地球にて抵抗運動を継続しているパルチザンたちは暗黒星団帝国軍が日本の関東にあるガミラス戦役時に出来たクレーター跡にてかつて防衛軍が建設した地質調査施設を利用して新型兵器開発をしているという情報を入手することに成功した。
そしてそこでは技術者たちが無理やり働かされて新兵器を開発・製造しているという情報も手に入れた為、パルチザンたちはこの施設の破壊と囚われている技術者たちの救出作戦を決行することとなった。
施設内部に潜入し、破壊工作と技術者たちの救出任務を担当するのは古野間、北野、ティアナらの少数精鋭のチームが行い、万が一敵兵が逃走して襲撃が露呈して増援を呼ばれることを防ぐために基地周囲の砂漠地帯で戦車隊やIS隊が包囲陣を展開する…と言うのが作戦である。
とはいえ侵入経路が下水道しかないのがティアナにとってはきつかった。
(うぇ~いくら科学技術がミッドよりも上でも下水道は汚いのね‥‥)
一応、ヘルメットを着用していたので、臭いもそこまで気にはならなかったが、それでも視界で汚水や腐敗物等の汚物は目に入るので嫌悪感は抱いた。
しかし、ここまで来て引き返すわけにもいかないので我慢したのは言うまでもない。
そして、無事に施設内への潜入に成功した。
機密保持のため、この武器製造プラントに割り当てられた警備兵の数がそもそも圧倒的に少なく、おまけに最近レジスタンスやパルチザンとの戦いで都市防衛の兵士が損耗した影響で一部兵士が引き抜かれてしまっており、下水道まで警備の手が回っていなかった。
さらに、パルチザンやレジスタンスにこの製造プラントが見つかるわけがないと高を括っていた事もあってか罠の類やバリアー等の防御装置も無かった。
「こちらスペード1、プラント内部の侵入に成功。予定通りだ」
北野が外のチームに現状を伝える。
『ハート1、了解』
「小島の嬢ちゃん。脱出経路の確保はかなり重要だからな。救出した技術者たちを運び出さなきゃいけない‥‥失敗するなよ?」
『分かっていますよ!!』
「‥‥宗像、しっかりサポートしてやってくれよ?」
『了解!』
『ちょっと!!古野間隊長!!それはどういう意味ですか!!!』
古野間は小島エミにしっかりと脱出路の確保をしておくように言ったがエミの自信満々の返答と彼女が任官してまだ数か月の新米士官であるということをまほから聞いていたこともあり、不安が残ったので自身の副官である宗像にサポートするように言いつつ無線を切った。
当然、小島としては自分の力量を信じて貰えなかった件について声を荒げる。
「ここまでは順調ですね」
「問題はここからだな‥‥」
北野はティアナにそう答えつつ携帯端末を稼働させ、この製造プラントの地図を表示する。
「新型戦車の開発工場と捕虜収容施設はここ‥‥しかし、建物の左側…ここの戦車開発区画は捕虜監視システムと連動して、自動で動く銃座が多数設置されているとの情報です」
「さすがに警備兵と銃座の目をかいくぐって戦車を破壊するのは無理がありますね‥‥」
「だろうな‥‥警備の兵士が少ない分、監視システムの銃座は連中にとって重要な兵力だろうからな‥‥」
そう。人員不足をご自慢の技術力で補填した暗黒星団帝国軍であったがそこには穴がある。
「なので、我々はまず東側の最深部にあるコンピューター室にあるコンピューターを破壊し、捕虜監視システムを停止させてから、開発区画へと向かいます」
「なるほど‥‥まずはコンピューター室の破壊及び自動銃座の破壊‥‥ですね」
「それでは、行きますよ!!」
「はい!!」
「おう!!」
北野の言葉に二人はそう答えて作戦を開始した。
そうして彼らはコンピューター室を目指して進んでいったが、道中で敵兵数名と遭遇し、銃撃戦となってしまった。
制圧には成功したものの、発砲音で侵入が察知されてしまい警報が鳴りだしてしまった。
ヴィー!ヴィー!ヴィー!
「こちらスペード1。第一関門突破。A地点の占拠に成功」
『クラブ2、了解』
「しかしコンピューター室にたどり着く前なのに警報が鳴り出しちゃいましたね‥‥」
「まぁ、ここまで暴れればしかなないですよ」
「まだまだだ‥‥ここがドンパチ、賑やかになるのはな‥‥」
古野間は笑みを浮かべながらティアナと北野に言う。
「さっ、先を急ぎましょう!!」
「「はい(おう)!!」」
もうこうなればこそこそ動いても意味がないのでロケットランチャーをぶっ放したり枝付き手りゅう弾を投げ込んで敵兵を吹き飛ばしたりしながらコンピューター室前までたどり着いた。
「こちらスペード1。B地点の占拠に成功」
『クラブ1、了解』
「この奥が、コンピューター室がある区画なんですね‥‥?」
「ああ、間違いない」
北野が携帯端末で間違いがないかを確認し、三人はいよいよ、コンピューター室へと向かう。
「ここだな‥‥」
即射撃できるように三人は武器を構えて突入したがコンピューター室には警備兵の姿はなかった。
どうやら自動銃座や警備兵に任せていたのと自動化されている関係で人員が配置されていなかったようで破壊工作において障害となりえるものが何一つなかった。
「こちらスペード1.ターゲット1に到着!!これよりターゲットを破壊する!!」
『クラブ1了解!』
『同じくハート1了解!』
『ガーディアン01了解!』
そして彼らはまず銃火器で破壊できそうな機器を射撃し、機能を奪うとともに復旧されないように高性能爆薬を設置した。
「セット完了!」
「退避!!」
そして離れてから起爆した。
此処で時系列は今日の朝まで戻る。
占領軍士官が使用している官舎には暗黒星団帝国の囚われの身となっている雪が窓の外を呆然と見ていた。
アルフォンは雪がパルチザンに自分たちの情報を伝えているスパイである事を承知しているが、何故か雪を処罰したり、牢へ閉じ込めることなく、軟禁ではあるが官舎の一室での居住をさせている。
雪にはアルフォンの行為の意図が分からない。
しかし、アルフォンが所属しているのは地球占領軍技術部情報との事なので、このまま彼の傍に居れば、いずれ地球に打ち込まれたあの重核子爆弾の弱点が掴めるかもしれない。
雪にはそう言う思惑があった。
「どうだね、体調の方は?」
「元気ですわ‥‥」
暗黒星団帝国軍の地球襲来時に負った怪我はすっかり癒えたので、体調に関しては問題なかった。
しかし、こうして敵の手に捕まっている事、
自分の諜報活動を逆手にとられてパルチザンに大きな被害を与えてしまった事、
そして、ヤマトの動向‥‥
そう言った要素があり精神面において、雪はやや疲れていた。
「ふっ‥そうは思えないがね‥‥今日も顔色が良くないよ‥‥」
アルフォンはそうした雪のメンタル面も見抜いていた。
「‥‥心配なのかね?パルチザンにいる仲間たちのことが‥‥?‥‥それとも、君が考えているのは飛び立って行ったあの艦のことかな‥‥?」
「‥‥」
「‥‥まぁ、いい。来たまえ。今日は君を外へ連れて行ってあげよう‥‥」
「外へ?」
すると、アルフォンは雪に意外な提案をしてきた。
捕虜の身である雪を外へ連れ出すというのだ。
(収容施設へ収監するって事かしら?)
アルフォンは雪が諜報活動をしていた事を知っていた。
だからこそ、それを逆手にとってパルチザンに大きな被害を与えることが出来た。
そして、怪我が治り、ましてや自分たちの情報をパルチザンに流していたのだから当然、そんな危険人物をこのまま手元に置いて置く訳にはいかない。
(今、収容施設に移されたら、重核子爆弾の情報を得られない‥‥)
雪は内心焦っていたが、それを表情に出す事は無かった。
「ああ、僕は今日、ある場所を視察せねばならん‥‥そこに同行してもらいたい」
しかし、アルフォンは雪が思っている事とは全く異なった。
彼は今日、公務である場所の視察をするので、その視察に雪を同行させたいと言ってきた。
「‥‥私が逃げるかも、とはお考えにならないのですか?」
「‥‥」
「お答えにならないんですね‥‥」
「もし、逃げる気があるのなら、君ならこの建物からでもうまく逃げ出すことが出来るだろう‥‥違うかね?」
「‥‥」
「フッ‥‥ほら、君だって同じだよ。僕の質問には答えてくれない‥‥それに、今日はどちらにしても同じだよ‥‥これから僕たちが向かう場所は広大な砂漠の中央にあるのだからね‥‥」
「砂漠?」
やはり、アルフォンには雪が自分の下から逃げないという確信があった。
今日視察する場所が砂漠のど真ん中にあり、例え逃げたとしても野垂れ死ぬだろうし、雪は自分が重核子爆弾の秘密を握っている人物だと認識している事を知っているので、自分から重核子爆弾の秘密を聞き出すまでは、自分の下に居ると言う確信があった。
それをアルフォンは敢えて知らないフリをしていた。
そして、アルフォンは雪をエアーカーに乗せて視察場所へと赴いた。
「これは‥‥?」
「製造プラントだ‥‥ここではあるモノを作っている‥‥」
「あるもの‥‥?」
「見ればわかる‥‥」
雪はアルフォンと共に製造プラント内を進んで行き、ある部屋へと辿り着く。
地下の大きな実験場には新型の兵器‥‥対パルチザン用の新型戦車が置かれていた。
「あれは‥‥歩行戦車‥‥!!」
新型戦車はこれまで暗黒星団帝国が運用してきた三脚戦車やパトロール戦車と異なり、ロボットの様な脚を持つ虫型のロボットのような外見をしていた。
その大きさは対人型のパトロール戦車よりも小型で戦車と言うよりも戦闘アーマーと言った方が正しいかもしれない。
この大きさならば、ある程度の広さを有する施設内‥屋内での運用も可能で、屋内や下水道における市街地戦‥対人戦ではかなり優位に戦闘をすることが出来るだろう。
「ここは‥‥兵器工場なのね!!」
「そうだ‥‥」
「あなたたちは今のまでは飽き足らず、また新しい兵器を‥‥」
「誤解のないように言っておくが、この工場の運営に関しては僕も本意ではない‥‥この計画を推し進めているのは、占領軍総司令官であるカザン総司令だ。僕は現場を任されていたにすぎない」
「手をかしているなら、同じことです」
「‥‥」
アルフォン自身、雪に言われなくとも自覚しているのか、それ以上は何も言わない。
当初、彼は製造プラントの責任者に任命された際、歩兵の兵装強化案を提出した。
自分たちが使用しているレーザー銃は、悪天候時には威力が大幅に低下する。
それは以前、スプリンクラーが作動している際に交戦をした時、自分は雪から奪った地球製のコスモガンを使用していたが、部下たちは暗黒星団帝国が使用しているレーザー銃を使用して戦ったが、一方的に打ち負かされた。
そうした経験から天候に左右されない地球製のコスモガンの優位性に目をつけたアルフォンは地球製のコスモガンと同じものを量産し、兵士に配給するべきだと報告をあげた。
しかし、カザンを始めとする占領軍上層部はアルフォンの報告を一蹴した。
「我々に成す術なく占領された蛮族どもと同じ武器を使えと言うのか!?」
「アルフォン少尉、君には暗黒星団帝国の軍人としての誇りはないのか?」
等とアルフォンを嘲笑した。
(でしたら、何故未だにパルチザンに手を焼いているのですか?)
(常に安全な司令部でふんぞり返っているだけで、前線の兵士たちの苦労も知らない)
(これまで帝国の為に死んでいった兵士たちの顔、名前を貴方がたは知っているのか!?覚えているのか!?)
(貴方たちこそ、暗黒星団帝国の軍人としての誇りはないのか!?)
前線でパルチザンと命をかけて戦っている兵士たちの苦労も知らず、書類や報告に上げられている被害だけしか見ていない上層部にアルフォンは憤りを覚える。
ただ、上層部としてもパルチザンの活動は看過できない所まできていたので、こうして新型戦車の開発・量産を秘密裏に進めたのだ。
「新型戦車の試作機は既に完成している。威力も証明済みだ。あそこに置かれているのは量産機の第一号機‥‥」
「‥‥」
「だが、私が見せたいのは戦車ではない‥‥ここの施設には、この戦車や武器を作るための労働者たちがいる‥‥今日は視察のため、製造ラインを停止しているので、今は地下の収容施設にいる」
「地下‥‥収容施設?」
「見たまえ‥‥彼らだ」
モニターに表示された地下収容施設の防犯映像には雑居房に押し込められた大勢の地球人技師の姿が映し出されていた。
「っ!?あれはっ!?」
「そう‥‥彼らはすべて奴隷となった地球人たちだ‥‥すなわち、あの戦車を作っているのは君と同じく、捕虜になった地球人たちなのだよ‥‥」
「‥‥」
雪はこの新型戦車がまた大勢の地球人の命を奪うのかと思うと悔しくてたまらなかった。
しかもこの戦車を作っているのが暗黒星団帝国の技師ではなく、自分と同じ地球人であるということが許せなかった。
アルフォンが今回の視察で何故、自分を同行させたのか?
それは、この状態を見せて抵抗しても無駄であると言う意思表示なのか?
それとも何か雪には分からない別の思惑があるのか?
暗黒星団帝国のやり方に雪が内心で憤慨していると突如、非常灯が点灯し警報が鳴り響く。
「どうした!?」
「ぱ、パルチザンです!!パルチザンの襲撃です!!」
「くっ、まさかパルチザンにこのプラントの情報が流れていたとは‥‥」
アルフォン自身にとってもパルチザンがこのプラントの存在を知られていたのは予想外だった。
しかも新型戦車の量産化の目途がたったばかりの時に‥‥
(やはり、我が軍は地球人を舐めている節があるな‥‥)
雪が情報を流さなくてもパルチザンたちは独自の情報収集でこのプラントの存在を突き止めて襲撃してきた。
その力にアルフォンは敵ながらも感服する思いがあった。
(このプラントの存在は軍内部でも機密扱いになって警備兵も防御装置も脆弱だ)
(パルチザンがどれくらいの規模で襲撃しているのかも現時点では不明‥‥)
(さて、どうするか‥‥)
アルフォンがこの事態をどう対応するか考えていると、
「南ブロックに侵入者あり!!繰り返す!!南ブロックに侵入者あり!!全警備兵はただちに警戒態勢に移れ!!」
プラント内に警報と侵入者を知らせる放送が流れる。
「アルフォン少尉!!パルチザンの襲撃です!!避難を!!」
警備兵に避難を促され、アルフォンは雪を伴いプラントからの脱出を試みた。
「動力が落とされたか‥‥あるいは制御コンピューターが破壊されたか‥‥」
コンピューター室を破壊した事で、プラントの電源機能も停止し、警報も非常灯も消えた。
「アルフォン少尉、この先はもう無理です。一番から四番まで、隔壁が全て閉じられました。‥‥東側の非常口からご避難ください!!」
コンピューター室が破壊され、隔壁の操作も不能となった。
逃走防止のため、手動での開閉を出来なくした事が仇となった。
今この場で隔壁を破るには爆弾かロケットランチャーによる武器での破壊しかなかった。
だが、アルフォンも案内役の兵士も分厚い隔壁を破壊できるほどの武器は持ち合わせていなかった。
当然、雪は丸腰なので問題外である。
遠回りだが、今は一刻も早くこのプラントから避難するのが最優先なので、アルフォンたちは非常口を目指した。
その頃、コンピューター室を完全に破壊した北野、古野間、ティアナたち。
「スペード1、ターゲット1の完全破壊完了」
「これだけ木端微塵にすれば、修復はもう不可能ですね」
爆破されて完全に破壊されたコンピューターを見てティアナは修理不能と破断する。
「ああ、次は工場の方だ。急ぎ、新型戦車とやらをぶっ壊しちまおう」
「「はい!!」」
三人は次にこのプラントで生産されているとされる新型戦車の破壊へと向かった。
「さて、こっちが例の新型戦車と捕虜の収容施設がある区画です‥‥制御コンピューターは破壊しましたが、外部バッテリーや補助動力でまだ、生きている銃座があるかもしれません‥‥気を付けて進みましょう」
新型戦車と捕虜がいる重要な区画なので、逃走防止の銃座もコンピューターからの電源だけでなく、外部バッテリーや補助動力を積み込んだタイプのモノが存在している可能性があるので、注意して進まなければならなかった。
警戒していた通り、床からは格納式の自動銃座が飛び出して銃撃してきた。
「このポンコツが!!」
古野間が手榴弾を投擲して銃座を破壊する。
銃座と警備兵を次々斃し、進んで行く三人。
辺りはコンベアやクレーンといった工業設備が目立ってきて、ここが製造プラントなのだと実感させられてくる。
「この先にあるんだな‥‥例の新型戦車が‥‥」
「あともう少しですね‥‥」
新型戦車が置かれている区画に近づいている中、上部の通路に雪とアルフォンの姿があった。
「あれは‥‥!!」
雪は下の階にいる北野たちの姿に気づく。
しかし、北野たちは雪の存在に気づいていない。
「北野く‥‥んっ‥‥」
雪が北野に声をかけようとしたら、アルフォンは手で雪の口を塞ぐ。
「そうか‥‥あの時の彼らか‥‥」
アルフォンも北野たちの存在に気づいたが、今は雪が居るので、北野たちを狙撃できる絶好のチャンスでありながらも彼らを攻撃することなく、北野たちがその場から去るのをただジッと待った。
そして、三人はアルフォンと雪の存在に気づくことなく、新型戦車がある区画へと進んで行った。
「ここが新型戦車の開発区画‥‥」
「あとで、ここにも時限爆弾を設置して生産器具を破壊しましょう。新型戦車も破壊しないといけないし‥‥」
「でも、まずは囚われている人たちの救出が先ですね」
「ええ、その通りです」
プラントを爆破するにしても先に捕まっている技術者たちを救出しなければならない。
「ん?あれは‥‥?」
すると古野間が部屋の中央に置かれている虫型のロボットのようなモノの存在に気づく。
「おそらく、例の新型戦車でしょうね‥‥」
「意外と小さいですね‥‥本当にあれが戦車なんですか?私はもっと大きなモノだとばかり思っていました‥‥」
これまで地球、暗黒星団帝国の戦車を見てきたティアナとしては、『強力な戦車=でかい』 というイメージがあったので、新型戦車があまりにも小型な事に意外性と言うか拍子抜けをする。
「いや、この方が良いんだよ。嬢ちゃん」
「それはどういう事ですか?」
「俺たちパルチザンは、地の利を利用して迷路のような街中や工業地帯で戦う‥‥大きすぎて身動きが取れず、足元をすくわれるかもしれない大型の戦車より、自由に狭いところへはいっていける小型の戦車のほうがいい‥‥敵はそれに気づいたんだ‥‥だからこそ、連中は此処まで小型化した戦車を作り出したんだ」
「なるほど‥‥」
古野間がティアナに小型戦車のメリットを教える。
「ここまで小型化されるとなると、パルチザン本部にだってもぐりこめることができるそうですね‥‥」
北野が此処まで小型化した戦車ならば、屋内に設置されているパルチザン本部にも攻め込んで来る事が可能かもしれないと推察する。
「なんかゾッとしますね‥‥」
あの新型戦車の実力はまだ分からない。
しかし、此処まで小型化した戦車なのだから対人戦には特化した能力を有している筈だ。
当然、管理局では思いつかない思想から生み出された兵器である事は間違いない。
(有人型のガジェット・ドローンってところかしら?)
ティアナはかつてスカリエッティが制作したガジェット・ドローンを大型化して有人機に改造したような印象を受ける。
「どうする隊長?先にあれだけでもぶち壊すか?」
「それとも折角ですし、鹵獲しますか?」
古野間は捕虜収容区画へ行く前にあの新型戦車だけでも破壊してから行くかと訊ねる。
このままここに放置しておいて、捕虜収容区画へと行き、後ろから追撃されては折角助けた人たちに大勢の犠牲者を出す可能性がある。
それか、折角なので、技術調査を含めて鹵獲するかティアナが提案する。
「そうですね。このままここに置いておくと敵の手に渡るかもしれませんし‥‥もし、動けるなら鹵獲し、それがだめなら破壊しましょう」
鹵獲出来るなら鹵獲し、動かせる状態でなければ破壊しようと北野が決めた時、
ウィィンンン‥‥
起動音と共に新型戦車は動き出した。
「う、動き出した‥‥」
「もう、起動可能状態まで出来上がっていたんだ‥‥!!」
「ちっ、とんだおまけがついていやがったな‥‥って事で鹵獲は無理だな‥‥ぶっ壊すしかないようだぜ!!」
新型戦車が既に起動可能状態になっていたことに驚愕する北野たち。
この先にある捕虜収容区画へコイツを連れて行くわけにはいかない。
自分たちが生き残るのも、此処に囚われている人たちを助けるためにも今この場で新型戦車を破壊するしかなかった。
新型戦車は後部の左右に装備しているビーム砲を乱射しながら接近してくる。
三人は散開し、柱などの物陰に隠れる。
「くそっ!!なんて速さだ‥‥!!」
古野間は新型戦車の俊敏さに思わず目を見張る。
いくら小型化した戦車とは言え、やはりそれなりの大きさも重量もある筈だ。
しかし、新型戦車は動きが早くて、不規則で、なおかつブーストで高くジャンプすると壁にへばりつく芸当を見せた。
「壁にくっついた!?あれって本当に戦車なの!?」
「まるでクモみたいだ‥‥」
ティアナと北野は新車らしからぬ新型戦車の動きに舌を巻く。
ただ蜘蛛女となった純夏が見たら、
「まだまだね」
と言っていたかもしれない。
新型戦車の動き、攻撃力はまさにこれまでの暗黒星団帝国の兵器とは桁違いだった。
「あんな動きをして中の人は酔わないの!?」
ティアナはあの戦車の操縦士が酔わない事に疑問を抱く。
壁から壁に飛び移る戦車らしからぬ行動をしているのだから、通常ならば酔って操縦なんて出来ない。
バイク好きの自分でも流石にあんな動きをする戦車を操縦しろなんて言われたら酔ってしまう。
「おそらく宇宙船と同じくコックピット内は慣性制御がされているのでしょう」
ティアナの疑問に北野が答えた。
あの戦車のコックピットは慣性制御が整っているためか操縦士が酔う事はないみたいだ。
何度かブースターを吹かし、壁から壁への移動をしていると新型戦車に異常が出始めた。
足の付け根から煙が噴き出し始めたのだ。
煙はやがて、全ての足の付け根、コックピットなどからも出始めた。
「北野さん!!古野間さん!!戦車から煙が!!」
「おそらくあの戦車自体がまだ完全品というわけではないんだ‥‥」
「動きも段々と鈍くなってきたみたいだぜ。未完成品であんなトリッキーな動きをやりまくるからオーバーヒートしやがった。だが、これはチャンスだぜ!!」
「「はい!!」」
古野間はロケットランチャーで、北野はコスモライフル、ティアナはコスモガンによる精密射撃で新型戦車を攻撃し、その結果、レーザー砲は吹き飛び、足が折れ、新型戦車は崩れるように床に倒れ沈黙した。
「‥‥こちらスペード1、ターゲット2の破壊に成功‥‥これより捕虜の救助を開始する‥‥」
北野は別動隊に新型戦車の破壊を伝えると同時に収容されている技術者たちの救助を行う旨を伝える。
「クラブ1、了解。隊長‥‥こちらも施設内の占拠が完了しました‥‥もう大丈夫ですよ」
元々数が少なかった事も影響し、このプラントの警備兵は全員全滅した。
「こちらハート1。工場外部の占拠も完了です。ただ、要人と思われる高速エアーカーが一台、プラントから逃走しました‥‥残念ですが今からではとても捕捉できません」
プラント周辺を警戒していたガーディアン連隊の隙を突いて一台のエアーカーがプラントからの逃走に成功したみたいだ。
「IS部隊でも捕捉できなかったのか?」
プラント周辺にはIS部隊も展開していたので、IS部隊ならば十分に捕捉出来たかと思われた。
「それが、運悪く周辺の哨戒に回しており、その隙を突かれました」
「わかりました。ともかく、各班ともに最後まで気を抜かないようにおねがいします」
北野は要人用のエアーカーと聞いて、この製造プラントの所長が逃げたのだと思った。
IS部隊も運悪く、その時はプラントの近くに居なかったので、捕捉出来なかった。
敵の要人を逃がしてしまった事は残念な結果ではあるが、そもそもの目的である新型戦車の破壊、捕まっていた技術者たちの救出、そしてプラント自体の破壊は実行できそうなので、それで良しとした。
「了解」
「それじゃあ、我々もここに捕まっている人たちの救助をしましょう。あまり時間をかけていると敵が戻ってくるかもしれませんし‥‥」
北野とティアナは急いで収容されている技術者たちの救助を行うため、地下の捕虜収容所角へと向かう。
この時、新型戦車の一番近くにいた古野間は搭乗員の生死を確認しに行った。
「うぅ‥‥あ‥‥アル‥フォン‥‥少尉‥‥」
新型戦車に乗っていた兵士は最後にその言葉を呟き絶命した。
「‥‥ここも‥‥ここもお前の仕業か!?‥‥アルフォン!!‥‥出てこい‥‥出てこい!!どこにいやがる!!アルフォォォォォンっ!!!」
古野間は『アルフォン』と言う名を聞いて、憤慨しつつ周囲を見渡しながらアルフォンの名を叫ぶ。
しかし、アルフォンが古野間の前に姿を現すことはなかった。
捕虜収容区画へと辿り着いた北野とティアナは牢屋の電子ロックを解除して捕まっていた人たちを解放する。
そして、捕まっていた人たちの中には忍、ノエル、ファリン、千代、そしてリンネの両親も居た。
忍はティアナがパルチザン活動に参加していた事に驚愕していたが、長々と話す余裕は無かったので、一先ずこのプラントからの避難を促した。
やがて、このプラントは施設内に仕掛けた爆弾と戦車隊、IS部隊の攻撃で完全に破壊された。
次回 褐色矮星の罠
銀河鉄道物語の小説を一話試し書きしたのですが読みたいですか?
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読みたい!
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別にいい