内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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今回もステルス兄貴さんのご協力で作成しました!


第百三十四話 褐色矮星の罠

日本‥関東にガミラス戦役時に出来た第二クレータ―‥‥

 

ガミラス戦役後も復興されることなく周囲は広大な砂漠化した大地‥‥

 

そこには防衛軍が地質調査のための施設を建設していたが、その施設を暗黒星団帝国地球占領軍は武器製造プラントへと改装し、捕虜にした地球人の技術者たちを集めて新型戦車の開発を行っていた。

 

その情報を独自のルートで突き止めたパルチザンたちは新型戦車・兵器製造プラントの破壊、捕まっている技術者たちの救出作戦を行った

 

作戦の結果、新型戦車に手古摺るも破壊することに成功し、無事に捕まっていた技術者たちの救出に成功した。

 

捕まっていた技術者たちの救出が行われている中、プラントがあった砂漠を高速で走る一台のエアーカーがあった。

 

パルチザンの作戦が行われた日、暗黒星団帝国・地球占領軍・技術部情報将校のアルフォンは雪を伴い、例のプラントの視察を行っていた。

 

アルフォン自身もまさか、視察に来た日にパルチザンの襲撃があるとは思わなかった。

 

丸腰の雪を伴いアルフォンは何とかプラントを脱出した。

 

遠くの方で爆発が起きたような轟音がした。

 

「製造プラントは全滅‥‥捕まっていた人たちも全員解放されたでしょうね‥‥」

 

「‥‥」

 

パルチザンが襲撃してあの轟音‥‥

 

あのプラントがパルチザンの手によって爆破されたのだろう。

 

当然、同胞である地球人が捕まっていたのだから、彼らも一人残らず救出されたのだと容易に想像がつく。

 

新兵器製造プラントが破壊され、技術者たちが奪還された事は雪の言う通り事実なのだろう。

 

アルフォンは雪の言葉に無言で肯定する。

 

「‥‥なぜ‥なぜ、貴方は、あそこで働かされている人たちを私に見せたんです?」

 

次に雪はアルフォンに今日、何故自分をあのプラントの視察に同行させたのかを問う。

 

「‥‥わからないんだ‥‥どうしてなのか‥‥僕にもね‥‥あの状態では新型戦車もすぐには製造を再開することはできまい‥‥完成している試作機が一台、司令部に残っているが、一台だけでなんとかなるものではない‥‥」

 

アルフォン自身、何故雪を今日の視察に同行させたのか分からなかった。

 

自分たち暗黒星団帝国の優位性を雪にアピールしたかったのか?

 

それともパルチザンたちに無駄な抵抗であると雪を通じて教えるつもりだったのか?

 

雪には様々な憶測が浮かぶがどれが正解なのか、アルフォン自身も分からないのだから、答えは雪には当然分からない。

 

しかし、例の新型戦車はあのプラント以外にももう一台存在している事がアルフォンの発言から判明した。

 

確かにあの新型戦車は強力な兵器ではあるが、一台あるからと言って一騎当千の働きも期待出来ないし、戦局をひっくり返す程の兵力でもない事をアルフォンは語る。

 

やはり何十、何百台もあれば話は変わるが、量産化させるには施設も技術者も居ない。

 

設計データもプラントと共に失われた。

 

今から試作機を調査して量産体制を整えるには時間も施設も人材も乏しい。

 

「これで‥‥これでよかったのかもしれない‥‥」

 

「えっ?今、何か言われました?」

 

「いや、なんでもない‥‥帰ろう」

 

アルフォンは新型戦車の製造プラントが破壊され、今後新型戦車の製造が難しくなったと言うのに、それを悲観する様子もなく、むしろ新型戦車が製造されなかったことを喜んでいるみたいにも見えた。

 

しかし、その呟きはあまりにも小さな声であったため、雪には聞こえなかった。

 

 

新型戦車製造プラントを破壊し、そこに捕まっていた技術者たち救出したが、その中には何と占領軍に連れて行かれた忍の姿もあった事にティアナは驚いた。

 

当然、忍の他にノエルとファリンの姿もあった。

 

パルチザンのアジトに向かっている輸送車の中でティアナは忍にパルチザンへ参加している経緯を話した。

 

「それで、どうしてティアナちゃんがパルチザンに?まさか他の皆も参加しているの?」

 

忍としては子供たちの事を考えて、フェイトにセカンドハウスのカギを渡し、子供たちの事を託したのだ。

 

ティアナが居たので、フェイトもセカンドハウスではなく、占領軍と戦うパルチザンのアジトに子供たちも連れて行ったのかと思ってしまうのも当然だ。

 

「いえ、パルチザンに参加しているのは私以外に神堂さんとデュノアさんで、フェイトさんとシルビアさんは忍さんが用意してくれたセカンドハウスで子供たちのお世話をしています」

 

「そう‥でも、ティアナちゃんたちはもともと地球とは関係ないのになんでこんな危ないことを‥‥?」

 

(まさか、パルチザン活動に干渉して、地球解放後にそれを口実にして地球を支配下に置くつもりじゃあ‥‥)

 

まだ先行きが見えない戦いであるが、いつかは終わりが来る。

 

仮に地球側が暗黒星団帝国を追い出した後、直ぐに元の生活には戻れない。

 

戦災復興とパルチザン活動を口実に管理局がしゃしゃり出てきてこの地球を管理と言う名の支配下に置くつもりではないかとこの状況下では勘ぐってしまう。

 

「勿論当初は、『何でこんな目に遭わないといけないの?』って自分の不運を呪いましたし、理不尽だらけな出来事に憤慨しました」

 

彗星帝国の残党軍に一方的に襲撃され、ミッドチルダへはなかなか戻れずにいた中で、もう一つの地球がこうして暗黒星団帝国に占領されて戦火と占領下に巻き込まれ、『どうして自分がこんな理不尽な目に遭わなければならない』と、理不尽な思いを抱くことも分かる。

 

「でも、以前ボコランドで知り合った愛里寿ちゃんが公園に一人で居る所を見つけて保護しました」

 

「えっ?愛里寿って、もしかして島田さんの所の娘さん?」

 

「お、恐らく‥‥」

 

日本人で『愛里寿』なんて西洋人みたいな名前は珍しいので、自分たちが保護した愛里寿は島田家の娘だと判断するティアナ。

 

「島田さんの所の御当主も私と一緒に捕まっていたの‥‥娘さんの事を物凄く心配していたわ。もし、ティアナちゃんが保護してくれた愛里寿って子が島田さんの家の娘さんなら、きっと安心するわね」

 

「それで、自分が理不尽な目に遭っているけど、愛里寿ちゃんの姿を見て何かしたいと思い立って‥‥それにギンガさんは知り合いが居ない中で、しかも救助された世界が滅亡しようとしている時に助けられて、今では防衛軍の軍人をしていたので今、私たちができるのは地球を占領している暗黒星団帝国と戦って一日でも早く、愛里寿や子供たちの下に家族を還してあげることではないかと思って‥‥」

 

「ティアナちゃんの思いはわかるけど、もしも貴女たちの身に何かあれば、それこそこの戦争の後に管理局とやらが地球にクレームをいれてくるんじゃない?」

 

「管理局に文句は言わせません。私を含め、パルチザンに参加したみんなは自分の意志で参加したんです。私たちの意志を管理局にどうこう言われる筋合いはありませんから」

 

「そう‥‥」

 

一先ず、忍はティアナの言葉を信じた。

 

パルチザンのアジトに到着後、捕まっていた技術者たちはメディカルチェックを受けた。

 

メディカルチェック後、藤堂としては直ぐにでも技術者たちを家族の下に還してやりたかったが、プラントの壊滅、捕虜の解放は直ぐにでも占領軍に知らされる。

 

そうなれば、彼らは捕らえていた技術者たちを捜索するだろう。

 

折角、救助した技術者たちを再び暗黒星団帝国に渡す訳にはいかない。

 

しかし、技術者たち側としてみれば、自分たちの家族が人質にされないか気がかりであった。

 

だが、彼らの気がかりは杞憂となるのだが、それを彼らは知らない‥‥

 

技術者たちの不安はしばらくの間、続く事となった。

 

 

地球防衛軍司令部 現:暗黒星団帝国地球占領軍司令部 カザン執務室

 

「なんだと!?例の新型戦車製造プラントが破壊されただと!?」

 

「は、はい」

 

案の定、プラントの壊滅は占領軍総司令官のカザンの耳にも届いた。

 

「それで、被害は!?開発再開の目途はどうなっておる!?」

 

「警備にあたっていた兵からの報告が無いので、警備兵は恐らく全滅した模様です。よって、プラントも完全に破壊されたものと思われます」

 

「たしか今日はアルフォンが視察へと赴いていたはずだ。アルフォンはどうした!?」

 

「アルフォン少尉は何とか無事に避難されたようです。只今、帰還中との事です」

 

「なにっ!?避難だと!?」

 

「は、はい‥‥」

 

「重要なプラントがパルチザンどもの攻撃を受けている中、避難だと!?それは立派な敵前逃亡でないか!!」

 

実際はプラントに居た警備兵がアルフォンに避難を促していたので、敵前逃亡とは言い切れない。

 

しかし、それを証明する事は困難だ。

 

「後日、アルフォンを此処に呼べ!!私が直々に査問してやる!!」

 

「は、はい」

 

「くぅ~‥‥忌々しいパルチザン共め‥‥!!」

 

カザンは拳をギュッと握り、パルチザン‥そして、アルフォンに対して怒りを露にした。

 

 

地球でパルチザンの活動が活発化して、徐々に‥そして確実に占領軍の兵力が低下している頃、暗黒星団帝国本星を探し求めている選抜艦隊はと言うと‥‥

 

 

武御雷 艦橋

 

「スクリーン、全てグリーン。左舷前方にクラス3の褐色矮星を確認。4光年以内の距離に、あと三つほどの恒星を確認できますが、ほぼ赤外線反応のみ。全部同じタイプの褐色矮星ですね‥‥」

 

「レーダーに敵影なし」

 

「敵がいないのか?どこにも?」

 

ディアーチェが周辺に敵影が全くない事に訝しむ。

 

「はい。暗黒ガスが点在しているのでそこに逃げ込んでいるか、待ち伏せている可能性もありますが‥‥」

 

敵の本星もしくは敵本星の手掛かりがあると思われた褐色矮星宙域‥‥

 

罠や敵の待ち伏せを考えて戦闘態勢のまま突入して来たのだが、敵の姿は一切確認されなかった。

 

一応、周辺に暗黒ガスが点在しているので、そのガス帯に隠れている可能性もある。

 

流石に暗黒ガスの内部まではレーダーで捕捉できないので敵の待ち伏せや罠の可能性は充分に考えられた。

 

「罠にしてはあまりにも静かだな‥‥」

 

「何だか不気味な場所ですよ。すぐ近くに恒星があるのに、眩しいどころか、ただ薄暗いだけですし‥‥白色銀河に来たのだから、明るい宙域ばかりだと思っていたのですが、白色銀河の中にもこんな薄暗い宙域が存在するんですね‥‥」

 

ディアーチェとギンガが言う通り、この宙域はあまりにも不気味だ。

 

白色銀河に来たばかりの時、周囲は明るく美しい光景だったのに、今自分たちが居る宙域は同じ白色銀河の中に居るのだが、周囲はまるで泥水で濁った川のように視界が悪い。

 

「まぁ、それは仕方ないよ。もともと褐色矮星というのは恒星になりきれなかった星だと言われている‥つまり、恒星と惑星の中間の様な存在だからね」

 

「恒星と惑星の中間‥‥それじゃあ、生物は‥‥」

 

「存在しないだろうね。褐色矮星は核融合反応がおきるほど、高い熱を発生することが出来ない‥そのほとんどが光をあまり発せず、自重による収縮時に赤外線を放出する程度なんだ‥‥そんな環境下では生物は生存も誕生も出来ないだろうね‥‥常識的には‥‥」

 

あくまでもこれまで遭遇してきた生物としての常識ならば、褐色矮星に生物は存在していない。

 

しかし、地球も管理局も宇宙の全てを見た訳ではないので、褐色矮星のような劣悪な環境下でも生存することが出来る生物がもしかしたらこの広い宇宙のどこかに居るのかもしれない。

 

「光を発しない恒星‥‥まるで、死んでしまったような恒星ですね」

 

「とにかく、このまま先を進んでみよう。敵が居ないとはいえ、ここに向けて撤退したと言うからには何か手掛かりが有る筈だ」

 

罠にしろ、待ち伏せにしろ、交戦した敵がこの宙域に逃げたのだから、この宙域には暗黒星団帝国について何か手掛かりが有る筈だ。

 

警戒しつつ進んで行くとレーダーが敵影をキャッチした。

 

「レーダーが敵影をキャッチ!!エネルギー反応多数!!」

 

「パネルに投影」

 

「了解」

 

パネルには選抜艦隊を包囲するような配置で敵の姿が投影されていた。

 

「やはり、罠だったか‥‥」

 

しかし、敵がこの宙域に逃げ込んだ事で、何かしらの罠か待ち伏せがあると思っていたので、今更敵が出現した事で焦ったり、驚愕する事ではなく、むしろ敵が出現した事で、敵本星の手掛かりを掴むチャンスでもあった。

 

「敵の配置は?」

 

「後方左右からそれぞれ三隻、計六隻。前方には左右六隻、計十二隻の敵艦を確認」

 

「艦種は?」

 

「エネルギー、レーダーの反応から駆逐艦と思われます」

 

「駆逐艦?戦艦や空母は?」

 

「今のところは確認できません」

 

「敵の戦力は駆逐艦ばかり‥‥パトロール隊か?」

 

ディアーチェは敵の艦隊編成からパトロール隊かと推察する。

 

「ですが、これまで遭遇してきた敵駆逐艦と異なり、速度はかなり速いです」

 

「高速駆逐艦か‥‥もしかしたら、敵の駆逐艦はゴルバに搭載されていたあの戦闘艇のように無人艦かもしれない」

 

束はレーダーに映る駆逐艦の異常な速さから、出現した駆逐艦はテンタクルス同様、無人艦だと判断する。

 

「では、連中は一撃離脱戦法でじわじわと我々にダメージを与えるつもりか?」

 

「あの速力と数から見ると、多分‥‥」

 

「そんな厄介な相手にどうすれば‥‥」

 

「いや、コンピューター制御の無人艦だからこその弱点もあるよ。あの艦はどうやら決まったパターンで動いているようだ‥‥ちーちゃん、あの艦の動きをすべてトレースして」

 

『了解だ』

 

「砲雷長、敵の動きをトレースするまで弾幕を張って時間を稼いで、駆逐艦の射程距離なら近づかなければ攻撃は出来ない‥‥下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるだよ」

 

「りょ、了解」

 

ヤマト、春藍、武御雷の重武装な戦艦に対して一撃離脱戦法をとる駆逐艦。

 

無人なので、躊躇もなく突っ込んで来るが、速力を重視した駆逐艦なので装甲はかなり薄く、副砲程度でも命中すれば撃沈することが出来る。

 

しかし、いかんせん敵の速度が早いのでなかなか当たらない。

 

そんな中、褐色矮星宙域にて一瞬であるがピカッと眩い光が輝く。

 

「ん?今何か光ったような‥‥」

 

『束、今しがた矮星に強烈な熱核反応を確認した!!』

 

「熱核融合!?それって‥‥」

 

『ああ、褐色矮星が突然爆発した!!まもなく衝撃波が来るぞ!!急いで対処しろ!!』

 

「どれくらいで来るの!?」

 

『30秒後だ!!』

 

「通信長、他艦に急いで通達!!」

 

「了解!!」

 

「隔壁閉鎖!!総員、対ショック準備!!急げ!!」

 

千冬からの情報はすぐに他艦にも伝達される。

 

やがて、衝撃波が来ると艦全体に激しい揺れが起こるが、大型艦だったことが幸いして艦自体には大したダメージはなかった。

 

しかし、巡洋艦以下の艦だったらどうなっていたか分からない。

 

現に先ほどまで戦っていた敵の駆逐艦群は全て衝撃波を受けて大破して、宇宙空間を漂っている。

 

ただ、雪風・改はヤマトが盾になってくれたおかげでほぼ無傷だった。

 

しかし、一応各部のチェックは必要だし、雪風・改も点検をした方が良いだろう。

 

「どうやら持ちこたえたみたいだな‥‥」

 

『爆発したのが小さな褐色矮星だったからこの程度で済んだのだ。これがもっと大きな褐色矮星だったら、我々は一瞬で蒸発していたところだ。それに中、小型艦を連れてこなくて正解だったな‥‥敵の高速駆逐艦も今の衝撃波でほとんど大破している』

 

「しかし、なんでいきなり爆発したんでしょう?」

 

鈴が、褐色矮星がいきなり爆発した理由を訊ねる。

 

タイミング悪く星の寿命が尽きた瞬間にこの宙域に来てしまったのだろうか?

 

『いや、褐色矮星は、自力で核融合反応を起こすことは不可能だ‥‥多分敵が人口的に爆発させたのだろう』

 

「あの星の爆発は敵の仕業!?」

 

『そうだ。敵の戦力は無人の駆逐艦‥‥一撃離脱戦法を行い、我々の注意を駆逐艦に引き付けている隙に褐色矮星を爆破させて、その衝撃波で我々を斃すつもりだったのだろう。だからこそ、敵は無人艦を使用したのかもしれない』

 

「なるほど、無人艦なら人的被害はゼロだもんね‥‥敵の誤算は爆破した褐色矮星が小さかった事か‥‥」

 

敵の今回の戦法を千冬が皆に説明する。

 

一歩間違えれば確実に始末されていたと思うとゾッとする。

 

「とすると、敵は我々を沈めるためだけに星一つを犠牲にしたんですか!?」

 

次いでギンガが今回、敵が行った戦術について千冬に質問をする。

 

『おそらくな‥‥あの程度の褐色矮星なら、爆発の影響も1千天文単位以上の距離までは広がらないだろう‥‥他の宙域に敵が控えていてもそこまで衝撃波は届かない。展開している無人艦さえ被害を除けば、この宙域に居る我々だけにダメージを与えることが出来る絶好の罠だ‥‥』

 

「なんて連中なの‥‥」

 

例え生命が存在しない星でもそれを捨て石の様に扱う暗黒星団帝国のやり方には胸糞悪い思いが込みあげてくる。

 

一方、この戦いを近くの宙域で観測をしていたサーグラスも知ることとなった。

 

「無人高速駆逐艦隊、全て消滅!!」

 

「ぬぅ~‥‥」

 

(無人駆逐艦では流石に仕留めきれなかったか‥‥)

 

(しかし、まさか褐色矮星が爆発した衝撃波にまでも耐えるとは‥‥)

 

衝撃波で仕留めることが出来れば、サーグラスとしては親友の仇も討てたし、地球艦隊が本星へ辿り着く事を妨害する任務も達成できたのだが、上手くはいかない。

 

サーグラスは此処で地球艦隊を仕留められなかった事に顔を歪ませる。

 

「本星より通信!!‥‥サーダ様からです!!」

 

そこに、通信員がサーダから通信が来たことを報告する。

 

「繋げ‥‥」

 

通信回路を開くと艦橋にあるモニターにサーダの姿が映し出される。

 

「サーダ様。無人艦隊は全滅‥‥地球艦隊はうまく切り抜けたようでございますが‥‥」

 

サーグラスは無人高速駆逐艦と褐色矮星の爆破による作戦が失敗した結果をサーダに報告する。

 

『フフ‥‥それはわかっています。無人艦をコントロールしていたのも私‥‥戦況は全てモニターしています』

 

「はっ、出過ぎた発言、お許しください」

 

『いいえ、良いわ。一刻も早くグロータスの仇を討ちたいと言う貴方の気持ち、分からないでもないのよ。ただ連中の力がどれほどのものか、まずはそれを確かめることが肝要‥‥よくぞ我慢してくれましたね、サーグラス。次は貴方の率いる艦隊の力、思う存分に見せてくれてもいいわ』

 

「そ、それでは‥‥」

 

『連中を誘い出し、貴方の用意した部隊で迎え撃ちなさい。ただし、いいこと‥‥?連中をなるべく本星から遠ざける位置に誘い込むのよ。彼らはまだ我々の本星がどこにあるのか暗中模索している様子‥‥危険を承知でも、かならず誘いには乗ってくるわ‥‥』

 

「心得ました!!我が艦隊の威力、彼奴等にしらしめてやりましょうぞ!!」

 

『フフ‥‥では、吉報を待っているわ‥‥』

 

「‥‥フハハハハハ!!ついに、ついにグロータスの仇を討てる時が来たか!!‥‥待っておれ!!小ワープにて、彼奴等の近くへワープアウト!!しかる後、再びワープして彼奴等を例の宙域へ誘い込め!!航跡を残すのを忘れるなよ!!」

 

「了解!!」

 

サーグラスは小ワープにて、選抜艦隊の近くへとワープした。

 

 

その選抜艦隊では、衝撃波を受けた影響で艦にダメージが無いかチェックをしている所だった。

 

雪風・改も大山が直接乗り込んで点検をしていた。

 

そんな中、

 

「空間歪曲反応をキャッチ!!敵です!!」

 

敵がワープアウトして来た事で周囲に緊張が走る。

 

「っ!?総員戦闘配備!!」

 

現在、選抜艦隊は各部のチェックを行っているので、このワープアウトはまさに寝耳に水であり、敵に先手を許す絶好の機会となってしまった。

 

しかし、敵は攻撃を仕掛ける様子もなく、再びどこかにワープしていった。

 

「敵反応消失‥‥再びワープしたもようです‥‥」

 

「一体何しに来たんだ?」

 

「‥‥艦長、先ほどの敵艦ですが、これ見よがしにワープの航跡を残しています」

 

「どうみても誘い込んでいるね‥‥通信長、ヤマトに通信を送って」

 

「は、はい」

 

ギンガがヤマトに通信回路を開くと、モニターに守が映し出される。

 

「守くんもさっきの敵艦の動きはキャッチしたと思うけど、あの敵艦の動き、どう思う?」

 

『あからさまな罠だな。敵は我々がワープの航跡を追って来る事を見越している』

 

「ワープアウトしたその先に今回みたいな罠か、敵の大艦隊が待ち構えているかもしれないけど、どうする?」

 

『行くしかないだろう‥‥地球を救うため‥‥敵の本星の位置を掴むためには‥‥』

 

「やっぱりそうなるよね‥‥」

 

『まぁ、敵としても罠を張るために自分たちも知らない場所は選ばないだろう‥‥どれだけ引きずり回されても、そこは敵の版図の中のはず‥‥その中には必ず敵の本星を掴むための手掛かりはあるはずだ‥‥』

 

『出発する前に艦長。ヤマトは艦隊の中で褐色矮星に一番近い距離に居たせいでダメージが一番大きいかもしれない。この先、今回の様な罠や敵の待ち伏せてが考えられるとしたら、点検と修理は万全の状態にしておかなければならない』

 

出発する前に真田がヤマトの現状を話す。

 

『そうだな‥すまないが、束。ヤマトは修理と点検で時間がかかりそうだ。その間、敵が再び襲撃してこないとも言い切れない。修理が終わった艦は散開して周辺の宙域の哨戒をしてくれ』

 

「了解。ただ、私は今後の航海計画で守くんと相談したい事があるからこの後、ヤマトにお邪魔するよ」

 

『ああ、分かった。それじゃあ待っている』

 

束は守に敬礼し、通信を切る。

 

 

その頃、地球艦隊が目的地とする暗黒星団帝国本星では‥‥

 

「まさか、褐色矮星の爆発による衝撃波を耐えるとは‥‥蛮族が造った艦にしてはなかなかやりますね」

 

「うむ‥‥此処で彼奴等を仕留められなかったのは残念ではあるが、データも多量に得ることが出来たし、まぁ、よしというところか‥‥波動砲とやらの威力を見られなかったのは残念だがな‥‥」

 

「問題は、あの融合反応‥‥ゴルバとの一件を見る限り、敵のタキオン波動兵器は我々の兵器に使用している動力炉との間に大きな反応を起こしてしまうようです‥‥やはり、連中は本星に近づけるべきではない敵かと‥‥」

 

「ふふふ‥‥ここまで近づけておいて、よく言うわ。だが、この件については緊急に対策を立てねばならんぞ、サーダ」

 

「‥‥おまかせを‥‥ですが、それも杞憂かもしれませんわ、聖総統閣下。例のモノもあることですし‥‥」

 

「あの駆逐艦隊も、褐色矮星の爆発さえも、全ては囮か‥‥まったく恐ろしい女だよ、お前は‥‥」

 

「‥‥うまくいけば、サーグラス大将も地球艦隊と相見えることはないかもしれませんわね‥‥」

 

「うむ。地球艦隊よ‥‥貴様らが血眼になって探している我が本星が、この銀河のどこに位置しているのか‥‥知れば驚愕するぞ‥‥それを知る日は永遠にこないだろうがな‥‥フハハハハ‥‥!!」

 

聖総統、サーダの含みのある言葉‥‥

 

その言葉の意味が分かるのはそれから直ぐの事であった。

 

ヤマトの第三砲塔の影に一つのカプセルが不気味に光を点滅させながら落ちていた‥‥

 

 

 

それが招かれざる者の来訪であるとはこの時、ヤマト全乗組員は誰一人としてしらなかった。




次回 侵入者

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