内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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大変長らくお待たせしました!


第百三十六話 侵入者 中編

ヤマトに忘れ物を取りに来た束一行であったが、同じ頃、ヤマト艦内では謎の黄色の着色ガスが充満しており艦内ではガスを吸ったヤマトの乗員たちはバタバタと倒れ意識を失っていた。

 

幸い、ヤマト第一艦橋にて古代進・島大介・真田澪ことサーシアが無事であったこと、そしてコスモタイガー隊の坂本茂が気密チェック中で船外服とヘルメットを着用していたために無事であったが、艦内に無事な者がいないか探索を行うこととなった。

 

まずはヤマトの医務長である佐渡酒造の安否を確認する為、医務室へと向かう束一行。

 

坂本の先導でヤマトの艦内を探索していた束たちであったが、途中でヤマトの乗員が発砲してきたためにコスモガンを最低出力にして応戦しつつ医務室を目指していた。

 

その道中、ミーくんを抱えた大人姿のアインハルトと同じく大人姿のヴィヴィオと遭遇したのだった。

 

「え~と?お宅ら、どちら様??」

 

坂本が大人姿となったアインハルトとヴィヴィオに戸惑い、レヴィは反射的にコスモガンの銃口を二人に向けて構える。

 

「え、ええ~と」 アセアセ!

 

「わ、私たちは‥‥」 アセアセ!

 

とはいえ事情を知らない方からすれば生存者がいたのは喜ぶべきことだが、身元不明の人物であれば話は別だ。

 

この事態を引き起こした下手人かもしれないのだから‥‥

 

「まぁ、まぁ、とりあえず銃を下ろしなよ、戦術長。どうやら二人に敵意はなさそうなんだからさぁ」

 

「は、はい」

 

ミーくんが嫌がる様子もなく、大人姿のアインハルトの腕に抱かれている様子から、束はレヴィを宥める。

 

「さて、警戒がとけたところで二人とも、まずは自己紹介してもらわないとね」

 

そして次に束は二人に自己紹介を促す。

 

(あっ、交信の時に居たなのはママにそっくりな声の人だ!!)

 

(ヴィヴィオさんのお母様と同じ声!!)

 

ヴィヴィオは以前、防衛軍と管理局との交信の席で束とは画面越しながらも邂逅経験があったのだが、アインハルトは今回束とは初邂逅なので、束の声を聞き、態度には出さなかったが驚愕した。

 

「え、えっと。高町ヴィヴィオです」

 

「アインハルト・ストラトスです」

 

「はぁ!?いや、いや、二人はまだ小学生と中学生くらいっすよ!?なんで大人に!?」

 

二人の名前を聞き坂本は驚愕する。

 

「あぁ~えっと‥‥」

 

「それは‥ですねぇ~‥‥」

 

坂本は以前ヴィヴィオとアインハルト遭難した次元航行船から救助をした関係から二人が小学生か中学生ぐらいだと知っていたので眼前に居る大人姿の二人がその時に救助した少女達だとは到底信じられなかった。

 

「医務室で、佐渡先生やミーくんと一緒に居たらガスが来て‥‥」

 

「その‥‥ガスをほんの少し吸ったら、こんな姿になってしまって‥‥」

 

「幸い医務室に替えの服があったので、それに着替えて‥‥」

 

「誰か無事な人が居ないか探しに出ていたんです」

 

二人が地球人ではなく、ミッドチルダと言う星の住人である事を坂本は知っており、イスカンダル人と地球人とのハーフであるサーシアもガスをほんの少し吸っても痺れることなく、超能力のみ封じられている状態だったので、アインハルトとヴィヴィオの二人の言葉を疑いつつも坂本は納得した。

 

(二人ともうまい躱し方をしたな)

 

流石に、『魔法で大きくなりました』‥なんて言っても信じられる訳もない。

 

束はアインハルトとヴィヴィオの誤魔化し方を心の中で称賛する。

 

(リニス‥ギンガ‥‥とりあえず‥‥い‥まは‥‥この‥二人‥の‥‥話に合わせて‥‥)

 

束はリニスとギンガに無用な混乱を避けるために念話でヴィヴィオとアインハルトの話に合わせるように伝える。

 

おそらくミッドチルダの住人でも魔力が無い非魔導師はこのガスを吸えば倒れるだろうし、魔導師であっても気密ヘルメットなしでは魔力レベルによっては非魔導師同様倒れるだろうし、身長が大きくなるなんてことはない。

 

(は、はい)

 

(分かりました)

 

そして二人から医務室で佐渡先生とトチローが倒れていると聞き、慌てて全員で確認の為に医務室へと向かったのだが‥‥

 

 

ヤマト艦内 医務室

 

「‥‥これ、ガスにやられたっていうよりも宴会やって酒で酔い潰れただけって感じじゃないですか?」

 

卓袱台に突っ伏している佐渡とトチローの姿を見て坂本は本当にガスで倒れたのか疑問視する。

 

「あはは‥‥実際ガスが出てきても気づかずに宴会していました」 (^^;

 

坂本のツッコミにヴィヴィオは苦笑いしつつそう答えた。

 

「それはいつものことだけど、今はこの正体不明のガスが蔓延しているし、倒れていたと思った乗員たちが私たちを攻撃してきている異常事態下なんだから一旦寝かしておこう」

 

「了解!」

 

束の言葉に坂本はそう返して二人を医療用ベッドに寝かした。

 

「‥‥二人とも昏睡状態ですね。このガスが充満している限り起きないでしょう」

 

リニスの軽い診察で二人は当分起きないと分かった。

 

「あと頼れるのはアナライザーと真田君か‥‥」

 

ということでまずはアナライザーを探すことになったのだが‥‥。

 

「それで、アナライザーは今、何処に居るんでしょうか?」

 

アインハルトの疑問は最もであった。

 

普段は佐渡先生と一緒に医務室に居るか第一艦橋に居るかなのだが、アナライザーは第一艦橋にも医務室にも居なければ、これまでの艦内の探索でアナライザーを見ていないのだ。

 

いくらアナライザーでもこの異常事態に姿を見せないのはあまりにも妙だ。

 

(確かゲームでは‥‥えっ??もしかして‥‥)

 

束は前世の知識からアナライザーが破壊されていた地点を覚えていたが『え?まさかね…???』と不安であった。

 

「ニャー」

 

「あっ、ミーくん」

 

すると何かを察したミーくんがアインハルトの腕から飛び降りて通路をスタスタと歩いていく。

 

「何処に行くんでしょう?」

 

「とりあえず、後を追ってみよう」

 

束たちがミーくんの跡を追っていくと‥‥

 

 

ヤマト艦内 女子トイレ前

 

 

「ニャ~‥‥」

 

「あったよ‥‥」

 

「あ、アナライザー!?」

 

「ひどい‥‥」

 

「大破していますね」

 

アナライザーは束の予想通り女子トイレ前に破壊された状態で放置されていた。

 

まぁ、頭部ユニットは無事なので真田か束が整った設備のある場所で修理すれば再稼働可能だろうが‥‥

 

「あ、あの~なんで、女子トイレの前でアナライザーが破壊されているのかについては??」

 

ヴィヴィオが束にロボットであるアナライザーがトイレの前に倒れている疑問を投げる。

 

アナライザーはロボットなのだから、食物は接種しないので、当然排泄もしない。

 

それに普段のアナライザーの言動から察するにもしロボットにも性別が有るのだとしたら、アナライザーはきっと男だ。

 

「‥‥まぁ、あのアナライザーだからね」

 

束は真田や進から聞いているアナライザーの人間味のある言動からアナライザーがトイレの前に倒れていても不思議ではないと締めくくる。

 

「「「ですね‥‥」」」

 

「「???」」

 

ヴィヴィオのツッコミに束は呆れ顔でそう答えて、リニスやギンガ、レヴィも諦め顔で頷いた。

 

ちなみにアナライザーの痴漢行為には赤道祭の時にリニスやギンガ、レヴィも被害に遭っているので何となく分かったのだ。

 

(これいろいろ始末を終えた後でヤマト艦内の全女子トイレを点検したほうがいいんじゃ‥‥(-_-;))

 

束は、前世は男であるが、今は女なのでヤマト艦内の全女子トイレを点検することを進言することを決めた。

 

やってはいないだろうが、アナライザーが女子トイレ内に盗撮機器を密かに設置している疑惑が出たのだから‥‥

 

そしてアインハルトがふとすぐそばにあった通路に視線を移すとそこには転々と続く血痕があった。

 

「み、皆さん、血痕があります!!」

 

「なんだって!!」

 

「本当だ!!」

 

「誰の血でしょう‥‥?」

 

「分からない。でも血痕はあの部屋に続いている」

 

「あの部屋は?」

 

「確か洗濯室です」

 

通路から転々と続く血痕は洗濯室へと続いている。

 

「誰か無事な乗員が居て、襲われたので、洗濯室に逃げ込んだのでしょうか?」

 

「分からない。でも、血痕が残っていると言う事は少なくとも怪我人が居るのは確かだ。行ってみよう」

 

束たちは洗濯室へと向かう。

 

「アナライザーはどうします?」

 

「流石に重いし荷物になるから置いて行こう」

 

「それもそうですね」

 

坂本はアナライザーを持っていくか置いていくか訊ねる。

 

するとレヴィが持って行くと荷物になるからその場に置いて行こうと決め、アナライザーは再び女子トイレの前に放置された。

 

ただし、後々になって束はアナライザーの頭部だけでもこの時に持って行けば追々楽だったと後悔することになる。

 

前世の記憶もやはりこの後世世界で過ごしていくと段々と薄れて行くのだ。

 

洗濯室の床には血塗れ状態の隊員服が一着放置されていた。

 

「これはっ!?‥船外作業用の隊員服だね?色からして技術班‥‥名前は‥小島‥‥」

 

この隊員服が誰の服なのかを調べる束。

 

襟元に名前が書かれており、隊員服の色から服の所有者の名前と所属がすぐに分かった。

 

「大きく破けている上に血がこんなにも大量に‥‥」

 

「船外作業用の隊員服は結構丈夫に作られている筈なのに‥‥」

 

「でも、肝心の小島さんの姿が何処にもありませんよ」

 

洗濯室には自分たち以外、誰も居ない。

 

「この破れ口の大きさと予想される出血からですと、本来なら動いて歩くことなんて無理ですよ」

 

破れた隊員服を確認しながらリニスはこの服を着ていた小島が致命傷を負っていると推察する。

 

「で、でも、現にこの服は洗濯室に有ったにもかかわらず、服の持ち主である小島さんの姿は何処にもありませんよ」

 

「敵が艦内に侵入しているのなら、犯人は小島さんを殺害して、その服を奪って、艦内にガスを流し込んで乗員たちを昏睡させ、次いでガスの効かないアナライザーを破壊して、此処で着替えたのかも‥‥此処は洗濯室‥代わりの隊員服は沢山あるしね‥‥」

 

『‥‥』

 

束の推理を聞き、一同は顔を青くする。

 

小島を殺した犯人が‥‥殺人犯が艦内に居る可能性が高いのだ。

 

しかもソイツはヤマトの艦内にこのガスを流し込んだ可能性も高い。

 

「とりあえず、現状を第一艦橋に居る進君たちに伝えよう。それに艦橋で倒れている南部君たちが起き上がって進君たちに襲い掛かるかもしれない」

 

とりあえず現状を伝えるのと、万が一を想定して艦橋に戻ることにした。

 

内線電話も艦内の電力不足で繋がらないので、こうして足で直接知らせなければならない。

 

何も知らない中、南部たちが起き上がって進たちを襲い掛かるかもしれない。

 

奇襲を受けたら、いくら進でも死傷するかもしれない。

 

島はガスを吸って身体が痺れており、素早く動けないので真っ先に狙われる可能性がある。

 

 

ヤマト 第一艦橋

 

「みんな!!無事!?」

 

「ああ、月村艦長。みんなはどうでしたか??」

 

束は慌てて第一艦橋内に飛び込んだが、進や島、サーシアは特に何事も無いように作業を行っていた。

 

南部たちも床に倒れたままだ。

 

「へ?あ、あの、南部君たちは大丈夫だったの??」

 

「大丈夫?一体何を言っているんですか??みんな意識がないままですよ??」

 

そんな会話をしていた矢先‥‥

 

「「「‥‥」」」

 

先程まで床に倒れていた南部たちが無言のままゆっくりと起き上がる。

 

その様相はまるでゾンビの様だ。

 

「きゃぁ!?」

 

「つ、月村艦長!!あれ!!」

 

「なっ!?どういうことだ!?」

 

そんな南部たちの様子を見てサーシアは悲鳴をあげ、進も島も信じられないと言った表情だ。

 

「説明は後!島君や進君たちは物陰に身を隠して!!」

 

そう言って束はコスモガンを発砲!

 

相原を一撃で仕留めたが、南部や太田もいるのでギンガやリニス、レヴィ、坂本も応戦する構えを見せた。

 

ところが‥‥

 

「澪さん、この子をお願いします!!ヴィヴィオさん!!」

 

「う、うん‥‥」

 

「OK!!アインハルトさんは南部さんを!!私は太田さんを相手にするよ!!」

 

アインハルトは抱いていたミーくんをサーシアに手渡し、

 

「てりゃああ!!」

 

「はぁ!!!」

 

ヴィヴィオとアインハルトは瞬時に格闘戦に持ち込んで太田、南部の鳩尾に拳を叩きこみ南部たちを一瞬の内にダウンさせた。

 

「おおぅ~‥‥」

 

「す、すっげ‥‥」

 

二人の行動にレヴィや坂本は驚いていた。

 

ただ南部がアインハルトに殴られた拍子にコスモガンを通信機に当ててしまった。

 

とはいえ鎮圧に成功はしたが、進や島、サーシアには何が何だかさっぱりであったのでひとまず説明をした。

 

「なるほど、それなら南部の動きが鈍く、射撃がそれほど上手くなかったのも頷けるな」

 

「えっ?南部さんそんなに腕がいいんですか??」

 

進の言葉に坂本はそう聞く。

 

「ああ、オリンピック並みの狙撃手であり早打ちの名手さ。お前なんか普通に戦ったなら三秒ともたないぜ」

 

「うへぇ~桑原~桑原~」

 

普段の調子の南部ならばアインハルトに殴られる前にアインハルトを仕留めていた筈だと進は坂本に教えると、彼は思わず身震いをする。

 

(そんな相手に近接の格闘戦を挑んでよく勝てたね‥‥)

 

進から南部の知られざる身体能力の説明を聞いて坂本は少しビビるが、レヴィはそんな南部に近距離の格闘戦を挑んで叩きのめしたアインハルトを内心評価していた。

 

(ヴィヴィオって子はストライクアーツの動きだけど、アインハルトって子の動きはストライクアーツでもシューティングアーツの動きでもない‥‥独自の流派かしら?)

 

一方でギンガはヴィヴィオの動きは馴染みがあるが、アインハルトの動きに関しては見慣れない動きだったので、アインハルトが独自で生み出した格闘技の動きなのかと思い興味を抱いた。

 

その後、島から通信を送ったが相手からの返信が来ないので電波が届いていないか応答を電力不足で受信できないだけか判断が付かなかった。

 

再確認しようとしたが先ほどの銃撃戦の流れ弾が通信機に直撃していたらしく、束でも中々直せそうもなかったが一応、直るかチェックしている。

 

「‥‥」

 

束が壊れた通信機を修理出来ないか確認している中、ヴィヴィオはジッとギンガを見つめていた。

 

「え、えっと‥‥どうしたのかな?」

 

当然その視線に気づいたギンガはヴィヴィオに訊ねる。

 

「お姉さんの名前、なんて言うの?」

 

此処に来てギンガはヴィヴィオとアインハルトに自己紹介をしていない事に気づく。

 

「私の名前はギンガ・ナカ‥‥じゃなくって、月村ギンガよ」

 

ギンガは思わずミッドチルダ時代の名前を言いそうになる。

 

ヴィヴィオとアインハルトがミッドチルダからの次元漂流者であると言う事も一因であった。

 

「月村‥‥」

 

ギンガの名前を聞いてヴィヴィオは何だか腑に落ちない様子だ。

 

「えっと‥‥私の名前がどうかしたのかな?」

 

「あっ、いえ、ギンガさんが‥その‥私の知っている人と雰囲気が似ていて‥‥」

 

「えっ?そうなの?」

 

「はい。スバルさんって言う人なんですけど‥‥」

 

「スバル‥‥」

 

ヴィヴィオが言う自分に雰囲気が似ている人物である『スバル』がギンガにはすぐに分かった。

 

雰囲気が似ていて当然だ。

 

何しろ、自分はスバルの姉なのだから‥‥

 

「でも、他人の空似ですよね。まさか、此処にミッドの人が居る訳ないし」

 

「そ、そうね」

 

ヴィヴィオはギンガがスバルに似ているのはあくまでも他人の空似だと割り切るが、後々にヴィヴィオはギンガの真実を知る事になる。

 

ギンガはこの場で言うと事態に混乱を招くので、真実を語るのは少なくともこの事態を収拾した後だと判断した。

 

なお、今はヘルメットを被っているため分からないが、レヴィの素顔を見たらきっとヴィヴィオとアインハルトは驚く事になるのは決定事項だろう。

 

「やっぱダメだ。機械工作室に行って専用の機材と修理パーツを持ってこないと直りそうにないや~」

 

現状、通信機を直すのはやはり不可能だった。

 

そのため、通信機の修理を行う為に下層デッキの機械工作室に向かうこととなったが、まずはヤマト艦内に充満しているこのガスを対処する事にした。

 

このままガスが充満していたら南部たちは再び起き上がって襲い掛かって来る可能性があるからだ。

 

そのために束たちはまず、機関室で補助電源と通風機構を起動させてから機械工作室へ向かう事にした。

 

(ん?機関室って事はヤマトのあの機関科員たちを相手にすんの‥‥?? うへぇ~~~~)

 

(進君に代わってもらおうかな?)

 

(でも、ここまでしておいて、『山崎さんたちと戦いたくないから変わって』‥なんて言えないもんな‥‥)

 

束はヤマトの機関室で待っているであろう屈強なヤマト機関部員たちの相手をしなければならないと思うとなんだかやる気が萎えた。




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