内惑星艦隊の奮闘   作:島田愛里寿

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前回の予告題名が違ったので修正をしました( ̄▽ ̄;)


第百四十二話 偽りの星

地球を救うため、暗黒星団帝国の手掛かりを求めて二重銀河へとやって来た選抜艦隊は、遂に敵の本星の座標を突き止めて、その座標地点へと向かう。

 

しかし、敵の本星かと思われた星は地球にそっくりな姿をしていた。

 

当然その姿に選抜艦隊の乗員たちは困惑した。

 

「あ、あれは‥‥!!」

 

「地球だ!!」

 

「地球に戻って来てしまったのか?」

 

「どうしてこの宙域に地球が‥‥」

 

(うん、確かに外見だけ見ると地球そっくりだ‥‥)

 

乗員たちが困惑する中、束は眼前の地球が地球ではなく、間違いなく暗黒星団帝国の本星、デザリアム星である事を知っているので、特に驚く様子もなかった。

 

「ちーちゃん、ちーちゃん」

 

『なんだ?束』

 

「間違いなく、此処は暗黒星団帝国の本星がある座標なんだよね?」

 

『ああ、間違いない。アインスと何度もチェックはした。眼前の星は間違いなく地球ではなく、敵の本星の筈だ』

 

驚きはしなかったが、それでも怪しまれずにポーズだけはとっている。

 

『そもそも、此処は地球から何光年も離れている宇宙だぞ、現実的に考えて二重銀河の中心に地球がある訳がない』

 

「だよね~」

 

「だが、どう見てもあの星は地球に見えるぞ束」

 

艦橋のメンバーが困惑している中、ディアーチェが束に眼前の星はどうみても地球ではないかと疑う。

 

「見えるってだけで、地球に似ている星で敵の本星も地球によく似ているだけ‥‥って考えられない?」

 

「た、確かに‥‥」

 

モニターには星の姿で地表の映像は見えていない。

 

なので、束の言う通り、あの星が地球にそっくりな星である可能性も否定できない。

 

実際にギンガの生まれ故郷であるミッドチルダも周囲に地球よりも多く衛星はあるが、ミッドチルダ本星の姿は地球の様に青い星であり、大マゼラン星雲の中にあるイスカンダルも地表は地球よりも少ないが、青い星であった。

 

「地表の様子をまずは見てみよう」

 

雲の部分を取り除いた惑星の地表のスキャン映像が今度はモニターに表示される。

 

すると、惑星の地表はアフリカ大陸、ユーラシア大陸、オーストラリア大陸、アメリカ大陸、日本、イギリスと大陸の大きさ、地形も地球と同じものばかりだった。

 

しかも大陸だけでなく、ガミラスの遊星爆弾、彗星帝国の超巨大戦艦の砲撃で出来たクレーター跡も存在している。

 

「束。あそこまで地形や戦火の痕が同じでは、やはりあの星は地球ではないのか?」

 

「でも、地球は暗黒星団帝国の占領下に有る筈‥‥軌道上に暗黒星団帝国の宇宙艦船の姿が見えない」

 

「地表に降下している可能性もあるだろう?」

 

どうしても眼前の星が地球とは認めない束とあの星は地球なのではないと疑うディアーチェ。

 

そんな両者の不穏な空気を破ったのはギンガからの報告であった。

 

「艦長、ヤマトからの通信で、乗員の何名かを前方の惑星に降ろして、調査をするとの事です」

 

「そう‥一先ず返信で『了解』と送って‥‥ああ、ちなみに調査隊のメンバーは?」

 

「ヤマト戦術長の古代さん、航海長の島さん、通信長の相原さん、砲術長の南部さん、レーダー手の真田澪さん、あとアナライザーです」

 

「分かった。アナライザーのカメラ映像をこっちにも転送する様に伝えて」

 

「了解」

 

ギンガはヤマトに束の指示を送信した。

 

やがて上陸用舟艇で調査隊は眼前の星へと降下して行った。

 

地表には地球と変わらない超近代化都市があり、上陸用舟艇はその都市の車道を走る。

 

「ディアーチェ、やっぱり妙じゃない?」

 

アナライザーから送られてくる映像を見て束はディアーチェに声をかける。

 

「妙?」

 

「艦隊が地表に降下しているとしても戦火の痕がない。占領軍の姿も地球市民の姿もあの都市にはない。ゴーストタウンだ」

 

「‥‥」

 

束の指摘を受けてディアーチェは眉間に皺を寄せながら映像を見る。

 

確かに都市はあるのに住人の姿も占領軍の姿も見えない。

 

しかもいくら地球が占領されて、占領下で復興作業が行われているとしても建物は一朝一夕で出来上がらない。

 

モニターに映る都市は戦争があった痕跡がないくらい整っている。

 

やがて、郊外に出ると自分たちの知らない建造物が姿を現す。

 

「ほら、見て、あんな建物は地球には無かった筈だ」

 

「た、確かに‥‥」

 

戦火の痕がない都市、見当たらない住人、そして見慣れない建物‥‥ディアーチェも束の言う通りあの星が地球ではないのではないかと言う疑惑が出て来た。

 

一方、地球そっくりな星に降りた古代たち。

 

「人が全く見当たらないぞ‥‥」

 

「ゴーストタウンみたいで、何か気味が悪いな」

 

「古代」

 

「ん?なんだ?」

 

「やはり、此処は地球じゃあないんじゃないか?」

 

「地球じゃない?それじゃあ、此処は何処なんだ?」

 

「やはり、敵の本星だろう?」

 

古代はこの星が地球ではないかと疑っているが、島は束と同じくこの星は地球ではないと思っている。

 

それはヤマト航海長として、決して間違った航路を辿ってはいないと言う自信もあったからだ。

 

「此処が敵の本星なら、何故俺たちを攻撃してこない?」

 

これまで暗黒星団帝国の妨害を何度も受けて来た。

 

敵は自分たちの星に選抜艦隊を近づけたくはなかったのは明白だ。

 

だが、選抜艦隊は敵の本星と思われる星に来た。

 

ならば、何故敵は選抜艦隊を攻撃してこない?

 

かつてガミラスの総統デスラーは、最後の防衛線としてガミラス本星にヤマトを引きずり込み、決戦を仕掛けて来た。

 

暗黒星団帝国だってヤマトを含む選抜艦隊を撃破したいと言うのであるならば、何かしらの攻撃は仕掛けてくるはずだ。

 

だが、自分たちはこの星に着陸しても敵の攻撃はおろか、敵艦、敵兵の姿さえ見ていない。

 

 

「そ、それは‥‥」

 

古代の問いに何も言えない島。

 

「もう、おじさまも島さんも言い合いはやめて。まだ調査中よ、結論を出すのは早すぎるのではない?」

 

そこにサーシアが二人を仲裁する。

 

「あ、ああ、そうだな」

 

「すまない」

 

やがて、上陸用舟艇は郊外にある宮殿らしき建物を発見する。

 

「あんなところにあんな建物なんてあったか?」

 

「行ってみよう。何か手掛かりがあるかもしれない」

 

古代たちも唯一自分たちの知らない建物を見つけ、あの建物にこの星の正体を掴む手掛かりがあるかもしれないと思い、宮殿の敷地内に上陸用舟艇を向かわせる。

 

宮殿の庭にも誰もおらず、古代たちは宮殿内を調査しようと上陸用舟艇から降りる。

 

すると、宮殿の出入り口から誰かが近づいて来た。

 

「ん?誰かこっちに来るな‥‥」

 

「女性‥‥の人?」

 

古代たちを出迎えたこの星の住人らしき女性は地球人と変わらない肌の色をしているが、女性の左右後方に居る護衛らしき衛兵は暗黒星団帝国の人と同じ灰色の肌をしている。

 

女性は古代たちの前まで来る。

 

「あなたは?」

 

古代が女性に尋ねると、

 

「私はサーダ‥‥皆様をお迎えにあがりました。聖総統がお待ちかねです」

 

「聖総統?」

 

聞き慣れない役職を言われて古代は首を傾げる。

 

「教えてください。此処は地球なんですか?」

 

島がサーダと名乗った女性にこの星について尋ねる。

 

「聖総統にお会いになれば、わかりますわ‥‥さあ、こちらへ‥‥」

 

サーダの案内の下、宮殿の通路を歩いていると、そこには運よくガミラス、彗星帝国の戦災を逃れた美術品が飾られていた。

 

レオナルド・ダ・ヴィンチの 『最後の晩餐』 『モナリザ』 

 

ミケランジェロの 『ビーナスの誕生』 『ダビデ像』

 

フェルメールの 『真珠の耳飾りの少女』

 

ムンクの 『叫び』

 

ドラクロワの 『民衆を率いる自由の女神』

 

ジャン・シメオン・シャルダンの 『日除けをかぶる自画像』 『食前の祈り』

 

ロダンの 『考える人』

 

ツタンカーメンの黄金のマスク

 

エミール=アントワーヌ・ブールデルの 『弓をひくヘラクレス』

 

その他にゴッホやゴーギャン、ピカソ、ルノワール、葛飾北斎、喜多川歌麿、写楽など国、時代を問わず、地球のこれまでの歴史において名を残してきた大芸術家の作品が並んでいる。

 

宮殿の通路と言うよりもまるで美術館の様だ。

 

「これは‥‥やはり、地球の‥‥」

 

美術の知識に疎い者でも見れば一発で分かるような作品に古代はますます戸惑う。

 

 

武御雷 艦橋

 

「これは全て地球の絵や銅像だ!!」

 

レヴィも通路に展示されている美術品を見て思わず声をあげる。

 

「それじゃあ、やっぱりあの星は地球ってことなのか?」

 

柳原も困惑している。

 

「‥‥」

 

ディアーチェは束の意見と目の前の映像を見て、どっちつかずな様子だ。

 

 

ヤマト 医務室

 

ヤマトの医務室では佐渡、ヴィヴィオ、アインハルトもアナライザーから送られてくる映像をモニターで見ている。

 

「佐渡先生、あの星は地球‥‥なんでしょうか?」

 

ヴィヴィオが恐る恐る佐渡に尋ねる。

 

「うーん‥‥姿形、そして地球の美術品がこうして展示されているしのう‥‥」

 

「ですが、地球は今、大変な状況なんですよね?」

 

アインハルトも詳しい事は分からないが、今のヤマト世界の地球が大変な状況である事は知っている。

 

しかし、モニターに映る地球は何かしらのアクシデントが起きている様には見えない。

 

「今、古代たちがあの星に降りて調査をしておる。結論を出すのはもう少し待ってみようじゃないか」

 

「う、うん」

 

「は、はい」

 

ヴィヴィオとアインハルトも困惑しながらモニターを見つめる。

 

 

美術品が展示されている通路をぬけると国王との謁見をするような大部屋となり、奥の玉座には金髪で赤いポンチョの様な服を身に纏った男が座っていた。

 

肌の色もサーダと同じく地球人と変わらぬ色をしている。

 

この男がサーダの言う聖総統なのだと古代たちは思った。

 

「ヤマトの諸君‥‥よくぞ来られた。私が聖総統のスカルダートだ。我々は、諸君を第一級の賓客として迎えることにした。安心せられよ」

 

聖総統、スカルダートは自己紹介と共に古代たちに敵意が無い事を告げる。

 

「敵ではないと言うことか‥‥?」

 

南部が訝しむように呟く。

 

とは言え、いきなり『自分たちは敵ではありません』と言われてもそう簡単には信じられない。

 

南部だけでなく、古代たちもスカルダートの発言を聞いて訝しんでいる。

 

「さて、諸君‥‥さっそくご鑑賞いただいた我々の美術品はいかがだったかな?」

 

「あなた方の美術品?」

 

「左様‥‥この星に何世紀も前から伝わる由緒正しい美術品の数々だ」

 

「「「「「‥‥」」」」」

 

「君たちが疑問に思うのも無理はない。この星は君たちの地球から200年未来の地球なのだよ」

 

古代たち‥いや、古代たち調査隊のメンバーだけでなく、映像を見ている選抜艦隊の皆が困惑する中、スカルダートはこの星の正体について語り出した。

 

「200年後の‥‥未来の地球‥‥?」

 

「やっぱり‥‥」

 

「どうりで都市の様子が違って見えたわけだ‥‥」

 

スカルダートの未来地球説を聞き、相原と南部も自分たちの知る地球とこの星が違って見えたと頷く。

 

「その通り‥‥君たちの視点から見て、150年後に‥‥太陽の暴走によって太陽系のすべての惑星は消滅する事になってしまったのだ。我々は進んだ科学力によって地球自体をこの白色銀河へとワープさせ、なんとか地球の命を永らえさせる事に成功した‥‥」

 

「しかし、なぜそんな未来の地球が、我々の時代に‥‥?」

 

スカルダートの言葉を信じるならば、この地球は200年前の宇宙にタイムスリップした事になる。

 

「‥‥いくら進んだ科学技術とは言え。星一つを何十万光年も隔てた銀河へと移動させたのだ‥‥その無謀な作業の中でミスが起こったのだよ」

 

「ミス?」

 

「左様‥‥地球は星ごと白色銀河へと移動するとともに過去の時空へと戻されてしまったのだ」

 

「そんな突拍子もない話を信じろと言うのですか!?」

 

いくら宇宙へ出る事の出来る科学力が発達した地球でもタイムマシンは未だに作られていない。

 

200年後の地球はワープして銀河系から白色銀河へワープしようとしたらタイムスリップしました‥‥

 

そんな都合のいいSF映画や漫画みたいな事が起きるなんて信じられない。

 

この星が地球ではないと思っていた島がスカルダートに対してかみつく。

 

「‥‥」

 

サーシアもスカルダートの言葉には懐疑的な様子だ。

 

「ふっ、信じろと言っているわけではない。私はただ、事実を述べているだけだ‥‥」

 

信じられない事象であるが、スカルダートはあくまでも自分たちが辿った歴史を語っているのだと堂々としている。

 

確かに未来人が過去の時代へと行き、その時代の人たちに、『自分は未来から来た』と言ったところで、信じられるはずもない。

 

「ともかく、ゆっくりくつろいでくれたまえ。そして君たち自身の未来でもご覧いただこう」

 

「我々の‥‥未来だって‥‥?」

 

古代たちが困惑する中、スカルダートは更なる歴史‥古代たち‥ヤマト、選抜艦隊の未来を見せると言って来た。

 

「どうぞ」

 

すると、自分たちをここまで案内してきたサーダは飲み物が入ったグラスを手渡してくる。

 

この時サーダは手袋をつけておらず、素手の状態だった。

 

スカルダートの言葉が気になりつつもグラスを受け取る古代たち。

 

そして、皆にグラスが行き渡ると、玉座の間はまるで映画館の様に照明が落とされ暗くなり、空間スクリーンが出現して、そこにある映像が映し出される。

 

映像にはヤマトを含む選抜艦隊が撃沈される光景が映し出される。

 

しかも、映像の下には『西暦2402年 ヤマト 帰還せず』なんてタイトルまで加えられている。

 

その映像を見て、相原以外の皆がショックと驚きでクラスを手から離してしまう。

 

「ヤマトが‥‥ヤマトが沈む‥‥!?そんなバカな!!」

 

「あれがヤマトの最後だと言うのか‥‥?」

 

「ヤマトは地球に還らないなんて‥‥」

 

「でたらめな映像を見せるのはやめてくれ!!」

 

「これが事実だ‥‥君たちにとっては未来だが、我々にとっては既に決定し、過ぎ去った過去なのだよ‥‥諸君は2200年代の地球には帰れない‥‥君たちが生き残るただ一つの方法は、このまま降伏してこの星に永住することだ」

 

「降伏?‥‥すると、お前たちは‥‥」

 

「そう‥‥私は現在の地球‥‥すなわち、暗黒星団帝国を治める聖総統なのだ」

 

「暗黒星団帝国‥‥!!」

 

「大マゼラン星雲、そして地球への侵攻は‥‥やはりお前たちが‥‥」

 

聖総統が治めている国の名を聞いて古代と南部はいち早く反応する。

 

「先程、『我々が』地球を移動させ、崩壊から救ったと言ったが、いつ『地球人類が』といったかね?地球は我々、暗黒星団帝国に占領される運命にあり、そして太陽系はいずれ崩壊してしまうのだ‥‥これは予言でも何でもない。全て事実だ。私は確定した歴史を語っているだけなのだよ」

 

「地球を侵略したくせに、偉そうなことを!!」

 

「フフフ‥‥そう構えることはない‥‥君たちは重核子爆弾の起爆コントロール装置を求めて、はるばるここまでやって来たのだろう?」

 

「どうしてそれを‥‥」

 

「ふっ、それぐらいのことはわかる‥‥しかし、無駄なことだ。今見せた通り、地球はいずれ暗黒星団帝国のモノとなる運命にある。君たちが我々、暗黒星団帝国の母星だと思って捜し求めた星は、君たちの地球だったわけだよ‥‥」

 

「地球は‥‥暗黒星団帝国に勝てないのか‥‥?」

 

「そのとおり‥‥重核子爆弾を止めることなどできん。‥‥止める方法など、最初から存在しないのだよ。悪いことは言わない。この星に残って生き残る道を選びたまえ」

 

「いや、我々は帰る‥‥重核子爆弾を止めることができないというのならば、地球に戻り、最後の最後まで戦ってみせる!!」

 

「たわけたことを‥‥いくらあがこうとも、君たちは君たちの運命の糸からは逃げることはできないのだ」

 

「いや!!我々の運命は我々で決める!!」

 

「実に残念だ‥‥せっかく、ここまで来たことに敬意を表して生き残れるチャンスを与えたと言うのに‥‥それを投げうって、滅びることが分かっている過去の地球に戻ろうというのか?過ぎ去ってしまった歴史を変えようと言うのか?やれるものなら、やってみるがいい‥‥フハハハハハ‥‥」

 

スカルダートは高笑いをして、座っている玉座と共に床下へと下がって行った。

 

「くそっ!!」

 

「やめろ、古代‥‥行こう」

 

古代はスカルダートを追いかけようとするが、島に止められる。

 

こんな所で時間を無駄にする訳にはいかない。

 

地球に戻って地球を占領している暗黒星団帝国を追い出さなければならない。

 

皆は踵を返して玉座の間から出て行く。

 

「‥‥」

 

その最中、相原は手に持っていたグラスをそっと懐に忍ばせて持ち帰った。

 

 

武御雷 艦橋

 

『‥‥』

 

スカルダートの言葉と映像を見て、艦橋内の空気は重い。

 

この星を出航すれば、自分たちに待っているのは『死』‥‥

 

それが映像で確定されている未来だと知れば、誰もが戸惑うのも当然だ。

 

「束‥‥」

 

「ん?」

 

「あの映像を見てどう思う?」

 

ディアーチェが艦橋メンバーを代表するかのように束に尋ねる。

 

「よく作られたフェイク動画‥‥この一言に尽きるね?」

 

束はスカルダートが見せた映像はフェイク動画‥‥偽物だと言い放つ。

 

「フェイク動画だと?あの連中は未来人なのだぞ?ならば、この先の出来事も知っていて当然だと思うが?」

 

一方、ディアーチェは暗黒星団帝国の正体は未来人なのだから、この先の出来事を知っているのは当然なのだから、あの映像はこの先の未来を予見しているのではないかと言う。

 

「証拠ならちゃんとあるよ」

 

「なに?」

 

「証拠は‥‥」

 

束があの映像がフェイク動画だと説明しようとした時、アナライザーのカメラはサーシアが突然、宮殿へと戻って行く姿をとらえていた。

 

「あっ、澪さんが‥‥」

 

「どうした?」

 

「澪さんが宮殿内に戻ってしまって‥‥」

 

「どうして‥‥」

 

「やはり、あの映像は‥‥」

 

何故、サーシアが宮殿に戻ったのか?

 

あの映像を信じてこの星に残る事にしたのか?

 

「束、どうする?我々も残るか?」

 

「だから残らないよ。それにあの子は決して映像を見て怖気づいて残った訳じゃない‥‥何か目的があって残ったんだと思う」

 

「艦長、ヤマトから地球への帰還指示が入りました」

 

「分かった。航海長、反転。針路、地球」

 

「りょ、了解」

 

選抜艦隊がヤマトの指示を受けて地球への帰還行動に入る。

 

その最中、

 

「それで艦長、あの映像がフェイク動画だと言う証拠は?」

 

ギンガが束にスカルダートが見せた映像がフェイク動画だと言う証拠について尋ねる。

 

「ああ、それね。ちーちゃん、アナライザーが撮った宮殿内に展示されていた美術品の映像を見せて」

 

『美術品の映像?ああ、分かった』

 

艦橋のモニターにはアナライザーが美術品を撮った時の映像が流れる。

 

「そこ、止めて」

 

そして束はある彫刻が映し出された箇所で映像を止めるように千冬に頼む。

 

モニターにはロダンの『考える人』の像が映し出されていた。

 

「次にちーちゃん、美術品ライブラリーの中からロダンの『考える人』の画像を出して」

 

『ん?これか?』

 

千冬は美術品のライブラリー情報の中からロダンの『考える人』の画像を比較する様に出す。

 

「ほら、宮殿にあった『考える人』は左手を顎に当てているけど、美術品ライブラリーの『考える人』は右手で顎に手を当てている。当然、正解は美術品ライブラリーの画像の方だよ」

 

束はスカルダートが言う未来の映像がフェイク動画である根拠を艦橋メンバーに教える。

 

すると、選抜艦隊の針路上にサーグラス率いる艦隊が姿を見せた。

 

そして、今回サーグラスが乗艦するのはこれまでの戦艦ではなく、暗黒星団帝国が建造した新造艦、無限β砲搭載超弩級戦艦、グロテーズ。

 

そのグロテーズの艦橋では、サーグラスが闘志を燃やしていた。

 

「貴様等に受けて来た数々の屈辱!!‥‥そして死んでいった同胞たちの仇!!ついに恨みを晴らす時が来たぞ!!全艦、戦闘準備!!いいか、聖総統閣下のご期待に沿えぬような戦いだけはするな!!」

 

「前方より敵の大艦隊出現!!旗艦らしき戦艦はこれまでのデータにはない新型艦です!!」

 

「どうする束。ワープして逃げるか?」

 

「いや、『考える人』が偽物であり、あの映像がフェイク動画だとするとあの星自体も偽物である可能性も高い」

 

「と、すると‥重核子爆弾は止められる‥‥いや、むしろこのまま地球に戻れば、奴らは重核子爆弾を爆発させるかもしれない」

 

「だとすると、今ここで敵を振り切るのはかえって地球を危険に晒す事になるな‥‥」

 

「艦長、ヤマトの真田技師長から添付データが送られてきました」

 

「表示して」

 

「はい」

 

真田は選抜艦隊の各艦に相原が宮殿から持って来たグラスの分析結果をデータにして送っていた。

 

宮殿で古代たちにグラスを渡したサーダと名乗った女性が、素手で触ったにもかかわらずグラスに指紋が無かった事、これはアナライザーの記録映像で確認済みなので少なくともサーダは地球人類ではない事が確認された。

 

サーダが渡したグラスを構成する物質組成が銀河系に存在する物質ではなかった事、

 

そして、構成している物質が波動融合反応物質で出来ている事が書かれていた。

 

これらのデータの結果から、あの星は未来の地球ではない事が結論付けられた。

 

「航海長、反転!!目標、敵本星!!」

 

「りょ、了解」

 

選抜艦隊は反転して暗黒星団帝国本星へと向かう。

 

その後方からはサーグラス艦隊が追跡して来る。

 

どの道、サーグラス艦隊との接触は回避できない。

 

敵本星の重核子爆弾のコントロールを破壊する前にサーグラス艦隊と戦わなければならない。

 

「総員戦闘配置。ただし波動砲及び波動カートリッジ弾は安全が確認できるまで使用禁止とする」

 

束は敵本星も波動融合反応が起きれば一大事なので、波動エネルギーに関する武器の使用を禁じた。

 

宇宙空間における暗黒星団帝国との戦いもいよいよ決戦の時が近づいていた。

 

 

 

 

 

一方、地球においても動きがあった。




次回 動乱の前

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