」」

 

佐渡は二人の不安を読み取ってか、ポジティブ思考で今の状況を楽しもうとする。

 

(それにしても外は随分と荒れておるな‥‥嵐か‥‥何かの前触れでなければよいが‥‥)

 

とは言え、佐渡も密かに冷や汗を流しつつモニターを見つめていた。

 

その後、暗黒星団帝国の哨戒艦隊、ゴルバとの戦闘になり、ヤマトが被弾する度に艦が大きく揺れる。

 

「な、なに?あのコケシみたいなの‥‥」

 

「どうやら敵の要塞みたいですね」

 

「この前、見た白くて大きな基地とは違う形みたいだけど、あれもやっぱり強いのかな?」

 

「お、恐らくは‥‥現にヤマトがこうして大きく揺れているくらいですからね」

 

「あ、アインハルトさん‥‥や、ヤマトは大丈夫でしょうか?」

 

「だ、大丈夫ですよ‥ヴィヴィオさん」

 

ゴルバの強力な攻撃にヤマトの艦体が揺れると二人は不安そうな表情を浮かべながら抱き合う。

 

 

そんな中、

 

「佐渡先生!!手当てをお願いします!!」

 

「佐渡先生!!こっちもお願いします!!」

 

負傷者がストレッチャーに乗せられ運ばれてくる。

 

「おっし、待っとれ!!今、治してやるからな!!」

 

佐渡は手早く術着に着替え、マスク、手袋をして負傷者の手当てを行う。

 

「先生、また怪我人が!!」

 

「ああ、その辺に置いておけ!!すぐに看てやる!!」

 

その後も医務室には負傷者が次々と運ばれてくる。

 

「うぅ~‥‥」

 

「い、いてぇ‥‥」

 

「こら!!動くな!!バカモン!!」

 

「「‥‥」」

 

ヴィヴィオとアインハルトは佐渡の居室スペースから医務室の様子を見ていた。

 

ストライクアーツの練習や大会試合でも怪我はつきもので、出血する事はあるが、今目の前に繰り広げられている程の出血量はないので、身体を血塗れで、痛がる唸り声を上げる負傷者たちの様子を見て、二人は顔を青くする。

 

ヴィヴィオとアインハルトの二人が顔を青くする中、佐渡は懸命に負傷者の治療を行う。

 

そんな中、

 

「お嬢ちゃんたち」

 

負傷者を治療している佐渡がヴィヴィオとアインハルトに声をかける。

 

「は、はい!!」

 

「なんでしょう?」

 

「すまないが、ヤマトカクテルを作ってくれんか?」

 

「ヤマトカクテル?」

 

「カクテルと言う事はお酒ですか?」

 

「そうじゃ。作り方はその机の引き出しの中にレシピがある。その通り、作ってくれ」

 

「えっ?でも‥‥」

 

「いいんですか?治療中にお酒なんて飲んで‥‥?」

 

通常、医療従事中に飲酒なんてありえない。

 

「終わったら飲むんじゃよ。ただ、その時にはフラフラになっとるだろうからな」

 

佐渡の返事を聞いてホッとするヴィヴィオとアインハルト。

 

「な、なるほど‥‥」

 

「分かりました」

 

これだけの負傷者たちの治療をするのだから、佐渡の言う通り、全ての負傷者たちの治療が終わった頃にはきっと佐渡は疲労困憊だろう。

 

仕事上がりの一杯にヤマトカクテルを飲みたいが、疲労困憊の状態ではカクテルを作る作業はめんどい。

 

かと言って、負傷者たちから手も離せない。

 

なので、ヴィヴィオとアインハルトの二人に作ってもらおうと頼んだのだ。

 

佐渡に頼まれて、机の引き出しからヤマトカクテルのレシピ帳を取り出す。

 

「これは‥地球の言語‥‥ですね」

 

レシピ帳を見てアインハルトは首を傾げる。

 

レシピは当然、地球の言語で書かれている

 

「あっ、日本語なら私、読み書きできるから大丈夫ですよ」

 

アインハルトは、日本語は話せても読み書きはまだ出来ないみたいだが、ヴィヴィオは周囲に日本人が多いので、日本語が読み書きをすることが出来た。

 

そこで、ヴィヴィオが材料と量をアインハルトに伝え、アインハルトがお酒をシェーカーに入れて振る。

 

そして出来上がったのは薄紫色をした液体であった。

 

「ヴィ、ヴィヴィオさん‥これ、材料を間違っていませんか?」

 

グラスの中に入っている薄紫色の液体を見て、アインハルトは顔を引き攣らせながらヴィヴィオに尋ねる。

 

「い、いえ、レシピに書かれているお酒や材料を使いましたし、分量も間違っていない筈です」

 

「で、でも‥この色は‥‥」

 

アインハルトはグラスに入った薄紫色の液体に戸惑いが隠せない。

 

「うん。どうみても毒みたいにしか見えないよね‥‥」

 

ヴィヴィオ自身もこの薄紫色の液体がお酒には見えなかった。

 

やがて、波動カートリッジ弾・改がゴルバを貫き、大爆発を起こす。

 

「あ、あのコケシの要塞が‥‥」

 

「一瞬で‥‥」

 

モニター越しではあるが、ゴルバの攻撃力はかなりのモノだと子供ながら理解しているつもりであったが、その要塞をヤマト以下の地球艦隊はすべての敵要塞を破壊した。

 

(フェイトママやティアナさんは私たちよりも先にこうした戦いを経験して来たんだ‥‥)

 

それは管理局の次元航行艦よりも強力な戦闘能力が秘められているのだとヴィヴィオとアインハルトは知る事となった。

 

(管理局はこの先、この世界とどう付き合うのでしょう‥‥?)

 

現状、地球は暗黒星団帝国に占領されているが、この勢いならば地球を暗黒星団帝国から解放するのも可能ではないかとアインハルトは内心そう思い、暗黒星団帝国からの脅威から解放された後、地球は管理局とどう付き合うつもりなのかも気になった。

 

アインハルトの周囲には管理局の関係者が多いから、管理局の活動や仕事内容は、ある程度は理解しているつもりだ。

 

管理局が掲げる『次元の海の平和』について、僅かな時間ではあるが、自分が今も体験しているこの桁外れの経験から揺らいでいた。

 

「ふぅ~やれやれ、やっと終わったわい」

 

ゴルバとの戦いが終わった様に、佐渡も戦闘で負傷した乗組員たちの治療が終わった。

 

そして、ヴィヴィオとアインハルトが居る居住スペースへと戻る。

 

「おっ?すまんな、お嬢ちゃんたち。作ってもらって」

 

卓袱台の上にある薄紫色の液体が入ったグラスに気付くとソレを一気に煽った。

 

「うぃ~‥‥仕事の後の一杯は格別じゃな」

 

「「‥‥」」

 

飲んでも平気な様子の佐渡を見て、ヴィヴィオもアインハルトもアレが本当にお酒なのだと理解はしたが、今後自分が成長してお酒が飲める年齢になっても飲みたくはないと思う二人であった。

 

 

此処で視点はヤマトの作戦室へと移る。

 

あのゴルバを七基、ついで暗黒星団帝国の精鋭艦隊ともいえるミヨーズ率いる特務第二艦隊を壊滅させた選抜艦隊。

 

しかし、ついさっき行った戦闘に関して大きな疑問が残った。

 

波動カードリッジ弾・改の威力についてだ。

 

各艦の艦長たちがリモートで参加して、ヤマトの作戦室のモニターには先ほどの戦闘の映像が流される。

 

「さて、集まってもらったのは他でもない。先ほどの戦闘についてだ」

 

『ええ、あまりにも波動カートリッジ・改の威力が有り過ぎる‥‥ってことだよね?』

 

束が今回のリモート会議についても議題を言う。

 

「そうだ。たったあれだけのカードリッジ弾でゴルバが七基も爆発するなんて、あまりにも変だ」

 

「衝撃波を受けて誘爆したにしろ、こちらは無事であの強固なゴルバのみが爆発するとは‥‥いくらなんでもおかしい‥‥」

 

「確かに、マゼラン星雲で‥イスカンダルで戦ったゴルバはもっと強かった印象があった」

 

『量産型だから、イスカンダルで戦ったゴルバよりも性能が劣っていたとか?』

 

『あの暗黒星団帝国が、そんな劣化版を作るかな?』

 

『出雲博士の仮説では、波動カートリッジ弾の波動エネルギーと敵の動力源のエネルギーが融合して爆発したのではないかと仮説を立てていたけど‥‥』

 

古代、宮里、千葉。束が議論していると…

 

「‥‥もしかすると、暗黒星雲の深部領域に入っているせいで、物質の反応が代わっているのかもしれない」

 

そこへ、真田がある仮説を立てる。

 

『この空間が、暗黒物質が充満している空間だからこそ、私たちの知る空間とは物質エネルギーと違うと言う事でしょうか?』

 

「そうだ。そのいい例が『反物質』だ」

 

「反物質?それってテレサが使っていた‥‥」

 

「そう‥我々の世界を構成する常物質と、その対極に位置する反物質が接触すると『対消滅』という現象が起き、莫大なエネルギーを放出する‥‥そしてこの場合、波動エネルギーが常物質で、暗黒星雲やゴルバを構成する物質が反物質だとしよう‥‥」

 

『なるほど、それであんな大爆発が‥‥』

 

ゴルバが大爆発を起こした原因が対消滅と言う事であの大爆発を起こしたのも納得がいく。

 

『となると、敵の強力なバリヤーさえクリアすることが出来れば、波動砲、波動カートリッジ弾は敵に効果的どころからワンサイドゲームが可能って事?』

 

『そいつはすごい!!』

 

「いや、喜んでばかりはいられない‥‥」

 

今後、ゴルバ型の要塞やそれ以上の強力な基地や要塞が出てきても波動砲、波動カートリッジ弾があれば簡単に対処できるかと束が聞き、それに喜ぶ能村であるが、真田がそれについて警鐘を鳴らす。

 

「この仮説が当たっているとすれば、波動砲、波動カードリッジ弾は、今後は考えてから使わなければならない。暗黒星雲を突き抜けた後も、波動エネルギーは同じような強力な作用を顕すかもしれない。対消滅とはいかずとも、それに近い融合反応‥‥仮に『波動融合反応』とでも呼ぼう。それほどの反応を引き起こすとなると、どうなってしまうのか予測がつかない」

 

『それって波動砲を使用したこっちまで何かしらの影響が出るって事ですか?』

 

「その可能性はあるな‥‥」

 

『‥‥』

 

暗黒星団帝国との戦闘を有利に進めることが出来るかと思いきや、今後は波動砲、波動カートリッジ弾は諸刃の剣である事が判明した。

 

「ひとまず、宙域の安全を確保したら、各艦負傷者のチェックと艦の修理、手空きの者は休憩に移ってくれ」

 

『了解!!』

 

この先もまだ暗黒星雲が続き、敵の哨戒艦隊も潜んでいる可能性もあるので、損傷した箇所の修理は万全にしなければならない。

 

その後、修理が終わると、選抜艦隊は暗黒星雲中心部を航行する。

 

 

武御雷 艦橋

 

「くっ‥気流の流れが荒い‥‥暗黒星雲はもう少しで終わりそうなのに‥‥」

 

鈴が震える声を上げつつ操艦する。

 

「レーダーもまたホワイトアウトして使い物になりません!!」

 

「束、星雲のこちら側だけ乱流が多いと言うのも変だ‥‥星雲の向こう側に何か巨大な重力源でもあるのかもしれないぞ」

 

「それって超重力惑星が密集しているってことですか?」

 

ディアーチェがこの星雲の異常と向かっている反対側の星雲にはこの異常の原因がある事を示唆する。

 

ギンガもそれに反応する。

 

「その可能性はなくもないな‥‥なにせ、この星雲の反対側に何があるのか行ってみないと分からぬのだからな‥‥」

 

「‥‥」

 

そんな中、選抜艦隊は隕石群に突入してしまう。

 

暗闇の中から突然出現する大小の様々な大きさの隕石。

 

「大型の戦艦、空母で来たのは正解だったな‥‥小さな隕石でも駆逐艦クラスが衝突すれば大きなダメージを負うところだぞ」

 

窓の外から出現する隕石にディアーチェは冷や汗を流しつつ、巡洋艦、駆逐艦、護衛艦クラスの艦はとてもじゃないが、こんな所を航行することは出来ないと言う。

 

(でも、暗黒星団帝国は巡洋艦も駆逐艦も艦隊に含まれていた‥‥)

 

(もしかしたら、この星雲以外にも航行可能な航路があるのかもしれない‥‥)

 

ギンガがそう思っていると、ヤマトから通信が入る。

 

「っ!?艦長、ヤマトより『単縦陣にて我に続け』と通信が来ました!!」

 

「了解。航海長、単縦陣、ヤマトの後ろに着き、ヤマトと同じ針路で航行して」

 

「りょ、了解」

 

先頭を航行するヤマトはまるで隕石が飛んでくる方向が分かっているかのように見事な操艦でこの隕石群の中を進んで行く。

 

勿論これにはちゃんとタネがあり、サーシアのもつ千里眼的な超能力のおかげだ。

 

ヤマトに続く選抜艦隊も無事に隕石群の中を通り過ぎる事が出来た。

 

「っ!?か、艦長!!前方に光が‥‥」

 

「多分、それが暗黒星雲の出口だ」

 

出口と思われる光源はみるみるうちに大きくなり、やがて選抜艦隊は暗黒星雲を突破した。

 

警戒していた敵の待ち伏せは幸運にもなかった。

 

ゴルバを七基も投入したのだから、暗黒星団帝国はヤマト以下の選抜艦隊がゴルバの手によって破壊されたのかと思い、出入り口に艦隊を配置していなかったのかもしれない。

 

また乱流を起こしていたと原因は重力惑星ではなく、この広大で美しい白色銀河がすぐそばにあった事と思われた。

 

選抜艦隊乗員たちの眼前には背後の暗黒星雲とは反対の白色銀河が浮かんでおり、この世のものとは思えない美しく壮大で神秘的な光景が広がっており、誰も啞然としていた。

 

「暗黒星雲の向こうがこんな‥‥」

 

「し、信じられない‥‥」

 

「綺麗‥‥」

 

「まさに宇宙の神秘と言うヤツだな‥‥」

 

「闇と光‥二つの銀河が存在しているまさに二重銀河だ‥‥暗黒星雲の中の乱流はこの白色銀河の重力によるものなのかもしれない」

 

(これはゲーム画面と本物とでは、全然違う‥‥)

 

(こんなにも綺麗な銀河系なのに、このどこかに敵が‥暗黒星団帝国の本星があるなんて信じられないな‥‥)

 

前世の知識がある束もやはり本物の二重銀河の光景には感動する。

 

誰もが二重銀河の美しさに感動、唖然していたが、それはヴィヴィオとアインハルトも例外ではない。

 

「き、キレイ‥この光景‥‥なのはママやフェイトママ、リオやコロナにも見せたかったな‥‥」

 

「本当に‥‥宇宙にはこれほどの神秘的な光景があるんですね」

 

束が思うように誰もが感動、唖然とする美しい光景の中、この白色銀河の何処かに暗黒星団帝国の本星‥デザリアム星がある。

 

選抜艦隊は地球を救う為、暗黒星雲から今度は白色銀河へと突き進む。

 

勿論その白色銀河も地球人類にとっては未知なる空間だ。

 

ゴルバが撃破された事実はいずれ、暗黒星団帝国も知る所になるだろう。

 

そうなれば、この白色銀河が暗黒星団帝国との新たな戦場となり、戦いはさらに激化するだろう。

 

しかし、母なる星、地球の危機‥大切な人を救うために止まる事は出来ない。

 

選抜艦隊は敵の本星を目指し、白色銀河への第一歩を踏み出すのであった。




次回 白色銀河バルジ境界面戦

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