暗黒星団帝国に地球を占領されつつも、地球人類は屈せずに懸命に戦った。
宇宙ではヤマトを始めとする選抜艦隊が暗黒星団帝国の本星を求め、シリウス・プロキオン恒星では、残存艦隊が暗黒星団帝国の補給路を遮断し、地球本土ではパルチザンたちが占領軍と連日激しい戦いを繰り広げていた。
地球占領当時は勢いがあった占領軍であるが、防衛軍の次元潜航艦隊による群狼戦術により、補給がままならなくなり、占領軍宇宙艦隊も主力艦がヤマト討伐のために本星へと引き返し、徐々にその戦力は落ちていく。
そんな状況下で、パルチザンは新たな攻撃目標として現在、地球占領軍が司令部を置く防衛軍司令部の通信施設及び占領軍総司令官のカザンに目標を定めた。
司令部庁舎に潜入した北野、古野間、ティアナは主目標である通信設備の破壊に成功するも、作戦中に退路を塞がれ、やむなく進んだ中枢部にて第二目標である占領軍総司令官のカザンと遭遇する。
悪戦苦闘をするも何とかカザンを斃すことに成功し、占領軍の士気は大きく低下する事となった。
しかし、カザンを斃しても古野間にとってカザンはあくまでも前座に過ぎず、彼には本当に倒さなければならない敵‥‥アルフォンの姿が脳裏を過っていた。
総司令官であるカザンを失った占領軍は直ぐに代わりの総司令官を立てる必要があった。
しかし、総司令官と言う椅子は今回の件で常に暗殺の危険を孕み、更には戦況が傾いている中で地球占領の失態と言う大きな責任も含まれていた。
自分たちの本星である暗黒星団帝国と違い地球は辺境の蛮族が住む下等な惑星だと思っていたが、今回の作戦は国家元首である聖総統直々の肝煎りの作戦‥‥
どうして聖総統がこんな辺境の下等惑星に執心するのか分からないが、大きな失態をすれば、粛清の対象になることぐらいは分かるので、占領軍の幕僚たちは次の総司令官に立候補する者が現れない。
作戦に成功すれば大きな権力と地位、名誉が約束されるのだが、ここ最近の占領軍の戦果から見ると占領軍の中でも作戦は成功するのかと言う疑心が漂っていた。
「誰か居ないのか?次の総司令官になる者は?これ以上、先送りにしては軍の士気に影響が出る。ただでさえ、忌々しいパルチザンによって苦戦をしているというのに‥‥」
「そう言うのであるならば、貴官がなればよかろう」
「そうだ。そこまで言うのだから貴様がなれ」
「わ、私はどうも地球の気候に体質が合っていない様で、体調を崩しやすくなってとても総司令官職など出来ぬ」
「本国に問い合わせて援軍と共に新たな人材を送ってもらってはどうか?」
「そんな事をしてみろ、聖総統閣下の怒りを買い、我々全員は粛清されるぞ」
『‥‥』
粛清されるかもしれないと言う可能性を否定出来る幕僚は誰も居らず、会議室は重い空気に包まれる。
「そもそも、カザン総司令官が戦死された原因はアルフォン少尉にあるのではないか?」
「ん?それはどういう事かね?」
「アルフォン少尉が新型戦車のプラントを守り切っていれば、今頃は新型戦車でパルチザンを一掃できた筈だ。そうなれば、カザン総司令も戦死してはいなかった筈だ」
「そうだな。貴官の言う通りだ」
「ならば、彼自身にこの失態の責任をとってもらおう」
「うむ、それがいい」
「ですが、彼は将校の中でも少尉と言う一番下っ端の将校‥そんな下っ端の指示を我々が聞かなければならないと言うのも何だか納得がいきませんな」
「ならば、地上におけるパルチザン一掃までの指揮を執らせ、我々はパルチザンの襲撃が無い安全な軌道上に退避し、彼がパルチザンを一掃した後、再び地上に戻り、彼の職務を解けば良いだけではないですか」
「なるほど、そうしよう」
「と、なれば話は早い。アルフォン少尉をすぐに此処へ呼びたまえ」
「はっ!!」
占領軍の幕僚たちはカザンの戦死原因をアルフォンの兵器プラント防衛失敗に関連させて、その責任をとらせる形で彼を臨時の総司令官職へ推挙させた。
「―――わかりました‥‥私でよければ、お引き受けしましょう‥‥」
軟禁を解かれ、司令部に呼び出されたアルフォンは一切弁明することなく、この異例な人事を受け入れた。
いや、占領軍司令部の幕僚たちからの命令なので、下っ端将校のアルフォンには拒否権なんて存在しなかった。
「それで、司令部中枢はすぐに地表から撤退するのですね‥‥軌道上の艦隊へと‥‥」
「そうだ。これ以上、司令部から戦死者を出す訳にはいかん」
「君は残った残存兵力をもって重核子爆弾の護衛と忌々しいパルチザンを一掃せよ」
「承知しました‥‥」
(私と共に付き合わされる将兵たちには辛い戦いをさせてしまうな‥‥)
アルフォンに代理の総司令官職を押し付け、パルチザンの一掃を命じた後、司令部幕僚たちは急いで軌道上の宇宙艦隊へと逃げて行った。
司令部庁舎を後にしたアルフォンは、自分の宿舎となっている屋敷へと戻るとバルコニーに居た雪に今回の人事異動の件について話した。
「雪‥‥この間の話、考えてくれたかい?」
「‥‥」
アルフォンは軟禁される前、雪にプロポーズめいた事を言っていた。
雪の心の中に存在する古代と言う名の地球人の男性‥‥アルフォンは、古代は既に高速連絡艇の事故で死んでいると判断していた。
だからこそ、彼は雪に交際を申し込んだのだ。
しかし、雪は高速連絡艇の事故は何かの間違いで、古代は生きていると信じている。
出来るなら、雪も一人の地球の戦士として戦いたい。
だが、肝心の重核子爆弾の弱点を自分はまだ掴んでいない。
地球を占領軍から解放するにはあのハイペロン爆弾の存在が要である。
そして、アルフォンは技術将校‥‥きっと重核子爆弾の弱点を知っている筈だ。
雪が返答に困っていると、
「地球人はそれほどまでに愛する人の事を考えるモノなのか‥‥?君は重核子爆弾の秘密を知りたくはないのか?」
「‥‥」
アルフォンは、自分を受け入れてくれるのであれば、雪にハイペロン爆弾の情報をすべて教えるという条件を提示してきた。
アルフォン自身、これはあまりにも卑怯な提案だと理解している。
しかし、それでも彼は雪を愛してしまったのだ。
雪を手に入れるためならば、卑怯者になる覚悟が彼にはあった。
「‥何も言わないんだね‥‥あくまでも実力で探り出そうというわけか‥‥君がこのところ、不穏な動きを見せていたことは知っていたよ。だが、そんなことで重核子爆弾の秘密を知ることはできない」
アルフォンも重核子爆弾の存在が地球占領の要である事は当然理解している。
そして、雪が敢えて自分の下を去らずにいるのか、その目的も承知している。
一度はソレを利用してパルチザンに大きな被害を与える事が出来たが、それでも地球人たちは諦めずに自分たちと戦っている。
「仲間のところへ帰りたまえ‥‥」
「っ!?」
「今日、司令本部へパルチザンの襲撃があった‥‥通信網が破壊され、カザン総司令が暗殺された‥‥司令部要員も多くが斃れた‥‥おかけで、指揮系統はひどい混乱ぶりだよ。生き残った司令部要員は軌道上に撤退‥‥これより、各都市に居る地球占領軍は、それぞれ独立して、占領維持に挑まねばならん‥‥そして、私が‥‥私が、重核子爆弾の護衛を含む、占領部隊の臨時司令官に任命されたよ‥‥皮肉なことに一度地位を剥奪されかけた下っ端士官の私がね‥‥」
「‥‥それでは‥‥それでは、あなたは‥‥」
「そう‥‥今や私こそが、君たちパルチザンが倒すべき新たな敵なのだ‥‥雪‥‥もう一度言おう‥‥仲間の所へ帰りたまえ‥‥そして、私に立ち向かってくるのだ‥‥私を倒すことができれば、その時に全てを教えよう‥‥」
「‥‥」
「‥‥重核子爆弾の内で、君を待っているよ」
アルフォンは雪のそう言い残し、屋敷に残っていた兵士たちと共に屋敷を後にした。
彼が言ったように、きっとアルフォンは重核子爆弾へと向かったのだろう。
雪もアルフォンの言葉と決意を信じて、屋敷を後にしてパルチザンとの合流を図った。
地球で事態が大きく動き始めたその頃、その地球を解放する為、暗黒星団帝国本星を探している選抜艦隊では‥‥
各艦の艦長たちがリモート会議を行っていた。
『これが、半径約120光年の星図だ。コスモタイガー隊の活躍で、何とか此処まで組が上げることが出来た』
これまでもコスモタイガー隊の哨戒報告を真田が纏め上げて星図にしたものを表示する。
「しかし、渦状腕内部なのに、随分と星の数が少ないな‥‥お目当ての黄色主系列星もほとんどないよ」
束が星図を見て黄色主系列星の少なさに疑問を抱く。
『うむ、確かに気になる点ではあるな‥‥だが、まずは此処を見て欲しい。重力場レンズ効果で確認できたんだが、此処には密集した白色矮星が多数存在していると思われる』
「白色矮星っていうと、確か圧縮した巨星の慣れの果て‥‥超重力惑星だったね」
『ああ。だが、問題は白色矮星ではない。その横にあるモノなんだ。いいか、投影するぞ』
「こ、これは暗黒星団帝国の基地!?」
モニターには以前戦った暗黒星団帝国の中間補給基地と同型の移動要塞の姿が映し出される。
『ああ、間違いない。以前遭遇した中間補給基地と同じタイプの基地だと推測できる。もし、明るい恒星の近くなら、星の光に紛れて分からなかっただろう。だが、暗い白色矮星の近くに居たからこそ、こうして発見することが出来た』
「こいつはどう見ても人工物だ。この基地を以前のように完全破壊ではなく、ある程度のダメージで抑えることが出来れば、敵本星の手掛かりを掴むことができるかもしれない」
ここ最近は敵との接触もなく、また以前ヤマトに潜入してきたロボットを解析しても敵本星の手掛かりはなく、八方塞がりな状況下だったので、予想外ながらも敵の大物を発見した事で湧き上がる選抜艦隊。
一先ず、この基地に接近しあの基地が使用されているのかを確認する必要がある。
「束、このあたりは障害物が限りなく少ない。このまま接近していては相手に見つかるぞ」
「うん‥航海長、スロットルは最低限に絞って敵のレーダーに引っかからない様にして」
「りょ、了解」
「それにしても‥‥やっぱり以前戦ったあの中間補給基地と同じ型の基地ですね」
武御雷の艦橋にあるメインモニターに映る敵の中間補給基地を見て、ギンガが呟く。
「でも、あの基地の用途が補給基地と言う事は、やはり我々は敵本星と離れている所に居ると言う訳だな」
ディアーチェが基地の用途が補給基地と言う事で、改めて自分たちが敵本星から離れている位置に居るのだと言うと、自分たちは敵の掌の上で踊らされているのだろう。
そう思うと敵の作戦参謀は優秀であり、かなり姑息な人物なのだと思われる。
「確かに副長の言う通りだ。だからこそ、今回はあの基地から何としてでも敵本星の手掛かりを掴みたい所だ‥‥」
選抜艦隊の皆がそう持っていると、
「っ!?か、艦長。敵に動きが!!敵艦隊が基地から出撃してきます!!」
基地中心部にあるドームが動き出して、その中から敵艦が出撃してきた。
「まぁ、障害物が少ない宙域だし、どのみち手掛かりを得るには基地に接近して、中の駐留艦隊を殲滅する必要があるしね。さて、守君はどう判断するかな?」
逃げるか?
しかし、逃げたとしても敵本星の手掛かりを掴むことが出来ない。
それに敵艦隊が出撃している以上、此処で逃げても追撃をされるだけだ。
一方で、駐留艦隊を撃破してあの基地を完全に破壊することなく無力化することが出来れば、敵の情報を得ることが出来、地球を救う事にも繋がる。
「束、既に二十隻近くの敵艦がこちらに向かってくるぞ!!」
「艦長、ヤマトの古代艦長から戦闘配置の命令が入りました!!」
「やっぱり、やる気だね。よし、本艦も戦闘用意!!主目標は敵、駐留艦隊!!敵基地は一先ず無視しろ!!ただし、敵のミサイル攻撃には注意!!」
敵の手掛かりを掴むのが最優先なので、まずは邪魔な駐留艦隊を相手にするが、前回の戦闘で、基地自体も武装されている事は判明している。
あまり基地に近づきすぎると手痛い反撃を受ける。
基地が搭載しているミサイルに注意しつつ、まずは駐留艦隊の撃破を優先とした。
「敵の配置は?」
「正面、左右両翼に展開、正面は巡洋艦、駆逐艦を中心とする高速艦隊、右舷側には空母と戦艦、左舷には‥‥以前遭遇した強力な陽電子砲を搭載した特殊艦が居ます!!」
以前、サーグラスからの挑戦状を受けた時、彼はその時の戦闘に暗黒星団帝国でもまだ試作運用ではあるが、最新鋭のα砲搭載艦を導入して来た。
ゴルバに搭載されている程の大口径ではないがそれでも、同じα砲を搭載していると言う事で暗黒星団帝国の宇宙艦艇でも強力な艦だ。
「右側に空母‥恐らくあの時の様に爆撃機を送り込んで来るな」
「しかも搭載されている爆弾も強力なやつだろう」
サーグラスとの決戦時、彼が投入して来たのはα砲搭載艦だけでなく、艦載機部隊も新型爆弾を搭載した爆撃機だった。
「正面に高速艦部隊‥左に行けばあの特殊艦か‥‥」
「敵は我々を左の特殊艦が展開している方向へと押し込み、α砲で方をつけるつもりか‥‥どうする?束」
「航空隊を二つに分けて、一方は空母と艦載機の迎撃、もう一方はα砲搭載艦の撃破に向かわせて!!どうやらα砲を搭載した艦はまだ試作艦みたいだ。そこまで数が多い訳でもなさそうだし、いくらゴルバよりも小口径とは言え艦載機相手にα砲は不利だ。まずは空母とα砲搭載艦を撃破せよ!!」
「了解!!」
選抜艦隊は今度こそ、敵本星の手掛かりを掴むための負けられず、慎重に事を進めなければならない戦いが始まった。
次回 第二の補給基地攻略
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