内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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第百三十九話 司令部襲撃

未だに暗黒星団帝国に占領されている地球‥‥

 

その占領下の中、占領軍将校の一人、アルフォンに地球占領軍司令部からの出頭命令が下った。

 

彼自身、この出頭命令には心当たりがあった。

 

それは、先日の新型戦車製造プラントの件についてだ。

 

地球防衛軍司令部にある会議室にて、総司令官のカザンは、

 

「――――では、君は工場の破壊工作をまったく阻止できなかった‥‥いや、阻止しようとすらしなかったわけだな?その場に居たにもかかわらず‥‥」

 

「‥‥」

 

アルフォンに新型戦車製造プラント喪失の件について尋問を行う。

 

「おめおめと逃げ帰ってきおって!!貴様もあの新型戦車の製造がどれだけ重要かわかっておろう!!艦隊はヤマト討伐のために駆り出され、その四割近くが本星へと帰らねばならない羽目になってしまっておるのだぞ!!地上での静止力を確保できねば、忌々しいパルチザンどもを一掃できんではないか!!」

 

地球周辺の宇宙空間には巡洋艦を旗艦とする小規模の艦隊しか残っておらず、戦艦、空母の大型主力艦の姿が消えており、占領軍の宇宙防衛力は占領当初から大きくレベルダウンしている。

 

シリウス・プロキオン恒星系に居る防衛軍の残存艦隊を討伐したくても防衛軍の次元潜航艦の群狼戦術で返り討ちに遭い逆に戦力を失うので、最近では占領軍の宇宙艦隊は地球圏を出る事さえできず、更に選抜艦隊が中間補給基地を破壊したので、補給もままならない状態で、占領軍は地球で半ば孤立しつつある。

 

しかし、未だに地球の占領が維持できているのは地球本土に打ち込まれた重核子爆弾の存在が大きい。

 

もしも重核子爆弾が無ければ地球占領軍はとっくにパルチザン、防衛軍の残存艦隊に殲滅させられていただろう。

 

まぁ、重核子爆弾がなければ地球は占領されなかっただろう。

 

「それに、アルフォン少尉‥‥最近は地球人の女に現を抜かしているそうじゃないかね‥‥?」

 

「‥‥」

 

雪の事を問われて、アルフォンは僅かに反応する。

 

「否定せぬか‥‥いい心がけだ。だが、貴様のような奴に指揮権を渡したのが間違いだったわ‥‥地球占領軍総司令官の特権により、貴様の地位をはく奪する!!‥‥その後の処置については考えておこう。本星の判断次第だが、よくて銃殺か永久追放‥‥あるいは、ニッケル詰めにして超重力惑星へ放り出されるか‥‥兎に角、しばらくの間、謹慎して判決を待っておるのだな‥‥」

 

アルフォンはカザンから新型戦車製造プラント喪失の件で責任を問われ、地位を剥奪され、身柄は軟禁されてしまった。

 

 

時を同じくして、パルチザンはいよいよ占領軍の本丸‥‥地球防衛軍司令部の施設の破壊に着手した。

 

地球各国にある占領軍の司令部には此処から指令が伝達されている。

 

ここを叩けば、占領軍の指揮系統は大きく乱れる。

 

あわよくば、占領軍総司令官であるカザンを捕虜または斃すことができれば、占領軍の指揮系統を更に混乱させることが出来る筈だ。

 

「スペード1だ」

 

「ハート1、準備完了です。それよりも本当にそちらは三人で大丈夫なんですか?」

 

陽動隊隊長の宗像が心配そうに古野間に尋ねる。

 

今回の司令部襲撃作戦に参加しているのは北野、古野間、ティアナの三人だけであり、敵が大勢居る司令部を襲撃するにはあまりにも人数が少ない。

 

「ああ、レーダー・通信中枢は警備が厳しい‥‥多数で乗り込んでも被害が拡大するだけだ‥‥見つからないように忍び込んで内部から破壊するしかない‥‥」

 

人数が多ければ敵に発見されるリスクもあり、ただでさえ貴重なパルチザンの戦力をむざむざ被害が出る程の人数を割く訳にはいかない。

 

「了解、わかりました‥‥三脚戦車の駐屯所はこっちに任せてください。そちらに目がいかないように思いっきり掻きまわしてみせます」

 

反対に宗像が率いる陽動部隊の方には西住まほ率いる戦車部隊に装甲車、そしてシャルロットが率いるIS部隊が配置され、敵の目が司令部へといかないようにする手筈となった。

 

なお、今回出撃するIS部隊には神堂も参戦していた。

 

「頼む。さて、北野、嬢ちゃん、行こうか?」

 

「「はい!!」」

 

古野間の問いに北野、ティアナは頷く。

 

そして北野はこれから忍び込む防衛軍司令部の庁舎を見上げる。

 

空は黒く曇っており、見慣れた筈の防衛軍司令部の庁舎はまさに魔王が住む居城のように見えた。

 

「地球防衛軍司令部か‥‥まさか、ここに忍び込むことになるなんて、昔なら夢にも思わなかったでしょうね‥‥」

 

「フッ、まったくだな‥‥」

 

「ランスターさんは司令部の内部構造は大丈夫ですか?」

 

古野間と北野は防衛軍司令部の庁舎の内部構造は熟知しているが、ティアナは今回が初の侵入となる。

 

なので、事前にティアナは防衛軍司令部の庁舎の地図を何度も見返していた。

 

「はい。大丈夫です」

 

(ミッドの地上本部ビルに似ているけど、この空模様のせいで不気味に見えるわね)

 

ティアナも北野同様、防衛軍司令部の庁舎が不気味に見えた。

 

こうして三人は防衛軍司令部の庁舎へと侵入していく。

 

だが、堂々と正面玄関からの突入なんてすれば、侵入開始数十秒で全滅なので、人気のない地下からの侵入となる。

 

地下一階の駐車場には敵戦車も歩哨も居なかったので、三人はあっさりと侵入に成功した。

 

「敵も此処まで警備する余裕がないのか‥‥それとも此処から侵入される事を想定していないのか‥‥いずれにせよ私たちには幸いな事ですけど‥‥」

 

誰も居ない地下駐車場を見渡しながらティアナは呟く。

 

「もう一度、図面地図を確認しましょう」

 

携帯端末で司令部の地図を表示して、これからの作戦行動を確認する。

 

「おそらく、エレベーターはパスワードが書き換えられて使えません」

 

「となると、この階段を使わないと上には行けませんね」

 

「レーダー・通信中枢は‥‥確か四階の奥か‥‥結構登らなきゃならんか‥‥しかし、ここを破壊できれば、司令部と上空の艦隊、各国の占領軍の部隊との連絡がつかなくなるはずだ」

 

「とにかく、見つからないように進みましょう」

 

とは言え、ここは占領軍の司令部‥‥当然、警備もそれなりにあるはずだ。

 

敵に見つかれば警報を鳴らされて、大勢の敵兵が来て包囲されたら、あっという間に全滅だ。

 

目的地である四階までは慎重に進まなければならない。

 

「非常階段ならば、警備の手が緩いかもしれません」

 

ティアナが侵入コースに非常階段を昇って行く事を提案する。

 

「確かにあそこなら普段は、人の出入りがない。敵の目を誤魔化していくなら絶好のコースだな」

 

古野間も非常階段からの侵入に太鼓判を押す。

 

三人は非常階段から四階へと進む。

 

幸い階段には敵の兵士はおらず、三人は無事に四階へとたどり着くことが出来た。

 

そして、エレベーターホールに来た時に警報が鳴り響く。

 

「っ!?見つかったんでしょうか?」

 

警報が鳴った事で自分たちの侵入が敵にバレたのかと周囲を見渡すティアナ。

 

「いや、おそらくハート1だ。戦車の駐屯所の襲撃が上手くいったんだろう」

 

しかし、この警報は自分たちの侵入を知らせる警報ではなく、宗像たち陽動部隊の襲撃を知らせるモノだった。

 

「それよりもここはエレベーターホールです。あまり長居をしていると敵に見つかります」

 

自分たちの侵入を知らせる警報ではないとは言え、警報がこうしてなっている以上、敵が此処を通る可能性は十分にある。

 

「そうですね、急ぎましょう」

 

此処で敵に見つかる訳にはいかないので、三人は急いで目的地であるレーダー・通信中枢を目指す。 

 

「この部屋だな」

 

そして、目的地のレーダー・通信中枢である通信室前までやって来た。

 

陽動部隊の襲撃やこれまでのパルチザン活動で敵の戦力は確実にダウンしており、此処まで見つからず来ることが出来たのは今までの活動が決して無駄ではなかった事を証明している。

 

「ここを壊すとどちらにしても警報が鳴ります。覚悟はいいですか?」

 

「はい」

 

「おう」

 

とは言え、流石に施設を破壊するとなると警報は鳴り、自分たちの侵入を必然的に敵に教えてしまうが、それは仕方ない。

 

ティアナと古野間は頷き、北野が通信室のドアを開ける。

 

「な、なんだ!?お前たちは!?」

 

「し、侵入者だ!!」

 

当然、通信室の中には各部隊、占領している各国に指令を送るために敵兵が常時詰めていた。

 

彼らは突然通信室に入って来た古野間たちの姿を見て狼狽えつつも銃を抜いて構える。

 

しかし、いきなりの事だったので初動が遅れ、古野間はロケットランチャーで、北野はレーザーライフル、ティアナはコスモガンで、通信室の中に居た敵の兵士を斃し、主目的だった設備も壊した。

 

「よし、これでもう使い物にはならんぞ‥‥」

 

「地球解放後の修理が大変そうですけどね‥‥」

 

破壊し尽くされた通信室の設備を見てティアナが呟く。

 

「地球人を殺す指令を出すために利用されるくらいなら、一思いに破壊してやった方が此奴らの為だろうさ」

 

古野間は壊れた通信機器を見つめながら言う。

 

「こちら、スペード1、ターゲットの破壊に成功」

 

北野は陽動部隊に目的の達成を伝える。

 

すると、警報が再び鳴り始め下層から順に隔壁が降り始めた。

 

通信関係の機器を破壊したために起こったエラーなのか?

 

それとも敵が新たに仕込んだプログラムなのか?

 

いずれにしてもこの場に居てはいずれ敵に包囲殲滅されてしまう。

 

しかし、此処に来る時に使用した非常階段の出入り口のシャッターが閉まってしまい使用不能となった。

 

「出口が閉鎖されてしまいましたね」

 

「ああ、登ってきた階段も閉鎖されている」

 

この状況下でもティアナと古野間は焦ったり、パニックを起こす事無く、冷静に現状を見ている。

 

こういう時だからこそ、焦ったり、パニックを起こすとより事態を悪化させる。

 

「北野さん、どうします?このままじゃ、袋のネズミですよ」

 

ティアナは北野に指示を仰ぐ。

 

「確か奥にはもう一つ非常階段がありました‥‥そこなら隔壁も閉じていない筈です」

 

「それじゃあ、急ごうぜ。うかうかしていると脱出が益々困難になっちまう」

 

三人が通信室を出ようとした時、

 

「いたぞ!!」

 

「こっちだ!!」

 

敵が通信室になだれ込もうとしていた。

 

「このっ!!」

 

バシューン!!

 

ドガーン!!

 

「ぐあぁ!!」

 

「うわぁっ!!」

 

古野間がロケットランチャーを撃ち通信室に入ってきた敵の兵士を斃してもう一つの非常階段を目指す。

 

通路を走っていく中、後ろから敵の兵士の声や足音が聞こえるが三人は決して後ろを振り向かずにひたすら走る。

 

三人がもう一つの非常階段を目指していると、

 

「こいつは‥‥物資搬送のエレベーター‥‥こいつなら使えるかもしれない」

 

物資搬送用の大型エレベーターがあり、三人はそのエレベーターに乗り込むが、

 

「北野さん!!古野間さん!!このエレベーター、上の階にしか行けません!!」

 

ティアナが回数ボタンを確認すると、上の階に行くボタンしかなかった。

 

「行くしかない‥‥押せ!!」

 

敵が迫っている中でモタモタしてられない。

 

古野間に言われ、ティアナはエレベーターのボタンを押す。

 

三人を乗せたエレベーターのゴンドラは上昇して行き、二十五階に到着した。

 

「二十五階か‥‥敵が待ち受けていると思ったが‥‥どうなっているんだ?」

 

エレベーターホールに誰も居ないことに古野間は首を傾げる。

 

「駐屯所や兵器庫が同時に襲撃されていますし、通信中枢も破壊しましたからね。敵の指揮系統が混乱しているのでしょう‥‥」

 

「それじゃあ、敵が体制を立て直す前に此処を出ましょう」

 

「そうですね」

 

「ここから非常階段の位置はどこだ?」

 

「えっと‥‥こっちです」

 

陽動部隊の陽動と通信中枢の破壊で敵の指揮系統を混乱することが出来た三人は当初の予定より、遠回りになるが司令部からの脱出を図る。

 

エレベーターに関しては敵が背後から迫らない様に停止ボタンを押して停めた。

 

そして二十五階からの非常階段を目指していると、二十五階の人員用エレベーターのホールにて、誰かがやってきた。

 

「しっ‥‥誰か来る!!」

 

三人はエレベーターホールの柱の物陰に隠れる。

 

「ええぃ!!被害の方はまだ分からんのか!?」

 

やってきたのは数名の士官を連れたカザンであった。

 

怒声をあげ、挙動もなんだかイラついている事からかなりご立腹の様だ。

 

「そ、それが、通信中枢を破壊されておりまして、各隊とも連絡がつかない状態でして‥‥」

 

「馬鹿者!!ならば、自分たちの脚で伝達せよ!!‥‥部隊をまとめ上げ、侵入してきたパルチザンを一掃するのだ!!」

 

「はっ!!」

 

「くそっ、アルフォンの奴が、戦車工場を完全に守っていればこんなことには‥‥」

 

新型戦車の製造プラントを破壊され、パルチザンの行動が着々と戦果をあげ自軍の兵力が着実に落ちている。

 

これ以上の失態が続けば自分は更迭されるかもしれない‥‥いや、更迭ならばまだマシだ。

 

先程自分がアルフォンに言ったように何らかの罪を負わせられ、軍刑務所もしくは銃殺、暗黒星団帝国からの永久追放‥‥あるいは、ニッケル詰めにして超重力惑星へ放り出される‥‥

 

いずれにせよ、これ以上の失態は許されず、大きな戦果を挙げる必要がある。

 

当初は、辺境の下等惑星を占領すれば、今よりも大きな地位と権力が手に入る予定だった。

 

事実、地球を占領下においたまではよかった。

 

しかし、自分たちは地球人を完全に舐めていた。

 

文明も科学技術力も自分たちよりも下等な筈なのに、倒しても、倒しても、決して諦めずに仲間の屍を越えてまで自分たちに歯向かってくる。

 

おまけに地球に住んでいる害虫、害獣がパルチザンとは異なる形で自分たちに牙を剥き、地下街では化け物が住んで居ると噂する兵士も居る。

 

カザンとしても暗黒星団帝国としてもこれは予想外の結果であった。

 

そのため、カザンが焦るのも無理はなかった。

 

「何をしておる!!早く行け!!」

 

カザンは士官たちに伝令へ赴くように怒鳴る。

 

「はっ‥‥では、ご報告は司令室の専用独立回線で‥‥」

 

「馬鹿者!!あの回線は私が使う!!貴様らはその脚で直接報告に来い!!」

 

「「「はっ!!」」」

 

まだ生きている回線があるにもかかわらず、カザンは士官たちに時間がかかる伝令と言う方法で連絡手段を確保しようとしていた。

 

(典型的なパワハラ上司ね、アレは‥‥)

 

(あの連中もきっと心の中では腸が煮えくり返っているんじゃないかしら?)

 

ティアナはカザンと士官たちの様子を見て、敵ながらもカザンに怒鳴られていた士官に思わず同情してしまう。

 

「そうか‥‥この階から上は、元防衛軍の司令中枢‥‥」

 

「敵もそこを司令本部に使っているって訳だ‥‥カザン総司令‥‥あれが占領軍の親玉か‥‥」

 

「どうします?追いかけますか?それとも従来通り、撤退しますか?」

 

目の前に敵の総大将が居る。

 

副目標としてカザンの捕虜もしくは殺害が含まれていた。

 

その対象が今、自分たちの目の前に居る。

 

だが、この状況下は決して自分たちに有利とはいえない。

 

陽動が働いているとは言え、下層からは敵の追撃がある。

 

上層にもカザンの護衛の兵士が居る可能性が高い。

 

北野は判断を迷ったが、此処でカザンの捕虜ないし始末することが出来れば、占領軍は益々混乱し、今後のパルチザン活動は有利に働くと判断し、リスクはあるが、カザンを追跡する事にした。

 

カザンを追って二十八階の司令室前まで来た三人。

 

その道中、護衛の兵士の姿は見当たらず、このままカザンの下へと行けるかと思いきや、此処で三人は大きな障害にあたる。

 

「こ、これは‥‥」

 

ティアナが司令室の前を塞いでいるシャッターを手で軽く叩く。

 

「硬化テクタイトの防御シャッター‥‥銃では打ち破れませんよ‥‥」

 

護衛の兵士が居なかったのはカザンがこのシャッターに絶大な信頼をおいていたのだろう。

 

「宇宙艦艇の窓と同じ物質か‥‥銃どころか手榴弾やロケットランチャー、軍用爆薬のC8でも壊せそうにないな‥‥一応、カードキーがあれば開くようだが‥‥」

 

三人がシャッターの前で立ち尽くしていると、陽動部隊から通信が入った。

 

「スペード1だ」

 

『こちらハート1.そちらはご無事ですか?』

 

「無事だ‥‥そっちはどうだ?」

 

『こっちはほぼ占拠完了です。兵器庫の方もガーディアン連隊やIS部隊の活躍もあって順調で、あと十五分もあれば完全制圧できます』

 

「上出来だ‥‥」

 

陽動部隊は陽動以上の戦果を挙げたようだ。

 

『ただ、指揮官らしいのを何人か取り逃がしました‥‥』

 

「わかった。あとは予定通りに行動してくれ」

 

『了解』

 

「取り逃がした指揮官って、さっきエレベーターホールに居た士官の誰かでしょうか?」

 

「多分そうだろう‥‥連中はカザンの命令で現場に向かうように言われていたからな」

 

「それじゃあ、此処に戻ってきますね。カザンに直接報告を入れるために‥‥その士官なら、さっきのシャッターのカードキーを持っているかもしれませんよ」

 

ティアナは先程のカザンと士官たちとのやり取りから彼らは伝令として此処に戻って来る事を示唆する。

 

本来ならば回線が生きているので即座に連絡と報告が出来たであろうにカザンの横暴に振り回された為に敵の士官たちは、一度危険地帯に出向いて戻ってこなければならないからだ。

 

「ありえるな‥‥よし、ソイツからカードキーを分捕るとするか」

 

シャッターを開けるカードキーを持っているかもしれないと言う事で三人は士官が戻って来るのを待った。

 

やがて、一人の士官が数人の護衛で二十八階のエレベーターホールに姿を現した。

 

「どうやら、来やがったみたいだぜ!!」

 

「な、なんだ!?貴様らは!?」

 

「侵入者か!?」

 

護衛の兵は銃を構えるが、彼らが銃を撃つ前に護衛は片付けられ、士官もいきなりの待ち伏せに対応が遅れて斃される。

 

北野は斃した士官の軍服のポケットをまさぐり、お目当てのカードキーを見つける。

 

「ありました‥‥カードキーです!!」

 

「それじゃあ、いよいよ‥ですね」

 

「ああ、行くぞ」

 

三人は司令室まで向かい、カードキーを使って司令室前の硬化テクタイトのシャッターを開ける。

 

「司令室だ‥‥準備は良いか?隊長?嬢ちゃん?」

 

「ええ!!」

 

「はい!!」

 

「よしっ、じゃあ行くぞ」

 

 三人が司令室へと入るとカザンは司令室に備え付けの独立回線で戦車駐屯所と通信をしていた。

 

「―――そうだ!!私のところに持ってこい!!‥‥例の新型戦車だ!!」

 

『‥‥』

 

「‥‥何?無いとはどう言うことだ!?まだもう一台、完成品があったであろうが!!」

 

(あの新型戦車がまだあったの!?)

 

カザンが怒鳴っている事で、通信内容が丸聞こえであったが、その会話内容からプラントで破壊した同型の新型戦車がもう一台まだどこかに存在しているみたいだ。

 

「‥‥そこに無い!?アルフォンの管轄だと!?‥‥ぬぅぅぅ~!!急いでアルフォンを呼べ!!そうだ!!司令室に来るように伝えるのだ!!」

 

少なくともあの新型戦車はカザンが今、通信をいれている戦車駐屯所には無く、アルフォンが保管場所を知っている様だ。

 

カザンが謹慎処分を下したアルフォンを司令部に来るように指示した時、通信相手側に何かあったみたいで、通信が突然途切れた。

 

「‥‥おい、どうした!!応答せんか!!おい!!」

 

カザンがいくら怒鳴っても通信が回復することも通信相手が応答する事もなかった。

 

「戦車駐屯所も兵器管理庫も連絡はつかないぜ‥‥」

 

「っ!?」

 

カザンは自分の背後から声をかけられてビクッと体を震わせる。

 

恐る恐るカザンが振り返ると、そこには自分にコスモガンを構える古野間、北野、ティアナの姿があった。

 

「‥‥パルチザンか‥‥ハハ‥‥そ、そうか‥‥もうここまで侵入してきたわけか‥‥うん‥‥ゆ、優秀だな、君たちは‥‥ハハ‥‥私の部下の兵にも見習ってもらいたいぐらいだ‥ハハ‥‥」

 

三人を前にカザンは先ほどの威勢は無く声が震えている。

 

「ま、まさか、撃ったりはしないだろうね‥‥ハハ‥‥撃ったところで、良いことなど一つもないよ、うん」

 

「「「‥‥」」」

 

三人はコスモガンを構えたまま無言のままカザンを睨む。

 

「ひぃっ!!た、助けてくれ!!命ばかりは‥‥」

 

するとカザンは三人に命乞いをしてきた。

 

「そうやって命乞いをする人をお前は一体何人殺してきたんだ?」

 

「見苦しいわよ」

 

「チッ、こんな奴のために‥‥こんな奴のために、何人もの地球人が死んでいったとはな‥‥」

 

三人は当初、カザンを捕虜にする事も考えたが、こんな小物相手にこれまで大勢の地球人が殺されたと思うと腸が煮えくり返る思いがあり、殺された地球人のためにもここでカザンは斃すと決めた。

 

しかし、カザンは三人の一瞬の隙を突いて、腰に装着されていた機械のボタンを押す。

 

すると、カザンの周囲にバリアが展開される。

 

三人がカザンに向けてコスモガンを撃つとコスモガンのエネルギー弾はカザンの身体を貫くことなく消滅する。

 

「何ぃ!?」

 

「エネルギー弾がかき消された!?」

 

「フハハハハハ!!馬鹿者めが!!早く撃っておればよかったものを!!こいつは要人保護のための携帯用エネルギー偏向フィールドだ!!ネズミどもめ!!覚悟しろ!!このまま地獄へ送ってくれてやるわ!!」

 

バリアが展開されると先ほどとは打って変わってカザンは強気になり、自らのレーザー銃で銃撃をして来る。

 

カザンの周囲に展開しているバリアは暗黒星団帝国製のレーザー銃は通すが、地球製のコスモガンのエネルギー弾は通さない仕組みとなっている。

 

「効かない‥‥!!」

 

「そんな馬鹿なっ!?」

 

「だが、無尽蔵にエネルギーがある訳ねぇ!!いずれ、エネルギー切れをおこす筈だ!!それまで耐えろ!!ありったけの弾を撃ち込んで、奴のバリアのエネルギーを減らすんだ!!」

 

「はい!!」

 

「了解!!」

 

カザンの偏向フィールドは、コスモガンは勿論の事、ロケットランチャーの弾さえも無効化した。

 

しかし、所詮は携帯型の偏向フィールド‥‥

 

充電式の電池かエネルギーパックが稼働エネルギーなのか攻撃を受ける内にバリアは徐々に収縮していき、遂には消えてしまった。

 

「ひっ!!」

 

突如、バリアが消えて狼狽えるカザン。

 

「終わりだぜ‥‥お前を守ってくれたバリアのエネルギーも、お前さん自身もな‥‥」

 

「ひぃっっっ!!き、キミたち‥‥う、撃たないよね‥‥?わ、私は総司令官だ‥‥生かしておいてくれると、その‥‥あれだ‥‥な、何かと役に立つぞ‥‥」

 

カザンはまたもや三人に命乞いをしてきた。

 

しかし、最初に命乞いをしてきた時点で三人はカザンを生かすつもりはなかった。

 

「‥‥おしゃべりも終わりだ」

 

カザンが投降は受け付けないのだと悟ると、

 

「くそが!!お前らみたいな蛮族なんぞにぃ!!」

 

カザンは最後の抵抗を試みようと銃を構えるが、ティアナが正確な射撃でカザンのレーザー銃を弾き飛ばす。

 

「くっ‥‥」

 

銃を弾き飛ばされ、顔を歪めるカザン。

 

「そんなに私たちの手でやられたくないなら、自分の手で決着をつけたら?」

 

そう言ってティアナはカザンに向かって自分のコスモガンを放り投げる。

 

「うっ‥‥くっ‥‥」

 

カザンは震える手でそのコスモガンを握り、自らの蟀谷に銃口をあてる。

 

「うぅ‥‥ぬぅぅあぁぁぁぁぁー!!」

 

しかし、カザンは自決はせずに雄叫びを上げるとティアナに銃口を向けて引き金を引くが、

 

カチ、カチ、カチ、カチ‥‥

 

銃口からは何も出ず、引き金を引く乾いた音が空しく鳴るだけだった。

 

ティアナはカザンにエネルギーが空のコスモガンを渡していたのだ。

 

「少しは骨のある所を見せると思ったんだけどね」

 

ティアナは呆れながらカザンを嘲笑する。

 

「二度も命乞いをして来るような生き意地の汚い奴だぜ、嬢ちゃん。それは無理な注文だ」

 

カザンの行動に古野間も同じく呆れている。

 

「さて、終わらせましょう。覚悟するんだな」

 

北野はカザンにコスモガンの銃口をゆっくりと向ける。

 

「ええ」

 

ティアナはもう一丁、別のコスモガンを取り出す。

 

勿論、このコスモガンにはエネルギーが十分に入っている。

 

「そうしよう」

 

古野間もカザンに向けてコスモガンを構える。

 

そして、三人はカザンに向けてコスモガンの引き金を引く。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

守るバリアもなく、三人が撃ったコスモガンのエネルギー弾はカザンの身体を撃ち抜く。

 

撃たれたカザンは大きく体を仰け反り、背後の窓ガラスを突き破って外へと落下していった。

 

(カザンは片付けた‥‥だが、もう一人‥‥もう一人、残っている‥どうしても倒さなきゃならん奴が‥‥)

 

カザンの死亡を確認した古野間はまだ、倒すべき敵が居る事を胸に刻むのだった。

 

その後、ガーディアン連隊や別動隊の活躍もあって暗黒星団帝国軍首都占領軍の武器庫や兵器管理庫も完全制圧され、暗黒星団帝国地球侵攻軍は衛星軌道上に残っている駆逐艦や巡洋艦以外との指揮統制が出来なくなってしまった。

 

これは選抜艦隊がサーグラス中将指揮下の艦隊との決闘を行い、突破した頃の出来事であった。




次回 捜索と第二の中間基地

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